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七人のホスト

七人のホスト

「アツヒコ君!!」「アツさん!!」


倒れ込むアツヒコ君。

すかさずユウキが、客引きのヤスに殴りかかる。


ゴッ!!


割れたビール瓶で応戦しようとしたヤスだが、
ユウキの拳の方が早かった。

素早い拳を頬に受けて、のけぞるヤス。



黒服やグレースーツは、
ヤスの余計な行動に驚いていた。


奴等はこっちから手を出させようとしていたから、
先に手を出してしまったら自分たちが不利になってしまうのだろう。

明らかに狼狽の色を見せ、しかしすぐに奴らも臨戦態勢に入る。


こうなったらもう止められない、ヤスの行動が引き金となり、
一気に均衡が崩れようとしていた。


―しかし、1、2発拳が飛び交ったくらいだろうか。

乱闘になかけていた店内は、第三者によって中断される事になる。



ウウゥゥウウゥゥ



―サイレンの音。警察だった。

その場の全員の行動が一瞬止まる。


サイレンは店の前で鳴りやんだ。この店に入ってくるようだ。

「おいっ!」

グレースーツが叫ぶと、黒服が急いで入り口まで走り、店の鍵をかける。


(…コイツラが呼んだんじゃないのか?)


俺達も今ここで警察に厄介になる訳には行かない。


何の関係もない花ごころの他のスタッフに迷惑になるような事は避けたかった。



グレースーツは、店内の女の子に割れたグラスを片付けるように指示している。
どうやら、入り口の鍵は時間稼ぎのようだ。


「おい!裏口から外に出ろ!」


黒服が俺たちに指示する。


…こっちはアツヒコ君をやられている。

何とも煮え切らない気持ちだったが、
一旦出直すしか方法は無かった。


警察が来た以上、このまま暴れられない。


…後で俺だけ引き返して来よう。


意識が朦朧としているアツヒコ君の肩を俺とユウキが抱え、
グレースーツの脇を通って裏口へと急ぐ。


「クソガキが……このままで済むと思うなよ…」


グレースーツが吐き捨てるように言った。

俺は思いっきり睨み返し、店を後にした。


店から外に出て、まずアツヒコ君を病院に連れて行く。

アツヒコ君は頭から血を流していて、意識も曖昧だった。


「…ぶっ殺す…あの客引き…」


独り言のようにそうつぶやくアツヒコ君。

俺とユウキは、二人とも消化不良の顔をしていた。




病院で頭に包帯を巻いてもらうアツヒコ君。


―今日一日、酒も飲まず安静にしているように。
医者の言葉を後に、店に戻る俺ら3人。


店を巻きこんでしまうという最悪の事態は避けだが、
こうなったら店の皆に話さない訳には行かなかった。


俺らが店に戻ると、包帯を巻いたアツヒコ君に驚いた皆が集まってくる。


「どうした!?」

「何があった?」


さっきは居なかったカツヤ君も店にいた。


「実は…」


店の全員が集まった中、今までの顛末を話す。


ポリスの事、

ボッタクリの事、

店に迷惑が掛かりそうだった事…


話の途中でカツヤ君を見ると、明らかに怒りの表情を見せていた。

…そりゃそうだ、下手すりゃ店が営業停止になっていたからな。



一通り話し終えたところで、カツヤ君がテーブルを拳で叩く。


「すみません…あの後、警察と奴らがどういう話をしたのかはわかりません。
もしかしたら花ごころの名前を出しているかも知れませんけど…。
けど、これ以上は店に迷惑をかける事はしないんで。」


「……お前、それでどうするつもりだ?」


「…………すみません」


俺はこの後、一人で奴らの所に向かおうと思っていた。
単独で行けば、最悪俺一人の処分で済む。


「お前、一人で行こうと思ってんじゃないだろうな?」


「………はい」


「ふざけんなよ…俺らも行くぞ。」


「…えっ?」


「えっ?じゃねーんだよ、
テメー一人でウサ晴らししようとしてんじゃねーよ!
おいてめぇら、行くぞ。」


「いや、でも花ごころは…」


「臨時休業だ!アツヒコやられて黙ってられっかよ!」


カツヤ君の怒りは、店を巻きこもうとしていた事じゃなかった。
アツヒコ君がやられた事に対して怒っていた。


見ると、カツヤ君だけじゃない。
他のホストも皆ギラギラと目を輝かせていた。


…ホストって、軟派でナヨナヨしてんじゃなかったのかよ!?

一人の為に仇討ちって…これじゃ不良の世界と変わんねぇな。


俺のホストに対する印象は、この頃から少し変わり始める。



「でもカツヤ君、もしこの店が営業停止くらったらどうするんすか?」


「お前、ボッタクリ店が警察に駆け込むと思うか?
自分たちがパクられるから、よっぽどじゃねーと警察沙汰にしねーよ。」


…考えてみれば、そうだ。
さっき警察が来た時も、なかった事にしようとしたじゃないか。

…という事は、店を巻きこむと言うさっきのグレースーツの言葉はブラフ…。

俺はまた自分の頭の回らなさに腹が立った。


「…俺も行きますよ。」


アツヒコ君だ。


「アツヒコ…お前頭は大丈夫か?」


「大丈夫っす、俺も行きます。」


頭に包帯を巻いたままのアツヒコ君も行くことになった。
そして、その時店にいた全員…

俺、
カツヤ君、
ワタル君、
アツヒコ君、
ユウキ、
キョウヘイちゃん、
それともう一人、店にいたシュンさん。


この七人のホストで、再度スィートヘブンに向かって行った。