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満たされぬ者へ永遠の福音を

 満たされぬ者へ永遠の福音を・・・。
 満たされぬ者へ永遠の福音を・・・。
 満たされぬ者へ永遠の福音を・・・。
 世界は閉ざされた。
 それは繊細な世界だった。
 疑えば消えてしまう脆い世界。
 だけど、掛け買いのない僕の世界。
 ただ失うのが怖かった。
 こんな世界でも、失うのが怖かった。
 だけど、失うことを恐れすぎて、全てを失った。
 僕はまだ覚えているか、あの少女を。
 いつも傍らにいたはずだ。
 思い出せるか、僕自身の形を。
 僕があるべき形を見失っているはずだ。
 ・・・あの頃、たしかに僕はそこにいた。
 僕がそこにいるのがあたり前だと思っていた。
 でも、それは違った。
 彼女がいたからだ。
 彼女が支えていてくれたから、僕はちっぽけな僕の形を維持することができたんだ。
 こんなにも愛しくて、こんなにも愛されていたのに、僕は何一つ信じることが出来なかった。
 信じれば裏切られる。
 何時からか心に刻んだ不安に耐えることが出来なかった。
 自分の心の闇にとらわれて、自分自身を追い詰めていった。
 もう、誰も信じられない。
 僕は自ら世界の閉鎖を願った。
 焦がれる気持ちが全てを壊す。
 そして、僕は君を失った。
 厚い雲で覆われた空は閉ざされた僕の気持ちのようで、冷たい風は空虚となった僕の心を吹き抜ける。
 きっと、あの雲の上は太陽が輝いているのだろう。
 何億年の時を越えて輝き続ける光。
 ちっぽけな僕はほんの一瞬の暗がりでさえ、大きなものに思えてしまう。
 たった一度、たった一度でいい。
 もう一度だけ、奇跡を見たい。
 だから・・・。
 満たされぬ者へ永遠の福音を・・・。
 僕は閉ざされし世界の世界の悲しみを天に唄った。
 まるで天使の歌声のような幻想的な調べが僕を祝福する。
 とても懐かしい音だ。
 厚い雲を突き抜け黄金の光が射すと、光に包まれ僕の身体は還っていった。
 僕が僕として生まれる前、母親の胎内へと。
 そこは心地よい空間だった。
 優しく力強い鼓動が僕を抱く。
 ここにいれば傷つくことも、失うこともない。
 だけど、僕は会いたいんだ。
 傷つき、傷ついても良い。
 ぼろぼろになっても、それでも会いたいんだ。
 だから、僕は産まれてきたんだ。
 全てを失ってもなお、僕は生きているんだ。
 いや、何も失ってはいなかったんだ。
 僕は君に何かを与えられて、今もなお生き続けているんだ。
 そうだったんだ。
 そう、僕は何も失ってはいない。
 遙かな夢の終焉、闇の終わり、光の中で僕は彼女の姿を見た。
 違う世界、違う人生。
 僕と彼女はもう違う人間で、何時からかすれ違い互い、それぞれの道を歩んできたけども、僕と君が生きたあの世界の続きに今があるのだから、後悔してはいけない。
 触れるか触れないか、刹那の口づけ。
 触れれば消えてしまう幻を抱きしめる。
 僕の世界は再びまわり出す。
 目に見える事だけが現実じゃない。
 望みさえすれば世界は幾らでも変わる。
 何を望む・・・?
 共に過ごした記憶を胸に、僕と君が今も生き続けていればそれで良い。
 今も僕は僕、君は君として生き続けているのだから。

あとがき

まだ学生時代であった1999年に書き始めた作品です。

自分が子供から大人へと移り変わっていく時期の作品であり、出会いや別れと言った現実での葛藤に苛まれた為に第二章を書き出すまでの間にかなりの時間を要し、それに伴って考え方も大幅に変わって行ったので内容にまとまりがありませんが、青春のケジメとして最後まで書きあげたものです。

学校や近所と言う限りなく狭い環境の中で、恋愛や性愛というものが身近に存在し、女の子と触れ合ったぐらいでセカイをその手にしたかのような幻想を抱き、やがては現実に押しつぶされて自滅して行くという、思春期ならではの世界感を若い感受性で描いていると思います。

現在書いているSoma x Somaの原型とも言える作品で、竜斗や大河、夕鶴、宝塚、聖蘭と言ったキャラクターも今とは違う形で登場します。逆にこの作品には名前すら登場しないSoma x Somaの登場人物代表は姫であり、彼女はこの作品が描かれた1999年から現在に至るまでの自分自身を象徴しているのかも知れません。ある意味でSoma x Somaと言う作品は、永久に閉ざされた青春時代から違う時間軸を生きる姫と言う人物が卒業する様子を描いていると言えます。

真の意味で未来へと進んでいくには自分の過去を受け入れる必要があると思い、一太郎で製作しMOディスクに長期保存されていたこの作品の封印を解き放つことにしました。

しかし、車の描写だけは車に乗ったことが無い若者が想像だけで書いている嘘八百感が丸出しで、車好きとしては擁護できる次元ではありませんね(汗


奥付



竜斗の世界


http://p.booklog.jp/book/56849


著者 : ゆうすけ
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/yusuke-e256/profile


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