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~ はじめに ~

 読者の皆さん、こんにちは!

私は、統合失調症を患っている精神障がい者です。1973年に生まれました。今、この文章を書いている時点で、37歳の男です。

これから、統合失調症を通して、どのようにキリスト教信仰を持つようになったか書き記しておこうと思います。

 

 私は、人前で話すのが非常に苦手です。単に苦手と言うより、病的に苦手なのです。緊張して話せなくなるのです。

ある日、私の通所する障がい者の施設で、聖書の勉強会があったのですが、その時に聖書の朗読をまかされました。でも、朗読の途中で緊張してしまい、声がうわずり、読めなくなってしまいました。仕方なく、他の人に朗読をかわってもらいました。

このような症状は、中学生のころからありました。教科書を皆の前で読むと途中で読めなくなり、皆に馬鹿にされました。精神科の主治医に緊張防止の薬を処方してもらったこともありますが、効き目がありませんでした。

もし、人前で話すのが苦手でなければ、私は絶対牧師になっていたと思います。でも、それは現時点では無理なので、牧師になることはあきらめています。

 

 しかし、私は文章を書くことはできます。今、通っている教会の人に、スピーチが苦手なら、本を書いてみたらよいのではないかとアドバイスをいただきました。

そこで、私は、本を書いてみることにしました。

今のところ、統合失調症の当事者の人がキリスト教に関連して書いた本を目にしたことがありません。そこで、私が書くことにしました。

 

 皆さんは、統合失調症と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。

私は、自分が統合失調症になるまでこの病気を理解していませんでした。実は私のおじも統合失調症患っております。そのおじは精神病院への入退院を繰り返しています。私はそのおじとよく遊んだことがあります。でも、統合失調症がどのような病気なのか、自分が実際になってみなければ分かりませんでした。

 

 この病気は、直接、死に至る病気ではありません。しかし、人生を狂わせる原因になります。この病気により、ホームレスになったり、自死に追い込まれたりする人がたくさんいます。でも、この病気を正しく理解し適切な治療を受ければ、多くの人は、その人なりの幸福な人生を歩むことができると思います。

 

 それでは、皆さん、この本をぜひ読んでみてください。統合失調症がどのような病気か理解が深まると思います。また、キリスト教にも興味をもっていただければ幸いです。

 

2010年12月   深澤 信行


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もくじ

~ はじめに ~

●突然の発病

●幻覚と幻聴、妄想の嵐

●精神科受診

●希死念慮

●生き地獄

●不思議な出来事

●シンクロニシティ(共時性)

●ある日のシンクロニシティ

●キリスト教との再会

●洗礼

●聖書

●自立生活

●回復への道のり

●『青葉ぶどう園』

●結婚

●「歩」という名前

●主夫業

●聖書研究

●統合失調症の方へ

●大野キリスト教会

~ おわりに ~


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● 突然の発病

 私は、コンピューターの専門学校を卒業し、『第一種情報処理技術者』の資格を持ち、フリーのプログラマーとして第一線で働いていました。

私は、さまざまなコンピューターシステムを作りました。例えば、企業間の商取引きを自動化するオンラインシステムを作ったり、企業の売上を一覧できるシステムを開発したりしました。その中でも、一番難しかった仕事は、3次元の建物の形を認識し、自動的にコンピューター上でその形を再現するソフトウェアの開発でした。このソフトウェアは、3次元のカーナビゲーションに搭載するデータを作成したりするのに使われます。私は、このような仕事にやりがいや生きがいを感じていました。

 

 ただ、職場の人間関係はなかなかうまくいかず、周りの同僚からいじめを受けたこともあります。仕事を進めるのに必要な情報をなかなか教えてもらえなかったりしました。例えば、ネットワーク上にあるプリンターの名前を教えてもらえなかったりしました。また、プログラムを作る時に、「MFCと言うライブラリを使いますか?使いませんか?」と聞いたところ、「そんなの知るか!」と怒られたりしました。私は、職場の人たち全員に嫌われていると感じていました。

元々、人づきあいが苦手な私は、未熟だったのです。そのころの私は、自己中心的であり、自分が良ければそれで良いという性格でした。このような性格が、いじめの原因になったのだと思います。仕事で分からないことがあっても教えてくれる人がおらず、孤独でした。孤立していくのに伴い、閑職に追いやられてしまいました。そして、徐々に職場に居づらくなり、一人思い悩むようになりました。その悩みはひどく、円形脱毛症になりました。

 

 それでも必死で職場に通い続けたのですが、ある日突然、統合失調症を発病したのです。それは、1997年3月のことでした。その時、私は24歳でした。

 

 その発病の瞬間は、今でも鮮烈に覚えています。仕事がうまく行かず、「もうどうにもならない!」と思っていた時のことでした。自分の席から遠く離れて座っている人が、「そのぐらいで済むと思うなよ」と言ったのが聞こえてきたのです。その言葉は、確かにこの耳にはっきりと聞こえました。今となっては、その言葉は幻聴だったのだと理解しています。しかし、その時の私にとっては、非常に恐ろしく感じられました。

 

 そして、その「そのぐらいで済むと思うなよ」との言葉のとおり、それまでの苦悩では済まない事態に陥っていきました。その言葉が聞こえたのを発端として、幻覚と幻聴がひっきりなしに襲って来るようになったのです。


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● 幻覚と幻聴、妄想の嵐

 皆さん、一度はピカソの抽象画をご覧になったことがあると思います。幻覚は、そのように見えたりします。人の顔が正面を向いた顔と、真横を向いた顔との半々に分かれて見えることがありました。また、人の目がピカッと白く光って見えることもありました。

地下鉄の駅の構内を歩いていた時には、まるで洞窟の中に居るかのように暗く感じ、通り過ぎる人が幽霊のように生気を失っているように見えました。また、駅員の人の足音が、カランカランという金属音を鳴らしているようにも聴こえました。そのカランカランと言う音は、いかにも不自然だったので、すぐに幻聴だと気付きました。

 

 幻覚や幻聴は、それを見たり聞いたりしていると言うよりは、まるでその世界の中に入り込んでしまっているように感じられました。そして、次々に不思議な出来事が起こりました。

 

 人のざわめきが絶えず聞こえ、それにまじって、「死ね!」「バカ!」などという声も聞こえてきました。周りに居る人が皆、私の悪口を言っているように聞こえました。

 

 また、ある日ファーストフード店に入った時、「ピカチュー」と言うキャラクターのイベントをしていました。その時、店内の放送で、「ピカチュー」と言う言葉が繰り返し流れていたと思うのですが、それが私にはどうしても「天誅(テンチュー)=天罰」と聞こえるのです。そして、「とうとう自分にも天罰が下ったのだ…。」と思いました。

ペットショップでスナネズミを見ていた時には、突然全てのスナネズミが後ろ足で立ち上がり、一斉に私の方を見たのです。非常に驚きましたが、周囲の人を見渡すと何の反応も無いのです。これも幻覚のひとつでした。

また、同僚と昼食を一緒に食べている時、同僚の話す言葉が全て数字の羅列に聞こえたこともありました。例えば、「115236(いち・いち・ごお・にい・さん・ろく)」とか、「442255(よん・よん・にい・にい・ごお・ごお)」などと聞こえるのです。何を話しているのかが分からず、会話に入っていくことができませんでした。話す言葉が数字の羅列に聞こえる症状は、他の場面でもありました。ビデオレンタル屋の店員の話す声が数字の羅列に聞こえたり、パチンコ屋の店員の声が数字の羅列に聞こえたりしました。

その他にも、幽霊が空中を飛びまわっているのが見えたり、人の生霊のようなものが見えたりしました。

また、電車で座っている時、突然目の前に立っている女性が私に対して怒りだし、罵声を浴びせ始めました。その当時、私は職場で仕事がうまくいっていませんでした。その女性は、その仕事に関係した内容で怒っているのです。見ず知らずの女性なのに、なぜ私のことを知っているのだろうかと、不思議で恐ろしい思いをしました。この出来事は、おそらく幻聴と幻覚が同時に現れたのでしょう。しかし、当時の私には、現実と非現実との区別がつきませんでした。

 

 このように、統合失調症を発病してから、ひっきりなしに幻覚や幻聴に襲われたのです。

幻覚や幻聴の他に、妄想の症状もありました。国の機密機関のようなものに、つけ狙われているように思えてくるのです。ただ、私の場合、幻覚や幻聴の症状がひどかったため、そのような妄想を抱く余裕がありませんでした。そして、そのような妄想は、3日間ぐらいで治まりました。


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<著者紹介>

深澤 信行(ふかさわ のぶゆき)

キリスト教プロテスタント

福音派のクリスチャン

統合失調症当事者

『青葉ぶどう園』所属

大野キリスト教会会員

1973年神奈川県相模原市生まれ

2004年4月11日受洗

日本工学院八王子専門学校卒業

第一種情報処理技術者

HP: http://fuka.ikrst.net

E-mail: fuka@ikrst.net

ハンドルネーム:ふかごろう



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