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 彼は、ガッと、メットを脱ぎ捨てると、きららの両腕をグイッとつかんだ。

 抱き寄せられる。強引にキスされそうになる。


   コワイッ。


 きららはガチガチになって顔を背ける。


「フッ、その気もねーくせにバカ言ってんじゃねーよ。

 オレだってアイツらと同じかもしれないんだぞ。いいのか」


 彼が怒鳴りつける。


「えっ、だって、」


   どおしよう……

    わたし…頭ん中が、ぐちゃぐちゃになってる。


「あんなメにあってんのに、どーして他人を警戒しない」

 彼は、きららのことを突き放す。

「だって、あなたは違うもの。だって……」


   そんな、そんなこと言わないでよ。

   想いがあふれて、言葉になんない。

   つかまれた腕の後が痛いよぉ。


 きららは、涙いっぱいの瞳で彼をみつめた。彼もじっときららを見ている。


   あー、やっぱりこの瞳。
   胸の奥が、キュンとする……

 彼は転がったメットを拾いあげる。そして強引にきららの腕をひっぱった。


「乗れよ」

                                         

 街の明かりが、左右に切り裂かれてく。

 深夜の第三京浜。

 多摩川を渡る。川の部分だけ光を失って、闇が流れている。


   もうすぐ家についてしまう。

   そしたら、お別れなんだ。もう、会ってくれるわけない。

   きっとわたしのこと、あきれてるわ。


 見慣れた風景の中で、きららはどんどん夢から覚めていく。

 今夜のことは、あまりに非現実的で…。

 ドラマチックで…。

 でも、きららはこのままずっと、 彼の背中の温もりを覚えていたかった。

 キキーッ バイクがマンションの前に止まる。

 きららはとまどいがちに、バイクを降りる。


   こんなとき、なんて言えばいいの?

   あ、言葉がみつかんない。

   どーすれば、わたしの想いが伝えられるの?


「……ごめんなさい。…どうもありかとう」

 きららは、それだけを言うのが、精一杯だった。

 彼はフッとマンションを見上げ、


「あそこは、アンタみたいなコが来るとこじゃないぜ」

「えっ」

「ガラージュだよ。二度とバカなまねすんじゃねーぞ」

 そう言うと、ギアに足をかける。


   うそ! 信じられない。

   でも、でも覚えててくれたんだ。

   あの、瞳が重なった瞬間。


「待って、お願い。あなたのこと教えて」


「……オレに関わるな」


「どうして、そんなこと言うの? お願い。名前だけでも知りたいの」


「……葉山 エイジ」


 エイジは、そう言うと、きららを振り切って行ってしまった。


   エ・イ・ジ……。

   エイジっていうんだ。

   彼……

   ねーエイジ。

   わたしたちもう会えないの?

   一瞬の出会いで、こんなにも心に残ってるのに…。



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