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2012 7月 #twnovel
ひつじ雲
雨宿り
花火
恋心
花子
漬け物婆ちゃん
砂の城
雨の理由
宇宙人の卵
活字料理
便所飯(改)
花火大会
夏の庭
探し人
シロ
七夕
VSパンダ
流れる
逢瀬
一年一度
ガタンゴトン
もうそう
飛ばない羊
透明人間
演出家
どん
しっぽ
屋敷
あおいとり
納豆
お茶
ぱんだこぱんだ
ついーと
どっち
トンボの眼鏡
センチメンタルマウス
キス
世界
花火
ブンメイ
かえる
行列のできる
虫除ける
スマホ
青空市場
真夏
掃除するゾウ
みんみん
遊び
活字中毒
お誕生日
いろとせかい
蝋燭の炎
金魚
ついのべ
自動販売機
ことりうた
ネバーランドGOGO
かくれんぼ
かき氷
責任問題
壁画
しゅうまつ
視聴者参加型
丑の日
羽化
蝉の声
魔王党
西の海
おことわり
本読み
オリンピックロンドン
2012 7月 書き出し
パンツはいてない
フラグクラッシャー
バイト
夕日
蘇る
雪女
ドーナッツ
逆転
鏡よ鏡
まんじゅうふかし
画竜点睛
魔法
盗まれた
爆弾
秘密クラブ
白雪姫
恋心
井戸の底
針刺し
小指
ソース
ホタル
量産品の恋人
扇風機
入道雲
被害者加害者
蒸発の夏
サンタ女子
特効薬
暑さ休み
ビー玉
名前
フルーツの国
溶ける
あやかし
コウノトリの苦悩
影売り
ほどく
ヒゲセンサー
左手
別れ
運命の乗換駅
尻尾の反乱
からから
銀河旅行
戦いが終わったら
眠れぬ森の美女
32日
はとぽっぽ
蛇足
ヒップホップじゃ眠れない
待つ
2012 7月 うたのべ
星の首飾り
制服
繋いだ手
草場の陰
太陽の彼女
すききらい
たこ焼き
浴衣ガール
天の川
暗闇
空想の街【氷涼祭編】
空想の街(仕立屋)
空想の街(仕立屋レス)
空想の街(にゃん娘)
空想の街(ウサギ宅配便)
空想の街(ウサギ宅配便レス)

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空想の街(仕立屋レス)

カランカラン。
ドアの音と共に声がする。お客様?顔を出す。
知らない顔に、知らない、足?
俯く女性と、その横にいるのは、お孫さんかしら?
「いらっしゃいませ。セクシーな出で立ちですね。ファッションなら、素敵ですけど…」
にっこり笑ってご挨拶。


あらすごい。
服に仕掛けを作るなんて、この子商売敵になるんじゃない?
ま、私の敵ではないだろうけど、だろうけどっ。
お婆ちゃんは気の毒だけど、こういうの好き。
お孫さんを応援したい気持ちがふつふつ湧いた。
だけどプロとして、だけれどね。


「ここは仕立屋。少し違った直し方、しませんか?」
私は紙に絵を描く。
前短めの後ろ長め。レースをつけて足は見えない。
マーメードドレスにニュアンスは近い。大人の女性をアピールする。
「お迎えになる方のお好みに合えば、ですけれど」
私は尋ねた。
 

話を聞いていると、どうやらデートの戦闘服みたいじゃない?
恋するための衣装。恋させるための衣装。
私の得意とするところ。裾に合わせて細部も調整する。
へー、風船、惑星なのね。
それじゃ、レースは星くずにして、この傘を合わせてもらおかな。


「できました」特急仕事、頑張った。
デートの時間、減ってしまったら困るもの。
「こちらの傘をセットでどうぞ」流れ星の流れる布で作った傘を手渡す。
「良い逢瀬を」
うん、よく似合ってる。さすが私。
これなら、どんなお爺ちゃんだってイチコロよ。


私は請求書を差しだした。
「今は払わないで下さい。今日のデートのお相手の反応聞かせて欲しいんです」
だからその時お支払い下さい。
「楽しみにしてます」
戸惑うお婆ちゃん。お辞儀する孫。
話したくてたまらなくなるような素敵な物語が生まれますように。


カランカラン。音がした。「はーい」今日は仕事に没頭したい。
お客様なら生きてても死んでても、大歓迎。


承りました。
私は考える。
碧の映える色。碧はなかなか難しい色だ。
青に近いか緑に近いか。
はっきりしないなら同系色より、碧がかった白から銀の布地が良さそう。
確かあったのよね。草の露から紡いだ糸で織りあげた布が。


そうこれ。このふわふわの布を曖昧なラインで裁断して、ゆるく縫い上げる。
背中はおもいっきり開けましょうね。
この布は時々昔を思い出してしっとりと露を抱くけれど、それはの想い出。
だから気にしなくていい。濡れはしないわ。


「お待たせ致しました」
さあ、できあがり。
可憐だわ。って自分で言うのもなんだけれども。
こういう女の子女の子なお洋服はたまらないわね。
自分が適齢期越えだから?うーん、平たく言うとそうかもだけれど、それは言わない約束なのよ。


お客様のご注文、ですね。サイズを頂きます。
思うままに。それはとても難しいご注文ですね。
お洋服のことじゃなくとも構いません。
お客様のこと、少しお話して頂けませんか?
私は、良い服しか作りたくないのです。


つまりこれは、勝負服。
私の大好きなジャンルだ。
しかも色恋の勝負服だなんて、最高じゃない。
「それは、是非勝ちましょう」
さあどうしよう。この羽を隠すなんて勿体ないことは出来ないわ。
やっぱり背中は開けるべきよ。


けれど相手を打ち負かすだけじゃダメなんだろう。
だってその人、ふらっと来るような人だもの。
詳しいことは解らないけれど、この素敵なひよ姐さんに、なんらかの愛があるはずなのよ。
ってことは、赤じゃだめ。決まった。


この人面白い。どういうつもりなんだろう。
だけどそんなの関係ない。私は誠実に依頼に相応しいドレスを作る。
「私が瑠璃羽の子に作ったドレスはきっとその子を幸せにします。
そして今から貴方に作るドレスはきっと貴方を幸せにします。」
 

「貴方の幸せと瑠璃羽の子の幸せ。それが並び立つものかは私は存じませんが、
きっと、丁度いい幸せに辿り着くはずですよ」
わかんないけどわかるのよ。だってこの人、覚悟の出来てる人に見えるもの。


私は桜色の布を手に取る。
白に近い桜色だ。桜が散っていく様を、すっかり閉じこめたその布は、
ピンク色なのに、大人の色気を感じられる。
優しくて、艶めかしくて、賢い。大きく開けた背中、肩。同じ桜色のショールを作る。
 

「私は幸せを作ることで幸せになれたらと思ってます」
思ってはいるのよ思っては。
やっぱりこの人面白いな。納得は全然出来ないけれど。
「二着。完成です」
二人分の服を渡す。
ねえドレス、このすれた姐さんを、ちゃんと癒すのよ。


「承りましたご住所をこちらに」凄味のあるお客様だった。
さっきの言葉も胸に刺さってる。
「適齢なんてのは 数字じゃなくて、やりたくないの言い訳」って。
どうして解っちゃったんだろう。
私、恋愛する気なんか全くないのよ。


姐さんを見送ってそのまま私は街へ出た。
時計塔広場、繁る桜を見上げ通り過ぎる。
きつね橋を通り過ぎて、いつかきたうどん屋さんを過ぎると、能登洲駅。
それを越えるとオトトイ食堂だ。
こんなに歩くの久しぶり。
「ご免下さい」
いるかしら。


依頼のメールだ。「材料をお持ち込みして頂ければ可能です」っと。
あの桜、綺麗よね。さぞかし素敵な反物になるはず。


今度は私がお客様。
座って店内を見渡す。中央区ではあまりみない造り。
「急いで戻らなければならないので何か飲み物頂けますか?」
今日、外に長いこといるのは精神上よくない。
折角の素敵なお店だ。また今度ゆっくりこよう。


「今日私、かくれんぼしてるんです。なかなか私は見つからない。
けれど、それは私が隠れるのが上手いわけじゃなくて、本当は鬼がいないから。
けれど私は信じたいの鬼がいるって」
強く信じられるお酒を下さい。
 

いただきます。日本酒って好き。
今度、肴と共に愛でにこよう。
「ご馳走様でした」お代をおいて扉をでる。
さあかくれんぼを続けよう。それにしても、鬼がいるって信じたいなんて、私、本当に思っているの?
鬼はあなた。私は。
 

カランカラン。お客様?
「あら、昨日の」物語の結末が、届いたみたい。
 

「そう、それは良かった」誰かの幸せは、私を安心させる。
恋愛っていうのは、素敵なものなんだよって、もっとたくさん思いたい。
「ねえ、それじゃ、次はお孫ちゃんの番よね?来年注文を楽しみにしているわ。
恋が叶う服、なーんてものも承りますよ?」


(承りました。あ、2枚必要になりましたらいつでもご連絡下さい)
私はそういって、うろたえる孫ちゃんを指さす。
こんな時代が私にもあったわ。
あ っ た の ! 


「いえいえー」上客ゲットですから。
「一緒に住まれるんですね。楽しくなりそう。ご注文じゃなくともいつでもいらして下さい」
もう見えない孫ちゃんと、丁寧にお辞儀をして去っていくお婆ちゃんに手を振る。
来年も、楽しみね。


空想の街(にゃん娘)

あたし、猫。みんなの、猫。
野良猫?違うわ。おひとり猫。
誰かのものにならないかわり、誰のものでもあるんだわ。
あたし、猫。気高い白猫。
好きな名前で呼んでもいいわ。
けれど、返事をするかどうかは、あたしひとりできめること。
 

黒い、猫。
あなたは誰の猫かしら。
誰かのものってどういう気持ち?
ふわふわ?ごわごわ?こんがり?
あたしの知らないその気持ち。
違う屋根から、あなたを見てる。
気がつかないで。近寄らないで。
あたしとあなた、黒と白。
並ぶと可愛くないんだもん。
  

妖しい。近づいちゃいけない気がする。
毛が逆立つ。ヒゲがとがる。
この街であたし、色んな人を見てきた。
だけどあの人、危険な匂い。
あの人の後ろ、沢山の透明な、人や物が見えてる。
うどん屋の場所?
後ろからついてきてるあの人達に聞けばすぐにゃのに。
  

あの人。またあの人。
妖しい。それは同じだけれど。
おかしい。だって、生きてない。
どうしたの?
後ろについてた透明な人達も消えちゃって。
どうしたの?
あなたもあたしと同じ、おひとりさまになったのかしら。
風船で降りてくる。
でもやっぱり妖しい。
 

あの人。まさかのあの人。
なんでどうして声がするの。
あの人もひとり。あたしもひとり。
あたしがおひとり猫なのは、あたしがきっと、可愛く賢い猫だから。 
 
そう思ってたの。ずっとね。ずっと。
だけどね。ううん、なんでもないわ。

あの人は、もうすぐいなくなるのね。
良かった。ひとり猫の理由を、考えようとすると、毛が逆立つの。
恐い人。
ひとりぼっちの理由を解き明かそうと。
ひとりぼっち?
ううんひとり猫。
ひとりぼっち?
ねえ、あたし、どうしてひとりなの?


あたし、どうして、見てるだけなの?
あたし、どうして、撫でられたり、しないの?
あたし、猫。あたしは、猫。白い、白い。そう、まるで、銀氷のような。白い、白い。
ね、あたし、どうしてあの人の後ろ、透明な人や物を、見ることが出来たのかしら。


あたしは、頷いた。
あなたが、秘密を、そらへ抱えて、飛んでいって?
あたしは、あなたの、想い出になってあげるわ。


あの人。妖しいあの人の手。
あたしに、風船を渡す。
ふわり。空へ。舞い上がる風船。いくつもいくつも。
ああ、美しい。
あたしは、きっと、忘れない。


いっちゃった。
こんなこと、前にも。
あたし、記憶を辿る。
あたし、猫。本当に?
あたし、猫、のカタチ。
前にも誰かを、こうして見送ったの。
あたしは、猫。
あたしは、猫?


あたし、猫。
だけど、猫じゃない。
ピピピ。
思い出した。
あたし、想い出。
みんなの想い出。
ピピピ。
あたしは、作られた。
見送るために。
あの人をじゃない。
違う誰かを、見送るために。
ピピピ。
あたし、機械。
想い出を、閉じこめる、機械なの。


あの人、約束してくれた。
秘密は、持ってく。
だからね、思い出したけれど、大丈夫。
あたし、猫。
あたしはまた、来年、ここで、寂しい誰かを迎えて、帰す。
あたし、猫。みんなの、猫。
野良猫?違うわ。おひとり猫。
ひとりでいるのは、みんなのため。


空に風船。あたしは、ひとり。ひとり猫。
さみしい?ううん、さみしくないわ。
だって、あたし、誰かの大事な想い出を、たくさん知って、いるのだから。
にゃあ。


空想の街(ウサギ宅配便)

「「きたの!」」
ドアをいきなりバターンと開けるのは。
顔なんか見なくてもわかる。うさぎ宅配便s。
この祭り時期、うさぎ宅配便はお休み。
今日の彼女たちはお客様だ。
お揃いの浴衣を注文している。
「一番素敵で」「一番かわいいの」「「できた?」」
はいはい。
  

トルソーに着せた浴衣を見つめる。
「「やるじゃん!」」
どうやらお気に召したみたい。
二人はいつも色違いの浴衣を注文する。
今年は、花火の布を使った。
浴衣の中、花火があがり続けてる。
「「ありがとっ」」
風と共に去る。
いつもより急いでる。そりゃそうよね。
  

息を切らせるうさぎ宅配便s。
「「はやく…風船…」」
家の前にうさぎのカタチの風船を結ぶ。
「よかった」「間に合った」
いい子にしないとママは帰ってきてくれない。
氷涼祭は我々にとってママと過ごせる唯一の日々。
「「はやく寝なきゃ!」」
明日の朝、ママにあえる。
 

お味噌汁の匂いがする。卵焼きの匂いもする。
トントントン。朝の音がする。
ぴくぴく動くウサ耳。
お布団の中、二人は同時に目を覚ます。
((きてる!))
ガバッ。
「ママ」「ママ」
「「ママッ!!」」
台所の母うさぎ、否、ウサ耳補聴器装着の母親に我々は、力一杯飛びつく。
 

「うるっさーい」
ママは相変わらずだ。
「「ママあのね」」
「もう身長100センチごえ!」「彼氏がなんと15人目に!」
「靴も小さくて」「もう一人に言い 寄られてて」
「「新しくしようかなって!」」
ニコニコしてうんうん頷くママ。
ママ、補聴器切ってるな。タイミングずれてる。
 

((3人でご飯食べてると、いつもこんなだった気がする。
嬉しい。でも嬉しいって言えない。そしたらいつもは嬉しくないみたいだし、そしたらママが困るかもだし。
困んなかったらそしたら我々が困るかもだし。言えない。))
仕立屋の店長が見たなら驚くくらいの静かな食事。
 

なんでもない特別な時間が過ぎていく。
 

「きた!」「ふってきた!」「「氷!」」
我々は、空に向かって大きく口を開けて駆け回る。
子供だから。
「なんでっ」「落ちてこないのっ」
不思議。不思議発見。
ママがニヤニヤと見てる。
嬉しい。キラキラが?
嬉しい。わかんないけど。
嬉しい。なんでもいいの。
嬉しい。嬉しい。
 

空想の街(ウサギ宅配便レス)

「「猫さんっ」」「可愛い」「我々の次くらいに」
黒猫のまわりをぐるぐる回る。
「触りたい」「時間が」
ぐるぐる回って、ぴたり止まった。
「「触るっ」」ガシガシ。
「ありがと」「これあげる」
黒猫の尻尾に花火模様の風船を、ぐるぐる巻いて走り去る。
  

この本の内容は以上です。


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