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その1 ものがたりのはじまり


おだやかな昼下がり。ネコをひざに乗せたおじいさんが、

子供たちと話をしています。


「おじいさん。今日の話は、何?」

いたずらっ子が、おじいさんに聞きます。

「今日はね、煮豆のまめ子さんの話だよ」

ネコが、退屈そうにニャーと鳴いています。


おじいさんは、続けて、

「煮豆のまめ子さんが、冒険旅行に出かける話だよ」


そう言って、話を始めました。



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その2 まめ子さん登場

奥さんが台所で豆を煮ています。

外からは、子供たちの遊ぶ声が聞こえてきます。


鍋の中から、ぐつぐつぐつぐつと、煮豆たち

がなにやら話をしています。

「外の世界は、楽しそうだ」

「私、もう一度、外の世界を見たいの」

「やめたほうがいいよ」

「どうしても、行きたい」

「外は怖いよ」

「私、どうしても、行きたいの」


ぐつぐつと煮立っている黒豆の中から、ぴょんと一つ豆が飛び出してきました。


それが、煮豆のまめ子さんです。ころころころと、台所の隅っこへ転がっていきました。

「あら?今、豆が飛び出したかしら? でも、気のせいね」


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その3 救世主? あらわれる

奥さんは、気にしていません。


「こんにちは。新入りさん」

そこには、煎られた大豆がいました。

「私は、5年前の節分にまかれた、大豆です」

古い大豆の宿命なのか、シワが寄っています。

「こんにちは。大豆さん。私は、煮豆のまめ子です。外の世界に、どうしても戻りたくて、飛び出してきました。ここは、外ですか?」

「残念ながら、違うよ。外は、あの扉の向こうだよ」

がっかりしているまめ子さんに、大豆さんが聞きます。

「どうして、外が見たいのかな?」

「冒険がしてみたいの」

「そんな理由で行くのなら、やめたほうがいいよ」

「私、煮豆のままで、終わりたくない。もっと、もっと、自由な空気を吸ってみたい。大きな世界を見てみたいの」

「やめたほうが、いいと思うけどな」

大豆さんの言葉にも、まめ子さんはひるみません。

「一瞬だけ、一瞬だけでいいから、見たいの。外を。冒険なんて言わないから」


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その4 ついに出られる??

「わかったよ。そこまで言うんなら、協力するよ」


まめ子さんの熱心な話に折れた大豆さんが、「ニャー」と、鳴きました。

すると、そこへ一匹のネコがやってきました。


「この子は、まめ子さん。外の世界を見たいそうだ。ちょっと連れて行ってやってくれ」

ネコは面倒臭そうに、ぱくっとまめ子さんをくわえると、台所の窓から、憧れの外の世界へ。

塀の上にまめ子さんを置くと、隣であくびをしています。


「ありがとう。ネコさん」

その世界は、まめ子さんが育った畑とは違っていました。たくさんの家が並ぶ、住宅街。子供たちが、ボールをけって遊んでいます。

「楽しそうで、うらやましいわ」まめ子さんが、つぶやきます。

「私は、煮豆。黒豆の煮豆。それで終わってしまうのよ」

ネコは知らん顔をしています。そして、

「もう気が済んだだろ? 帰ろうか」

と、言いかけたとき、びゅん、黒いものが飛んできて、まめ子さんをさらっていきました。


「きゃー。助けて」


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その5 さて、どうなる

「おじいさん、カラスのしわざだね」

物知り君が、言います。

「そうだよ。カラスだよ。まめ子さんは、どうなるんだろうね」

 

空をぐんぐん飛ぶカラスにさらわれた、まめ子さん。初めて見る景色にうきうきしています。

「すごいわ。すごいわ」

まめ子さんは、うれしくてうれしくてはしゃいでいます。


「これは、冒険ね。ねえ、私をどこへ連れて行ってくれるの?」

カラスは、うるさいなと思っていました。家で待っている子供たちのためのご飯にしようと、まめ子さんを捕まえたからです。まめ子さんを無視しています。


「ねえ。どこ?どこに連れて行ってくれるの?」

まめ子さんは、そんなことも知らずに、ずっと一人でしゃべっています。カラスは、思わず、

「うるさい」と、言ってしまいました。

カラスの口から、まめ子さんが、ぽろっと下に落ちました。

「うわー!」

まめ子さんは、まっさかさまに下へ落ちていきます。



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