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ー 49 ー エリックと双子達


彼らの暮らすコミュニティーはゆるやかに開かれている。
外に仕事や家を持ちながら瞑想に通って来る者もあれば、内部の住居で暮らしながら外で仕事をしている者、また内部の住居で暮らし施設内の仕事をして賃金を得ている者もある。


ただ、外に仕事を持っていて施設の住居に入居するには、厳しい審査がある。

営利目的の賃貸ではないため家賃が割安なのだが、その分「金がないのでとにかく安い部屋に転がり込みたいだけ」といった人間が、度々応募してくるのだ。


よって審査の1つは、賃料を支払い続けられるかどうかの見極め。

厳しいのは、もうひとつの審査だ。
それは、マスター(もしくはその代理人に)よる面談。

刻々と変化する面接者のエネルギーの質が丸見えになってしまうのだから、マスター相手に嘘はつけないのだ。


だからといって、完璧な人間だけを住まわせているわけではない。

あからさまな悪意を持って 施設の住人に危害を加えようと目論んでいたり、また、本人にその自覚が無くても 周りを引きずり込んでしまうほど強い負のエネルギーを持つ者を断る程度だ。

(後者の場合には、外から通う修行を提案する場合もある)


そして何より、住人の瞑想や修行を邪魔したりからかったりしないこと。

修行を拒否するのは本人の自由だが、他人のそれを邪魔することだけは、ここでは絶対に許されないのだ。



外出も帰宅の時間も全くの自由で、門限などは無い。

ただ、「他人に迷惑をかけない程度で」という暗黙のルールは存在する。


住居のサイズは数種類あり、一人暮らしから大家族にまで対応出来るようになっている。

エリックが借りているのは、一人暮らし向けのコテージ数軒が隣あって建てられている家だ。
ベッドルーム1つにサービスルーム、ユニットバスに簡易キッチン。そしてリビングルーム。
リビングルームの掃き出し窓から、共用の小さな中庭に出られる。

簡素だし広いとは言えないが、きちんと手入れされており、エリックが前に住んでいた部屋よりはよっぽど上等なのだそうだ。


新たに加わった子供達は、エリック住むのコテージに隣接する 空き部屋に入ったということだ。



「なるほど。お隣さんですか」

「そうだね、それと、教育係かな。親のいない子供達だからね」

「え?!あのエリックが?」

(有希子なら、「あの仏頂面で愛想無しで横柄で威張り屋のエリックが?」とでも言ったことだろう)


「……難しい子たちみたいだし、それはちょっと無理なんじゃ……」


あら、とホアが断言する。
「彼なら大丈夫よ。いい教育係になるわ」

「…それとも、いい生徒かな?」


なんと、エリックは手話を学び始めたのだそうだ。

声の出ない少女のために。
そして、双子の神秘のシンクロニシティによって彼女の感情を読み取り、ずっと彼女の気持ちを代弁をして来たという少年のために。



「エリックは、話が出来ない辛さを知ってるからね」

カイの言葉は、隆太にもよく理解出来た。

エリックは、手に入れた風の力のことを誰にも話さなかった、と言っていた。

でも、それは。

…話さなかったのではなく、話せる相手がいなかったのではないだろうか。
もしくは、話すべき相手がいたとしても、それに気づかなかったのだ。

何故なら、「自分の話をちゃんと聞いてくれる大人がいなかった」から。
これは彼自身が、口にした言葉だった。

かざぐるまをくれたおばあさんが その相手だったのかもしれないが、エリックは新たに手に入れた風の力に夢中になり、その機会を手放してしまった。


彼は、「話せる相手がいない」ことが、いつしか「話したくない、話す必要が無いから話さない」にすり替えられてしまうことを知っているのだ。

だから、彼は今、自分がその子供達の話の聞き役になろうとしているのかもしれない。



「だったら、エリックがその子達の守人になればいい」

隆太の言葉に、カイの表情が明るく柔らかになる。

「その子達と一緒に修行して、見守って、一緒に成長していけばいいんだ。俺みたいに」




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ー 50 ー 音使い

「それで、その子達って、どんなカンジなんですかね?」


養護施設に保護される前の彼らに関しては、マスターにもよくわからないらしい。

ふたりで手を繋ぎ街を彷徨っている所を保護され、警察を初め数カ所の施設に預けられた後に、例の養護施設で3年ほどを過ごしたのだそうだ。

家や家族のこと、自分たちの年齢など、何を聞いても「わからない」としか言わなかったらしい。

ただ唯一口にしたのが、「僕はジョー、こっちはエミリー。エミリーは喋れない。僕たち、双子なの」

彼らはとても親密で、常に行動を共にしている。
少女は声が出ないだけで、言葉はきちんと理解しており、読み書きも出来る。

だがほとんどの場合、彼女の言葉は兄である少年の口を通して語られる。
彼女はその言葉を聞き、頷くのみ。



養護施設から彼らを引き取る際にマスターが入手出来た情報は、これぐらいだった。
ただ、その施設では彼らの扱いに手を焼いていたらしいことは察せられた。

マスター他、エネルギーの流れを見ることの出来る者数人で観察したところによると、2人の間では言葉を発さなくてもなんらかの意識の交流があるようだった。

普段は、エミリーの感情や思考をジョーが自然に読み解き、必要であれば他者に説明している。
テレパシーのようなものなのだろうか。

ふたりとも感情を表に出すことは少ないが、例外は歌っているときだった。


ジョーが歌い始めると。

彼はその曲に盛り込まれている感情と、自身の歌う喜びをエネルギーとして存分に放出する。
それ自体は、珍しいことではない。
歌う事を愛し、歌う才能に恵まれた者にとって正しい姿だ。

ただ、そのエネルギーにシンクロして エミリーがエネルギーを増幅し、放射する。
さらに、周りにいる者を同調させ、聴衆のエネルギーを無理矢理引き出して奪ってしまうのだ。


「なんだか、魔法か催眠術みたいな話ですね」

「うーん。相手の気持ちに関係なく、無理矢理心酔させてしまう…という意味では、近いかもしれないね」


さらに注意深く観察した結果、ジョーが歌っている時にエミリーも一緒に歌っていることがわかった。

エミリーは時たま僅かに口を開き、その際声帯の震えが確認出来たという。

特殊な機材で録音してみたところ、人間の耳には聞こえない音域で、エミリーはたしかに歌っていた。
無意識にジョーの歌の旋律をなぞるうち、自然と身に付けたのだろう。

だが、おそらく生まれつき声が出なかったせいで(もしくは長い間声を出していなかったせいで)、自分が歌っていることに気づいていないのではないか。


……これが、マスター達の見解だった。



「まさか、歌ってる自覚の無いエミリーに『歌うな』とは言えませんしねぇ」

「そうなんだ。それはきっと、『ジョーの歌を聴くな』と言うのとほとんど同じ意味になるだろうね」

カイも、珍しく思案顔だ。



このまま永遠に、ふたりきりでひっそり暮らしていければ、問題はないのかもしれない。
しかし、現実にはそうはいかない。

せめて彼らが自活出来る年齢になり、最低限まともな収入を手に出来るようになるまで、このコミュニティー全体でケアするべきだろう。

この世界に満ちる、愛を教えながら。
他人のエネルギーを操作する必要など無いのだ、と教えながら。



「あ、じゃあ……それも、エリックとくっつけちゃいましょう!」

「え?」

「音って、たしか空気の振動ですよね?」


隆太の思いつきは、こういうことだ。

『音』は、空気の振動である。
『風』は、空気の移動である。

ならば、『風』で『音』を遠くまで運べば、より広くエネルギーを届けられるのではないか。

ジョーが歓びや優しさに満ちた歌を歌う。
エミリーがそのエネルギーにシンクロし、増幅させる。
増幅したエネルギーをさらに、エリックが風で運ぶ。

彼らの能力によって、多くの人の心が幸せを感じられるのだ。

人は心が満たされていると、他人に優しくなれる。
他人から優しさを受けた人は心が温かくなり、別の他人に親切に出来る。
幸福の連鎖だ。


また、3人が共通の目標に向かうことで団結するというメリットもある。

明確な目標を持つことで、修行の意味も明確になる。
その中でエミリーは、他人のエネルギーを強制的に同調させ奪うことと、互いにエネルギーを循環させることの違いを学べるのではないか。




「ん~………それは面白いアイディアだけど」

カイが眉間にしわを寄せて考えている。

「そう上手くいくだろうか…」

「それは、わかんないけど……だって俺、その子達に会った事無いし、施設の様子がどんなかも知らないし。エネルギーを風で運べるかどうかもわからないし」

「……」

カイは、想定出来る限りの事態を吟味しているのだろう。


「だからね、あくまでも提案ってことで!判断はマスターにしてもらえばいいわけだし!」


そう意気込む隆太に気づいて、カイは意外そうな表情を浮かべた。

「なんだかリュータ、ずいぶん積極的ですねえ」


隆太は思わず身を乗り出した。

「だって!エリックの望みもこれで叶うんですよ?『風の力の使い道』!」




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ー 51 ー 充実の日々

結局、隆太の提案は大いなる賛同を以て受け入れられた。

特に、エリックにとっては。


彼は進んで双子に話し掛け、仲良くなろうとしているらしい。

もちんエリックだけで双子の世話が出来るわけもなく、複数の大人達が協力している。


子供達は、表に出さないだけで、豊かな感情を持っていることもわかった。

修行にも興味を示し、積極的に関わろうとする大人達に、徐々に心を開こうとしているそうだ。

とりわけ、エリックの風の力と、日本に滞在した時の話は、子供達のお気に入りのようだった。
時にはむこうから話をせがみにくるのだと、エリックは自慢げにメールを寄越したものだ。

双子以外の子供達からもエリックは慕われており、「風を操る『日本通』のお兄さん」という位置づけになっているらしい。
実際には数日間日本に滞在しただけなのだが、隆太達が送った大量のおもちゃやお菓子のインパクトは絶大だったようだ。
ただ、日本のおもちゃに関しては エリック自身に知識が全く無かったため、逆に子供達から教わっているそうだ。

手話といい玩具の知識の習得といい、エリックは周囲に溶け込もうと努力をしている。
もちろん修行にも精を出しており、大人達とも良い関係を築いているようだ。

マスターから時おり送られてくるメールからは、エリックの変化が見て取れた。
添付された写真には、ほんの数ヶ月前の彼とは別人のように柔らかな表情のエリックが写っていた。


隆太も負けてはいない。
翼はさらに成長し飛行距離も延び、また、日頃から自身のコントロールドラマに気をつけるようになったせいか、職場で周囲から話し掛けられることが増えた。

以前は「プライベートなことでは話し掛けにくかった」のだそうだ。
だが最近では、さほど親しくない相手から人生相談のようなものまで持ちかけられるようになり、その度に修行の内容やコントロールドラマのことを話した。

隆太自身が変わるにつれ、徐々に隆太をとりまく環境も変化して行った。
夏が終わる頃には昇級し、リーダー職の中のトップになっていた。


もちろん、修行も順調だ。

隆太は既に、空を見上げるだけでエネルギーを取り込める。
宇宙と繋がるまでにかかる時間もずっと短くなり、簡単に繋がれるようになった。

もちろん、簡単だから、いつものことだからといって、その素晴らしさは少しも減ずることは無い。


グエン一家や有希子も同様だ。

天空人の間でも、瞑想をする人がさらに増えている。
自然のエネルギーについての知識と経験が、少しずつ少しずつ、広まっていた。


自分の周りで、あるいは遠く離れた場所で。

一緒に修行をしている仲間がいると思うだけで、なんだか楽しくなる。



隆太がある噂を耳にしたのは、そんな充実したある日のことだった。




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ー 52 ー 秘密会議


「世界滅亡の年?」

職場での昼休み、チームの女の子達が話していたのだ。
なんでも2012年は、世界が滅びる年なのだという。


「ああ、ノストラダムスとかなんとか文明の予言とか、そういうやつか」

「マヤの予言ですよ!来年、人類は終末の日を迎えるらしいです」

「大原さん、短い間でしたが今までお世話になりました…」などとふざけていたので、彼女がそれを信じていないことは明白だったが、まあ、要は女性というのはそういった話題が好きなのだろう。


そのことはそれっきり忘れてしまったのだが、家に帰り遊びに来ていた有希子の顔を見たら思い出した。

「水沢さん、マヤの予言って知ってますか?」

「何よ、突然。知ってるわよ、2012年に人類が滅びるって話でしょ?」

「わたしも知ってるよ。映画になったんだよね」

…フオンまでも知っているのか。

「王さまのぶらんちで見たもん」


「それはね、人類の意識が大きく変わり進化することを予言している、という説もあるみたいだよ」

カイが両手に皿を持って現われた。

「へええ」

「進化って、どういう風に?」

「それがね……」
気を持たせるように、間を空ける。


「私達が、日頃からやってることよ」

カイの後ろから現れたホアが、せっかくのセリフを横取りした。


「ああ!せっかくカッコよく発表しようと思ったのに……」

「いいから、はやく並べちゃってね」

ホアは手にした食器をテーブルに置くと、皿を持ったまま肩を落とすカイの背中をポンと叩き、キッチンへ戻って行く。


「なに、なに?」

有希子が興味を示す。隆太も気になりはじめた。


気を取り直したカイが、テーブルに皿を並べる。

「その説というのはね、私達の修行の内容。それを、世界中のみんなが知ることになる、ってことです」

「おおおおお!それは確かに、大改革ですね!!」

隆太は思わず声をあげた。

この修行を始めた当初、自然の発するエネルギーとつながる素晴らしさを皆が知ったら、どんなに素晴らしい世界になるだろう、と隆太は想像した。
修行の内容が広まることを願い、ブログを書いたりしていた。

それが、現実のものになるというのだ。


「でも、それって今に始まった話じゃないじゃない?修行の内容は昔からあったし、今じゃ本やネットでもさんざん取り上げられてる。なのに、なんで2012年なわけ?」


「さあ……それはわからないけど。興味を持つ人が一気に増える出来事が、何か起きるのかな?」


カイのその言葉を聞いた時、隆太には閃くものがあった。


「えっと、じゃあ……」

その閃きはアイディアの種のようなもので、自分が何を閃いたのかさえ まだわからない。

「あれ……なんか今、思いつきかけたんだけど……」

もどかしく言葉を探しながら、種の発芽を待つ。


「あ‥‥ああ‥‥えっと、その出来事、俺達で起こしちゃえる‥‥かも?」

そう言った途端、隆太の頭の中で種が芽吹き、一瞬でその計画は大木へと成長し計画の全貌が表れた。


「なに、なに?何よそれ、楽しそうじゃないのよ~♪」

有希子は早くも興味津々で、着ていた薄手の上着を脱ぎ出す始末だ。
カイもフオンも期待に満ちた目を向ける。


隆太は自分の思いつきを話し始めた。

すぐにホアも加わり、料理の冷めるのも構わず、突然の秘密会議が始まった………




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ー 53 ー 大作戦 決行の日

2011年12月31日。

その日、チームサレンダーとその仲間達は、海沿いの某所に集合していた。


参加メンバー全員が集まったのが22時15分。

予定していた集合時刻より少し早いが、皆静かに興奮しているため時間はあっという間に過ぎるだろう。



窓の外には、海。

真っ暗な海が広がっている。

空には三日月が煌々と照らし、星の瞬きとともに 寄せる波頭を白く浮き上がらせる。


フオンはだいぶ前から、ホアの膝の上で眠ってしまっている。

夕暮れの海を見てはしゃいでいたから、疲れたのだろう。
そうでなくても、本来眠っているべき時間帯なのだ。

フオンの他にも数名、子供がいるが、彼らもまた眠っていた。

そのため大人達は、僅かに声をひそめ、囁くように談笑していた。


窓辺には、有希子とその夫が並んで海を眺めながら何か話している。

今日初めて会ったその人は、有希子から以前聞いていた印象どおりの、優しげな男性だ。


店のカウンターには、天空橋の面々が腰掛けている。

馴染みの商店の夫婦や、ホアのママ友さん方。そしてその子供達。

隆太の隣の椅子には、最近瞑想を教えている女の子が座っていた。
エリックが来ていた頃、隆太が友人の引っ越しを手伝いにいった時に出逢った娘だ。

後日友人宅で転居祝いが催され、その時に再会して以来、たまにメールのやりとりなど続けているうちに 瞑想の話などするようになり、わりと仲良くなったのだ。

付き合う云々という間柄ではなかったが、隆太はなんとなく、イイ感じなんじゃないかと思っている。


他にも3人、友人が来ているのだが、今は姿が見えないようだ。


「そろそろだね。なんか、緊張しちゃう」

隣に座っている沙織が、エヘヘと笑う。
コーヒーの入ったステンレスのマグで、指先を温めている。

「大丈夫だよ。やることは、いつもと同じだから。でも、外は寒いから気をつけて」

沙織は、コクンと頷くと、マグに口をつけた。


「リュータ、時間だ」

今まで隆太のノートパソコンでSkypeしていた、カイが声を掛けて来た。
話していた相手は、マスター。先代のサレンダーだ。


隆太は立ち上がり、テーブルをコツコツ叩いて皆の注意を引いた。

「そろそろ時間です。あと5分で出ますから、皆さん準備して下さい」


千葉県某所。太平洋を臨む場所に建つ、喫茶店。
飲食店仲間の知り合いの店を、今日だけ貸し切りにしてもらってある。

集まっているのは、隆太たち瞑想仲間だ。
フオンの力の事も知っている、信頼出来るメンバーだ。

壮大な、あるプロジェクトを実行するために集まったのだ。




あの日突然始まった、秘密会議。

それは題して、
『2012年に訪れると言われる精神の大革命のキッカケ、俺達で作っちゃおうぜ大作戦』。


そして、その方法というのは。

「世界中に散らばる同志達で集まり、同じ時間に一斉に瞑想する」

これだけだ。


普段フオン達とやっているエネルギーの循環を、地球規模でやってみようというのだ。

エネルギーの場が強く大きくなれば、普段精神世界などに興味のない人の中にも、エネルギーの存在に気づく者が現われるかもしれない。


もちろん、リスクも考えられる。

例えば、何の予備知識も無しにいきなり宇宙と繋がってしまったとしたら。

人々はそれを神秘体験と捉え、そこにおかしな新興宗教がツケ入るかもしれない。


そこで、マスターの力を借りる。

前もってこの大規模な瞑想を予告し、エネルギーと繋がるとどんな状態になるのかを告知しておくのだ。

世界中に大きな人脈を持つマスターだから、この方法は有効だろう。

協力者を募り広く予告し、またネットにも様々な言語で拡散させておく。
後々、自分の体験を検索出来るようにだ。


仮に失敗して、何も起こらなかった場合でも……

それは単に、「私達は、集まって瞑想します」と予告したに過ぎないのだから、別に害はないだろう。



この計画をマスターに相談したところ、快く……というより、ノリノリで引き受けてくれたのだ。

ほんの数ヶ月で準備を整え、当初の目論見より格段に洗練され スケールアップした作戦が出来上がった。

桁外れの活動力と充分な経済力を持った大人の 本気の迫力というのは、凄まじいものだ。



隆太は、首にかけていたマフラーを沙織に巻いてやった。

そして先頭をきって扉を押し開け、外に踏み出した。




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