1.「電気自動車」,2.「顔認識デジカメ」
1.「電気自動車」
「社長! いけません、バッテリー切れのようです!」
「バカ! 電気自動車だから、出てくる前、しっかり充電しとけって言っただろ?!」
「すいません」
「いや? バッテリーメーターは、まだ充分の表示が出ているぞ?!」
「……」
「オイ? どうした?! オイ?」
「……」
「って? 運転手! おまえかーーっ?! バッテリー切れは!」
〈ion〉
2.「顔認識デジカメ」
「いかがです? こちら最新型デジカメ、顔認識の機能付きです♪」
「ほお♪ なるほど♪ あれ? でも、これ故障してません?」
「いいえ、 でも、なぜ故障してると?」
「だって、ホラ、こんな だれもいない所で、顔認識してる…」
「だいじょうぶですよ♪ そこにはちゃんと、過労死したウチの店員の霊の顔があります♪」
〈ion〉
3.「それを言ってはいけない!」
3.「それを言ってはいけない!」
「見てごらん、ツルツルだよ」
少年が、友だちに写真を見せて言っている。
彼の父はツルッパゲだった。
その友だちも言う。
「ボクのとこだって、ツルツルだよ」
通りかかった別の少年が、これを聞いて、怒ったように言った。
「ちがうやろ!」
「なにが?」
不思議そうに、二人の少年は声をそろえ、彼に訊いた。
「ちがうやろ! それを言うんなら 『 ツルンツルン 』 やぞ!!」
彼は関西人だった。
〈ion〉
4.「浮かばない!!」
4.「浮かばない!!」
「ザブーン」
水音がした。
橋のたもとで、女が下を見下ろしている。
下をのぞくと、川面に大きく波紋が広がっている。
女は思い詰めた顔で、つぶやいている。
「浮かばない…、浮かんでこない…」
「大変だ!」
とっさに思った。 川に人が落ちたに違いない。
大声で人を呼ぶと、大勢集まってきた。
落ちた人を助けようと、誰かが飛び込む水音。
その時急に、女は我に返った様な顔で叫んだ。
「浮かんだ!」
「え? 何が浮かんだって?」
「小説のネタ♪」
「いいかげんにしろ!」
〈ion〉
5.「マッサージ」
5.「マッサージ」
「どう? かなり凝ってるでしょ?」
「かなり凝ってますね。 カチンカチンですよ」
「こんな仕事してるとね、めっちゃ肩が凝るんですよ」
「仕事のし過ぎじゃないんですか?」
「そうですね。 最近、忙しくって、休む間もないから」
「この不景気、忙しいのはいいけれど、体壊したらなんにもならないですよ」
「はあ、気をつけます」
「どうです? このあたり?」
「ああ~♪ そこそこ! 気持ちい~い♪」
「気持ちいいでしょ。 たしかこのあたり ツボがあるんですよね」
「そうなんです♪ いやあ気持ちいい♪ いや、お客さん、なかなか上手いですね」
「まったく! マッサージ師が客に肩もんでもらって、
『気持ちいい』だなんて、聞いたことない!」
〈ion〉
6.「うず潮」
6.「うず潮」
足の下、見下ろすと白い波が泡立って渦を巻いている。
男は、渕に足を掛け、身を乗り出そうとする。
その時、背後に声が響いた。
「ちょっと! オタク! 何をしようとしてるんだ?! 止めなさい!」
「止めてくれるな! オレはこのうず潮に身を投げて、オレの人生を精算したいんだ!」
「いいけど! やるなら自分ちでやってくんない?!」
「ダメなんだ! うちのうず潮はフタ開けると止まっちまう!」
「あの~、どっちにしても死ねんと思うよ。 こんな洗濯機じゃ」
〈ion〉

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