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15.夜明け後の涙

15-1

 
「んんっ……」
カーテンの狭い隙間から差し込む一筋の明るい日の光に、ベッドの上の翼の目は覚めた。

「朝か…」
そこを睨みながら右手で目をこすると、彼の左胸部にピタリと頭を埋め眠りこける人物の姿があった。



『愛菜。そうだ、確か俺たちは-』



翼は、しわくちゃに乱れた白い布団の中に全裸で横たわる自分たちの姿を見ては、昨夜のことを思い返していた。

「そうか……そうだったんだよな」
翼はすっかりくしゃくしゃになった愛菜の髪の毛を軽く撫でる。

「う……ん……」
愛菜が色めいた甘い吐息とともに声を漏らしながら、その瞳を徐々に開ける。

「翼……」
「愛菜、おはよう」
「おはよう……。あれっ?あたしたち……」
「うん」
愛菜は、今の自分たちの状態に改めて気付くと、ほんのり顔を赤らめる。

「はずかしい」
「ステキだったよ」
「ばかっ」
頬を膨らます愛菜は、その弾力と張りのある白い胸をギュッと押し付けながら翼に抱き着いた。

「翼も……よかったよ」
「そうなんだ」
「うん」
翼と愛菜は、再び互いの背中に手を回し、固くロープを結ぶかのように舌を絡め合った。


「翼、
ありがとう」
「えっ?」
「翼のおかげで、少し元気になれたかも」
「そうか……よかったよ」
翼は愛菜の乱れた髪の毛を直すように軽く撫でる。
その際に、彼に抱き着き甘える彼女の姿は、普段の愛菜からは想像はできない、純粋無垢な少女そのものだった。
翼は、それが意外でならなかった。

「起きようかな」
そう言って、ムクリと起き上がる愛菜。
美しいラインで描いたようなその華奢な身体は、全裸になっていることで、ますますその繊細な白さを表していた。
しかし、その時だった。



『ん?あれは何だ??』


翼は、起き上がった愛菜の背中の下に、ある小さな模様のようなものを見つける。
薄暗い部屋の中をぼんやりと浮かび上がっている銀色のそれは、一本の縄のような細い物に絡められた鳥の羽根を形どっていた。

「……??」
翼はそれに目がくぎづけになったまま動かなかった。

「さてっ、カーテン開けようか」
片手に持ったバスタオルで前を隠した愛菜がカーテンを開けると、眩しいばかりの光が一瞬にして部屋全体に行き渡る。

「わっ」
翼は眩しさのあまり目を閉じた。
その際に、光に照らされた愛菜のボディラインが輝きによって浮き出ていく。

「いい天気……」
愛菜は、窓から映る晴れた景色を見つめながら身体を伸ばした。
「……」
翼は目を擦りながら愛菜の後ろ姿を凝視したが、さっきの模様のようなものは、幻だったかのように痕跡のかけらもなかった。
確認できたのは、いつもの彼女の白い素肌そのものだった。



『おかしいな、確かにさっき-』



「翼?」
「あっ」
いつの間にかバスタオルで身体を覆っていた愛菜の声で、翼はハッとする。
「どうしたの?ぼーっとしちゃって」
「あ、いや……」
「?」
「やっぱり、スタイルいいなぁ~と思って」
「もうエッチ!どこ見てるのよバカ!」
愛菜は赤くなりながらも、どこか嬉しそうに顔を背けた。
しかし、一方の翼は何とかごまかせたとホッとしていた。



『あんな模様、昨日シャワー浴びてた時にはなかったはず……』



自分の寝ぼけによる見間違いか-
翼は気にかかっていたものの、これ以上考え込むのはやめることにした。
愛菜本人に詮索することもできるが、昨日の病院での一件もあることを踏まえると、今は聞くべきでないと判断した。



「翼っ」
「何だ?」
「ありがとうね。昨日はホント寂しくて潰れそうだったから」
「愛菜、俺は何も-」
「翼が、いてくれてよかった……」
愛菜は涙ぐみ、一筋の涙を零す。

「愛菜、大丈夫か?」
「うん……。今日、もう一度おばあちゃんがいる病院行ってくるわ。翼は今日から仕事でしょ?だから帰って少し休んで」
「あぁ……」
翼と愛菜は、その後別々にシャワーと着替えを済ませると、部屋を出ることにした。


「ありがとう……」
愛菜は再び翼に抱きつき、顔を埋めた。
ホテルを出て愛菜と別れた翼は、一人タクシーに乗り自宅への帰路についた。

「ふぅ」
シートにもたれ掛かれ深いため息をつく彼の脳裏には、愛菜のことが強くあった。



『天馬さんが前に言っていた、愛菜が悩んでることって……このことだったんだな』



それと同時に、翼の中には愛菜を抱いた感触が未だ鮮明に残っていた。



『最後に紗恵を抱いて以来、かな』



複雑に絡まる思いを抱きつつ、翼はタクシーから見える輝く青い空を見つめていた。





1時間後-

翼は、自宅のベッドにてドサリと倒れるように横になった。
「ふぅ……」
ふと彼の口から出るため息が、昨日のからのことを思い返させる。
「……」
部屋の天井をを見上げる彼のまぶたは、次第に重さを増していった。



『どこかで……どこかで見たことがある……あの、縛られた羽根のような印』


心の中でそう呟いているうちに、翼は深い眠りへと入っていった。
何か不思議なものに吸い込まれていくように-。










翼は一つの夢を見た。










『ん?』










『それは……』











『セ……イバ……カ……イ』









『そんな……』










『そんなはずは!』











「そんなはずはっ……!」

翼はそう叫びながら、目をカッと開けた。
「ハァ……ハァ……」
上半身を起こした彼の額や首は、拭い切れないほどの汗で滲んでいる。

「何だったんだ、さっきの夢は……」
そうつぶやきながら、彼は右手をこめかみに当てる。
ハッキリと記憶には残らない不気味さだけが残る夢……。
翼の脳裏には、それだけが強く刻まれていた。

「一体何だったんだ」

そう言いながら、翼は時計を見ようと部屋の中を見渡した。
時刻は午後2時半。
昼下がりになり、店への出勤時間である午後4時へと近づこうとしていた。

「店、行かなきゃな」
翼は重い体を起こして、出勤への準備を始めた。

「……」
翼はスーツに袖を通しながらも、さっきの夢のことが気になっていた。
「時間だ、行くか」
どこか蟠りは残りつつも、翼はそのまま家を出た。

たかが夢だ、気にしててもしょうがない-

そう思うことにした。





30分後-

翼は【Club Pegasus】のあるビルのエレベーターの中に入ろうとしていた。

「翼くん」
背後から翼に声をかけてきたのは、由宇だった。

「由宇さん、おはようございます」
「おはよう」
挨拶を交わした二人は、そのままエレベーターにて4Fへと移動する。

「今更だけどさ」
「えっ?」
「翼くん、変わったよな」
「急にどうしたんですか?由宇さん」
「入店のときは、正直何だコイツって思ってたけど。今はすっかりホストらしくなってさ。新人からも優しい先輩だって評判だよ」
「そんな」
「これも、愛菜さんのおかげなのかな」



『愛菜-』



由宇の口から出た彼女の名前で、翼は昨夜の出来事を思い出す。

「そうかもしれないですね。俺も彼女にはすごく感謝しています」
「言ってくれるね」
エレベーターのドアが開くとほぼ同時に、由宇はフッと笑みを零す。

「俺は別にいいけど、うかうかしてられないな。光星さんは……。じゃあ、今日もがんばろうか」
そう言うと、由宇は足速に店の中へと入っていった。


「おはようございますっ!」
翼はエントランスから大きい声で言った。

「おはよう翼っ!」
「翼さん、おはようございます!」
周囲のホスト達が、笑顔で迎えるように翼に挨拶を返していく。
入店当初と比べて徐々に変わってきた周囲の反応が、彼の中の仕事の手応えをさらに実感させる。

「翼くんっ!おはよう!」
今日も元気いっぱいの羽月が、張り上げるような大きな声で挨拶をする。

「おはよう」
「翼くん、こないだはゴメンな」
「えっ?」
「俺、めっちゃ酔ってもうて……」
羽月は、恥ずかしそうに頭を掻きながら言った。

「気にするな。でも、これから飲み方気をつけろよ」
「うんっ、おおきにっ!さぁ、今日もがんばろな!」
羽月は翼にそう言いながら、ニカッと笑った。


「あっ!」
翼は何かを思い出したように叫んだ。
「翼くん、急にどないしたん?」
「実はさ、これ」
首を傾げる羽月を前に、翼はジャケットの胸ポケットにゴソゴソと手を入れる。
すると、そこからスッと一枚の写真を取り出した。

「あっ!」
羽月は思わず声を上げる。
「この間愛菜と三人で飲んだ後タクシーで送ったときに、俺の足元に落ちてたんだ」
翼がそう言うと、目を大きく広げた羽月はその写真を彼の手から強引に奪い取る。

「わっ」
「これ、よかったわぁ……翼くんが持っとってくれたんやぁ!」
「やっぱり、君のだったのか」
「うん、めっちゃ大切なものやから……。ホンマどこに落としたかって心配で心配で」
羽月は泣きそうになりながら、手に取った写真を見つめる。
すると彼は、突然目の前の翼にガバッと抱き着く。

「わっ、おいっ!」
「翼くんおおきに、ありがとう!これ拾ってくれて、めっちゃ嬉しいわぁ~☆」
自らの頬を翼に擦り付ける羽月。

「おっ、おい!やめろって!気色悪いな……!」
「あっ、ゴメンな翼くん。つい嬉しゅうて」
羽月は翼から離れ、僅かに乱した彼の服をササッと整える。
翼は、そんな嬉しそうな羽月の手にある写真を改まるように見つめる。

「なぁ、そんなに大切なものなのか?それ」
「え?うん」
羽月はフッと寂しげな表情を浮かべる。

「あのさ、確認のためにちょっと見させてもらったんだけど……もしかしてそれ」
翼が尋ねると、羽月は切なげな笑みを浮かべながら口を開いた。

「あぁ、これはガキの頃の俺やねん。わりとかわいいやろ?んで……」
羽月は写真に写る少女を指差す。

「こっちは、俺のお姉ちゃんや」
「お姉さん?」
翼は笑う写真の中の姉弟を改めて見つめた。
とても楽しげに姉と手を繋ぐ少年"直人"には、思っていた通り羽月の面影を感じていた。
そして弟の横でかわいらしい笑顔を見せる、姉"茜"。

あどけない無邪気さを感じさせるその古い写真を大切そうに手に持つ羽月を、翼は神妙に見つめる。

「ホンマ、よかった……」
その時、羽月の頬に一筋の涙が零れる。
「ホントに、君にとって大切なんだな」
「うん」

しかし、その時翼は胸の中でハッとした。



『たしか彼の家族は……』



「なぁ、答えたくないならいいんだけど一つ聞いてもいいかな?」
「何や翼くん、改まって?」
翼は一度息を呑んでから、再び口を開いた。

「前一緒に飲んだとき、君の家族はバラバラにって言ってたけど、もしかして……?」
突然の翼からの質問に一瞬目を丸くするものの、羽月はすぐに答えた。

「うん。前酔ったときにどこまで言ったかわからへんけど……俺、1月に東京来るまで10年間京都の親戚んとこにいてな。その前はこっちにいたんや」
「東京に?」
「うん。詳しく言えへんこともわからへんこともあるけど、どこに引き取られたかもわからずに離ればなれになったアネキが、東京の新宿歌舞伎町で働いとるって話をつい半年くらい前に聞いたんや」
羽月の瞳が次第に遠くを見つめる。
彼は続けた。

「ホンマか嘘かわからへん話やけど……俺、いてもたってもいれへんようなって。俺を預かってくれてたじいちゃんに言って東京に来たんや。"いつか絶対、姉ちゃん捜してくる"って」
羽月の口調が少しずつだが強くなっていくのを翼は感じた。
羽月はさらに続けた。

15-2

 
「もちろん何のあてもないで。けどな、もしホンマに姉ちゃ……アネキが歌舞伎町で元気に生きておるとしたら、と思ったら……。俺、前からやりたかったホストでいっぱい稼いで、アネキに楽して欲しいんやて。俺、ガキの頃アネキに迷惑ばっかかけとったから。他にも色々できることあるかもしれへんけど、アホの俺にはこんなことしかできんのや……」
いつの間にか涙声になっている羽月を、翼はただじっと見つめた。

「だから、これ失くしたときはどうしようかと思うたわ。俺にとっては、もうたった一人かもしれん肉親やから」
羽月は泣いていた。
泣き顔を隠すように、その手にある写真を顔の前につけた。



『たった一人の肉親……』



翼は複雑な想いを抱いていた。

「あっ、ゴメン翼くん……シラフなのにこんなみっともないとこ見せてもうて」
羽月は目をゴシゴシ拭いながら言った。
「あ、いや……」
「ホンマに写真おおきにな。あ、そろそろミーティングや」
羽月がそそくさとフロアに行こうとした時だった。



「羽月!」
翼がそう口にしたとき、羽月の動きが背中越しにピタリと止まった。











「お姉さん、見つかるといいな」
翼がそう言うと、羽月はコクッと頷き、少しずつ肩で笑い始めた。

「どうしたんだ?急に笑ったりして」
すると、羽月はくるりと振り返る。
「初めてやな~と思って。翼くんが俺のこと名前で呼んでくれたの!」


翼と羽月は、互いに見合うとフッと笑みを零した。
「さっ、今日からまた仕事がんばろう!」
羽月は、そう言いながらフロアの方に元気に向かっていった。











翼は言えなかった。






どんな事実があったか不明とはいえ、






自分が、その例の事情に関わったかもしれない"浅川"の血を引いていることなど、






彼の口からは口が裂けても言えなかった。






そう心に抱きながら、






翼も仕事と言う名の戦場へと向かっていった。

「よし、今日もやるぞっ!!」
天馬の掛け声を狼煙に、今日の【Club Pegasus】の営業は幕を開けた。
翼たちホストも、それぞれのいつも通りの仕事に入っていく。

「翼、ちょっといいか?」
天馬が翼に話し掛ける。
「社長、何ですか?」
「もう聞かなくても知っていると思うが、愛菜の例のおばあさんのこと-」
「えぇ…」
「さっきあいつからメールが来たよ。翼がいてくれて助かったってな。これから葬儀やら何やらで辛い時期だろうからな。何かあったらお前が支えてやれ」
「はい」
「もちろん、他のお客のことも忘れるなよ!」
天馬は、そう言うと翼の肩をポンと叩きキャッシャーの方へと向かっていった。

「よしっ!」
翼は、気を改めるように今日の仕事へと入っていった。




PM 6:00-

【Club Pegasus】への客足は途絶えることはなく、席は次々と女性客の姿で埋めつくされていった。
もちろん、翼の指名客も来店し始めていた。

「翼っ!」
明るい巻き髪に、今にも見えそうなミニスカート姿のサングラスをかけた一人の客が翼の名前を呼んだ。
「梨麻!」
「へへ~来ちゃった☆」
以前とはさらに比べものにならないほどさらに派手になった梨麻の姿に、翼も驚きを見せる。

「いらっしゃい!また露出が増えたね~」
「えへっ☆だって翼に見てほしかったんだもん!」
「またまた」
翼と梨麻は、そう話しながらソファに座る。

「ねぇねぇ翼聞いて!私ね、店でついにNo.1になったのぉ!」
「ホントに?すごいじゃん梨麻!」
「あはっ!果穂ちゃんにもついに勝ったしね、これも翼がいつも励ましてくれたおかげだよ☆いつもありがとね」
梨麻はそう言いながら、翼の腕に胸を押し付けるようにギュッとしがみつく。

「梨麻ちゃんはもう酔ったんですか~?」
「はーい♪」
翼と梨麻は、とても楽しげにその場の雰囲気を作っていた。

「すげぇよな~翼さん、愛菜さん以外にあんな可愛い女の子が太客にいるんだもんな~」
「あぁ。ダメホストなんて言われてたらしいけど、そんな面影なんて全くねぇよ」
二人の新人ホストがそう話していたときだった。

「お前ら何言ってんだ?」
ギロリと二人を睨み据えながら言ったのは光星だった。

「光星さん…」
「お前らよぉ、あんなカスを褒めてる暇があったらてめぇの指名でも取りやがれ!」
「……はい」
光星は「チッ」と口を鳴らすと、ヅカヅカとその場から消えていった。

「何だよあいつ……翼さんに今にも抜かされそうなくせによ」
「なぁ」
二人がそう話しているのを、翔悟は離れたところでじっと見ていた。
そこに天馬がやってくる。

「光星のやつ、かなり焦ってるな」
「社長にもそう見えますか?」
「あからさまだ。自分の客になるかもしれないはずだったあの梨麻って子を翼に取られ、しかも太い客に育ったんだからな」
「ですかね……あいつももうちょっと骨のある奴だと思うんですが-」
翔悟はため息をつくように言うと、天馬は彼の肩に手を置きながら口を開く。

「翔悟、お前も気をつけた方がいいぞ」
「えっ?」
「翼には他にも客が……特に愛菜がいることを忘れるな。うかうかしてると、お前まで食われかねないぞ」
「社長……社長は俺と翼とどっちが上だと思ってるんですか?俺があいつに負けるなんて-」
「どれだけ実力があろうが客がいようが、ホストは結果がすべてだ。お前も十分すぎるほどわかっているだろう?」

そう言葉を交わすと、天馬と翔悟は接客している翼を見つめた。



『翼……か』



「翼、B卓に千春さんだ!」
「はいっ!梨麻、ちょっと待ってて」
佐伯に言われ、翼は梨麻といたテーブルを後にし、新しく来店した女性客の方へと向かった。

二人だけではなく、光星も由宇も、佐伯や他のホストも、そして羽月も……皆が認めていた。
入店当初からホストとして凄まじいほどに成長した翼の姿は、まさに光り輝いていく磨かれた原石そのものだったことを-。



数時間後-

【Pegasus】の営業は終わった。
「ちょっと楓さんのとこで食べてこうかな」
翼は、やや疲れを見せながら、一人ふらりとネオンの中を歩いていた。
歩くこと数分、看板の明かりのついていない"楓"の前に着くと、そこには柴犬のチョコと戯れている羽月の姿があった。

「あれ、羽月?」
「え?あ、翼くん!呼ばれ慣れんからびっくりしたわ!」
「ここでどうしたんだ?」
「あぁ、見てやこれ」
羽月が指差す先には、引き戸に接着された一枚の貼り紙があった。
翼はそこに書いてある内容を口にし始めた。

「"申し訳ありませんが、都合により休ませていただきます……楓"。休みなのか今日、定休日でもないのに?」
「そうみたいなんや。俺腹減ったからソッコー来たんやけど…残念やな」



『どうしたんだろう?』


翼は不思議に思いつつも、今日の"楓"での食事は諦めることにした。

「ラーメンでも食べてくか」
「おっ、えぇなそれ!チョコ、またな」
翼と羽月は、どこか切なそうなチョコの頭を撫でると、その場を後にした。



2時間後-

帰宅していた翼のケータイが鳴った。
彼は、直ぐさま着信を確認する。

「愛菜」
着信は愛菜からのものだった。
翼はその後の彼女のことが気になってか、すぐにそれに応答した。


「もしもし、愛菜?」





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