閉じる


17.lost-愛菜のカタチ-①

17-1


今から十年前の199X年6月。
東京某所のとある住宅街-



そこに平和に暮らしていたと思われる一家4人の姿があった。

一家の名は"星宮家"。
そこに暮らす15歳の長女・茜は、両親と10歳の弟・直人とともに、明るく健やかに育っていた。



「ただいまっ!」
午後5時過ぎ-
学校から帰ってきた制服姿の茜は、元気よく靴を脱ぎ家の中へと上がる。

「茜っ、中学三年生の女の子なんだから、もうちょっとおしとやかにしなさいっ!」
そんな彼女に、母が注意するように声をかける。

「はぁ~い。あ、お母さん、今日の晩御飯はぁ?」
「カレーよ。早く着替えて茜も手伝ってちょうだい」
「はーい」
茜はそう言って、着替えるために2Fにある自分の部屋に行くことにした。

「あっ、それと茜」
「お母さん今度はなぁにー?」
「あんた制服のスカートちょっと短いわよ?」
「えーっ?だって学校のみんなもっと短い女の子いるもん」
「変な男でもついてきたらどうするのよ」
「こんくらいいいでしょー?彼氏いる子なんて、もっと短いんだから」
「彼氏っ?茜あんた今いるの?」
「いーなーい!じゃあ着替えるね」

茜はため息をつきながら、部屋へと上がる。


「はぁ」
部屋の中の茜は、スタンドミラーに映る自分の姿を見つめる。
「もう中三なんだし、あたしだって彼氏の一人くらい欲しいわよ」
茜は、ふくれながら制服からミニスカートの私服に着替えた。

すでにこの時点で167センチという高い身長と抜群のスタイルを持っていた茜。
中学三年とは思えない大人びた体型とかわいらしいルックスは、クラスでも近所でも評判だった。
しかし、男勝りなところもあるテキパキした性格のせいか、今のところ男子との付き合いなどは無いというのが現状だった。
だからせめて服装だけでも…と言った具合で、思春期真っ只中の彼女は、自分の中の女らしさを出そうと半ば必死になっていた。

「さて、母上様を手伝うかな」
茜はそう言うと、再び1Fのリビングへと戻ることにした。

階段を降りると、リビングの方から一人の子供の泣き声が聞こえてきた。


「あれっ?また直人かな」
リビングのドアを開けると、部屋の中のソファには背の小さい一人の男の子が座って泣いていた。

「えっ……うぇ……」
それを見た茜は、スタスタと歩いて近づき男の子の隣に腰をおろす。
「直人っ、どうしたの?」
「おねえちゃん」
直人は、弱々しい声を出しながら姉の顔を見上げた。
顔中は涙で濡れ、腫れ上がったように真っ赤になっている。
服や顔に付いた砂や埃が、彼に何があったのか茜には察しがついていた。

「また誰かにいじめられたの?」
「うん、みんな僕がチビだからって……うぅっ」
「直人、背が小さいのはしょうがないけど、直人がそうやっておどおどするから、そうゆう子達はいじめるんだよ」
「うん……でも、ケンカするの悪いことだしこわい……」
ヒックヒックと声を漏らしながら俯く直人。
すると茜は、スッと直人の頭を抱いた。

「そうだよね。直人は優しい子だもんね」
「お姉ちゃん……」
「でもね直人、ケンカは嫌いでも、どんなに泣きたくても、男の子はどんなにつらいことがあっても負けちゃダメなんだよ」
「負けちゃダメなの?」
「そうよ。ケンカに勝つとか強いとかじゃなくてね、絶対に負けないぞってずっと思うことが大事なんだよ」
茜はそう言いながら、直人の頭を優しく撫でていた。
すると、次第に直人も泣き止み、顔も綻んでいく。


「お姉ちゃん、大好き!」
直人はそう言いながら、茜の胸にギュッと抱き着いた。
「もう、直人のエッチ!」
茜は、恥ずかしがりながら笑った。


「茜ー、ちょっと手伝ってー」
キッチンからの母の声が茜たちのところに届く。

「はーい!直人、今日カレーだって!お姉ちゃんも手伝ってくるから、たくさん食べようね」
「うん!僕、カレー大好き!」

茜はピンク色のエプロンを取り出し、ササッと身につけた。

「茜あんた、またそんなミニスカート履いて!」
「別にいいでしょ、家の中なんだから!」



何事もない平和な一日の終わりが星宮家にも訪れる。


しかし、










その日の夜を境に、










茜たちの人生は一変することになる。










そんなことを、茜と直人の姉弟は知るよしもなく-。


そして、その深夜0時-



喉が渇いた茜は、飲み物を取りに1Fのリビングへと降りようとしていた。

「あれっ?」
階段を降りかけていた茜は、リビングで両親が何かを話していることに気付く。
彼女はそこで立ち止まり、耳を澄ませることにした。

「本当なの、あなた……?」
「あぁ。大変なことになってしまった」
「そんな……」
「"星羽会(セイバカイ)"をアサカワカンパニーが潰しにかかろうとしていたのは聞いていたが……まさかここまで…」



『アサカワカンパニー?何のこと……?』


隠れてその会話を聞いていた茜には、全くと言って良いほど理解できない内容だった。
しかし、両親の深刻に話している様子に、15の彼女でもただ事ではないのは読めていた。
すると、茜はたまらずその場に飛び出していった。


「お父さん!」
「茜、お前」
「今の話、何?アサカワカンパニーとか、それが星羽会を潰そうとしてるとか」
「いや、何でもないんだ……」
「何でもないわけないでしょ!?何かお父さんとお母さん変よ!私たちに何を隠してるの!?今の星羽会に何があるの!?」

茜が大きい声で問いただすが、父は何も言わず彼女の肩に手をかける。

「茜、ホントに何でもないんだ。決してお前たちや私たちに何かあるわけじゃない。仮にそうだとしても、必ず星母様が守って下さる」
父にそう言われてか、茜は落ち着きを取り戻し、ゆっくりと頷いた。

「わかったわ……私は星母様を信じる」
茜は、すんなりと納得した態度を見せると、再び自らの部屋へと戻っていった。



『星母様が私たちを守ってくれる』



茜は、ずっとそう信じていた。


星の母"マザー・ミカエル"の教えを仰ぐ信教"星羽会"-

茜たち星宮の家系は、生来その教えを請う直系の信徒として生きていた。
しかし、正体の知れない謎の信教という世間での偏見や差別を受けてきたため、彼らは公では正体を隠しつつも、信徒としての信仰をひそやかに続けていたのだった。


当時、世間で"宗教テロ"が騒がれた中か、茜たち星羽会も一般人からの差別的迫害を少なからず受けていたが、何とかごく日常の生活を送っていた。










しかし、茜が一抹の不安を抱いて過ごしたその翌日-









事件は起こった。

「♪♪♪~♪♪♪~」

午後6時過ぎ-
家の電話が鳴ったことに気付き、 茜はすぐに受話器を手に取った。

「もしもし、星宮ですが」


………………………。



「えっ」

受話器の向こうから聞こえた一言に、茜は絶句した。
すると、すぐにその場に力が抜けたように座り込む。


「茜、どうしたの?」
様子を見に来た母が話し掛けるも、茜は茫然としながら動かなかった。

「茜?」
受話器を持ったまま動かない茜は、次第に小刻みに震え始め、ゆっくりと母の顔を見上げた。


「お父さんが……事故で亡くなったって……。病院から……」


「えっ……?」


それを聞いた母も、時が止まったかのように固まった。


「もしもし、もしもし」と受話器の向こうから応答を求める声が聞こえるも、二人とも反応できる余裕すら失っていた。
突然耳にした現実を、直ぐさま受け入れるには時間がかかっていた。











約1時間後-


病院に着いた茜達三人を待っていたのは、病室のベッドで永眠している父の姿だった。

「お父さん……?」
茜が声をかけるも、もちろん白い布に覆われ横になる父がピクリとも反応するわけもないのはわかっていたことだった。

「あなた……」
「お父さん……どうして……?」

母と直人が声をかけても、床に臥せる父から言葉が返ってくることはなく、静寂だけがその場を包んでいた。
そこにしずかに響く三人の啜り泣く声が、徐々に大きくなっていく。

「何で、どうしてよお父さん……」
茜がそう囁いたとき、後ろにいた一人の医師が彼らに話し掛けた。

「死因は、自動車整備不良による事故死だそうです。発見された現場で、自動車のタイヤが外れているのが警察に確認されたそうです…」


「そんな……お父さんが……今朝まであんなに元気だったのに」
「お父さぁぁん!!いやだぁぁあ!!」

泣きじゃくる直人の泣き声が響き始めたのが示す通り、茜たち家族の悲しみは、その夜とどまることを知らなかった。

茜は、もう永久に起きることのない父の遺体に顔を伏せ、弟の前で大声を出したいのを我慢しながら涙を流していた。




しかし




それだけでは終わらなかった。


事故死した夫の葬儀の翌日に、





今度は母が自宅で首を吊って死んでいるのを発見された。





怪死事件のように立て続けに両親が亡くなっていった現実を目の前に、





泣き崩れる直人をなだめていた茜は、死んだ魚のように動かず憔悴しきっていた。





そして、両親を亡くし孤児となった茜と直人は、





わけのわからないまま、それぞれが別の親戚に引き取られ、離ればなれに暮らしていくことを余儀なくされた。



「お姉ちゃん……」
泣き顔の直人は乗り込んだ車から、茜のことをじっと見つめた。
瞳から流れる多量の涙が、姉の彼女には見るにたえないほど愛しく、辛かった。

「直人……ちゃんとみんなの言うこと聞くんだよ。元気でね……直人」
「お姉ちゃん……お姉ちゃ~ん!!」
直人の叫びも虚しく、彼を乗せた自動車は無情にも茜のもとから走り去っていった。

「直人……」
茜は涙を流しながら、走り去る自動車から手を振る直人の姿が見えなくなるまで見続けた。



『さようなら、直人……。どんなつらいことがあっても負けちゃダメだよ…』



茜は、涙を零しながら心の中で呟いた。



「茜、何してんだい!さっさと行くよ」
「あっ、はい、すいません」
自分を引き取る叔母に促され、茜はその場から離れることにした。
15年間暮らしていた、その家の前から……





それから半年間の茜に待っていたのは、





叔母たち一家に過剰にこき使われていく、奴隷のような日々だった。

17-2

 
「茜!早く洗濯と掃除も済ましなさいよ!」
「は、はい……わかりました!」

罵倒ともとれるような叔母たちの茜に対する扱いは、日を経つごとにエスカレートしていった。
必要以上に早朝に起床させ、学校以外の時間は家事などをすべてさせられ、気に入らなければやり直しまでさせられる。
叔父・叔母・そこの大学生の長男の分の家事をこなしながらの慣れない環境での労働生活は、まだ15歳の彼女にとってしのぎを削るものだった。

高校受験を控える中学三年生として勉強もしなければならないところだが、もちろんそんな暇なども与えてくれるわけもなく-。



そしてその年の12月-

街はクリスマス雰囲気で彩られていく中でも、茜の生活は良くなっていくわけがなかった。

「ちょっと茜ちゃん!ちゃんとトイレは綺麗に使ってよね!こびりついてるじゃないか!」
長男が茜に言い寄ってきた。
「えっ?私知りません」
茜が言い返すと、長男はキッと顔を引き攣らせる。

「お母さーん!茜ちゃんが便器汚したくせにちゃんと掃除しないんだよ~」
「ちょっ……」
茜が言い止めようとすると、叔母はすぐにその場にやってきた。

「何よ茜、トイレ汚してたくせにちゃんと洗わないってどうゆうこと?」
「叔母さん聞いて下さい、それは私じゃなく-」
「言い訳をするなっ!!」
叔母は茜に怒鳴り付ける。

「ウチの子が嘘をついてると言うの?!居候のくせに生意気に口答えするんじゃないよっ!」
「まったく、星羽会の人はこれだから困るね……母さん」
「ホントよ。星羽会の人間を家に置いとくだけでハラハラなのに……。それにしても身体だけはいっちょ前に成長してんのねぇ~役立たずのくせに」

茜は言いたい放題言われても、唇を噛みながらずっと堪えた。
言い返したい気持ちはあっても言い返せない歯痒さが、強く噛んだ唇から一滴の血を垂らさせていた。



『いつかまた弟に逢うため-』



それだけを胸に、弱冠15歳の茜は涙を飲んで耐え忍ぶことを続けた。









そして時は流れ、12月24日のクリスマス・イブのことだった。

「ただいま」

午後4時半…中学校から帰った茜は、家の中がいつもと雰囲気が違うことを察していた。



『なに……この臭い』



玄関まで漂うアルコール臭が、それに慣れていない茜の嗅覚を襲っていた。
ただ事ではないと感じ取った彼女は、直ぐさまリビングルームへと足を運んだ。

「えっ?」


そこには、仕事でその時間に家にいるはずのない会社員である叔父が、ネクタイを緩めたスーツ姿のまま、だらけるように座っていた。
彼の手にはロックグラスがあり、周りにはウイスキーや焼酎のボトルが散乱していた。
やってきた茜の存在に気付いたのか、酔って頬を赤らめていた叔父はギョロリとその視線を彼女に向けた。

「なんだぁ……茜、いつ帰った」
「叔父さん、こんな時間に何してるんですか……!?」
「何だっていいだろうがぁっ!!」
叔父は怒鳴り付けながら、今にも割れそうな勢いでロックグラスをテーブルにたたき付ける。
茜は「ヒッ」と言いながら目を閉じる。

「おい茜ぇ……」
「は、はい」
「つまみ作れぇ」
「あ、わかりました。じゃあ、鞄を部屋に置いてきたらすぐに戻って作ります」
茜は緊張した面持ちでそう言うと、自分の部屋へとそそくさと歩いていった。


「ふぅ……。叔父さん、どうしたんだろう……」
部屋の机に鞄を置いてそう呟いていたその時だった。

突然彼女がいる部屋のドアが、勢いよく「バン」と開いた。
「えっ!?」
茜が振り返ると、そこにはリビングにいるはずの叔父が立ちすくんでいた。
同時に、アルコールの臭いが部屋へと充満していく。

「お、叔父さん……?」
「……トラ」
「えっ……??」
「リストラされちゃったんだよーん!!ギャハハハハ!!」
すでに自暴自棄状態の叔父は、強引に物を振り回すように声を上げた。

「リストラ??」
「そう、クビだよクビ!会社クビになっちゃったよ~♪」
空回りな明るさが、目の前にいる茜には不気味にしか感じられなかった。

「叔父さん……」
すると、叔父はピタリと止まり、目の前にいる制服姿の茜を下から上まで舐めるように凝視する。
そして恐ろしいほどに目付きを鋭く変え、茜に歩み寄った。

「おっ、叔父さん!?」
「おい茜っ!何だこの短いスカートは!!」
叔父は茜のスカートを右手でギュッとわしづかみにし、そこから見える脚を見つめた。

「キャッ!叔父さん、何をっ!」
「中学生のくせにこんないやらしい身体に育ちやがって」
「イヤッ!やめて!!」
茜の制止も効かず、叔父はそのまま彼女を部屋のベッドへと押し倒した。
紺色のスカートが捲くれ、細くて白い脚があらわになる。
それを叔父はハイエナのような目付きで眺めては、酒雑じりの吐息を茜に吹きかける。

「うっ……!」
むせ返りそうな臭いが、茜の顔を背けさせる。
そんな彼女を見て、叔父はニンマリと不気味に微笑み始めた。

「よく見ればいい女だなぁ……お前の母親そっくりだ……」
叔父は舌なめずりをすると、異常なほどの強い力で茜の白いブラウスに手をかける。

「イヤァアァ!!」
裂けるような茜の悲鳴とともに、彼女の白いブラウスはビリビリと音をたてて破れていった。
そのすき間から、白いブラジャーに覆われた透き通る白い肌が姿を見せる。

「うまそうな身体だ」
「やめて!!やめて叔父さん!!イヤァ!!」
「黙れ!!!」
叔父はそう言って茜の頬を「バシッ」と叩く。

「キャアアアァ!!」
「大人しくしろ!」
叔父は、泣きながら暴れようとする茜のブラジャーを強引に剥ぎ取った。
プルンと膨らみつつも幼さを残す乳房が叔父の視界の中に現れると、彼の理性を壊すのに、そう時間は要らなかった。




もう止まらなかった。











肉食動物に食い散らかされた小動物のように、










茜は、あまりの恐怖で無抵抗なまま華奢なその身体を、多量な唾液を浴びながらむさぼりつくされ、











初めての『男』を無理矢理に刻まれた証として、










ベッドの白いシーツを、紅い鮮血で生々しく染め上げた。










気が付くと、











果てた叔父はすでにそこからいなくなり、










部屋には、乱れた制服姿のまま、仰向けで虚ろに部屋の天井を見上げる










惨殺死体のような茜だけが残った。










泣いているのか、笑っているのか、わからないほど










彼女の表情は、すでに息絶えたように動かなかった。









ただ…涙だけが、限りなく溢れていた。

それから一ヶ月以上にわたり、



叔母からの目を盗んでは、叔父からの茜に対する行為は毎日のように続いた。



いつの間にか、それに途中から気付いた長男をも加えた二人からの慰み物となり



次第に抜け殻のようになっていった茜の表情には



もう、生きる力は僅かしか残っていなかった。





「うっ……ううっ」

「ほらほら茜ちゃん、ちゃんと触らないと……」

「はぁ……はぁ……。やっぱり若い女の身体はいいもんだななぁ」

「本当だねお父さん、僕一度こんなかわいい女の子とこうゆうことしてみたかったんだぁ……。あれっ。何だこの背中の下にある羽根みたいなアザみたいなやつ」

「あぁ……よくわからんが何か、マザー何とか……って星羽会の人間特有のものらしい。まぁ、危ない星羽会の人間なんか、こうなるくらいがちょうどいいんだ」

「うわっ、茜ちゃんのスカートお父さんの痕が付きまくってるじゃ~ん。きたね~」

「母さんには内緒だぞ」

「わかってるよ~ハハハッ」

「茜、お前も他言するなよ。もし他言したらお前はここで生活できなくなって弟とは一生逢えなくなるんだからな」

「まっ、仮にここを出ても星羽会の人間を生活させてくれる人なんていないだろうけどね~ハハハッ」



"狂ってる"
茜は二人の男の手にむさ苦しく触られ、乱されながら思った。



悔しかった。



何もできない自分が、茜は悔しくてたまらなかった。

そんな茜の思いをよそに、二人の行動は、縄で縛りつける・物をくわえさせるなど、日に日にエスカレートしていき…



叔母からのしごきも重なってか、



茜の心と身体はすでに限界にきていた。



『助ケテ……直人……助ケテ……』



悲しさとつらさに顔を歪ませた茜は、心の中で弱々しくそう叫び続けていた。





そして、年明けの一月末……
ついにその時がやってきた。

「茜~、早く掃除済ませてしまいなさい!」
叔母の罵声が、よろめきながら動く痩せきった茜の耳に響く。

「あっ、はい……すいま-」
茜の言葉が不自然にそこで途切れたとき、家の中に「バタン」と倒れる音が響き渡る。

「ん?あ……茜?茜っ!?」

そのまま床に倒れた茜は、意識を失ったまま、目を覚ますことないまま病院へと運ばれていった。





                                                  第18章へ