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岡本大輔とは何者なのか?

 このたびは「これから活躍する介護職の心得」をお読みいただき誠にありがとうございます。
 あなたの貴重な時間をいただくことができて光栄です。本書を読み始める前に著者である岡本大輔とはどのような人物で、どのような活動をしているのか、なぜ、電子書籍を作ろうと思ったのか、などを伝えたいと思います。
 僕は介護保険が始まった2000年、北海道にある北翔大学(当時は北海道浅井学園大学)の人間福祉学部介護福祉学科に入学しました。僕は将来介護をしようと思い福祉の大学を選びました。
 僕が介護を選んだきっかけ単純です。「高齢者の生活を守りたい」など誇れるようなきっかけではなく、ただ高校卒業して就職したくないから進学情報誌をパラパラめくっていたときにたまたま目に付いたのが当時の北海道浅井学園大学が男女共学となるというページでした。
 僕はその前に母に進学したいことを告げていました。何をしたいのか自分でもよくわからない僕は母に言いました。
「経済学部に行きたい」
すると、母は僕に尋ねました。
「行くのはいいけど、そこで何を学びたいの? 将来何をしたいの?」
 僕は言葉に詰まりました。それから数日後のことでした。
「俺は将来介護をやりたいからこの学校に行きたい。」
 介護の学校に行けば、将来は介護で働くということになる。つまり、進学する理由が生まれる。それが介護を選んだきっかけでした。
 2004年、卒業して働き始めてから僕の意識の甘さが一気に現れました。僕はパートで働き始めました。当時の施設長が面接の時に言いました。
「まずはパートで入社して、次の年に準職員、次の年に正職員となればいい」
 僕はその言葉を鵜呑みにしました。僕のために階段は用意されていると勘違いをしました。翌年、その施設長は諸事情で退職し、新しい施設長が来ました。新しい施設長は僕に言いました。
「前の施設長のときにどのような約束をしていたのか私は聴いていないから」
 僕は準職員になる予定だった二年目もパートで働くことになりました。給料の安さとサービス残業の多さ(当時は多いと思っていた)にうんざりし、たった1年3ヶ月で介護を辞めました。
 僕は退職後すぐに本州に行き、派遣社員として工場で働き始めました。お金をある程度稼ぎ9ヶ月で北海道に戻り、障がい者関係の施設を経て現在のデイサービスで働くようになりました。
 介護の学校に入学してから28歳まで僕は自分の人生が不幸だと思いました。うまく行かない人生、給料が安くてやりたいことができないのはすべて国のせい、会社のせい、社長のせい、自分以外の誰かのせいにしていました。
そんな状態で働いていたので介護の仕事が楽しいと思ったことはありませんし、僕と一緒に働いていた人も楽しくなかったと思います。

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岡本大輔が変わったきっかけ。

 そんな甘ったれていた僕の意識を変えるきっかけとなることがありました。中小企業家同友会の第四一期中堅幹部学校への入学でした。僕の勤めているデイサービスはNPOで運営しており、もともと異業種から介護業界に参入した会社でした。
 普通の社会福祉法人の施設であれば、この研修に参加することはなかったと思います。
 僕は幹部学校に参加したことで異業種の仕事の大変さを知ったのです。僕と同じグループの人は介護以外で働いている人ばかりで、
締切間近になればいつも会社に泊まりこみでソファーで寝ている人、朝七時から夜九時までびっちり働いても仕事が終わらない人、月〜土まで朝八時から一一時まで働いていて日曜日しかまともに休めない人、業種は様々ですが、給料が安い、待遇が悪いと言われる介護業界に負けず劣らず大変な就労環境働いている人たちを目の当たりにしたのです。
 僕は介護業界が悪い、国のやり方が悪いから介護施設は仕事が大変で給料が安いのだと思っていたけど、どの業界も状態は変わらないんだと知ったのです。そのとき、感じたのです。今までの人生がうまくいかなかったのは”僕が全力を尽くさなかったから”だと。
 そして、心に決めたのです。これからは今の自分の人生を他人のせいにしないで、自分のせいだと思って、自分が行動して改
善しようと。幹部学校を卒業して、僕はとある雑誌の”朝活特集”を読みました。できるビジネスパーソンは朝に強い。名経営者と呼ばれる松下幸之助、本田宗一郎など結果を残した人たちの共通点は朝に強いこと・・・つまり早起きだということ。
 僕はその当時、七時までギリギリ眠っていた習慣を止めて六時起きるようにしました(現在は朝四時起きです)。
 同じ雑誌で”読書特集”をしていました。そこに書かれていたことで印象に残っていることがあります。読書をした人全員が成功したわけではないが、成功者は全員読書家だ。
 成功している人が早起きと読書をしているという共通点を見出したその日から早速行動を始めました。
 早起きをして、今まで定時出勤五分前の出勤だった僕は定時の一時間前に出勤し、事務所や風呂場、トイレなどの掃除をするようになりました。掃除をすることで考えるようになったのです。
そのとき僕は気づいたのです。今まで僕は仕事をしていてお客様を迎え入れる準備をまったくしていなかった。仲間に任せっぱなしだったと。僕は自分のことばかり考えていて、仲間のことを何も考えていなかったと。
 早起きと読書を習慣付けることでそれまでの二十八年間の僕とまるで違う人生を歩むようになりました。それまで年間一〇冊も読まなかった本も今では年間五〇〇冊を読むペースで読むようになりました。様々なジャンルの書籍を読む中で感じたことがありました。介護の本を読んでいても、何かワクワクするものがないし、啓発されるものがない。経営者の書籍を読み感銘を受けて行動に移すことはあっても、介護関係の書籍は学術論文的な事例検討だったり、法律のことなど堅い内容だったり、読んでいて”楽しい”と思えるものが少ないのです。


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出版しようと思ったのは?

 介護関係でワクワクするような書籍や読んでいて”楽しい”と思える書籍がないのなら、早起きして年間五〇〇冊を読み解いている僕が介護業界に特化した書籍を作ればいいんだ!と思いついたのです。僕は介護業界を良くするためには、国の政策や会社の運営方針、社長の頑張りなど他人任せにするのではなく、介護職一人一人の今まで以上の意識向上が急務だと感じています。
 施設長や経営者、官僚などが介護現場を良くしよう!!と声高に表明して意識を変えていくことも一つの方法だと僕は思います。
 しかし、もっと大切なのは現場職員の中から、介護現場は自分たちが働く場所なんだから、自分たちで改善しようよ!と行動できる人が求められていると感じています。
 介護の世界では”共助”という言葉があります。ぜひ、介護現場で働く人同士が”共助”を実践しながら現場を変えたいと僕は考えました。その中で一人一人の介護従事者が目の前のお客様の人生をより豊かにするにはどうすればよいのかを「追求」することができるようになれば幸いです。

 平成24年9月5日、秋風が吹く北海道十勝の自宅のパソコン前にて。
岡本大輔。


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「合格率が低いんです。」

「合格率が低いんです」
 社会福祉士国家試験(介護支援専門員)などを受験することを尋ねた時に、試験勉強をしたくない人や試験で何度も不合格になっている人の常套句の代表がこの言葉でしょう。
 もし合格率が〇%の試験があるとすれば、あなたが不合格になるのは仕方がありません。そうでしょう? 合格する人がいないのだから。
福祉業界では、社会福祉士国家試験、介護支援専門員実務研修受講試験、これらが合格率30%を切る難関と言われています。
 難関と呼ばれていますが、受験者の三〇%は合格しているのも事実です。それではなぜ不合格になるのでしょうか?
 試験を受けて不合格になる理由はたった2つしかありません。
1.試験に合格するに必要な点数が取れる学力がない。……つまり勉強が足りない。
2.試験当日に実力が発揮できない。……プレッシャーに負けてしまう。
 このほかにも願書を提出し忘れた人や試験当日や前日に風邪などで試験に受けられなかった場合があります。
 しかし受験をして不合格になるにはたった2つの理由しかありません。
 合格率が低いことは当てはまりますか? 当てはまらないのです。あなたが勉強していないからです。勉強したことを本番で発揮できていないからです。ただそれだけなのです。
 合格率が三〇%を切っていても、どんなに合格者が少なくても、毎年合格者がいるのがその証拠です。
 合格率の低さを前面に押し出して”己の努力の足りなさ”を棚に上げていてはいつまで経っても成果は出ません。

「『試験』なんてどうせ無理」
「『試験』なんてどうせ無理」
 前頁の言葉「合格率が低いんです」と並んで使われることが多い言葉を教えましょう。
「『試験』なんてどうせ無理」
 僕はこの言葉は最低の言葉だと思っています。
 今僕たちの目の前にいるお客様はどのような人たちでしょうか? 考えてみましょう。僕の場合ですと高齢者介護の現場になります。年を重ねて、身体も心もどっかこっかに痛みや不自由を持っています。それでも今を生きています。
 それに比べて僕たち介護職はどうでしょうか? 目の前のお客様より年齢は若いし、体力もあり、行動できます。
 目の前のお客様と比べてみれば好条件です。それにも関わらずです。試験勉強を始める前から諦めている福祉職がいるのは残念と思いませんか?
 僕自身、試験ではありませんが一つ思い出に残ることがあります。知的障害者更生施設での実習中にその施設の職員とこのような会話がありました。
「岡本君、お祭に使う絵を描いて欲しいんだけど」
「僕にはできないです」
 僕は絵が苦手です。中学校のときは美術が五段階で一でした。それくら苦手で嫌いです。上手に書く自信がなかったので行動することすら拒否しました。
 するとその職員は僕の言葉を聴いて真剣な表情で伝えました。
「岡本君。ここにいる人たち(施設利用者)はやりたくても心身の障がいがあってできない人たちなんだよ。それなのに、五体満足の岡本君がやる前から『できないです』はないでしょ」
 その当時の僕はその職員の言葉を聴いて腹を立てるだけでした。
「『上手に描けない』という意味合いだったのに……」と施設職員には言わずに心に秘めていました。福祉の仕事をしているクセに、言葉で伝えられない人たちを相手にしているのに、目の前の実習生の言葉の真意がわからないのか? とムカムカしていただけでした。
 しかし今にして思えばこの施設職員の話すことは最もだと思います。僕の知り合いの介護支援専門員(ケアマネジャー)は社会福祉士の試験を今年度も受けると話しています。
 その一方で吐き捨てるように言います。
「どうせ、受からないけど」
 どうせ受からないし努力する気がないのなら最初から受験しなければいいのです。やる気がないのにタダではない試験代を払い、試験会場に行くまでの移動費、移動時間(おそらく休日に行くでしょうから)を費やしてしまうのです。
 お金をドブに捨てるのとなんら変わりないと思いませんか?
 ましてや資格がなければ今の仕事が続けられないわけではないのです。
 僕自身3回社会福祉士の試験に落ちていた時は受験前から職場の同僚や上司に話していました。
「どうせ、無理ですよ」
「勉強してないですから」
 不合格が前提で当たり前のように話していました。
 あの当時の僕には、自分の言葉がどれだけ目の前のお客様やこれから福祉を目指す人たちに影響を与えるのか
考えたことがありませんでしたし、分かろうとすらしなかったのです。
 今にして気付いたことがあります。それは僕たちが仕事をする上で気をつけたいことは「諦めない
こと」だということです。
 あなたが、あなた自身のどうしても達成したい目標を設定する時に、あなた以外の人に頼むとします
 あなたは、自分の夢を諦めた人間にそのお願いができますか? 専門職と呼ばれるあなた自身が試験勉強”ごとき”をやる前から諦めてしまっては、目の前のお客様の目標設定し、目標実現のお手伝いができるでしょうか?
 試験を諦めた人間がどんな目標を実現させることができるのですか?
 
「お客様の目標設定をするためにあなた自身が試験合格という目標達成をしよう」


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「研修の参加費用は出るんですか?」

「研修の参加費用は出るんですか?」
 あなたが研修に参加する目的は何ですか? 給料をもらいたいからですか? 業務命令だからですか?
 あなたは、あなたが所属する会社があなたが勉強するために使うお金を負担するのは当たり前だと思っていませんか?
 あなたが勉強することやあなたが研修に行くことは、あなたが目の前のお客様に最高の介護を提供するために必要なことだと思います。
 あなたが最高の仕事をするために、あなたが今まで以上に向上するためにかかる費用は会社が負担するべきことでしょうか? 僕はあなた自身が負担して当然だと思いますがいかがでしょうか?
 僕自身はどうだったのかというと研修があるとなると真っ先に気になるのは「日程」です。その次に「費用」でした。移動にかかるお金はどのように負担されるのか? 泊まりの時は宿泊費はどうなるのか?
 研修の内容や何を学びたいか、そんなことより僕の手出しがあるのかないのかが気になって仕方なかったのです。
 以前の職場でのことです。一泊二日の研修の一日目の夜の懇親会の費用は自腹だと僕は言われました。僕は即答しました。
「だったら僕はその懇親会に出なくて結構です」
 当時の僕にはその懇親会に参加する意味が分からなかったし、なぜ手出ししてまで参加しなければならなかったのかが納得できなかったのです。
 そんな僕は当然のように仕事のできない人間でした。
 研修に参加するに当たり、どのようなことを学び、実践につなげるのか、を考えずに手出しのことばかり気にしていたのです。
 会社が研修費用を負担するのは、あなたが勉強したことを会社の利益につなげて欲しいからです。研修費用負担はそのための先行投資に過ぎません。研修費用の負担について考えているうちは、研修で何を学ぶのか、その学びを現場にどう役立てるのか、という大切なことが欠け落ちていることが多いと思います。
 あなたがもらおうとしている会社のお金は40歳以上の介護保険被保険者が払ってくれるお金から賄われています。ありがたいことに、40歳以上のこれから死ぬまでの間、介護を受けない人からもあなたの生活費は賄われています。
 ちょっと考えてみてください。
「見ず知らずの人間の勉強費用を賄え」
 あなたは払うことができますか?
 
「自分が学びたいことに自分のお金を使ってみよう」



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