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ボッタクリ抗争開始

ボッタクリ抗争開始

詳しく話を聞くと、ポリス1人に対し、
よってたかって5~6人ぐらいが袋叩きにしたらしい。

警察が来た頃には、すでにスウィートヘブンの奴等は消えていて、
瀕死のポリスが道端に転がっていたそうだ。


…俺は、何とも言えない気持ちになっていた。
俺はポリスを可愛がっていたつもりだし、ポリスも俺を慕ってくれていた。


正義感を出したが為にやられてしまったポリスが不憫でならなかった。


と同時に、複数の人間でポリスを袋叩きにしたスウィートヘブンの奴等に対し、
どうしようもない怒りが込み上げてきた。


いつの間にか俺は、今自分がホストでいる事を忘れていた。
喧嘩に明け暮れて、ギラギラしていた頃の自分が戻ってきていた。


「……雄一さん。」


そんな俺の雰囲気を察してか、ユウキがおずおずと声をかける。

極勇会の頃から、こんな俺を何度も見てるユウキ。
そして、こうなったらもう止めても聞かない事も知っていた。


「店の場所を教えてくれ。」


「や…でも、もうすぐ開店だし、店はどうするんですか?
出なかったら罰金になりますよ」


花ごころでは、遅刻や欠勤に対して罰金を取っていた。


「…まだ開店まで2時間ちょっとある。
それまでに戻れなかったら、罰金でも何でもしてくれ」


「カツヤさん怒りますよ」


「…関係ない」


「……行くんすね」


俺が話を聞かない事を確認したユウキは、どこか嬉しそうだった。


「それでこそ雄一さん!俺もお供しますよ」


そういって拳を叩く。


喧嘩っ早いユウキならそう言うと思った。
花ごころの切り込み隊長の名は伊達じゃないな。


「じゃあ案内してくれ。」


そう言って立ち上がった俺らに、声がかかる。


「俺も行く」


アツヒコ君だ。意外な参加者に、俺とユウキは顔を見合わせる。


「や、でもアツヒコさん。喧嘩しに行くんですよ?」


ユウキが言う。


「俺もあいつらには嫌気がさしていたからな。
それに、そのポリスって人の話を聞いてたら我慢できなくなってな」


どうやらアツヒコ君も正義感のある情に厚い人らしい。


「よし、じゃあ行こう」


俺ら3人は、同じく店にいたワタル君に上手く理由を作り、外に出た。

今考えると、新人が準備もせずに外出なんてとんでもないな。



スウィートヘブンを目指す3人。

ユウキが歩きながら話しかける。


「…正直、雄一さんが店に入ってきて、少し丸くなったかな?って思ってたんですよ。
ホラ、客に靴でビール飲まされたりしてたじゃないですか」


「でも、店から出るとやっぱり昔の雄一さんっすね」


「昔の俺とは違うつもりだけどな。でも今回は別だ」


「でも、そういって喧嘩に行く顔の雄一さん、嬉しそうですよ」


そんな顔をしていたのだろうか。
俺が仙台に行っていた理由をもう一度思い出し、戒める。


(…やりすぎてはいけない)


そう思っていると、目的の店が見えてきた。


スウィートヘブンは、歌舞伎町一番街から少し脇に入った通りにあった。

ギラギラしたネオンが、男と言うエサを待ち構えているようだった。


入り口付近を見ると、今まさに客引きがエサに声をかけている最中だった。


「さ、どうですかお兄さん!1時間3,000円、1時間3,000円ポッキリですよ!」


いかにもなボッタクリの常套句だが、この時代は本当にそう言っていた。
声を掛けられているお兄さんと呼ばれている人は少し困った様子をしていた。


「…行くぞ」


俺はユウキとアツヒコ君にそう言うと、店の横にあったゴミ箱を思い切り蹴とばした。


ドガンッ!!!
ガラガラガラ…


周りの視線が一気に集まる。
客引きも驚いてこっちを振り返っている。

俺はゆっくりと客引きの方に歩いて行き、一言。


「おう、責任者呼んで来い」