目次
1章 現代に巣くう忍たち
1 東大生、藤林悠輔
2 警視庁幹部、相馬泰
3 侵入者
2章 休日の忍たち
1 そして、平凡な一日が始まる
2 女子大生、進藤早紀
3 渋谷の通り魔
3章 足跡を残した忍たち
1 事件現場
2 警察官、上月静夜
3 容疑者、田上明央
4章 取調室の忍たち
1 テレビ記者、叶陽一郎
2 激突-伊賀と甲賀
3 静夜の罠
4 追跡者たち
5章 オモテの忍たち
1 お笑い芸人、風間英太
2 メイド、仁科ともえ
3 JAあおもり職員、応野邦彦
6章 ウラの忍たち
1 風魔の英太
2 戸隠のともえ
3 応変の邦彦
7章 アキバの忍たち
1 ともえと悠輔
2 帰り道
8章 学園祭の忍たち
1 東都大学若葉祭
2 舞台袖
3 トーキョーハンター
4 同業者
5 最強
9章 嵐の前の忍たち
1 ともえと早紀
2 ツイてるともえ
3 ツイてない悠輔
4 邪魔者
5 嵐が来る
10章 相見える忍たち
1 知らなくていい真実
2 悪い夢
3 百地悠輔という男
4 集いし5つの流派
5 赤い瞳の一族
6 ともえの提案
7 激突する赤と青
8 別れなさい
11章 動き出す忍たち
1 六本木のオフィス
2 戸隠の女王
3 忍者王
4 アキバのアイドル劇場
5 同盟
12章 恋煩いの忍たち
1 恋人は忍者
2 最後のデート
3 守ってみせる
13章 集結する忍たち
1 警視庁のメッセンジャー
2 集結した忍たち
3 悠輔の企み

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7章 アキバの忍たち

1 ともえと悠輔

久しぶりに来た秋葉原は少しだけだが活気がないような、悠輔の目にはそう見えていた。


 無理はない。折の不景気と去年の通り魔事件の影響をもろに受けているのだろう。


だが、逆にその方がアキバ独特の浮ついた嫌な雰囲気がなくてどこか過ごしやすい町になったように悠輔には思えたのだ。


「──でさあ、悠輔。テレビのことどうするのー?」


 駅ビルから直通で伸びる大型電気店に向かいながら一緒についてきた早紀は大声でそう聞いてきた。


「どうって……普通でいいよ」


「だから、その普通って何?」


「何って言われても……」


 強い口調で早紀にそう言われて悠輔は困ったように閉口した。


 先ほどからずっとこの調子だ。一応無事引越しが終わって一段落していた昨日、早紀が部屋を訪れたとたん言われたことが「何この旧式のテレビ!」という一言だった。


 悠輔は今まで自分のテレビが旧式だとはこれしきも思ったことなどなかった。


 ちゃんと写るし音も出るしどこが悪いのかよくわからなかったけど、早紀曰く「これからは地デジの時代!」と言うわけで彼女連れでしぶしぶ大型電気店に買いに来たのだ。


 とは言うものの──テレビは壊れてないのに買い換えるってことに悠輔はどうも気が進まないところがあった。


 地デジになって今のテレビが見えなくなるのにあと三年──それまで使えればそれはそれでいいじゃないか。


 だが、都会っ子の早紀からすれば、自分の彼氏の部屋に真っ黒なブラウン管テレビがあることが許せないのだろう


 それを証明するかのようにテレビの品定めは悠輔よりも早紀の方が熱心だった。


「悠輔の部屋の大きさだと──32インチくらいがいいのかな」


「ええ、それ大きすぎるよ!」


「大丈夫よ。今液晶テレビは値崩れ起こしてるんだから。悠輔の予算で十分買えると思うよ」


「別に買うつもりなんか……」


 悠輔はその言葉を続けようと思ったがそれを胸の奥に飲み込んだ。


 たくさんの液晶テレビのディスプレイの前早紀は真剣な顔をして品定めしていたのだ。


「ねえ、そんなに本気にならなくても……」


「だーめ! 悠輔はもう少し都会っぽくならないとだめだよ!ここは東京!三重の山奥とはちがうんだから!」


「………」


 その一言に悠輔は重たいため息をついた。


 テレビが古いか新しいかなんて自分の好き好きじゃないか。なんで人に指図されないと……


「こんにちはぁ~」


 そこにまるで呼ばれてもないのに赤いハッピに鉢巻をした店員が割り込んできた


「お客さん。何かお探しですか。テレビのことなら私にお聞きください


「そうなんですよ。32インチくらいで十五万くらいで買える液晶テレビ探してるんですけど」


 早紀のその言葉は鉢巻の店員のスイッチを入れてしまった。


 お客ゲット!という声が聞こえるかのようにニカァと笑うと猛烈な勢いでしゃべりだした


「いやあ、若奥様お目が高い! そういうことなら私にお任せくださいよ。まずこの松芝電気の液晶テレビこれは今当店のお勧めの一品ですよ。それに──」


 何が若奥様だよ……しゃべりまくし立てる鉢巻の店員をじろっとにらみつけながら悠輔は心の中でそう思った。


きっとこの店員はきっと自分たちのことを新婚カップルだと勘違いしているのだろうけど、それはかなり迷惑な話だった。


延々とテレビの売り込みを図る店員のトークを話半分に聞きながら悠輔はもう一つため息を付いた──そのときだった。


「あのぅ……」


 そのか細い女の声を聞いて悠輔は思わず不機嫌そうな顔のまま振り返ってしまった。


 だが、そこにいたのはピンクのフリフリのゴスロリファッションに身を包んだ明らかにアキバにいそうなコスプレイヤーが立っていたのだ


「藤林悠輔さんですよね?」


「え……」


 その言葉を聞いて悠輔は思わず眉をひそめた。


 彼にはこのゴスロリファッションの彼女にまったくの見覚えがなかったのだ。


「君は誰だい?」


 悠輔は不審そうな表情を浮かべ彼女に冷たく一言そう聞いた


 だが彼女はお構い無しにニコッと笑った。


「あら? やっぱりあたしに見覚えがないんだ……まあ、半分覚悟はしてたけどね」


 その言葉を聞いて悠輔はもう一度頭をひねった。


一体このゴスロリの少女は何者なのだろう。


まるで自分を知っているかのような口ぶりに悠輔は不快感しか浮かんでこなかった


「いいの。気にしなくて」


「は?」


「あたしはあんたの反応を確認したかっただけ。でも思っていたほど驚かなかったなあ……」


「………」


 その瞬間、悠輔はこの少女の存在を少しだけ警戒し始めた。


 別に危険ってわけでもないが、この少女は何かが違う。それが何かと言うのは今はまだわからないけど、わからないから余計不安だった。


「君の名前は──」


「どうしたの? 悠輔?」


 緊張感を漂わせる悠輔を電器店店員とテレビの話しをしていた早紀が心配した様子で顔を覗かせた。


「やだ、怖い顔ねえ……なにかあったの──?」


「あら、進藤早紀さんじゃない」


 早紀の顔を見てゴスロリの少女はまた裏表ありそうな笑顔をにっこりと作って見せた。


「え……?」


 その言葉にさすがの早紀も戸惑いを覚えずにはいられないように悠輔には見えた。


 早紀も知っているということは──ますますこの少女の正体が見えなくなったような。一体彼女は何者なんだ……


「ねえ、知り合い?」


 悠輔は早紀に口を隠しながらひそひそとそう聞いたが、だが肝心の早紀は首をひねるばかりだった


「どこかで見覚えがあるんだけど……だれかは──?」


「やだぁ。忘れちゃったの? ダメじゃん……」


 早紀の言葉に対しゴスロリの少女はあきれたような表情を浮かべて二人に近づいた。


「よく講義室で一緒になるじゃない。冷泉大学のさぁ」


「あれ、私と同じ大学──?」


「そうだよー!あたしのこと気づいてないの~?」


「………」


 少女のその言葉に早紀は頭をもたげてしばらく考え込んだ。


 沈黙することしばし、早紀ははっと顔を上げて彼女の顔を見つめた。


「あ……! あのときのゴスロリの──!」


「やだぁ。今更思い出したの?」


 そんな早紀の態度にゴスロリの少女はちょっと不満げな表情を浮かべた。


「あたし、こんな格好だからもう少し早く気づいてくれると思ったのにー。ショック……」


「ごめんごめん、すぐに頭に浮かばなかったんだ……」


「もう、信じらんなーい!」


 そう言うとゴスロリの少女はぷんぷんと怒った表情を浮かべた


 それを見つめる早紀はどこか戸惑っているような、見ていてそんな感じが悠輔はした。


 おそらくこの二人、さほど仲良くはないのだろう。大学で顔見知り程度の間柄なんだろうなと容易に想像できた


「……ところでさ」


 悠輔はそんな二人の間に割って入るように一言言った。


「君、僕の質問に答えてないだろ」


「え? 質問って……」


「君は一体誰だって事」


 そう言う悠輔の呆れた顔を見て少女はにやっと笑った。


「やだ、悠輔……覚えてないの?」


「はあ?」


 その言葉に怪訝そうな目で彼女を見たが、当の本人はまったく気にせず話を続けた


「まあねぇー、気づかないほうが普通なのかもしれないよねー。あたしたち写真でしか出会ってないはずだから」


「写真──?」


 悠輔はその一言を聞いて一生懸命彼女の顔を頭の中の記憶から引っ張り出そうとした。


 自分は人よりも数倍記憶力には優れていると思ってはいるものの、どんなに頭の中を引っ掻き回しても目の前の少女の面影は影も形も見当たらない。


 やっぱり、この女──まったくもって見覚えがないな。


 悠輔がそう確信したその瞬間、彼女はまた大きなため息をついて言った。


「覚えてないならいいわ。私は冷泉大学1年の仁科ともえ。彼女とは──同級生ってことになるね」


 ゴスロリの少女はそう言うと悠輔の横にいる早紀をじろっと見つめた。


 その目はどことなくじとっと湿ったような深い暗さを悠輔は感じた。


「へえ、仁科さんって言うんだ……」


 だが早紀はそこまで深読みしてないのか、感心したように頷いた。


「ねえ、同じ大学って事だから今日から友達になろう!」


「え……早紀──」


 ──マジでそう思ってるの?


 悠輔は驚いたように早紀のほうを振り向いた。


彼女は無邪気な笑顔を浮かべ問題のゴスロリ少女ともえに手を差し伸べていた。


 そんな早紀の行動にともえは不気味なほど静かな対応だった。


ぴたっと黙り込んだまま彼女の手をジーっと見つめることしばし、やっと溶かしたように心を開くのに大分の時間がかかったような気が悠輔にはした。


「うん、いいよ!」


 まるでとってつけたかのような笑顔をともえは浮かべ早紀の手をぎゅっと握った。


 それに対し、深読みをまったくしない早紀は嬉しそうな微笑を浮かべた。


「じゃあ、携帯のアドレス交換しようよ!」


「いいよー」


 そう言いながら女子たちはお互いの携帯電話を出し赤外線通信を始めだした。


 悠輔はそれを遠巻きでじーっと見つめながら眉間にしわを寄せ深いため息をついた。


 いくら同じ大学の同級生だからとは言っても、こんな得体の知れない女と早紀が知り合いになるなんて──


 そう思うと悠輔はどうしても心の中に一端の不安を感じざるを得なかった。


 それがどういう理由なのかはわからない。ただ一つの理由は──仁科ともえと名乗ったこの少女の素性がさすがの悠輔にも完璧に見通すことが出来ないことなのだろう。


 第一、どうしてこの女は僕の顔と名前を知ってるんだ? こっちにはまったく記憶がないっていうのに──


「あーっ!もうこんな時間じゃん!」


 携帯電話をいじりながら仁科ともえはフロア中に響くような大声で叫んだ。


「ごっめーん! 今日、あたしこれからバイトなんだー!」


「そうなの?」


「もっと悠輔と早紀ちゃんと話ししたいんだけどさぁ……今日は時間がなくて」


「ううん、いいのいいの! バイトのほうが大事じゃん」


 ともえのその言葉に早紀は何の邪念もなくニコニコと受け止める。


 だが隣の悠輔はどうしても解せない気分でいっぱいになっていた。


 初体面に近いって言うのに、この女はどこまでなれなれしいんだ。僕なんてどうしてか呼び捨てだし……


「あたし、アキバでメイドやってるんだ! そう、この名刺あげるね☆」


 そういうとともえは頼んでもないのに悠輔と早紀にいそいそと名刺を配った


 ──メイド喫茶ぶるーむ 秋葉原店 ともえ☆……か


 フリフリの黒レースをあしらった派手な名刺を見ながら悠輔は深いため息を付いた。


 彼女が只者であろうがなかろうが、絶対に仲良くなりたくないタイプの人間なのは間違いない。


 できれば今回限りで会い見えるのは勘弁してほしい──悠輔は心の中からそう思っていた


「じゃあ、ばいばーい──」


 彼女は高く大きな声で二人に大きく手を振りながら立ち去ろうとしたそのときだった。


 それはその場にいた早紀や電器屋の店員に決して聞き取れられないだろう小さく潜んだ声で彼女は悠輔だけにある言葉を残したのだ。


「悠輔、眼鏡はずしていた方が絶対かっこいいよ」


「──!!


 その言葉に悠輔は思わず立ち去る彼女を振り返った。


 だがいつの間にかあの目立つゴスロリ姿は煙のように消えてなくなっていた。


「──どうしたの?悠輔……」


 そんな悠輔の様子を早紀は不安げに上目遣いに見上げた。


 彼は身も凍るような鋭い瞳である一点をじっと睨み付けていた。まるで先ほどの少女を必死で探すかのような視線で──


「いや……なんでもない」


 早紀の声を聞いて悠輔は視線を落とし深いため息をついた。


その顔は幾分か蒼白になっているようだった


「本当にどうかしたの? 顔青いよ……」


「──別に」


 そう言うと悠輔はもう一つ深く息を吐くと、どこに向かうでもなく歩みだした。


「ちょっとトイレ行ってくる」


「うん……」


 そんな彼に困惑しながらも早紀は深く頷いた。


「テレビだけど──もう君が選んじゃっていいよ。まかせる」


 悠輔は力なさげにそう言い残すとまるで幻鬼のごとくおぼろげな足取りでテレビコーナーから離れていった。


 悠輔、眼鏡はずしていた方がかっこいいよ──


 あの少女が最後に残したその言葉。その言葉は悠輔の胸を大きく動揺させていた。


 何を目的にそれを言い放ったのか。それはまだわからないけど、唯一つわかること──彼女が見ていた自分は眼鏡の下の顔だったということ。


 彼女は何者だ? 何故僕を知っているんだ? そして、何の目的で僕の前に現れたんだ──?


 その疑問が晴れる時はもしかしたら彼女と敵同士で対峙した時になるのだろうか……


 それを思うと悠輔の瞳は赤く不気味に光った。

 


2 帰り道

「本当に信じられない!」


 秋葉原からの帰り道、同行してくれた早紀の態度は対応に困るほど不機嫌そのものだった。


「テレビのこと一言まかせるってどういうことよ! それでトイレからすぐ帰ってきてくれれば話は別だけど──それから三十分一体何してたのよ!」


「何って──ちょっと迷子になっただけじゃないか」


「いいえ! 嘘よ嘘! 迷子になるなんて子供じゃないんだから!」


「と言ってもあの店すごく広いじゃん……」


「そう言うことを言ってるんじゃないの! 私はあなたの無責任さを怒ってるの!」


「無責任ねえ……」


 悠輔はその一言に困ったように頭をかいた。


 無理もない。仁科ともえの一件で悠輔の頭の中からテレビなんて飛んでなくなってしまったのだ。


 そうとは知らない早紀はあれ以降もずっとテレビの下調べをしていたらしく、戻ってきたときはちょうど悠輔の契約待ちの状態だったのだ。


 だが、悠輔にもはやテレビなど買う気などないわけで、そこでまたしても早紀とのいざこざが巻き起こってしまったわけなのだ。


「とにかく! 今度から大切な買い物にはもっと本気になってよね! 悠輔どこか抜けてていつも自分は関係ないって顔するんだもん……それが腹が立って仕方ないわ」


 そう言うと早紀は怒ったように腕を組みぷいとあさっての方向を向いた


 だが悠輔には早紀がどうして怒っているのかさっぱりわからないのが本音であった。


最近の女の子って奴はそんな些細なことで怒るのか。それとも早紀がただ特殊なだけなのか──悠輔にはまったく見当が付かなかった。


「ホントにもう……秋葉原まで来たのに無駄足になっちゃったじゃない」


「──そうかな?」


「え?」


 その言葉に早紀は悠輔のほうを振り返った。彼は口元には含み笑いを浮かんでいた。


「僕にとっては若干の収穫があったと思うけど?」


「ふうん……」


 そう言うと早紀は不機嫌そうに一つため息をついた。


 それから彼女は先ほどの怒りを押しこらえるかのようにぴたっと沈黙し始めた。


 やはり、彼女も薄々感づいているのだろうか。自分があのゴスロリ少女と対面してから様子がおかしいってことに──


 でも感づいているとしてもそれは所詮女の勘。悠輔とともえの裏の顔なんてさすがの早紀にも想像もできるはずがない。


 とはいえ──このまま早紀と不機嫌なまま別れるのもどこか忍びないと悠輔は思っていた。


 自分は恋愛上手ではないことはわかっている。それ故に早紀の一挙手一等足に冷や冷やしてしまう自分がいるのだ。


「ねえ……早紀」


 悠輔のその言葉に早紀はじろっと彼の方を振り返った。


 そんな彼女を安心させるかのように悠輔は輝くような笑顔を浮かべ言った。


「こんどさあ、僕の大学で学園祭があるみたいなんだ」


「ええ、知ってるわよ。東都大学の若葉祭って結構有名だし」


 ──そうなんだ。


 早紀のその言葉を聞いて悠輔は少しだけ感心してしまった。


 よくは知らないけれど、東京一の有名校だから学園祭も有名なのだろう。


「それでさあ、僕──君を案内したいんだ。うちの学校の学園祭をさあ」


「え……」


 その一言を聞いて早紀の足がぴたっと止まった。


 そしてもう一度悠輔のほうを振り向くと、先ほどの不機嫌そうな顔はどこへやら……眩いような笑顔を浮かべて彼に顔を寄せた。


「それ、本当!?


「……うん」


 それを聞いて早紀は急に態度を変えてはしゃぎだし始めた。


「わぁー! 私、悠輔の口からその言葉が出るの待ってたんだ~。一度でいいから若葉祭に行ってみたかったんだけど、さすがに一人で東都大っていうのもね……気が引けるって言うかなんていうか……だから悠輔が誘ってくれるのずーっ待ってたんだよ!」


 なんなんだよ。一体──早紀のその態度の変化に悠輔は思わず戸惑いを見せてしまった。


 女って奴はみんなこうなのか? 自分の好みのことを言ってくれればころっと態度を変えてしまうのが普通なのか? そう思うと悠輔は少しだけ女性不審になりそうになった。


「まあ、そういうことだから……今度の日曜日予定空けててね」


「うん! まかせといて!」


 早紀はそういうと悠輔の腕をぎゅっと掴んで彼の身体に身を寄せた。


 それを見て悠輔は顔を赤くしながら困ったように顔を掻いた。


 まるで猫みたいな気分屋の彼女に振り回されてる──そうは思ってはいるものの、そこが愛しいと思う自分もいる。


 まったく、恋ってやつは──そう思いながらも悠輔は恥ずかしながら早紀の肩に手を触れた。