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ー 14 ー 帰り道の死闘

有希子を送るために 駅へ向かう道。

フオンはカイの背中に背負われて、スヤスヤと眠っている。
ついさっきまで、他の子供達とはしゃいで走り回っていたのに。

どうやら子供の時間の過ぎ方というのは、大人とは異なるようだ。


「この街の人たち、口は悪いけどみんないい人よね」

有希子が空を見上げながら言った。

この界隈は、ずっと以前は漁師町だったらしい。
その影響なのか 言葉遣いは乱暴に聞こえるが、実は心の温かい人が多い。
翼を持つことで異端視されてきたという歴史の中で、人の痛みを察することが出来る人が多いのだろうか。

「そうですね。でも、水沢さんも負けてませんよ」

「…どういう意味かしら?」

「だから…いい人だけど、口は……」

すぐ前を歩いているカイとホアがクスクス笑った。

「なによお」有希子が怒ったフリをして頬を膨らませる。


「うちの夫もさー……」

一歩歩くごとに膝で自分のバッグを蹴る真似をしながら、有希子が何気ない素振りで呟く。

「すごくいい人なのよね。私がサラと会って帰りが遅くなっても、文句ひとつ言わなかったし。それどころか、ずっと応援してくれてたの」

「へえ」

世間話のような口調だが、有希子が何か伝えようとしているのがわかった。

「サレンダーの力もサラの力のことも知ってるからね、とても協力的でね。晩ご飯が出来合いのおかずばかりになっても不平なんて言わないし、時にはご飯作って待っててくれたりね」

「優しい方なんですね」

「うん。そうなの。自分の仕事だって忙しいのに、車で送り迎えしてくれたりね。
 だからさあ……サラがあんなことになったからって、落ち込んでる姿なんて見せられないじゃない?」


「……そういうもんなんですか?」

「うーん……私が勝手にそう思ってるんだけどね」

有希子はため息混じりに笑った。


「たぶん彼は、私が嘆き悲しんだら慰めてくれると思う。一生懸命、寄り添ってくれると思うんだ。でもさ……」

バッグを蹴りながら、淡々と話し続ける。
カイとホアも、背中で話を聞いている。

「散々協力してもらって、迷惑かけて、挙げ句泣きわめくなんて、あまりにも甘ったれてるじゃない?」


でも……だって、夫婦じゃないか。

そう思ったが、口には出さなかった。
結婚の経験が無い自分には、そういう機微はわからない。


「甘えちゃ、いけないんですかね?」

隆太なりに精一杯、言葉を選んだつもりだった。

有希子は「うーん…」と唸り、夜空を見上げた。

「自分でも、ちょっと他人行儀かなと思わなくもないんだけどね。でも私、そういうの苦手なの。他人に寄りかかるようなこと」

「でもね、」フフッと笑う。

「彼は、私のそういうところも全部わかって、黙って見守ってくれてると思う。だから、私は結局甘えてることになるのよね」


「…素敵な関係ですね」

「うん。とてもありがたいと思ってる……でも正直、けっこうしんどかったんだ」


「……」

「甘えてるって自覚しながら、明るく振る舞うのがね。まあ、素直に泣けばいいんだけど、それが出来ないのよね。性格が屈折してるのね。アハハ」

何を言っていいものかわからなかったので、隆太は黙っていた。


「だからさ、私…隆太君に八つ当たりしたかもしれない。閉じこもっていられる隆太君が、羨ましかったのかも。……ごめん、ねっ!!」

そう言いながら、有希子は隆太の臀部に膝蹴りを入れてきた。

「イッテ!ちょ、ちょっと水沢さん。言葉と行動が合ってないんですけど!」

「わははは!これも八つ当たりじゃ~!屈折キーック!!」

「く、屈折キックって……」


大げさに逃げ回るふりをしながら、隆太は少し救われたような気持ちになり、同時にまたもや後悔していた。

自分が「謝罪か、行動か」などと迷っている間に、有希子に先に謝られてしまった。
本人の言葉どおり多少屈折してはいるが、謝っていることには違いない。


グエン夫妻の前方にまわり込み、夫妻を盾にして有希子からの攻撃を防いだ隆太は、反撃を開始した。

「お返しだ!喰らえ!ネガティブビーム!」
腕をクロスさせ、夫妻の隙間からビームを繰り出す真似をする。

有希子は思わず吹き出し、グエン夫妻も声を上げて笑った。

「ふたりとも子供みたいだね」
「どうりでフオンと気が合う筈だわ」

3人が笑ってくれたので、隆太の心は少しだけ軽くなった。


直接言葉にしなくても、彼らは自分の気持ちを汲み取ってくれる。



先ほど、有希子は自分の甘えを自覚していると言った。

隆太もいま初めて、それを自覚した。
そして、ありがたく甘えさせてもらおうと決めた。



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ー 15 ー 隆太の記憶とサラの真実

「そういえば、昼間ふたりで……」

「うん。フオンと一緒に、火災現場へ行ってきました」

カイの問いかけに被せるように、少し意気込んで隆太は答えた。

自分も行動し始めたことを、きちんと伝えておかなければ。
隆太の甘えを許してくれる彼らへの、せめてもの恩返し……になるのかどうか、わからないけれども。


ゆるゆると歩きながら、カイが頷く。

「そう。花を買ったと聞いて、そうじゃないかと思ったよ」

「どうだった?」


『大丈夫だった?』と聞かないのは、きっと彼らの優しさなのだ。
隆太は心遣いに感謝しながら、なるべく何気ないふうに聞こえるように意識した。

「再建が進んでいて、驚きました。すっかりキレイになっていて。……なんだか目が覚めたような気がしました」

「そう」

「でも、やっぱり思い出しちゃいますね。まだ……ちょっと、キツいっす。」

自分の気持ちを正直に、だが敢えて軽い言葉を選んで話す。
あまり心配をかけたくない。


ホアが突然足を止めた。くるりと振り向いて、隆太の正面に立つ。

「リュータ。本当に、憶えてる?」

「え?ええ……」

「じゃあ、サラがあのとき最後に見たもの、何かわかりますか?」


あの時、サラが最後に見たもの。忘れるはずが無い。


「ええ……消火活動のために集まった沢山の天空人達が空を飛び交って……それを見て、『すごくキレイ』って……」



「…そうじゃないの。それは少し、違うのよ」

ホアは少し寂しげに微笑んだ。


「サラが最後に見ていたのはね、リュータだったの。
 天空人が飛び交う空を見上げていた、リュータの横顔」


「…うん。とても幸せそうに見ていたね。その時、彼女は素晴らしいエネルギーを放っていたんだよ。とても弱かったけれどね」

その時の様子を思い出したのか、カイも微笑んだ。

「あの瞬間、サラはとても幸せだったんだよ」




黙って聞いていた有希子が、「フッ」と吹き出した。

「いつだったかあの子、『いつかこの空を、天空人達が自由に飛べるようになるといいですね』って言ってたわ。『そしたら隆太さんも嬉しいでしょうね』だってさ。」

おっかしい、と力なく笑い続ける。

「……全く、バカよね。あんな状況でも、いつも他人のことばっかり。じ、自分は瀕死だったっていうのに」



長老と共に、サラと被災した女性を抱えて戻ってきたあの時、有希子はその現場に居なかった。
先に火災から救出した幼児を抱え、救急車で病院へ向かっている途中だったのだ。

少し遅れてサラも同じ病院に運ばれ、一時的に意識を取り戻した。
有希子はずっと付き添い、サラの伝言を聞き、そして息を引き取るのを見届けたのだった。


「最後の最後まで……」

サラの最期を思い出したのだろう。
有希子は口を噤み一度空を仰ぐと、先にたって歩きはじめた。


駅はもうすぐそこだ。



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ー 16 ー ありがとう

手早く入浴と洗面を済ませた隆太は、ため息をついてベッドに寄りかかった。

有希子を駅まで送った帰り道、隆太はほとんど口を開かなかった。

胸が詰まったようになって、口をきくことが出来なかったのだ。



見ず知らずの人の命を助けるために自ら火災に飛び込んだ、サラ。
力を使い果たしてまで、必死で炎を鎮めようとした、サラ。
自分が瀕死の状態にありながら、人の幸せを願い、残された者の心の負担が軽くなるよう伝言を残した、サラ。


もし自分が同じ状況であったら、同じことが出来るだろうか。

どうして、そんなことが出来るのだろう。
どうしたら、そんな風になれるのだろう。


もしかしたら。

もしかしたら、有希子の言ったように、俺はサラを下に見ていた部分もあったのかもしれない。


でも今は。

サラを心から尊敬している。


(ありがとう……)

自然とそう呟いていた。目を閉じて、何度も何度も。


生まれてきてくれて、ありがとう。
俺達に出逢ってくれて、ありがとう。
大切なものを遺してくれて、ありがとう……


そう呟く度に、少しずつ心が軽くなっていった。
心の中に爽やかな風が吹き込んでくるようだ。

暗く重くのしかかる、分ち難く結びついた恐怖と後悔。
隆太を苦しめていたものが、吹き払われていく。少しずつ、少しずつ。
うっすらとやわらかな光が射してくる。

この感覚はなんなのだろう。



ああ。これは、解放だ……


隆太はようやく気づいた。

心からの感謝とは、自分自身を解放することでもあるのだ。
他者の行いに感謝すると同時に、その善意を受け取る自分を許すこと。


いつだって、瞑想は「愛と感謝」を再確認するものだった。

愛・善意・感謝とは、おそらくほとんど同質ものなのだ……



再び目を開くと、まるで視界が開けたようだった。

部屋の中がふわりと明るくなり、新鮮な空気に入れ替わったよう感じる。
ものの輪郭が際立ったように見える。

瞑想で宇宙のエネルギーとつながった時の、あの感覚に似ていた。


これはきっと、正解のサインだ。
今まで教わってきた瞑想の意味を、より深く理解したという、サインだ。



せめて、受け取った善意に見合うだけの自分でありたい。

そう願いながら、隆太は感謝に満ちて眠りについた。

久々の熟睡だった。



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ー 17 ー 魂の階段

翌朝。

空は早朝から晴れ渡り、澄んだ空気は新緑の息吹に満ちていた。

新鮮な空気の中、隆太は思い切り深呼吸した。


少し遅れて屋上に出てきたカイは、隆太の顔を見るなり嬉しそうに笑った。

「リュータ、昨日の夜、何かありましたね?」

「ああ……ハイ。…わかりますか?」
少し照れたように、笑い返す。

「わかりますよ。強く美しいエネルギーが出ています」

ついでやって来た ホアとフオンも嬉しそうだ。

「顔も少し違うよ。ね、ママ」

見上げるフオンに、ホアも「そうね」と笑顔を返した。


隆太は、昨夜気付いたことを話して聞かせた。
日本に来て日の浅い彼らにもわかるように、簡単な言葉を選びながら話すので時間がかかった。
彼らも時おり質問を交えながら、一生懸命聞いてくれた。

4人はガーデンチェアを持ち出して座り、互いのエネルギーを交換しながら話し合った。

相手の話に注意深く耳を傾けるということは、実は相手に自分のエネルギーを注ぎ込む行為だ。
そして、こちらの思いをわかりやすく伝えようとすることは、自分のエネルギーを差し出すことなのだ。
エネルギーの交換が続くうち、その『場』のエネルギーはだんだん強くなる。
すると、話し合いはスムーズに進み、お互いに深くわかりあうことが出来るようになる。
(サレンダー ~翼の守人~「ー 27 ー 苦悩」http://surrender.meblog.biz/article/4260324.html


『ありがとう』という感謝の言葉は、自身の心を、魂を解放する言葉でもあることに気付いたと話した時だ。

カイが突然立ち上がり、隆太を抱きすくめた。

「わっ!な、なんすか!!」

「リュータ、素晴らしいよ!!!」
カイは眼を潤ませ顔を紅潮させている。隆太は背中をバンバン叩かれ、少し咳き込んだ。

「よく気付いたわ、リュータ。そのとおりですよ」
ふたりの様子を優しく見守るような眼差しで、ホアも微笑んでいる。

「それにね、私たちが何かに感謝するとき、私たちはその相手の後ろにあるものにも同時に感謝していることになります。ずっと続いてきた生命。いま周りにある生命。全ての出会い」



(ああ……そうだ。俺はずっと、瞑想でそのことを教わってたんだ……)


今までの教えを思い返す。
きっと、ひとつの教えに幾重にも意味があるのだ。

だが、突き詰めれば。言っていることはただひとつ。

「愛(あるいは感謝、善意)」だ。


以前、有希子と話したことを思い出した。

エネルギーの正体とは何なのか、ということ。

ふたりともこれという理由は説明出来なかったのだが、「エネルギー = 愛」という答えに一致した。
なんとなくそう感じて、しかもそれが正しいと直感していたのだ。
たしか、ハッキリわからないながらに、ブログにも書いた筈だった。
(隆太のブログ「エネルギーの正体」http://tsubasanomoribito.blog111.fc2.com/blog-entry-24.html


つまり、人は何かに感謝するとき、”これまでの時間とこれまでの存在、全てからの善意”に感謝し、なおかつ”それを受け取る自分を許す”ことになるのだ。



「そうだ。俺、ほんとは知ってたはずなんだ。なのに、すっかり忘れてしまって……」

ようやくカイの抱擁から解放され、隆太はガーデンチェアの背にもたれ肩を落とした。

「俺、まるっきり馬鹿みたいだ。せっかく教わったことを忘れていつまでもふさぎ込んで、皆に心配かけて」


「いいんだよ、リュータ。人間だからね。何度もつまづくものなんだ」
そう言って、カイが笑う。

「‥‥何度も?」


「そう。何度も。これから長く生きる間に、辛いことだって起きる。その度にきっと、同じように苦しむ。同じところをぐるぐる回っているみたいに」

「でもね、リュータ。一周回った間にあなたが経験したことの分、あなたの視点は上に昇っているのよ。」

ホアの言葉に、カイが頷く。

「リュータは少しの間、教えを遠ざけてしまったけど、自分の力で感謝の持つ新しい意味を見つけたね。そうやって、私たちの心は成長していくんだよ」

「こういうふうに、だよ」
フオンが指でぐるぐると螺旋を描く。
下から上へ向けて、ぐるぐると。


「何があっても、『愛』を忘れなければ大丈夫。
 全部が繋がっていること、自分が宇宙の一部であることを忘れなければ、大丈夫」

彼らの言葉が、隆太の胸に染み渡り全身に広がる。


らせん。

人の魂は螺旋を描くように成長する。
広がったり狭まったりしながら。
高く昇ることもあれば、ほとんど高さが変わらないこともある。

だが、元の場所より低くなることは無い。愛を忘れなければ。


愛を軸にして昇っていく、らせん。



「あ!!」隆太が突然声を上げた。

「螺旋!!らせんだ!!」

「なに?…らせん?」



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ー 18 ー ロマンティックが止まらない

「なに?…らせん?」

驚いた顔で隆太を見つめる3人に、先ほどフオンがしてみせたように下から上へと円を描き指をぐるぐる回す。

「これ、螺旋。俺たちは螺旋を持ってる!身体の中に!!」


「え?どこ?」
自分の身体を見下ろし、フオンは手や腕をひっくりかえしながら螺旋を探している。

「DNAです!!!俺たちはDNAの二重螺旋の中に太古の記憶を持ってる。ずっと続いてきた生命の記憶を!」

グエン夫妻に真剣な眼差しを向ける隆太は、自分の発見に興奮しているのか 普段よりジェスチャーが大ぶりになっている。

「そのDNAと同じように螺旋を描き、俺たちの魂は成長していく。太古の記憶が刻まれたDNAと同じく、螺旋を描いて。これって、偶然ですか?!」



グエン夫妻は顔を見合わせた。そして同時に笑い出した。

「ああ!リュータだ!!いつものリュータが戻ってきたね!!」

ホアは小さく手を叩き身体を揺らしながら、カイに至っては涙をぬぐいながら笑っている。

フオンには意味がわからなかったらしく(当然だろう)、キョトンとしている。


せっかくの思いつきを散々笑われ憮然としている隆太に、ようやく息を整えたカイが頷く。
(しかし、目尻にはまだ涙が残っていた)

「その考えは、とても面白いよ。もしかしたら、偶然じゃないかもしれないね」


ホアは腕を伸ばし、隆太の肩をポンポンと叩く。
「あのね、リュータ。古代の文書や様々な宗教の…えー、聖書?キョウテン?そういう本には、いくつか同じことが書いてあります。そのひとつが、『人は”らせん”の階段を昇って神に近づく』というものなの」

「えっ!!‥‥それって、まだDNAなんか発見されてない時代の本ですよね?」

「もちろん」

「じゃあ、じゃあ、やっぱり偶然じゃないのかも……」


「うん。”らせん”という形をとるのは確かに同じだね。でも、そのことが関係あるかどうかはわからない。偶然かもしれないし、偶然じゃないかもしれない。だって、DNAの中のらせんと違って、魂の成長の”らせん”は……」

重ねた手を上下させて、垂直方向の幅を表す。
「一周ごとの高さも……幅も、いつも同じではないんじゃないかな。」

「ああ……そうかぁ。確かに」隆太はため息をついた。

そのときの経験や気づきの深さにより、魂の成長の度合いは様々だ。
当然、魂が描く螺旋の幅も高さも変わってくるだろう。

「すごい発見だと思ったんだけどな………」


「でも、リュータのその考えは、とても素敵ね。
 DNAの中に、神に近づく魂の螺旋階段を持ってるなんて。とても、ロマンティックだわ」
ホアがニッコリと微笑む。

「そうだね。僕らはね、いつも面白いこと、楽しいことを思いつくリュータが戻ってきたのが嬉しくて、つい笑ってしまったんだ。馬鹿にしたわけじゃないからね」


”ロマンティック”などと言われて、隆太は思わず「いやぁ…」と照れ笑いしてしまった。

笑っていないのは、話の流れについてゆけず口を尖らせている、フオンだけだ。



「ところで、リュータは何故『感謝は、魂を解放することでもある』って気付いたの?」

「え?ああ……」

カイは「後でちゃんと説明するからね」とフオンを宥めている。


「サラのことを考えてて。あんな風に、自分を犠牲にして人を守ったり、自分が大変な時に人のことを思いやることが出来るなんて、すごいなって。俺だったら、同じことが出来るだろうか、って。
 そう考えてたら、自然と『ありがとう』って思えたんです。そしたら、なんか…」


「えっ?」

3人が不思議そうな顔をするので、隆太は戸惑って聞き返した。


「……なんすか?」


「リュータ、自分も同じことしたじゃない」
フオンが隆太を見上げて言う。

「火事に飛び込んでサラ達を助けたよ?」


「え、ああ……たしかに。でもそれは、おれの場合は…別にその……」

ただ夢中だっただけで。しかも、フオン達の力も借りたし……それに……


俺がしたことは、サラのしたこととは違う。

そう言いたかったのだが、上手く言えなかった。


「あっはっはっは!!リュータ!今日は朝から何回笑わせるんだい?君は、教えについては驚くほど よく理解するのに、自分のことは何もわかってないんだね」
我慢出来ない、というように カイが笑いはじめた。

「今度の修行は『自分を知ること』だね」

「そうね。でも……」
お腹を抱えてヒィヒィいっているカイを見て苦笑し、ホアが自分の腕時計を指差す。

「リュータ、そろそろ準備しないと、遅刻じゃない?」




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