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22-1


『紗恵……!

翼はその一瞬だけ凍り付いたように動かなかった。
懐かしさを含んだ妙なまでの高鳴りが、彼の胸の中で波打っていく。

去年の8月の"あの時"を境に自分の前から一切姿を見せなくなった紗恵が、今自分の目の前に突然現れたのが信じられなかった。


それは紗恵も同じだったのか-

彼女も着飾り様変わりした彼の姿を、信じられないようなものを見るように瞳を大きくしていた。





「キャッ、本物の翼クンよぉ☆ねぇ、早く隣りにきてぇ!」
真ん中の女性客が嬉しそうに促すと、翼はハッとしたように我にかえった。

「あっ、はい!じゃあ、お隣り失礼しますね」
翼は真ん中のリーダー風の女性と紗恵の間に誘われ、座ることになった。
腰をおろす瞬間、どこか懐かしい匂いが互いの感覚を交差していた。



「あらためてはじめまして、翼です。あの、お名前伺ってもよろしいですか?」
翼は頭を切り替えるように話を切り出した。
すると、リーダー風の女性がニコニコしながら答える。

「私はヒトミ、こっちの後ろの子はミチ。で……」
ヒトミと名乗った彼女は、翼をはさんで反対隣りに座る紗恵に目をやった。

「そっちの子は"明奈"。よろしくね」
「よろしくお願いします。みなさん」
翼は三人に笑顔で挨拶をした。
しかし、その内心に訪れた焦りをすべて一気に払拭することはできなかった。


 

 


『明奈…??』




翼はそう思いながら、さりげなく"明奈"の方を見た。
表情やしぐさ・何より自分への反応からして、彼女が紗恵なのは明らかだった。
しかし、何故ここでそのように名乗っているのか……
翼は少しずつではあるが、それに気付き始めていた。

「ねぇねぇ翼クン!」
ヒトミが口を開いた。
「はい?」
「翼クンて、ここの不動のNo.1を破って新しいNo.1なったんでしょう?すごいよねぇ」
「いえ、そんな」
「私、ホストでNo.1の人って、どんだけ高飛車なのかとか想像してたんだけど、翼クンはそんなとこ全然感じないもんね」
「いやぁ、応援してくれるお客さん方のおかげですよ。それには、とても恵まれてると思ってます」
翼がそう答えると、今度はミチが切り出した。

「そうゆう謙虚なところがいいんだよね!私、前に【Unicornis】ってとこでさ、前のNo.1だった翔悟って人指名したことあるんだけど、なんか俺は俺は~ってナルシスト雰囲気強くてダメだったもん」
「そうだったんですか。じゃあ、今日は楽しんでって下さいね!みなさんお飲みものは?」
「そりゃ新No.1と飲むんだから"ドン"イクでしょ~♪今日は飲もうね翼クン」
「わかりました!ありがとうございます」

翼は、その時偶然来たヘルプのホストにオーダーを告げた。



数分後-

ドンペリが一度に2本運び込まれ、その場には大勢のホスト達による盛大なコールが巻き起こった。

20人以上のホスト達から送られる圧巻のコールは、翼をはじめヒトミ達を類を見ないような激しい明るさが包んでいた。


「やっぱりホスクラは、これがたまんないわよねぇ!」
ヒトミとミチはホストクラブに慣れているのか、そんなに驚いた様子もなく笑って楽しんでいた。
しかし、一方の紗恵(明奈)は初めてなのか、驚いた様子でそれらを見上げていた。
それと同時に、隣りに座る変わり果てたかつての恋人の姿にも-
そんな彼女に気付いていたのか、どこと無く話し掛けるのをためらっていた翼は、コールが終わって静まり返ったタイミングを見て彼女に声をかけることにした。

「あの-」
そう言っただけで、紗恵はビクンと身体を反応させた。
「は……はい」
紗恵はぎこちなく小さな声で答える。

「明奈さん……は、こうゆうところは初めてなんですか?」
「え……えぇ……。まぁ、そうですけど……」
紗恵は、翼に目を合わさないように言った。
そんな他人行儀な彼女の姿が、彼にはまるで全くの別人を相手にしているかのような感覚を覚えさせる。
すると、そこにヒトミが口を挟む。

「あぁ翼クン、その子ねぇ、こーゆーとこ初めてってか遊び慣れてないみたいだから、今日半分無理矢理連れてきたのよ。いつも店で仕事したら、他の女の子と違ってすぐに家に帰っちゃうみたいだからさぁ」



『店?』



翼はそれを耳にすると同時に、彼女達の身なりやしぐさをそっと観察した。

OLにしては人より明るい色の髪の毛に、新しく外出用に濃いめに塗られたメイク・そしてブランドのバッグや、ミニスカートなどの露出の多い服装。
そして、いきなりのドンペリオーダー。
翼には、彼女らがOLや昼のサービス業の人間にはどうしても思えなかった。

そして、今自分の横で座っている紗恵も、以前の彼女とは違っていることは明白だった。
以前は一切着用しなかったミニスカート・パーマのかかった髪型・シャープな目元を演出するメイク。
どれをとっても、それは以前の紗恵の優しい面影と一致するものではなかった。



『紗恵、まさか……!?』



翼の中に一つの驚きが芽生え始めていた。


「しかしやっぱり【Pegasus】は新しいしいいわよねぇ。てか、【Unicornis】は今摘発になっちゃったしぃ」
ヒトミはポソリと呟いた。
「えっ?」
翼は思わず反応した。
「【Unicornis】って…ヒトミさんも、いったことあるんですか?」
「あるわよぉ。なんせ、けっこうな有名店だし、ここの社長の天馬さんも前はいたんだもんね。まぁ、私はそこの聖(ヒジリ)ってホストを指名してたんだけどさぁ。あんなことになっちゃってさ……ねぇ?」
翼の質問に、ヒトミはふすくれた顔で答える。

「あの-」
そう聞き返そうとしたとき、ヘルプのホストが翼を呼んだ。
「翼さん、そろそろ引きです」
「あ、そうか。すみません、ちょっと呼ばれちゃって」
翼がそう言うと、ヒトミとミチは「えぇ~?」と揃って声を上げる。

「すみません、なるべくすぐに戻ってきます」
翼は笑ってそう言うと、ヒトミ達は口を尖らせながら頬を膨らませた。

「ま、No.1なんだからしょうがないっか。あ、すぐにまたドンペリ入れるから、そしたら戻ってきてね。翼クン何か癒される」
「ありがとう!」
翼は自分のグラスの上に自分の名刺をスッと置くと、その場から急いで出ていった。

「……」
紗恵は、その置かれた名刺とを見比べながら、去っていく翼の後ろ姿を見つめていた。



『一也……。ここでホストやってたなんて……』

紗恵は瞳を潤ませながら、心の中でそうつぶやいていた。



一方席を離れた翼は、自分の前に突然現れた紗恵のことが頭から離れずにいた。



『紗恵のやつ…まさかホントに…』

そんな心境を何とか裏に隠しながら、翼は次の席の接客に急いでいった。





「お疲れ様っしたぁ!!」

【Club Pegasus】は、今日の営業を無事に終えた。
"St.Alice"が【Pegasus】から流れたというまことしやかな一部の噂も風化しつつある中、盛況を戻していたことに、天馬も心を撫で下ろしていた。


「翼」
天馬が翼に話し掛ける。
「社長」
「お疲れ。今日もよくやったな」
「ありがとうございます……」
「どうした?せっかくのNo.1になったってのに浮かない顔をして」
「あ、いえ。ちょっと疲れただけです」
「そうか。まぁ話は変わるが、あの"St.Alice"の噂が一部で出た中これだけ盛り上がったが、恐らく【Unicornis】の摘発による営業停止が原因だろうな。今日、やたら新規の客が多かっただろう」
「えぇ、俺のところにも新規のお客さんいましたね」
翼は紗恵を含めた三人のことを思い出していた。


「まぁ、【Unicornis】には前に俺や翔悟達もいたから、その繋がりで来てくれたのかもな。とにかく、このまま何もないことを祈るぜ。なぁ翼、お前もこんな目まぐるしい状況でNo.1になっちまったが、よろしく頼むぞ」
「はい!」
「これから、愛菜とアフターか?」
「えぇ、まぁ」
「まぁ、うるさくは言わないがプロである以上、体調管理にだけは気を配れよ」

天馬はそう言うと、翼の肩をポンと叩き事務所の方へと去っていった。


「さてと」
翼はそのまま店を出るために、エントランスへと歩いていった。
そして、離れた陰から光星がその様子を見つめていた。
その横には、押し黙る羽月の姿もあった。

「ちっ……クソ生意気にNo.1風ふかしやがってよ。なぁ、羽月?」
「……えっ?」
「えっ、じゃねーよ。あの野郎、今日もあの女とアフターだってよ」
「そうみたいやな……」
羽月がそうつぶやくと、光星は高い彼の肩にガシッと腕を組んだ。
羽月の身体が軽くビクリと反応する。

「こ、光星さん?」
そんな羽月の表情を見て、光星は鋭い目付きでニヤリと笑う。
「お前、あの愛菜って女のこと好きなんだよなぁ?」
「えっ?そ、そんなことあらへん」
「ごまかすなよ羽月。お前のあの女を見る目、ありゃ一人の客を見る目じゃねぇよなぁ?」
「そ、そんな。それは間違いやで」
「なぁ羽月……ちょっと耳貸せや」
羽月の言葉もよそに、光星は彼に耳打ちをし始めた。


「……」



「……何やて……!?」
羽月は思わず声を上げる。

「バカ、声がでけぇんだよ。要するにだ、お前が一つそうすりゃ翼の野郎は終わりってことだ。わかるよな?」
光星は低い声色を効かせ羽月に言った。
しかし、それを聞いた彼の瞳は、泳ぎながらも険しい色を放っていた。

「そんな……そんなこと、できるわけないやん!」
「できるできないじゃねーんだよ、なぁ?」
光星は、羽月の肩に組んだ腕の力をグッと強めた。

「光星さん、俺にとっては翼くんも愛菜さんも大事な人や。だから、そうゆうことは……」
「ほぉ、まぁいいんだぜ。言うこと聞かないなら、"あのこと"をばらしてもよ?そうしたらお前はもう店には……いや、歌舞伎町にはいられないぜ?お前の正体があの-」
光星がそう言いかけた瞬間、羽月は目を大きく見開いて彼にしがみついた。

「光星さん、それは……!」
「俺の言うこと、聞くか?」
光星がニヤリとしながら詰め寄ると、羽月は苦渋の表情を浮かべながらその首を縦に振った。



『俺は……俺は……』



血の涙を呑むような、羽月は苦しすぎるまでの決断を自らに下そうとしていた。


一方-

ビルをおりた翼は、下で待っていた愛菜と落ち合っていた。

「愛菜、待たせてゴメン」
「うぅん、ちょうどそこのカフェでお茶してたから」
二人はデートで落ち合うカップルのように手を繋いだ。

「いこっか」
「うん、私お腹減っちゃった」
二人がその場から移動しようとしたその時だった。


「一也っ……!」
翼たちの背後から、一人のある女性が力無い声で叫んだ。
それと同時に翼と愛菜は立ち止まる。
 
「……」
翼の胸の中で、ドクンドクンと高鳴りが始まる。
後ろを振り返る愛菜の視線の先には、切なそうな表情で自分たちを向いている紗恵が立ちすくんでいた。

「?だれだろあの人?翼のこと見てるけど」
「……人違いだろう」
彼女を不思議に思う愛菜に対し、翼は小さな声でつぶやいた。

「行こう、愛菜」
翼がそう言って愛菜の手を引こうとすると、紗恵は再びその口を開き続けた。


「一也……一也なんでしょ?まさか新宿でホストやっていたなんて。あのね、あたし-」
「人違いではないですか?"明奈"さん。俺は"翼"です。残念ながら、俺は"その人"ではありません。失礼します」
翼は自分を呼び止める紗恵を振り切るかのように、愛菜の腕をとってその場から歩き去った。


「一也……あんなに変わってしまって……ごめんなさい……。あたし……」
紗恵はそこに崩れながら、力無く泣き崩れた。
彼がホストとなり自分の知らない女性と手を繋いでいる光景が、今の彼女には胸の内にえぐるような痛みを与えていた。

22-2

 
「ねぇ、翼」
「なに?」
「いいの?さっきの女の子、なんか翼のこと言ってたみたいだけど。お店でちょっと見かけたけど、あの人今日お客さんで来てたよね?」
「さぁ。俺だって今日初めて会ったさ。かなり飲んでたし、きっと酔った上での人違いなんだろ」
「でも、さっき"一也"って-」
「さぁっ、行こうぜ!」
「ちょっと、翼ぁ」
翼はどこかごまかすかのように、愛菜の手を半ば強引に引いていった。





数分後-

翼と愛菜は、"楓"の前へと到着した。
すると、柴犬のチョコが尻尾を振りながら二人を迎える。

「ようチョコ。美空ちゃんはいるか?」
翼がチョコの頭を撫でていると、店の引き戸が突然強い音をたてて開いた。
翼と愛菜・チョコは、それにすぐに反応する。

「なんだ?」
すると、"楓"の店の中から一人の酔っ払ったサラリーマン風の男が出てきた。

「ったくよぉ~!こんなガキンチョがいたってよぉ、ママがいなきゃしょーがねーんだよぉ!ったく、こんなんでサラリーマンが飲めるかぁ!」
酔っ払っている男はフラフラになりながら、独り言のように喚いている。
そこに、慌てた顔をした美空がでてきた。
すると、彼女は"お会計してください"と書いた紙を男に必死で提示していた。
すると男は、その真っ赤になった顔を引き攣らせ、目の前にいる美空を突き飛ばした。
彼女が無言で地面に倒れたのを見ると、男はニヤニヤしながら近寄った。

「お嬢ちゃん、おじさんたちをなめちゃだめだよぉ~。ちゃんと声を出してハッキリ言わないと……ねぇ。じゃないとお金払ってあげないよ~んっと!」

「ちょっ、何よあいつ!翼……あれっ?」
愛菜が男に対し怒りを示していたとき、すでに彼女のそばにいるはずの翼はいなかった。
気付いたときには、翼は男の腕をねじ曲げて組み伏せていた。

「イテテテテっ!おい、何すんだこのホスト野郎!!」
「何してんだはこっちのセリフだ。お前、この女の子に何をしてた?」
翼が鋭い目付きで睨み据えると、男は一瞬にして萎縮した。

「いやっ、俺はそのよ……ちょっと酔っ払っちまったから……だいたい、この女しゃべらねぇし何のおもしろいサービスもしやがらねぇからよぉ」
「それで無銭飲食か?だったらそうゆうサービスの店に行けばいいだろう!それに、この子は言葉が話せないのに必死で一人で店やってんだ。お前みたいなむさ苦しいクソリーマンがふざけたこと言うな!」
翼は大声でそう言い放つと、男を強く突き飛ばした。

「うがっ!このホストごときが……」
「おぅ、なんなら店来るか?いつでも話し相手になってやるよ」
「うっ……くっ、くそっ!」
男は千円札3枚を地面に置き捨てると、フラフラな足取りでそこからいなくなった。
「ったく」
翼は男を睨みながら軽いため息をつく。

「美空ちゃん!大丈夫?」
愛菜が倒れているところを抱き起こすと、美空は震えながら何度もうなずいた。
「サイテーなオヤジね!言葉が話せないとかエロいサービスが無いからお会計しないなんて!」
「まったくだな。美空ちゃん、怪我はないか?」
翼が声をかけると、美空は二人に「ありがとう」と手話をした。

「ありがとう、かな」
愛菜はそうつぶやいた。
「愛菜、今の手話わかったの?」
「何となくね、一緒にいるうちにちょっと覚えたの」
それを聞いてか、美空は笑顔を取り戻して、ペコリと頭を下げる。

「さっ、何か食べよ。私お腹空いちゃって。って、翼どうしたの?」
「あ、さっきのオヤジ、慌ててたのか社員証みたいなの落としてったみたいでさ」
手にとった社員証をのぞいてみると、翼の目は再び鋭くなった。

「……こいつ……」
「翼、さっきからどうしたの?」
「いや、何でもない。後で警察にでも届けとくよ、コレ」
翼はそう言って、社員証を胸ポケットへとしまい込んだ。



翼と愛菜は、"楓"の店内に入りカウンター席へと腰をおろした。

「美空ちゃん、大丈夫?」
愛菜がカウンターごしにそうたずねると、美空はゆっくりとうなずいた。

「しかし、酔ってたとはいえ言葉が話せないことを罵るなんて、人としてサイテーよね!」
「あぁ。でも間一髪逃げられないでよかったよ」
愛菜と翼がそう言うと、美空はカウンターごしにおしぼりを手渡そうとしたその時だった。
翼たちの視界から、フッと美空の姿が消えるとともに「ガタン」という鈍い音が鳴り響く。

「……美空ちゃん?」
翼は不思議に思い、立ち上がってカウンターごしの厨房を覗き込んだ。
すると、そこには弱々しく息を切らせながら倒れている美空の姿があった。

「美空ちゃん!」
翼は慌てふためきながら、厨房に入っていった。





約2時間後-

布団の中で目を覚ました美空は、見慣れた部屋の天井を見上げていた。
「……?」
「美空ちゃん、気がついたか?」
彼女の目の前には翼と愛菜の姿があった。

「大丈夫?会ったときから何となく顔色優れないとは思ってたけど……。悪いと思ったけど、おうちに上がらせてもらったよ」
愛菜がそうたずねると、美空はゆっくりと手を宙に浮かべた。

『スミマセン。セッカク来テイタダイタノニ迷惑ヲカケテシマイマシテ……』
「翼、何て?」
「迷惑かけてすみませんって。そんなことないよ、美空ちゃんがそんな気を遣う必要なんてないよ。それに……」
翼は、横を振り返る。
そこには、美空の母・楓の優しい笑顔の遺影が飾ってあった。

「お母さん亡くなって、一人でずっとやってきたんだろ?疲れたんだよきっと」
『デモ、オ店ガ……』
「さっき俺が閉店の表示にしてきた。今日はもう心配せずに、ゆっくり休んで…。なっ?」
翼が美空の頭を撫でながらそう言うと、美空は瞳にいっぱいの涙を浮かべた。










張り詰めていたものがスッと切れたのか、










美空は起き上がり、翼の肩に抱き着いた。










「美空ちゃん……」

声にならない小さすぎる泣き声を漏らしながら、美空は翼の肩で泣き崩れた。

「ヒッ……ヒック」としか言わない彼女の口から漏れる僅かな泣き声と弱々しく握る手の力が、彼女が母を亡くしてからのこのしばらくの間どれほど気を張り詰めていたかが、翼には痛いほど伝わってきていた。

「美空ちゃん大丈夫、大丈夫だから……」
翼は、泣きじゃくる美空の頭をポンポンと優しく宥めた。



『翼……』

そんな翼と美空の姿を、横にいる愛菜はただじっと見つめていた。


「翼……私、先に行くね」
「えっ、どうしたんだ?」
「今は美空ちゃんとても辛いんだから、今だけは美空ちゃんのそばについていてあげて?」
「愛菜」
「No.1ホストでしょ?店じゃないけど本当に困ってる女の子は助けてあげて。私からのお願い」
意外なほどの愛菜の冷静な言葉に、翼はコクリとうなずいた。


「じゃあ私行くから。あっ、美空ちゃん」
『……?』
「元気になったら、また美味しい煮付けつくってね☆」
愛菜がウインクしながら言うと、美空はその泣いた顔をゆっくりと笑顔にしていった。
愛菜もそれを見ると、笑顔で「じゃあね」と言い残してその場を後にした。



『愛菜、ごめんな。それとありがとう』

翼は心の中でそう囁いた。










「しょうがない、しょうがないよね……」
帰りがけ、愛菜は一人何かを自分に言い聞かせるようにそうつぶやいていた。

「でも……」
愛菜はぷくっと頬を膨らませた。



「翼の、ばか……」
愛菜はそう言って、夜の更けた街中を歩いていこうとしていた。


「うんっ?」

その時、ひとり歩いていた愛菜は、誰もいないはずの周囲に自分をつけてきているような人の気配を不気味なほど感じていた。



『だれかが、私についてきてる……??』



「そこにいるのはだれっ!?」

愛菜は必死で声を上げた。









その夜に起こった出来事が、










狂イキッタ運命ノ結末ヘノ引キ金トナッタ。





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つづきはコチラ

lost wing~傷ついた愛の羽根~(Ⅲ)

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奥付



lost wing~傷ついた愛の羽根~(Ⅱ)

 
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著者 : Kai
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