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土曜日の各駅停車ゆるゆると詩歌読みつつ職場に向かふ

仕事とはものつくることの喜びぞ流れ流されるな「秀才」の君

計数と格闘をせし一日よネクタイゆるめ終電にあり

酔ひ酔ひて電車に眠り呆け果てて鞄無くせり夏の夜口惜し

永田町立ち寄る癖がつきにけり動く歩道をトイレに向かふ

喧騒の毎日を生き酒飲みて酔ひのただなか静寂を見き



ふた世代隔たる男女と酒を飲み仕事論ぶつ神田駅裏

スナックにフィリピーナあり英会話練習をして夜は更けにけり

酒飲んでひとりになれば句集読む昔はひどく酔ひ潰れたり

君と逢ふただそれだけの初夏の風苦き酒酌み居酒屋にあり

渇かざる心を抱きて生きたかりなにごともなくなにごともあり




手帳繰り一日の予定確かむる白紙の生を文字が埋めゆく

一度見れば忘れ得ぬ顔善き顔と醜男われに客が言ふなり

モザイクのやうな言葉をつらねつつ接客商売けふ暮れにけり

人を責め自分をいぢめなんになるなんにもならぬあかあかと月

生きるてふむつかしきこと俺には出来ぬただひたすらに酒を飲むなり




からつぽの腹を抱へて胃カメラを飲み込みに行く地下鉄に乗り

六時間眠れば覚める我が仕掛け検査入院夜明け待ちをり

二リットル下剤を飲まされアヌスより水ほとばしり腸空となる

なだらかにつづく坂なり飽かずしてのぼりて行かむアヂサヰの花




二十年資本に仕え覚えたり全ては仕事全ては遊び

企業とて所詮は個人の積み重ね諦めるなよ○本○雄

私とは私にあらず私なり利潤と組織の原理を超えて

歌を詠む気力はあらず二週間トラブル火達磨手も足も出ず





世間とは俺の学校 炎天を汗を拭き拭き中年は行く

通勤者を記号の列と呼ぶ詩あり記号の中に我の個もあり

きつかりし昔の部長今は老いにこやかに笑みモーツアルトを語る

庭に出て出勤前のひとときを煙草吸ひつつ草花眺む





権力と権威・強制嫌ひなり努力もせずにまた夏が来る

スカーフが素敵ですねと事務職を褒めて職場の一日を始む

会議して時にみんなが笑へども笑はぬ吾を不思議に思ふ

飛行機の片隅の席もの思ひ本も読まずにジャズを聴いてる

甘き蜜外に求めて飛び出せば苦き米食み蟄居となれり




穏やかなニヒリストあり絶望も希望も持たず悦楽に生く

わが眉に一本の白毛見つけたり悲しき器ししむらの老ゆ

Munchenに陰の白毛を切り棄てし茂吉の齢を過ぎにけらしも

生え際の薄くなりたる額見て手を洗ひ居り駅のトイレに




ドミンゴのどこか下卑たる顔を見て女蕩らしと妻が云ふなり

気は長く心は円く腹立てず暮らすが秘訣長生きといふ

我が歌に心感ずと云はれたり仕事の合間雑談の折り

ぬるき湯にじつくり浸かる快楽は子宮の記憶眠れる胎児

生き急ぐ歳にはあらず通勤の各駅停車哲学史読む





やはらかな陽射しを浴びて冬の日の無人公園噴水あがる

春たけて女系家族の饒舌の絶ゆることなし一日は暮れぬ

銭出してホタル鑑賞するといふ不思議な国の都会のホテル

花眺めのんびりバスを待つ時間春の風邪ゆゑ早退けをして

白線にスモーカー五人囲はれて五つの紫煙ホームにあがる





通信で哲学語るサロンあり時空を超ゆる会話は楽し

気の利いたことを書き込み満足す深夜の孤独パソコン通信

パソコンの雑誌読み居る青年はすこし肥満でやさしき眼をす

十三夜月は傾き星うすれパソコンいじる中年ひとり

八戸にタクシー乗れば惇といふ男名前の美人でありき
  




一匹の男でありたし藤棚に無数の花が強き香放つ

「タイタニック」千八百円の入場料取り返さむと闇に泣きたり

店員をスタッフと書き募集せる貼り紙ありて店繁盛す

おのずから涼しさ溢るる秋あした満ち足りというは日常にあり





たひらかに生きる楽しみ直帰して夕刊見つつビールを飲めば

一缶のビールの味を確かめて飲み居るわれに救ひはありや

朝日見て左にすこし傾けて日経を読む毎日の朝

眠るにも体力が要る 夜半に覚め寝床の中で我が身さびしむ

白菜のうまくなりぬる季節ぞと鱈鍋煮つつ妻に教はる





肌寒き雨の日曜こもりゐて「春の祭典」聴きつつ眠る

大つごもりの蕎麦を食みつつわが妻と世間話でこの年を越す

人嫌ひ人を求めて人に逢ふサヨナラだけが人生なのに

A型の妻と旅してこまごまとチェックをされて飛行機に乗る




滴より生れて雫に還らむかひとつのいのち死なしめにけり

君に送る言葉は持たず我が罪を封印すれば人生は過ぐ

冬の日の家にこもれる日溜りにやはらかな風わが胸を刺せ





三日月が寂しく笑ふ星の夜はお前を抱いて眠らむかいざ

少年のごとき眼よ壇上に岡井隆は微笑みてあり

あまたの思想、イズムの滅びても人は生く平成のいまわれ人を恋ふ

秋の野に曼珠沙華揺る極楽は地上にありと仏陀が笑ふ




憂鬱がときに来たるはわが病ひ生の証しと納得すべし

失礼と軽く会釈を投げかけておさらばしたき人生の午後

深く息つきつつ思ふ生き居れば呼吸でさへも快楽なりと





あの頃は天を貫く肉欲の獣でありきジョン・レノン聴く

生といふ拷問ありて生きるてふ快楽もあり五月雨の降る

おまえとはいつかどこかで決着をつけねばならぬわが内のエゴ

生きてゐることに嫌気のさしたれど百日紅咲き秋の虫鳴く




だからあんた出世はできぬと細君が俺の軽率たしなめて言ふ

諍ひの後の厨はほの暗く葱をきざみて夜食をつくる

諍ひてひとり洋画を深夜観るマーロン・ブランドああ老いにけり

我が妻の何に目覚めし朝かな五十の手習ひ新聞を読む

わが思ひ母に届けと意地張りて口論の果て煙草を断てり
 




リストラの風は冷たしこの宵は二合の酒に酔ひて眠らむ

この顔が嫌になるほど街角に貼られてをりぬ都議選近し

ニュータウン老いゆく街となるらむか廃校跡地に雪は降り積む






天気良き日は横山に上り来て富士の白雪眺めて下り来

これ以上何を望まむ日帰りの温泉に入りビールを飲めば

星は自力月は他力で光りをり他力本願の吾は月なるか







漫才師創価学会共産党よくぞ選べリ浪花の民は

いつまでも戦後でありたし戦ひを始める前は戦前といふ

歌詠めぬへぼアマ歌人ただの人哲学持たず晩飯を食ふ





株始め歌よみがえる面白さ人生の後場ジリ安でよし

アメリカの労働統計発表で下げる株なり属国日本




失ひしもの少なくて得しものの多しと思ふ冬の夜明けに

欲張りはもう止めました健やかにあれば嬉しと神仏に謝す

先物の心の傷は深けれど三月もすれば治癒する我よ

上海を出でて欧州ニューヨーク地球は丸い株価は下がる




わが歌の泉は涸れて凡作をころがし遊ぶ夏の夕暮れ

ウエストが締まれば目立つ贅肉が削いでくれよと泣き顔をする

週三日プールに通ふ日々続く根性なけれど根気はあるぞ

下品さは自づと現るプールにて嫌な女と今日も会ひにけり





言語フェチ季語に添ひ寝の俳句して脳すこやかに死にてゆきたし

詩の女神我が枕辺に来てのたまふは歌は詠むもの句はひねるべし

しようもなき俳句なれどもこれだけが俺の取り柄とさめざめひねる

短歌脳哲学脳に俳句脳能なしなれど脳三個あり





俳句とは季語の注釈歳時記をひねもすのたり眺めてゐたり

死ぬまでにいつかひねらむ名句をと駄句を毎日ブログに載せる

生涯に詩のごときもの一つ二つ生るれば嬉し坂道を行く

悦に入るひとりよがりの冬蝶の句歌の世界に遊ばむか我





オヤジよりチョイ悪オヤジと呼ばれたしどちらも同じくクソが付けども

美醜にて判断するなと思へども美人のピアノ美麗に聞こゆ

モーツァルトおちょくるグールド面白くやがて愛しきピアノが響く

ユニクロにチラシを持ちて買ひに来るオジサンのありクリスマスセール

売上げにクリスマスソング貢献はいかほどなりやデパート散歩

他家の子が俺を呼ぶなりジイジイと俺は他人じゃセミでもないぞ





所有するなにものもなく愛恋の憶ひは持たず過ぎゆくは秋

たとふれば君は野の百合吾は牡鹿太古にあらばただ戯れむ

愛といふ不可思議なもの胸に抱き喧騒の街今日も歩めり

海見れば遠き記憶の甦る遺伝子の神生命の連鎖





エロスより出でてエロスに環り来む意味を求めてめぐりし後に

人生って月に憑かれしピエロかな輝く夜に星屑が降る

毎晩の酒を飲みつつ思ふなりいのちなりけり洒脱に生きむ





老いて行く我が人生の終末を些事と思はば神も微笑む

てつぺんは薄くもみ上げ白くなり我が人生の末路や如何に

人生は一期の夢よ夢ならば長生きをせむプールに泳ぐ





祖父の骨父母の骨拾ひしは仕合せなりと南無阿弥陀仏

われら皆生の旅人浮世をば談笑しつつ死へへと歩む

死にもせず痴呆にもならずたまきはるいのち尽くさむ神の召すまま

会社をば早期退職したからはその分長生きするが義務なり

気晴らしのネタは幸ひ恵まれてすこやかに生け天寿への道






グールドのバッハを聴けば神のごと宇宙に触るゝ快感の湧く

寅を観る哲学考ふ句をひねるこれに勝れる宝のありや

俳句好き相撲も好きで歌舞伎好きあゝ富士の山日本も愛す

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デカルトを昔読みしがつい癖で子を産む機械と言ひにけるかも

大企業ばかりが儲け新都心格差目に見ゆ泣けとごとくに

負け癖のつきしサヨクよここ一番憲法九条守らむかいざ 





「土曜日の短歌よけれど俳句なほ味はひ深し」自讃の一首

駄句なれどつくれば人に読ませたき愚か心をいと愛しむなり

冥土へは句歌を土産に持ち行かん言葉に優る財のありや

ワイン飲み娘相手にゴキゲンなオヤジありけり湯本の富士屋

行きつけの日帰り温泉俳句詠む枝垂れ梅見て裸で立ちて




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やはらかな関西弁で話し居る河野裕子のテレビ歌壇見つ





デジカメを買はむと思ひネットにてクリックつづけ肩凝りにけり

相場張り俳句をひねり写真撮る極楽鳥のデジタルライフ

春の山のぼりて町を見下ろして慣れぬカメラのシャッターを切る

デジカメと俳句のおかげ雛罌粟をポピーのことと覚えけるかも





早咲きの桜見つける散歩道カメラ始めて眼の変化せり

花マップ脳につくりて町を行く終ひの住処となりたる町を

生まれ来しからにはせめて花の名を覚えて逝かん春たける頃

木瓜守る獅子の居りたり健さんの唐獅子牡丹観し日々遠く




新聞の会社人事に名前読む同期の二人昇進したり

仕事出来ず会社にも居られず退職し残る人生いのちに励む    

存分に生きて来られし人生の余白の行に書くこともなし





反帝の旗を掲げてアメリカの顔色見つつ相場張るなり

猫の目のアメリカ追随上げ下げで肩の凝るなりスイング博打


奥付



歌集「土曜日の各駅停車」


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著者 : doyoubidayo
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/doyoubidayo/profile


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