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 きょうは「正しい採便」をいっしょに考えてみましょう。ひとくちに採便と申しましても、多くのかたにとって、それは1年に1回の行為であり、機会がめぐってきた時には、1年前の失敗や後悔は過去のものとなっています。ですから、この項の目的は、そうした事態を未然に防ぐこと、そうお考えいただいてよいかと思います。


 ではまず、配布されたものを確認してみましょうか。透明な棒状のいれ物があります。長さにしまして7センチほどでしょうか。フタとおぼしき部分を回して引きぬくと、採便スティックを兼ねているのがわかります。先端のぎざぎざは適量のうんこをこすりつける場所になります。リキッドタイプのファンデーションのフタの内側にスパチュラがついているケースが見受けられますが、その仕組みと同じです。

 同封された特殊な紙は、便器に浮かべて使います。そのまま流してよいというこの紙が開発されたのは、比較的近年のことではないでしょうか。この紙のおかげで最近は、多くのうんこが採便遅れによる水没をまぬがれるようになりました。


 さあ、紙を浮かべ、実際にうんこしてみましょう。浮かべたその時から採便が始まっていることを忘れてはいけません。油断は禁物です。




 さて、うんこの第一波が出ると、おそらくちょぼちょぼという感じでおしっこがでます。まれにでないというかたもいらっしゃるようですが、ここではでるのを前提に話を進めます。ポイントは第一波、その直後のおしっこです。後の作業を円滑にするためにも、これができるだけうんこにかからないよう気を配るのが大切になります。うんこの話をしているときに食べ物の話をするのもいかがなものかと思いますが、鍋に入れたイワシのつみれがしだいに固く締まっていくように、うんこも濡れると表面が固くなってしまうからです。

 もうおわかりでしょう。うんこが固いと適量の採取が非常に困難になります。仮に採れたとしても大きすぎる塊に。ひどいケースでは、いくらトライしても採れず、そうこうしているうちに台座である紙が水没を始め、結局のところ、うんこのとりこぼしという不幸な結果を招いたかたも報告されています。一日に何回も思いのままにうんこできるほど私たちホモ・サピエンスの体は進化していないのです。

 次は、採取のステップ。ここで多くの方が迷い続けてきたテーマが1つあります。どういう体勢がふさわしいか、です。座ったまま両ももの間にスティックを握った利き手を巧妙にいれるか、あるいは、大胆に一度立ちあがり、便器の前にしゃがみ、うんこと対面する形で作業にかかるか、です。後者をおすすめいたします。座ったままムリな体勢で作業を進めるより、お尻を軽くふいた万全の体勢で作業に臨むほうが集中力も増し、効率的です。


 ここまでやっておけば、もう後は簡単です。スティックを利き手にしっかりと持ち、もう片方の手にもったケースの挿入口の大きさ、幅を再度、目視確認しましょう。さらに、うんこの狙う部位を選びます。比較的、乾いている部分が狙う部位として適切です。適量の採取のためには一回で成功させること。集中力が大切です。肝心なのは、強すぎず、弱すぎず、力のほどでしょうか。

 無事、適量をスティックにこすりつけたら、あとはケースに入れ、カチッと音がするまでしっかりと回します。そして提出用のビニール袋に入れます。半透明の緑色です。このビニール袋には、それがあなたのうんこであることを証明するために名前記入欄が用意されています。できるだけ、最初に書いておくようにしたいものです。作業の後に名前を書くと、マジックのインクが作業中に付着したなんらかの水気によって反応し、にじんでしまうことがあるからです。クリニックでの提出時、思わぬ誤解をうけないためにも、最初に記名しておくのが肝心なのです。


 いかがでしたか? これで終わりです。あなたがよほど変わった趣向を持つかたでないかぎり、これほどまでうんこに向きあうことはないかと思います。しかし、年に1度の健康診断。避けて通るわけにいかない、検便。1年に1度の採便が、義務的で受動的なものでなく、晴れて、前向きで達成感のあるイベントになることを願っています。 

 


この本の内容は以上です。


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