終わりに
まず、タイトルについて。
読んでいただいてわかるとおり、AKBとプロレスについては自分なりの論を書いてきたが、ご皇室については、プロレス、アイドルとリンクする部分について述べただけで、「皇室論」と呼べるようなものは書いてない。当初は「AKB=プロレス論 皇室を戴く日本人の心性がAKB、日本のプロレスを~」というようなタイトルを考えていたが、長すぎる。よって、「AKB=プロレス=皇室論」にした。この「=」は一緒、という意味ではもちろんない。3者に共通するものを軸にした論、という意味で付けた。
ご皇室についての考察、著作は右から左まで山ほど出ているので、そちらを読んでいただければと思う。
本著では、プロレスがエンターテインメントであることを前提に筆を進めた。
第3章 18<虚実が入り混じっているプロレスとアイドル、そして人生>の文末の注釈で、「自分が言う『プロレスはショー』という言葉の意味には、そこに誇りこそあれ、プロレスを見下している意味は全く含まれていない。」「ショーと呼んでいることでプロレスをなめているように感じるとしたら、それはそう感じる人が『ショー』をなめているのである。」と書いた。
それはその通りなのだが、一方、プロレスをショーと呼ぶことへの抵抗、というか何か引っかかりも同時に感じる自分もいる。
(「いや、やっぱり真剣勝負かな?」という意味では全然ない)
1つは、伝説の力道山VS木村政彦など、プロレスには暗黙の了解が壊れる試合、完全に壊れるまではいかずとも、プロレスの途中で気に食わない相手に「仕掛けたり」といった、ショーの綻びが時にある、ということ。
そして、それより大きいのが、そのような綻びがない、いわゆる普通のプロレスでも、プロレスラーはリングの上で闘っている、ということだ。
よくプロレスを形容する時に使われる言葉、「観客との闘い」ってこと?
それが間違いとは言わないが、ここで自分が言っているのはそういうことではない。
もし、プロレスをただのガチンコだと思っているファンが大好きなプロレスラーに、「お願い!今度の試合勝ってね!」と、綺麗な瞳をまっすぐぶつけて訴えきたとする。
ファンの言葉に、プロレスラーは
「分かった。全力出して勝つよ。」と約束したとする。
試合の結果は決まっている。
しかし、この場合、このプロレスラーは嘘をついていないと自分は考える。
もしこの試合の結果が勝ちならば、興行後、ファンに言うべきである。
「君の応援のおかげで勝てたよ。」
この言葉にも嘘はない。
もし、最初のお願いの前にファンが
「プロレスって勝敗が決まってるって言われてるけど、違うよね?真剣勝負だよね?」
と聞いてきたとする。
もし自分がプロレスラーなら、そのファンの瞳をまっすぐに見て、堂々と答えられる。
全プロレスラーもそうだろう。
「もちろんだ。真剣勝負だよ。」
なぜ堂々とそう言えるのか?
そこに嘘はないからだ。
全く非論理的な話だが。
しかし、このプロレスラーは嘘をついていない。
そして、絶対にそう答えるべきであると思う。
プロレスファンなら分かってくれる人もいるかと思うが、プロレスを全く知らなかった人が、本著を読んでその意味が、というよりその心が、少しでも分かっていただけたら幸いである。
が、無理だろう。
表面の部分でなんとなくその「意味」が分かる…という方はいても、プロレスを心から好きになったことがない人には、本著を読んだだけでその心は理解できないと思う。本著をきっかけにプロレスを見始め、10年後、20年後にその心が分かるようになっていただければ嬉しいのだが。
プロレスがショーであるという表層の事実を分かっていて(※1)なおかつプロレスは闘いだということの意味、心が分かる人は、AKBファンになる素質を持っている。
人間誰しも、ファンタジー(各所、各場面で装っている自分)とリアル(素の自分)が重なった存在。
その人間の在り様を凝縮して見せているプロレス、AKB、アイドルについて、仕事をする傍ら、原稿を書きだしてからなんだかんだと1年近く…長々と、地味にカチャカチャ書いてきた。
この本はAKB、プロレスについて自分の思うところを述べたものだが、感情的な動機としては、AKB、プロレスに限らず、ジョーシキの枠からはみ出したものへの世間の偏見への怒りである。まだ書きたいテーマは多々ある。
自分は、物心ついてから、社会に、世間に、「ジョーシキ」にずっとイライラしている…何をイライラしているのか、それをAKB、プロレスについて述べることで吐き出した、それが本著かもしれない。
そんなわけで、お見苦しいところも多々あったとは思うが、ご容赦願いたい。
2012年8月27日 前田敦子AKB卒業公演のあった日の夜、自宅にて。
高橋 慶介
(※1)念の為書いておくが、「プロレスはショーだ」と言っている世の中のほとんどの人間、特にプロレスファンではない人間のほとんどは「ショーだ」と言ってはいるものの、何も分かってないまま言っているだけで、この場合の「分かって」いる人間には含まない。
【2013年10月21日追記】
本著を星海社新人賞に応募しました!
新人賞サイトで紹介されていますhttp://ji-sedai.jp/school/application/post_147.html
参考文献
【AKB、アイドル】
「AKB48ヒストリー 研究生公式読本」(週刊プレイボーイ編集部・編 集英社)
「AKB48握手会完全攻略ガチマニュアル」(秋葉いくお&チームW コスミック出版)
「QuickJapan vol.87 AKB48永久保存版大特集」(太田出版)
「秋元康の仕事学」(NHK出版)
「AKB48の経済学」(田中秀臣 朝日新聞出版)
「最下層アイドル あきらめなければ明日はある!」(大堀 恵 WAVE出版)
「AKB48総選挙に学ぶ心をつかむ技術」(三浦博史 フォレスト出版)
「別冊カドカワ 総力特集 失われた詩人としての秋元康」
「アイドル進化論 南沙織から初音ミク、AKB48まで」(太田省一 筑摩書房)
「アイドル工学」(稲増 龍夫 筑摩書房)
「AKB48ビジネスを大成功させた“7つの法則”」(溝上幸伸 あっぷる出版社)
「指原莉及1stフォトブック さしこ」(講談社)
「AKB48がヒットした5つの秘密 ブレーク現象をマーケティング戦略から探る」(村山涼一 角川書店)
「泣けるAKB48 メンバーヒストリー」(本城零次 サイゾー)
「48現象」(ワニブックス)
「AKB48 神公演クロニクル ~少女たちは劇場で何を叫んだか~」(本城零次 株式会社メディアックス)
「高橋みなみ 1stフォトブック たかみな」(講談社)
「非選抜アイドル」(仲谷明香 小学館)
【プロレス、スポーツ】
プロレス関連の本は小学生の頃から30年以上、膨大な数の本を読んでいるので、ここでは、本著の中で引用させていただいた本を筆頭に、他、本著の内容に関連ある数冊のスポーツ関連の本だけ挙げておきます。
「リングサイド プロレスから見えるアメリカ文化の真実」(スコット・M・ビークマン 早川書房)
「私、プロレスの味方です―金曜午後八時の論理」(村松友視 情報センター出版局)
「当然プロレスの味方です」 (村松友視 情報センター出版局)
「ダーティ・ヒロイズム宣言」 (村松友視 情報センター出版局)
「流血の魔術最強の演技―すべてのプロレスはショーである」(ミスター高橋 講談社)
「『大相撲八百長批判』を嗤う 幼稚な正義が伝統を破壊する」(玉木正之 飛鳥新社)
「トップスポーツビジネスの最前線2009」(講談社)
「日本は、サッカーの国になれたか。電通の格闘。」(濱口博行 朝日新聞出版)
【皇室】
本著では、皇室に関しては、プロレス、アイドルについての考察に関して述べているのみで、特に直接参考にさせていただいたという本はないのですが、読書録を付け始めた2008年以降に自分が読んだ関連本を記しておきます。内容的には右から左まで、さまざまです。
「近代知識人の天皇論」(石田圭介 日本教文社)
「歴史のなかの天皇」(吉田 孝 岩波新書)
「皇族の『公』と『私』 思い出の人、思い出の時」(寛仁親王 工藤美代子 PHP研究所)
「日本人として知っておきたい皇室のこと」(中西輝政+日本会議 PHP研究所)
「歴代天皇の実像」(所 功 モラロジー研究所)
「天皇家の歴史」(高瀬広居 河出書房新社)
「物語 英国の王室」(黒岩徹 中公新書)
「イギリス王室物語」(小林章夫 講談社現代新書)
「皇室はなぜ尊いのか 日本人が守るべき『美しい虹』」(渡部昇一 PHP研究所)
「象徴天皇制とは何か」(日本現代史研究会編 大月書店)
「驕れる白人と闘うための日本近代史」(ヒサコ・マツバラ, 田中 敏 文藝春秋)
「これが新しい日本の右翼だ」(鈴木邦男)
「新右翼」(鈴木邦男)
「天皇の起源」(林 房雄)
「マンガ入門シリーズ 皇室入門」
「マンガ 天皇制を知るための近代史入門」
「天皇-その論の変遷と皇室制度」(大原康男 展転社)
「ゴーマニズム宣言SPECIAL 天皇論」(小林よしのり 小学館)
「だから皇室は大切なのです」(篠沢秀夫 草思社)
「『聖断』虚構と昭和天皇」(纐纈 厚 新日本出版社)
「ゴーマニズム宣言SPECIAL 昭和天皇論」(小林よしのり 幻冬舎)
「天皇はなぜ生き残ったか」(本郷和人 新潮新書)
【その他】
その他、本著の内容に関わりあるかと思われる数冊を挙げておきます。
「遺書」(松本人志 朝日新聞社)
「松本」(松本人志 朝日新聞社)
「松本人志 仕事の流儀」(NHK「プロフェッショナル」制作班 イースト・プレス)
「松本裁判」(松本人志 ロッキング・オン)
「増補版 電通の正体 -マスコミ最大のタブー-」(『週刊金曜日』取材班 株式会社金曜日)
「電通」(田原総一朗 朝日新聞社)
奥付
AKB=プロレス=皇室論 ジョーシキに染まったアンチAKBへの宣戦布告
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