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現代の日本人よ(15)

 「虫にだって、植物にだって死はある。
 爬虫類だって、我ら哺乳類だって同じくそれぞれに命がある。
 鯨だって牛だって辛い時には涙を零すし、泣きもする。

 その命の重さはどう違うと言うがよ。
 弱肉強食の世界、確かにそうじゃろう。
 けれど、立場は違えど神から授かった命に変わりはないぜよ。


 人が問題なんじゃ。
 この地球は人を中心に回っていると思い込んしょって、ごく限られた者がそのルールを 決めているがよ。
 それに逆らう者は口を噤むか、死あるのみか。

 それが神の定めた摂理だと言うのか。
 そんな奴らのために命を張れるのか。

 命は軽いのか、重いのか・・・。
 奪わければならん命もある、じゃろうか・・・」


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― その1 ―  鳥取からの海軍塾生

 ― 大坂 ―
 順動丸で大坂に到着した竜馬は、近藤長次郎と共に新宮馬之助を誘っていた。
 「大和魂ぜよ。天皇(みかど)のため、日本のために命を懸けてこそ日本男児、真の土佐男児ぞ!」
 土佐者同士で酒を酌み交わしていると声が大きくなる。

 「日本国は異国に負けてはならんがじゃ! まずは海を征するんじゃ!」

 遂には語気が荒くなり、話しが大きくなっていく。

 「勝先生の海軍塾に入門して日本海軍を打ち立てるんじゃ! そして海を征し、異国を倒して日本を護るぜよ!」

 いつも竜馬の話しはデカイ。大風呂敷だ。

 でも新宮馬之助だって土佐の男だ、大きな夢や希望のある話しが大好きなのだ。
 「良し、わしも覚悟を固めた。海軍に加わっちゃるぜよ!」
 と酒の勢いも手伝ってそう言い切った。
 パシッと手を叩いた。
 「その決意と志じゃ、馬之助!」
 と竜馬は目一杯の嬉しそうな顔をする。
 「時代は海軍なんじゃ、お前(まん)の判断は正しいぜよ!」
 「海軍を強化して西洋人を追い払うんじゃろ!」
 「その意気じゃ!」
 竜馬はガハハと笑った。
 また一人、親しい仲間が加わった。それが堪らなく嬉しく思えたからである。
 
 その翌日、竜馬は近藤長次郎、新宮馬之助を伴って大坂は船場近くの淡路町にやって来た。
 そこに専称寺がある。
 ここが勝海舟門下の大坂拠点なのだ。

 竜馬は皆に馬之助が加わった事を告げて、紹介した。土佐出身の者な中には彼の事を知る者も多く、直ぐに打ち解けていた。
 そんなところに、千葉重太郎が飛び込んで来たのである。
 「鳥取藩士十数名の海軍修練参加が決まったよ、竜さん」
 「本当かよ!」
 「うん、藩主・慶徳(よしのり)公の許可が下りたんだ」
 鳥取藩に仕官している重太郎が藩に訴え、勝海舟が海防に興味を抱いていた藩主・池田慶徳を蒸気船・朝陽丸(ちょうようまる)に乗せて大坂湾内視察させた成果であろう。
 数日後には、二名の鳥取藩士がやって来た。
 「御主(おんしら)が鳥取藩で選ばれた者達かよ」
 と竜馬はその顔を覗き込む。
 「んん? 御主(おんし)らは見覚えがあるぞ」
 近眼の竜馬が更に近寄った。
 「・・・おお、お前(まん)は黒木、それに岡田じゃか!」

 「お久しぶりです、坂本塾頭」

 「あちゃー、そうじゃった、そうじゃった」
 竜馬が江戸桶町・千葉道場で北辰一刀流を追求していた頃、共に汗を流した鳥取藩士がいた。それがこの黒木小太郎と岡田星之助だったのである。千葉重太郎の指導の下、坂本竜馬が塾頭だった時代の塾生として竹刀を交えた仲である。
 「・・・驚きですね、こんな所で出会うなんて」
 黒木は嬉しそうだ。

 「千葉先生の紹介だから当然でしょう」
 岡田は少しひねくれている男だ。
 その横で黒木が浮かぬ顔をしたのを竜馬は見逃さなかった。
 「どうした、黒木」
 「・・・いや」
 そんな黒木を岡田が睨むようにしているのが、竜馬には理解できなかった。
 
 だが、それも直ぐに明らかになっていった。

 入門初日から、岡田星之助が土佐藩士達といざこざを起こしたからである。


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奥付



竜馬外伝i-30 脱藩赦免


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著者 : 中祭邦乙
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/nakamatsuri/profile


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