目次
坂本竜馬の言説(18)
現代の日本人よ(18)
京の暴走と江戸の危惧
― その1 ―  京から逃げ出す諸侯達
― その2 ―  石清水行幸の危機
大坂湾警備問題
― その1 ―  竜馬、和歌山へ
― その2 ―  海軍繰練所計画
土佐勤王党を睨む瞳
― その1 ―  容堂の怒り
― その2 ―  瑞山、覚悟の帰国
攘夷戦争から逃げる徳川幕府
― その1 ―  石清水行幸の失敗
― その2 ―  春嶽・小楠の防衛策
浪士の暴走
― その1 ―  膨らむ浪士組への期待
― その2 ―  横浜焼き討ち計画
― その3 ―  浪士組を潰せ
― その4 ―  清河八郎の死と浪士組の分解
― その5 ―  壬生浪士の主導権争い
将軍家茂の大坂湾巡察
― その1 ―  攘夷期日確定
― その2 ―  厳格なる壬生浪士・近藤一派
― その3 ―  英明なる二十歳の将軍
― その4 ―  将軍様の背負うもの
― その5 ―  海軍操練所建設へ
対馬からやって来た征韓論
― その1 ―  アジア外交の必要性
― その2 ―  我等の敵は西洋だ
攘夷決戦目前のせめぎ合い
― その1 ―  江戸幕閣対慶喜
― その2 ―  光明寺党と中山忠光
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現代の日本人よ(18)

 「カンパニーが逃げ出す、・・・つまり企業が日本を出て行くっちゅう事はどういう意味があるのか分かっておるんじゃろうか。
 日本に見切りをつけた。
 日本国内にこだわっておったらやっていけん、だから日本を捨てて行く、っちゅう事じゃ。
 それで良いのか。
 正しい考えなのか。

 それが国の方針じゃとぉ!
 何がグローバル化じゃ。
 海外の食い物にされた言い訳じゃ!
 西洋に組み込まれて、利用されちゅうだけぜよ。

 ドンドン日本の美徳が失われてしまいゆう。
 日本の子供達が壊れていきゆう。
 大人の世界の生き写しじゃ。

 ・・・自国を愛さんといかん。もっともっと愛さんといかんぜよ。己よりも国をおもわんと。
 吉田松陰ちゅう偉い先生は言うちょった、私よりも公は優先するとな。
 今の日本人はそれを捨てた。捨てさせられ、子供たちにそれを継承する事を禁止されたんじゃ。あの明治維新と太平洋戦争のはいぼくで。
 西洋の価値観の中に組み込まれ、それが正しいと教育されちゅうがよ。
 ・・・金ばかりを追い掛けちょったらあかん。もっと大切なものや美しいものが日本にあったろう。
 利益ばかりを追う企業に魅力はないぜよ!
 日本を愛し、日本を復興させたいのなら、人に目を向けるべきじゃ。
 日本人の幸せ無くして日本の幸せ無し。
 日本の復興無しぜよ」


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― その1 ―  京から逃げ出す諸侯達

 「西洋人に神国日本の神聖を穢(けが)されてなるものか」
 朝廷を牛耳っている長州藩ら尊王攘夷派は、徳川幕府に対して開国へとひた走る事に待ったをかけた。

 「異国人の思い通りにされるなど我慢ならん、奴等の蹄でこの日本の国土を踏みつけられるだけでも汚らわしいというのに」

 その思いは天皇も同感であろう。
 しかし、そんな長州藩の思いが、次第次第に孝明天皇のから懸け離れていくのもまた事実だった。
 そもそも最初に攘夷を望んだのは孝明天皇であるはずなのに、今、天皇は徳川家との縁を切るつもりなど毛頭ない。ただ公武合体によって京の警護が強固になる事を願っているのだ。

 「異国人が京に攻め込んで来たならばどうなる、当然、徳川家の力が必要になる」

 と怯えにも似た考えを抱いているのだ。
 だが、権力を嫌う志士達は違う。純粋に日本の国体を守る事に命を懸けようと決意し、その妨げとなるなら幕府とも戦うというところまで意識を高めている。
 「徳川の存続を図るための公武合体など認めん!」
 と幕臣に天誅を下し、幕府を苦しめる。・・・安政の大獄の仕返しだ。
 そして長州を中心とした志士が朝廷を操り、日本国を一直線に攘夷へと突き進めようとしているのである。征夷大将軍・徳川家茂を京に呼びつけて攘夷を約束させよう、それを天下に見せ付けよう、としているのだ。徳川家を窮地に追い込み、行く行くは倒幕すら抱いている。
 けれど天皇の本心は、徳川家の戦力を中心にした強固な日本なのだ。

 ・・・志士が力を持った。
 ・・・けれど天皇と志士の間には決定的な溝がある。

 ・・・そしてそれによって幕府が振り回されている。

 それが現状なのだ。

 「混乱している、・・・このまま行けば日本国はどうなる・・・」

 孝明天皇は神国の将来に不安を抱いた。

 

 そこで打開策を模索した。そして志士にも長州にも幕府にも睨みを効かせられる大藩・薩摩藩の島津久光に上洛を求める事にしたのである。財力も兵力も認めている薩摩が京に動けば、事態は変わるはずだ。・・・久光は京の警護を約束してくれている。天皇はそこに縋った。
 久光はその要請に応え、新鋭蒸気式大型戦艦で来坂。京に上って来た。
 そして攘夷派が牛耳っている朝廷に注文をつけたのである。
 「安易な攘夷決議をするな!」
 ・・・背後で操っているのは長州藩であろう。
 久光にはそれが解っているのだ。
 「これまで通りに徳川家に大政を委任せよ! 安易に異国を拒絶するな、尊王攘夷派公卿が牛耳る国事御用掛は廃止せよ」
 などと次々に建議する。
 しかし朝廷はそれらを受け入れようとはしなかった。
 「長州め!」
 朝廷の背後から長州が操っている事を久光は知っている。そして臍(へそ)を曲げ、そのまま大型戦艦で鹿児島へと帰ってしまったのである。

 「久光は京を見捨てたのか・・・」
 ・・・天皇は不安を覚えた。
 
 一方、政事総裁を辞任した・松平春嶽は独自の動きをしていた。

 薩摩ら有志雄藩に幕府、朝廷を加えた連合体制を目指して行動を起こそうと考えていたのである。
 だが幕府の将軍後見職・一橋慶喜は、京を武力制圧すべきだと考えており、春嶽とは確執がある。それが政事総裁辞職の原因なのだ。穏健派の春嶽と過激派の慶喜という両巨頭は意見の一致を見る事が出来ず、互いの間の溝はもう塞ぐことが出来ないところまで来ていた。そして遂には、
 「朝廷と幕府からそれぞれに異なる命令が出るようになって世の中は混乱している。もう私に責任が持てる状況ではない」
 という理由で、松平春嶽は辞職願を提出し、京を離れ福井へと帰ってしまったのである。
  
 島津久光が京を見限り、松平春嶽も去った。更に雄藩諸侯が次々と京から逃げ出し、前土佐藩主山内容堂、前宇和島藩主伊達宗城も退京してしまった。
 朝廷内では前関白が辞職し、公卿・中山忠光が出奔。
 京はいよいよ混迷の度を深めていく。

 もう、京に残った将軍は四面楚歌だった。


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竜馬外伝i-33 征韓論の芽生え


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著者 : 中祭邦乙
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