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そして、そんな由宇の予感は的中することとなる。



数時間が経過し、盛況のうちに終わった営業終了後の【Pegasus】では-


聖の提案により、緊急のミーティングが開かれようとしていた。
翼たちナンバー上位を含むホスト全員が、フロアに集結する。

営業後ということもあり疲れを見せる者が多数だったが、ミーティングを始める際に聖から漂うただならぬ緊張感が、それらを強引に掻き消した。



「お疲れッス!!」
「お疲れッス!」
「みんな、仕事後で疲れてるところ悪いな」

聖は、そう言うとホスト全員に対し軽く頭を下げる。


「聖、一体ミーティングだなんて突然どうしたというんだ?」
天馬が問い掛けると、聖はフッと不敵に笑いながら再び口を開いた。


「みんなも知ってる通り、今月下旬…ってもあと半月くらいだが、No.1の翼クンと俺のバースデーがある」
「……」
「俺が25日、その3日後に翼クンの28日だ」
「それが、どうかしたのか?」
「まぁな天馬。ここで、いきなりの俺からの提案なんだが……」

聖は、咳をきって再び口を開いた。


「翼クンと俺のバースデーイベントを、一緒の日にするってのはどうかと思うんだ!」
「な、何??」

突然の予想外とも言える発言に、フロア内はざわめき始める。
すぐ横でそれを聞いていた翼や天馬も、さすがに驚きの表情を隠せなかった。


「聖、突然の意見だが……詳しく聞かせてくれ」
天馬が彼に話の先を促す。

「へっ……。まぁ、特に深い意味はないんだけどな。せっかく、この俺と翼クンの誕生日がこんなに近いんだ。三日間隔でいちいちイベント開くより、いっぺんにやった方が楽だろうと思ったのさ!それに……」
「それに?」
「俺と翼クンが真っ向から勝負をキメるにゃ、まさしく絶好の舞台だと思ってな。二人のホストのバースデー頂上対決なんて、お客さんにとっても燃えるコトだろう?」
「バースデー対決か」
「あぁ。でも、もちろん翼クンがよかったらの話だぜ?日にちだって、俺が翼クンの希望する日に合わせてもいい。どうだい天馬、佐伯さん?」

聖の言葉に、天馬と佐伯は黙りながら顔を見合わせる。


「俺はかまわん。それでお客さんたちが盛り上がってくれるならな」
「私も、社長に同意です」
そう言うと、二人は翼の方に目を向ける。
翔悟たち他のホストたち全員の視線……そして、聖の挑戦的とも言うような鋭い眼差しが、翼にすべて降り注いだ。

それらを、翼はただ冷静に受け止める。


「翼、あとはお前の答えひとつだ。聖からのこの話を、お前は受けるのか?」
天馬が問い掛けると、翼は数秒沈黙した後、コクリと首を縦に振った。

「やらせてください社長、聖さんとの合同バースデー」
翼は、何事もなかったかのように冷静に言い切った。
それを見て、聖はニヤリと笑みを浮かべる。


「さすが翼クンだ!ありがとう、俺の話にノッてくれて。正々堂々、俺らホストもお客さんも燃え尽きるような勝負をしよう!」


翼と聖の合意のもと、合同でのバースデーイベントを開催することが決定し、ミーティングに参加していたホストたちは、驚きのあまりその時の疲れをすべて忘れてしまったかのようにざわめき続けていた。

その後、ホストたちが解散した【Pegasus】の事務所には、翼・天馬・聖の3人が残っていた。


「あらためて……ありがとうな翼クン、俺の提案を受け入れてくれてさ」
「いえ。そのほうが盛り上がるし、物事が一度に済ませていいのは俺も同じですから。それに-」

翼は言葉を一旦止めると、聖を強い視線で見つめる。

「もし聖さんのバースデーに先に"変な事件"でも起こられたら困りますからね」
「はっ?どうゆう意味かなそれは」
笑っていた聖の表情が、一瞬で強張る。


「仮にあなたとアリスの使徒が繋がっていた場合、わざと"事件"を起こされて営業そのものが危うくされたら、俺のバースデーイベント自体も消えて勝負をうやむやにすることもできますからね」
「何が言いたいのかな、翼クン」
「別に、特に深い意味は。ただ、あなたに言いたいように言われっぱなしなのもシャクだっただけです」

翼は横目で聖をとらえながら冷静に言い放った。

「……言ってくれんじゃんよ、俺を疑うなんてさ!」
「あなたが俺達に感じてた疑心暗鬼を、そのまま俺もそっくり発言したまでです」
それまでどこかうすら笑いすら浮かべていた聖の表情もいつの間にか真剣になり、二人は凄まじいまでの視線をぶつけ合った。

「……」
その二人のやり取りを、天馬は何も横槍を入れることなくただじっと見つめる。

「まぁいいや。とりあえずさー翼クン、天馬-」
「はい?」
「この際に何だ、聖」


「28日の合同バースデーで、俺はあんたらを完膚なきまでに叩き潰して、この【Pegasus】をいただくからな!」
まるで今まで隠していたような恐ろしい野獣のような眼光を見せつつ、聖は二人に強く言い放った。


「フッ、まぁ健闘を祈るよ」
そう言い残し事務所を出ていった聖の気配が完全になくなると、翼と天馬はフッと苦笑いを零した。


「翼、お前も言うようになったな」
「言われっぱなしってのはけっこう嫌いなんです」
「聖のあんなマジな顔、久しぶりに見たな」
「俺もあんな風に疑うようにハッパかけましたが、どうやらあの人のホストの仕事にかける意気込みってのは、本気みたいですね。あの目付き、正直ゾクリとしました」
「あんだけ宣戦布告したんだ、勝算はあるのか?」
「さぁ、そればっかりはわかりません」

翼と天馬は、同時に煙草の火をつけながら再び苦笑いを零した。


「まぁ、とにかく頼んだぞ……翼」
「はいっ」

決戦の前祝いとでもいうかのように、翼と天馬はビールを注いだ互いのグラスを「カチン」と交わした。



翌日-

翼は、西総合病院に入院している羽月のもとを訪れていた。


「翼くん、いよいよもうすぐバースデーやなぁ」
「あぁ」
「何や、緊張してん?」
「聖さんや社長の手前、かなり強気でいったけど……実はな」
「そっかぁ。でもな、俺うれしいわ、そうやって俺にだけは弱音見せてくれんのが」
「羽月」
「相手は社長と五分を争ったほどの人やし、店の命運がかかってんやもん。だから、プレッシャーきついときは俺のトコ来て愚痴ってくれてえぇからな」
「……サンキュ」

患者着でも元気に笑う羽月は、見えない重圧がかかっている今の翼にとってはとても心強く思えていた。


「翼くん」
「ん?」
「何もしてあげることはできへんけど……俺は、ずっと翼くんの味方やからな!」


ずっと味方-

愛菜のことや星羽会事件のことを彼に隠している翼にとって、うれしいと同時に胸が痛む言葉だった。



「ありがとうな、羽月」
「そや!がんばれ翼くん!」

店が残るように-
早く退院できるように-

互いにエールを送るように、翼と羽月は笑い合った。



そしてどんどん日にちと時間は経過し-



運命の7月28日


翼は、聖との決戦のバースデーをついに迎えた。










そして、この日に



翼たちの運命を決定づける事件が起こるなど、



この時はまだ、誰も知る由もなかった。





                                                  第33章へ

 

 

続きはこちらから⇒http://p.booklog.jp/book/53358



 

いつも当作品をご愛読いただきまして、ありがとうございます!

 

第32章まで無料で掲載させていただきました本作ですが、第33章よりのvol.4から有料となります。

(既存掲載分は、これまで通り無料です。)

 

ストーリーのクライマックスにさしかかり大変恐縮ですが、自分の大切な作品の著作権保護のためでもあります。

そして何より、本当に自分の作品を必要としてくださる人たちへ感動を届けたい思いひとつでございます。

 

有料にする分だけ価値があるくらい、ここからは怒涛の展開が待っています。

数々の謎も解け、すべてが明かされます。

 

わたくしが渾身で書き上げたこの物語の最後まで、どうぞ見守っていただければと思います。

最後は、温かな感動の涙をお約束いたします。

 

近日中に、第33~35章までを一挙公開にさせていただきます。(第34章まで試し読み設定致します。)

 

 

どうぞ、よろしくお願い致します!

 

 

 

                                                                                                                                                  Kai Asakura

 

 


奥付



lost wing~傷ついた愛の羽根~(Ⅲ)

 

著者 : Kai
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