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てきすぽどーじん5号 「初体験」
「親不孝ウエストゲイパーク」 山田佳江
親不孝ウエストゲイパーク
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「原発少女・福島もんじゅ ~パイロット版~」 シゾワンぷー
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「穴蔵の娘」 雨森
穴蔵の娘
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「パラレルワールドの僕」 香吾悠理
パラレルワールドの僕
パラレルワールドの僕(1)
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パラレルワールドの僕(8)
「テキスポで暮らした人たち」 蟹川森子編
テキスポで暮らした人たち
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「惟任百里的初恋探偵物語」 あやまり堂
惟任百里的初恋探偵物語
惟任百里的初恋探偵物語(序)
惟任百里的初恋探偵物語(1)
惟任百里的初恋探偵物語(2)
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誤訳捏造「OUTサイダー」 茶屋休石
誤訳捏造「OUTサイダー」
誤訳捏造「OUTサイダー」(序)
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「異世界のメロディ」 松浦俊郎
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パラレルワールドの僕








パラレルワールドの僕



香吾 悠理





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パラレルワールドの僕(1)

 

 僕は何をしたいんだろう?
 僕は何をしているんだろう?
 僕は何でこんな道を選んだんだろう?

 窓から見える星はとても綺麗で、十年経っても変わらない。
 僕は最近ほぼ毎日、空を見上げるようになった。
 僕はやっと社会人になれたけど、もっと道があったんじゃないの?
 例えば……贅沢言うなら、俳優とか?
 もしかしたら親が熱狂的なステージママとか言う奴だったら、今頃天才と称されるほどの絵描きとか、音楽家になれたかも。
 明日で二十三歳。
 平凡な日常なんてつまらないんだよなあ。
 他の僕はなにをしてるのかな、俗に言うパラレルワールドとか言うの。
 あの時僕があの子にアタックしてたら……、あの時僕がこの会社に入るのをやめたら……、あの時僕が別の学校に受かっていたら……。
 駄目だな、五月病?
 こんなことしても何もならないのは知っているけど、恋人もいなければ社会人にようやくなれた僕はあまりにもちっぽけなんだよ。困ったね。
 さて、寝よう。
 ベッドの中はとても温かいけれど、明日はすぐに起きて会社に行かないと。
 誕生日、誰が祝ってくれるかな。

 


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パラレルワールドの僕(2)

 

『お誕生日おめでとうございます!! ではこの死神……もとい、案内人から素敵なプレゼントご用意いたします。貴方はパラレルの自分を見たいと思いましたね、そう言うのはお任せください。私はそういうの得意なので、会わせてあげますよ。ただし、時間は数時間、貴方が起きるまで』

 妙に明るい声が響く。
 夢の中なのに……。頭に直接来るような……。

『まあまあ、他の世界も貴方も同じことを思っているのです、なので折角です、この時間を夢だとでも思っていいので、存分に話してらっしゃい。はいはい、貴方の出身地は……えーと、福井県ですね。福井県福井市、懐かしい貴方の大好きな川の近く、タニシやザリガニがとれたあの場所で、どうぞ話あってきてください!』

 なんだか見えてきた。
 懐かしいなあ、三歳の時によく遊んだあの川だ。
 今はどうなっているのかな。僕はいま東京にいるから、もう行かないけど……。


 

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パラレルワールドの僕(3)

 
 あの懐かしい川のそば、当時のままでそこに何人もの男が座る。周りは濃い霧に囲まれているが、川だけは随分はっきりと見えた。
 眼が合えば皆が立ちあがって、頭を下げた。
 アレ? 皆、若干違うけど……基礎は僕じゃないか?
 そんなまさか。そうか、これは夢だっけ。
「はじめまして」
 数えるには五人、自分のそっくりさんがそこにいた。
 最初に礼儀正しくお辞儀をした男は、高そうなスーツを着込んだ眼鏡の男。清潔で爽やかという第一印象。
 握手を求められて、握手を交わした。その感触も生々しい。
 本当に夢かな?
「私は弁護士を目指していまして……」
 うわっ。資格の勉強中なのか。
 相当見た目はキレ者に見えるけど、これも僕なのは間違いない。でもどうしてこんなに別人になったのだろう。
「おかしいでしょう、原点は同じなのにこうして皆……まあ、全て私ですが。会ってみると、全く違うので、驚きました」
 丁寧な口調だ。あいさつです、と気軽に見せてくれた生徒手帳は、驚くほどレベルの高い大学だった。
 僕は目指すことすらやめるくらいの。
 しかしあまりに落ち着きすぎるせいで、僕でいながら嫌な奴、という印象を持ってしまった。
 異性にはもてそうだけど、自信ありそうなその姿と学歴に、不愉快な気分にさせられる。
「何が君は不満なの」
 僕はなんだかつまらなくなって、眼をそらして彼と話すことになった。周りの視線も突き刺さる。
「いい学校入って、弁護士を目指して、高いスーツで…?」
 相手はつかれたように溜息を出すと同時に呟いた。
「そう見えるでしょう。私は最近思うんです。別の人生だったらこんな疲れたことはしないのに、と」
 周りもうんうんと同じ声を出した。口調や姿は若干違っても、声は僕だった。
「君の住んでいる場所は?」
 彼を弁護士と適当に名付けることにした。まだ弁護士ではないけれど、もう弁護士に近い状態だ。
「埼玉です。私の分岐点は、貴方よりもここを離れることが早かったことです」
 辺りを見回した。
 濃い霧、目の前にある汚い川、手すりのない、コンクリートの小さな橋。
 そこで彼が指をさしたのは、川の向こう、少しだけ見える田んぼだった。
 何とか眼を細めてみると、家が見えた。
 けど、なんだぼろっちい汚い家だなあ。一階建、庭なし、門もさびている。
「あれが現在の私の家です」
 そんな馬鹿な! こんな完璧な男があんな家にすむはずない!!
 僕だって二階建の、一軒家なのに。庭はあっても凄く狭いけど。
「私は、もう少しだけでいいから、お金のある家にすみたかった。両親はすでに離婚して、父とすんでいます。これが決定打です。両親の離婚さえなければ、と」
 指差す彼を見ると、横顔は哀愁のある顔だった。
 じゃあそのスーツはどこで買ったんだ、と聞くと、彼は困ったように笑った。
「父がとても頑張ってくれて、私はエスカレーター式の学校に入りました。おかげで父は随分とやせ細ってしまいました。母は再婚しているのであったことがありません。なのでこのスーツは、私が勉強しながらアルバイトをして、稼いだお金で買ったものです」
 僕の両親はとても仲がいい。
 それが離婚だなんて考えられない。その考えは読まれているのだろうか、やはり彼は遠慮がちに笑った。
「引っ越しがきっかけです。貴方よりも早くに引っ越しましたが、それと同時に私には兄弟ができるはずでした。弟か妹か。それが、引っ越したせいで流産してしまいました。ストレスや疲労によるものだとか。そこで離婚を切り出したのが母です。今もあの家は借家ですよ」
 兄弟か。一人っ子だから考えたことなかった。
「試験は何度も落ちました。そのたびに勉強しながら、大学も通ってアルバイトも。体を若干壊してしまいました」
 そういえば、やつれているようにも見える。
「努力だけでは何にもならない時もあるんです。ただ、私はちゃんと資格をとったなら、父を安心させます。けれど、やはり心は疲れてしまっていて……その時に現れたのがここです。懐かしいです、ね、皆さん?」
 ここが分岐点だということらしい。
 弁護士の言う通り、皆は何度も頷いた。
 はあ、この男、見た目はなんの大変さを感じさせないけど、離婚に流産に、金銭関係で苦労してるんだ。
 離婚は一番痛いな。けど、それで終わらないらしいのが彼だった。
「でも私は負けませんよ。もっと勉強して、人を助けるんです。それが夢です」
 ……ちょっと僕じゃないんじゃないかと思ってきた。
 こんなに正義感あふれるまっすぐな人間にどうやってなるんだろう。けど、その裏で相当の苦労があることは分かった。

 

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パラレルワールドの僕(4)

 
 次に割って入ったのは、見るからに不良ですと言った男だった。勿論これも僕だ。
 弁護士の僕が指をさしていた先にはもう霧がかかっていて、何も見えない。
「チス」
 うわっ、目つき悪い!!着ている服は……工事現場でよく見る服だな。
「何だ、ほんとにこれ俺? まあいいや。さっきのが俺のように、同じこと思った奴らがいるさ。アレ見える?」
 今度は別のを方角を指差した。
 ぼさぼさの髪と、マメだらけの手。その先に見えるのは……、とても広い庭のある家だった。けど、周囲の様子からして、相当の田舎。
「俺ね、ここからまた別の場所に行ったの。けどそこが遠いところでさ、静岡のすんごい山の方。家だけ立派だろ?今は一人暮らししてアパートにいるけど、滅茶苦茶だよ」
 そこに見えたのは、静岡の寂れた商店街の近くにある、ワンルームのアパート。
 面倒くさそうに頭をかいて、煙草に火をつける。
 うわ、ちょっとやめてよ、僕煙草苦手なの。ほら、弁護士の方も困った顔してる。
 けむたいなあ。
「今でこそ働いてるけど、中卒。二十すぎてから働こうと思ってやっとつけたのが、この仕事。けどさ、毎日働いて、結構な体力仕事。煙草吸わないとやってけない」
 それから彼はずっと仕事の愚痴を語った。
 危ない仕事、上から鉄パイプが降ってきて、あたって大けがをした。
 そして仕事上、振動の多いものを扱うため、そのせいで指が上手く動かなくなったとか。
「けど、君は両親は?あんなに良い家なんだから、何でそんな中…えっと」
「いいんだよ、低学歴ってはっきり言って。あんま気にしてねーもん」
 分かりやすいほどうそつきだ。
 低学歴を気にして、ちらちらと弁護士の方を見て、何度も舌打ちしている。この二人は自分なのに、合わなそう。
「両親健在。じいちゃんばあちゃんも健在。あの家で親父のじいちゃんばあちゃん、母親で暮らしてるよ。あとは、妹がいるけど、そいつが今高校生」
 僕の祖父母は、五年以上も前に亡くなっているのに。
 それに妹がいるのは羨ましい。
「妹生意気盛りでな、可愛くない。可愛くないというのは、まあ、嘘だけど? あんまり会ってないし。生活費にほとんど金費やすし。ただ、周りには恵まれてるよ。仕事上の関係はな。やっぱり馬鹿言える友人が多いのがいーかな」
 その隣で、弁護士が羨ましそうな視線を向けた。
「本気で遊べる友人というのはいいですね」
「酒飲んで、休日はでかけて。煙草教えてくれたのもそいつら! ……大事な仲間だな。馬鹿やってテストの点数も悪かったし、まともに学校にもいってなかったけど。学校時代の友人も何人かたまに飲みに行くけど、基本仕事周りの友人が多い」
 この様子から見ると、彼は交友関係には恵まれているようだ。
 にかりと笑って髪をかきあげる。隣にいる弁護士をまねて髪の毛を整えるが、根本の精神が違うのか、同一人物でありながら、似ても似つかなかった。
「俺あんた見たいのになりたかった。だけどさっきの話聞いたら、苦労してるな」
 ケラケラと笑いながら、弁護士を指差す。
 弁護士はクスリと笑って、頷いた。
「私は貴方ほど自由奔放だったらと思います」
 こっちは弁護士の卵、こっちは中卒。面倒だからこっちの不良は中卒って名付けよう。彼には悪いけど。
 その隣の男に煙草をとりあげられて、川に捨てられた。
 こいつはなんだ?
 うわあ!? オカマ!?  ………もといニューハーフ!! キタコレ! どうしてくれよう。
 一瞬女の子かと思ったけど、間違いなく僕だ!!
 だって鼻筋がそのままだし。……でも意外に胸が……。
 胸にくぎ付けになっている僕の方を見て、手を振る。
 多分一見したら、男だとあまり気付かないんじゃ……。手の振り方も仕草も女性以上に女性っぽい。
 あ、違和感はそれか。女になりすぎちゃってるのか。心が。あまり知りたくないけど。

 


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