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20.美空からの伝言

20-1

 
何故か言葉を話さない人物が自分をたずねている-

翼は不思議とその人物が誰なのかを予感していた。


「ねぇ翼、私のことはいいからそこに行ってあげて」
愛菜も佐伯の言った言葉で事情を察したのか、翼をエントランスに行くように促す。

「あぁ、悪いな愛菜。ちょっと行ってくる。羽月、ちょっと頼む」
翼はそう言うと、すぐに席をはずし佐伯とともにエントランスへと向かっていった。

「言葉を話さん人って、まさか」
羽月は歩き去る翼の背中を見つめながら呟いていた。


小走りの翼がエントランスに着くと、そこには半ば困った顔の佐伯を横に椅子に座りながら顔を伏せる一人の黒髪の少女の姿があった。

「翼、お前の知り合いか?」
様子が気になっていたのか、天馬もその場へと姿を現す。
「はい」
翼は一言そう答えると、少女のもとへと近づいた。

「美空ちゃん、美空ちゃんだろ?」
翼が話し掛けると、"彼女"はゆっくりと顔を上げる
彼の顔を見上げる潤んだ瞳のかわいらしい少女が美空本人で間違いないと、翼の確信した表情が物語っていた。

「美空ちゃん、一体どうしたんだい?どうしてここに?」
翼がそう言うと、美空は潤んだ瞳から涙を零しながら手をスッとかざした。

『オ母サンガ、オ母サンガ……』
手話をする彼女の手ぶりと表情を見て、翼は何かただ事じゃないと確信した。

「楓さん?楓さんがどうかしたのか?」
翼がそう言うと、やり取りをしている彼らの後ろには、いつの間にか愛菜と羽月の姿もあった。

「美空さん?」
「美空ちゃん、どないしたんや!?」
顔を知っている二人の存在に気付いてか、美空は目をゴシゴシと拭う。
そんな彼女を察してか、天馬は翼に話しかけた。

「翼、ここにいても他の人間の目に入ってなんだろう。とにかく、一度彼女にも席に移ってもらえ」
「はい」
翼はすぐに頷いた。
しかしそこに佐伯がまったをかけるように口を開く。

「社長、彼女を席に移したいのはもっともなんですが、もう全席他のお客様で埋まっています」
「そうか。じゃあ彼女が差し支えなければそれまで事務所で-」
天馬がそう言いかけた時だった。

「天馬、彼女……美空さんを私達のいるテーブルに座らせてあげて」
「愛菜」
愛菜の突然の言葉に、翼と天馬は一瞬言葉を止める。

「いいのか、愛菜?」
「えぇ。彼女の様子からしてただ事じゃなさそうだし。それに、私や羽月くんも知り合いなの」
愛菜の言葉を察したのか、天馬はすぐに首を縦に振った。

「わかった、それでいいなら。翼、彼女をテーブルに案内してやれ」
「はい。美空ちゃん、一緒にこっちへ」
翼のエスコートで、立ち上がった美空はフロアの方へと歩いていった。
その様子を、エントランスの天馬たちは不思議そうに見つめる。


「彼女、翼に対して手話をやってたな」
「あの女の子、何かの事情で声を出して話すことができへんのです」
呟く天馬に対して、羽月がポソリと答える。

「そうだったのか。それにしても翼のやつ、まさか手話を理解できるなんてな。羽月、愛菜をテーブルまでエスコートしてやれ」
「あっ、はいっ!」
「愛菜、すまんな」
「いいのよあやまんなくて。こっちこそお願い聞いてくれてありがとう、天馬。さっ、羽月くん戻って飲みましょう」
愛菜はそう言うと、羽月とともにフロアのテーブルへと向かって歩いていった。



『声が出せない……か』



彼らが席へ戻るのをエントランスから見守る天馬は、心の中でふとそう呟いていた。



一方-

一足先に席へと戻った翼は、ソファへと腰掛けた美空の膝にトーションを敷き、温かいおしぼりを手渡した。

「あらためて、いらっしゃいませ!」
笑顔でそう話し掛ける翼を見て、美空は暗かった表情を僅かに和らげる。

『イツモノ翼サンジャナイミタイ』
「いつもの俺じゃないって?まぁ、そんなに気にしないで」
『ソレニ、私ホストクラブニ入ッタノッテ初メテダッタカラ……』
美空は不思議そうに店内をキョロキョロと見回した。

「そうなんだ。もしかしたら、ちょっとうるさいかもしれないけど大丈夫?」
『大丈夫デス』
白を基調にしたオシャレな店内も、流れるトランスのBGMも、店中にいる多数のホスト達の姿も、そして時折コールをしながらドリンクを口にする姿も……
美空にとっては、なにもかもが初めての異空間そのものだった。
そんな時、ちょうど愛菜と羽月の二人も戻ってくる。


「美空さん、ちょっと騒がしいけど、ここなら今翼と話せるわ。大切な話なんでしょ?」
愛菜が優しい口調でそう言うと、美空は手話をサッとしながらすまなそうに頭を下げる。

「翼、彼女何て?」
「あぁ、せっかくの楽しい時間に強引に割り込んだようですみません……って」
翼が美空の手話を通訳すると、愛菜はニコリとしながら首を横に振る。

「事情はわからないけど、美空さんの顔からしてとても普通じゃないことはわかるわ。手話は私たちにはわからないから、存分に翼に話してね」
美空はあらためて愛菜に対して頭をペコリと下げた。

「翼くん、愛菜さんのお話の相手は俺がするさかい、安心してな」
「あぁ、ありがとう」
羽月と愛菜の協力を得て、翼は美空の手話による話を聞くことにした。
美空も、周りの視線に触れないように小さく手話をすることに努めた。



………………………。



約10分後



翼は美空から一通りの話を聞き終えると同時に、彼女から一枚の手紙のようなものを受け取っていた。
手話による"会話"が終わった後、周囲がどれだけ騒がしくても、二人の間だけは重苦しいほど静まり返っていた。

「そんなことが……」
翼は思わずそう呟いた。
近くにいる羽月と愛菜もやはり気になるのか、翼がそう呟いた瞬間彼の表情の異変には敏感なほどに気付いていた。





『翼サン』
「えっ?」
『突然コンナコト話シテ、ホントゴメンナサイ』
「いや、いいんだよそんなの。むしろ、知らせてくれてよかった」
『私、帰リマス。コレ以上イタラ愛菜サン達ニマデモットゴ迷惑ヲカケテシマイマスカラ』
「美空ちゃん、そんな。大丈夫なのか?」
『ハイ、翼サント話セテヨカッタデス。ア、オ会計ハ』
「いいよ」
『ソンナ』
「いいから。今は、お母さんのところにいてあげて」
『ハイ、アリガトウゴザイマス』
美空は翼にペコリと頭を下げると、スッと席を立った。
それに気付いてか、羽月と愛菜も彼女の方に視線を集める。

「美空ちゃん、帰るんか?」
「大丈夫なの?」
羽月と愛菜がそう話し掛けると、美空はその時の精一杯の笑顔で二人に対して頷いた。

「俺、ちょっと下まで送ってくるから、羽月もうちょっと頼むな」
翼は羽月に一言そう言うと、美空を連れてエントランスへと向かっていった。


「翼くん、何かすごい驚いてたな。どないしたんやろ」
「……」
羽月と愛菜は、美空とともに去る翼の後ろ姿を静かに見つめていた。

「そうだっ」
ビルを降りるエレベーターの中、翼はポケットから名刺ケースを取り出していた。
すると、そこから銀色にコーディングされた一枚の名刺を抜き取り、目の前にいる美空に差し出す。

「何かあったら、この携帯に連絡して」
『……』
両手で受け取ったその名刺を潤んだ瞳で見つめながら、美空は手話で『アリガトウ』と言った。

エレベーターを降りると、そこには店内とは違う現実的な街のネオンが続いていた。

「じゃあ、俺は仕事があるからここで。ホントに大丈夫かい?」
『ハイ、大丈夫デス。翼サン、アリガトウゴザイマシタ』
「美空ちゃん、答えずらいならいいけど何でそうまでして俺をたずねてきたんだい?」
『……』
美空はそれに答えることなく、二度三度と頭を深く下げると、翼にそれ以上顔を見せることないままネオンの奥の暗闇の中に姿を埋めていった。
その際、翼は彼女の靴がやたらボロボロに汚れていたことを思い出していた。

『あの子……喋れないリスクがあるのに、俺一人を捜すために靴があんなになるまで歌舞伎町中のホストクラブの"翼"をたずねて駆け回るなんて……』
翼はどこか感慨深くネオンの光を見つめていた。


「しかし……それよりもまさか、そんなことになっていたなんて」
翼は店に戻ろうとするさなか、茫然としながらそう呟いていた。












『"セント・アリス"』










美空から伝えられたその一つの言葉が、翼の脳裏から離れることはなかった。

4Fにある【Pegasus】のエントランスに戻ると、翼はキャッシャーから何やら言い争う声を耳にした。

「何だ?」
何かと思いキャッシャーをのぞいてみると、そこには目付きを恐ろしいほど鋭くした天馬が、電話の受話器を片手に怒りの感情を口にしていた。

「その件に関しては、俺は何度も断ると言ったはずだ!もうかけてくるな!」
力まかせに受話器のスイッチを切った天馬は、息をあらげながら目の前の壁を睨んでいた。



『あの普段いつも冷静な社長が……』
そう思いながら翼が見ていると、天馬はその視線にハッとしたように気付く。

「おう……翼、彼女は?」
「あ、無事帰りました。すみません社長、突然なことでご心配かけてしまいまして」
「いや、それに関してはいい。早く愛菜のところに戻ってやれ。他のお客も待ってるぞ」
「はいっ!」
翼は天馬に一礼をすると、フロアの方へと戻っていった。
彼がいなくなったのを確認すると、天馬はキャッシャーごしに怒りの表情を見せながら呟く。

「聖(ヒジリ)のやつ……一体どうゆうつもりだ!」
ホストたちはおろか内勤の佐伯さえ知ることのないまま、天馬は一人そのぶつけようのない怒りの感情で空を切っていた。

「愛菜、羽月、すまない」
テーブルに戻った翼は、待たせたことを愛菜と羽月に謝った。
「いいって☆翼、美空さんの方は大丈夫だったの?」
「あぁ、まぁ」
どこと無く表情の優れない翼を、愛菜は決して見逃さなかった。

「何か、あったのね?」
「……まぁ」
「詳しくは聞かないわ。翼をたずねてきた以上、彼女にもそれなりの事情があったんだろうしね」
「いや。全ては言えないけど、愛菜や羽月にもこれだけは聞いてほしい」
翼は、深い事実に関してはうまく伏せて、愛菜と羽月に事情を話し始めた…。



約2分後-

翼から事情の一部を耳にした愛菜と羽月は、半ば絶句していた。

「んなアホな、楓ママが重病で入院やて!?じゃあ、最近お店が開いてなかったのも」
「あぁ、その通りだ」
目を大きく開けて驚く羽月に対して、翼はただただ相槌を打った。

「あんなに元気やったママが……まさか病気やなんて……」
「美空ちゃん他に身寄りもいなくて、声が出せないのが理由で友達もできなかったらしい」
「それで……他に頼れる人がいなくて、手話を理解している翼をたずねてきたわけね。慣れないホストクラブにまで。それだけ、そんな時でも人と話せないって怖いことなのね」
「今、楓さんの容態はそんなに良くないらしい……」
「そうやったんか」
翼たちは、各々の言葉を交わした。
その際、隠してる事実や"手紙"のことがばれまいかと、翼はひとり肝を冷やしていた。


「翼、梨麻さんからボトルが入ったぞ。行ってくれ」
そこへさりげなく指示にやってきた佐伯の一言で、翼は再び席を離れることになった。

「ゴメン、ちょっとまた行ってくる」
翼は再三申し訳なさげにそう言った。
「いいって、ちゃんと仕事してきなさい」
愛菜は冷静にそう言った。

「愛菜さん、お邪魔していいですか?」
そこへ慌ただしく入れ代わるようにやってきたのは、由宇だった。

「由宇……いいわよ、どうぞ」
「どうも。羽月くん、君は外してくれていいぞ」
「あ、はい。愛菜さん、ほなまた」
由宇がヘルプ席についたと同時に、羽月は残念そうにその場から離れていった。

20-2

 
「愛菜さん、ホンマ翼くんを信用してんやな……」
羽月はフロアを歩きながらポソリと呟いていた。

「今日は何かと忙しい日ね。翔悟もだけど、あなたも来てくれるし」
「すみません、僕も久しぶりに愛菜さんとお話したくなって」
由宇はほのかな笑顔を見せつつも、愛菜に対してもいつも通り冷静な口調を保っていた。

「あなたも【Unicornis】の頃から相変わらずね」
「僕は昔からこうですよ。愛菜さんは、とても彼を買ってるんですね」
「まぁ……ね。あなたも翔悟みたいに気になるの?」
「別にそんなことないです。僕は翼くんを特に後押しするわけでもなければ敵視もしません。翔悟さんや光星さんに対しても同じです。誰がどうなっても、僕は自分なりにやっていければ、それでいいので」
「マイペースなのも相変わらずね」
愛菜と由宇は、そんな不思議な落ち着いた雰囲気の中でグラスを交わす。
そんな中、どこか哀愁を秘めた表情の由宇に見つめられていることに、愛菜は気付くはずもなかった。



数時間後-

「お疲れ様っしたぁっ!!!」
【Pegasus】は、その日の営業とその後のミーティングを終え、店内のホストたちは帰宅の雰囲気へと移っていた。
そんな中、翼はガラリと空いたフロアのソファに、ひとり腰をおろしていた。

「……」
まだ開いて中身を見ていない美空から手渡された"手紙"を、翼は手に持ってはそれをずっと見つめていた。










『詳シイコトハ、ココニ書カレテイマス』











美空が手話で伝えた"事実の詳しい内容"を見るのを、翼はどこか躊躇していた。
見れば、何かとんでもないことが起こる……彼にはそんな根拠のない予感すらしていた。



『セント……アリス……』



翼の頭の中から、その言葉がどうしても離れなかった。
その時、速足でツカツカとこちらに向かってくる足音を翼の耳は捉えた。

「くっ……」

苦渋の表情のまま現れた天馬は、翼の存在に気付くこともなく彼の向かいにあるソファにドサリと腰を埋めた。

「社長」
その言葉で、天馬はやっと翼のことに気付く。

「おぅ翼か。まだ帰ってなかったのか。愛菜は?」
「今日は、亡くなったおばあさんのところに一人で行くって言って帰りました」
「そうか」
天馬はおもむろに煙草の火をつけ、「フーッ……」とため息混じりに煙を吹き出す。
いつもと天馬の様子が違うことは、翼にはハッキリとわかっていた。

「あの、社長。何かあったんですか?」
「……」
翼がたずねても、天馬は無言で煙草を吸い続けていた。
しかし、手に持ったその煙草を灰皿にて揉み消した瞬間、彼は周囲に他の人間がいないことを確認すると口を開いた。


「翼、この後時間あるか?」
「??はい、大丈夫ですが」
「ちょっと飲みに出ないか?」



翼は、天馬の言う通りに彼についていくことにした。

店を閉めた後、二人は天馬の行きつけのショットバーに場所を移していった。



「こうして、お前と二人で飲むのは初めてだな」
「はい」
「それにしても、今日の売上はよかったぞ!まさか、お前がここまでやってくれるとは思ってもみなかった」
「ありがとうございます」

すると天馬は、グラスの中の蒼く輝くカクテルを飲み干し、横にいる翼を強く見据える。

「翼、今から俺が言うことは、絶対誰にも言うな」
「はい」
翼が頷いたのを確認すると、天馬はひと呼吸おいて話を切り出し始めた。



「【Unicornis】が……つい何日か前に摘発された」
「何ですって?」
天馬の発言に、翼は驚きながら聞き返す。

「【Unicornis】って、確か社長が独立前に在籍してたお店ですよね?」
「そうだ。そこが、薬物絡みで警察のガサが入ったんだ」
「薬物絡み?」
「今話した【Unicornis】のこともそうだが、覚醒剤や大麻などの違法ドラッグで摘発されたホストクラブや風俗店があるのは、別に今に始まったことじゃない。法律や都知事が決めた条例や政策で減ってきてはいるものの、実際まだそれが続いているのが現状だ」
「そうだったんですか」
翼はそこで天馬と同じ蒼いカクテルを一つ口にした。
それと同時に、バーテンダーによって空になった天馬のグラスが再び同じカクテルで充たされる。
天馬は続けた。


「翼は歌舞伎町で働いて時間も浅いから知らなかったろうが、しかしまぁ……あれだけ薬物を厳重に禁止していたあの店が、まさかこんなことになるとはな。ショックだったぜ」
「その【Unicornis】も覚醒剤で?」
「いや」
天馬は再びカクテルを口にすると、さらに続けた。

「俺もつい最近知ったことなんだが……表ざたには覚醒剤になってはいるが、その摘発の原因になったのは一般に聞くそれらの類じゃないらしい。どんなものかは詳しくは知らないが、聞く限りそれらよりも相当タチの悪いモノだって話だ。信じられない話だが、今その薬とやらが歌舞伎町にも蔓延し始めているんだ。俺はその話を、【Unicornis】のオーナーから聞いた」

現実離れしたような信じられない話に、翼はカクテルグラスを手にしたまま絶句していた。
しかし天馬の話はそれだけでは終わらなかった。

「現在【Unicornis】は営業停止状態だ。俺も世話になった店だから何とかしてやりたいとこだが……」
そこで一旦天馬の言葉は途切れた。

「社長?」
翼が小さく声をかけると、天馬はため息をついて再び話し始めた。

「……俺は今日あの店のあるホストに電話で言われたんだ。『Pegasusのあるホストがその薬を流している』ってな」
「なっ……うちの店に?!」
「俺はそいつに怒った。ウチにそんな奴はいない……そう信じたいからな。だが-」

天馬は一本の煙草に火を燈した。

「もしそんな危ない"薬"がウチの店から出てるとなると、俺もお前たちの前で決断をせざるを得ない」
煙草を片手に冷静に口調を保つ天馬の表情は、俄かに苦渋に染まっていた。
翼には、それが痛いほど伝わってきた。

しかし、彼には一つ気になることがあった。

「社長、一つ聞いてもいいですか?」
「何だ?」
「その"薬"の名前とかどんなものとかって、わかりますか?」
「名前?そうだ確か……」
天馬は一瞬考え込むと、すぐに口を開いた。


「"St.Alice(セント・アリス)"だったか」
「!??」
翼は思わず椅子を弾き飛ばしながら立ち上がった。

「おい…どうした、翼??」
「セント・アリス……!」

翼はその名前を呟くと、ジャケットの内ポケットから、美空から受け取った一枚の手紙を取り出す。
「翼、それは?」
「今日店に来た、あの女の子から手渡されたものです」
「それが、どうかしたのか?」
「手話で彼女から聞いた話では……」


翼は息を呑んで再び続けた。


「彼女の母親は、その"St.Alice"の影響で重体になっているそうなんです…」
「何だと……!?」
「この手紙には、それについての詳しい秘密が書かれているそうです」


翼と天馬は、絶対にないくらいの緊張した面持ちでそれを凝視した。

「翼、頼みがあるんだ」
「はい」
「勝手を言ってはなんだが、俺にもそれを見せてはもらえないか?」
「社長」
「俺は許せないんだ……!【Unicornis】を摘発に追いやった"St.Alice"のことを。だから、俺もできる限りのことは知りたいんだ」


静かな怒りすら感じさせる天馬の真剣な眼差しに、翼は無言で頷いた。



そして、その"手紙"をゆっくり、ゆっくりと開封していった。



「これは!」

美空から渡された"St.Alice"の秘密が記された手紙-










そこに書かれていたのは










読ンダ翼タチノ目ヲ疑ウ












恐ルベキ事実ダッタ-





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