目次
序章  「日曜日の朝」
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第一章「アル晴レタ、昼下ガリ」
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第二章「精霊と青年」
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第三章「決戦、妖怪都市」
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第四章「夏の想い出」
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第五章「堕天使の囁き」
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第六章「世界ノ終ワリ……」
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最終章「永久に醒めぬ夢」
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 朝、八時にセットしておいた携帯のアラーム音が鳴り響く。目が覚めるなり、異臭が鼻を突き刺してきた。まだ眠かったが、耐え難い臭いで、一度意識してしまったら気になって二度寝はできない……て、まあこの時間に起きる予定だったのだから、もともと二度寝なんてしていられないが。

 サッシの端を軽く開けて換気をする。清々しい朝の空気が入り込み、鼻孔を洗浄してくれる。臭いの原因はわかっていた。和室の隅に置いてあるグロテスクなゴミの固まり、九十九神の親玉である。

 ただのガラクタを妖怪に見せ為に、俺たちはまず塗料を使った。ゴミそのままではなく、汚しをかける、気持悪い色に塗る。さらに、プラスチックをライターで焙って溶かす、接着剤をかけてテカりとドロドロにする、と色々試行錯誤しながら作業していたのだが……まあ、当然のごとく、溶けたプラスチックやらシンナーが、猛烈な異臭を発するわけだ。

 寝る前に一応、換気はしたのだが、あまりに臭い中で作業していたので、鼻が麻痺していたのだろう。あのときはだいぶマシだと思ったのに、改めて嗅ぐと耐えがたい空気だ。寝てる間に脳が溶けたんじゃないかと本気で心配になる……。

「おい、赤夏。起きろ、朝だ」

「ああ……って、臭っ!」

 起きて第一声はやっぱりそれか。

「今、換気してるから問題ない。ほれ、さっさとしろ」

 九時に瑠璃が来る予定だ。それまでに準備をしなければならない。洗面所にいって、さっと洗顔を済ませる。朝食は台所にインスタント食品があったはずだ。

「ビビンバとドリアどっちがいい?」

「じゃあドリアね」

「了解」

 台所のカゴからインスタントドリアを出してレンジにかける。さて、俺は必然的に残ったビビンバになるわけだ。べつにビビンバは嫌いではない、寧ろ好きな方だが朝からインスタントというのはエネルギー源として少し弱いな。かといって自分で料理は作れんし、母親はもう出た後だし……。

 ふと、台所の向こうにある、居間の座卓に目をやる。そこには布に包まれた長方形の物体が置かれていた。弁当箱だ。母親が出る前に作っておいてくれたらしい。なかなか気が利くではないか。

 ドリアと弁当を持って、和室に戻る。

「ほらよ」

「おお、サンキュ」

 弁当のおかずはカボチャの野菜炒めとスパゲッティ、あと冷凍のハンバーグ。カボチャオンリーの野菜炒めは初めて出るメニューだ。不慣れなせいか弱冠焦げているが、なかなか旨い。今度、晩飯にも作ってくれるように頼んでおこう。

「今日の撮影はどこだっけ?」

「ん? あれだ、墓場で村人が殺されてるシーンだ」

 ちなみに村人の死体役は赤夏である。

「あ、そうだ。忘れてた、ちょっと待ってろ」

 このシーンの撮影に必要なものをちゃんと作って置いたのに、忘れるところだった。危ない、危ない。

俺は“それ”をとりに、冷蔵庫に向かった。

「おじゃましまーす♪」

 玄関先のインターホンが鳴ってすぐに、瑠璃の元気な声が聞こえてきた。

出迎えるなり、いきなり飛びついてくる瑠璃。


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「おはよー、迅くーん」

「こ、こら……」

 危うくバランスを崩しそうになる。ていうか、こいつには女としての恥じらいとかそういうのはないんだろうか?

「いちいちに抱きついてくるな」

「だって、迅君って細くて適度な体してるから、抱き心地いいんだもん」

「セクハラだ、セクハラ!」

「何それ、女が男に触ってもセクハラにはならないよ」

「アホか、男が女にやってセクハラなことは、女が男にやってもセクハラだ」

 暑苦しい瑠璃を振りほどいて、和室に向かう。襖を空けた瞬間に、瑠璃が悲鳴を上げた。

「キャーッ!」

 再び飛びついてくる瑠璃、今度は悪意はないだろう。まあ暑苦しいことに変わりはないが。和室には顔面流血で真っ赤になった赤夏が座っていた。

「おはよ」

「お、おはよって、どうしたの赤夏君っ!?」

 声を上ずらせ、ビクビク震える瑠璃。密着した胸から、心臓の鼓動が伝わってくる。

「いや、べつにどうも」

「どうもじゃないでしょ、病院行かなきゃっ」

 慌てふためく瑠璃の姿に、俺は堪えきれず吹き出してしまった。

「ハハハ、心配するな。これは血糊だ」

「へ? 血糊……?」

「ほら。今日、死体のシーンがあるだろ? あれ用に作ったんだよ」

 簡易血糊の作り方は、以前に自主映画の本で読んだ。ガムシロップに食紅を混ぜるだけという非常にお手軽なものだが、これがなかなかにリアル。少しからかってやるだけのつもりだったのだが、予想以上に面白い反応をしてくれた。

「もうー、脅かさないでよ!」

 抱きついてたのから一変、思い切り突き飛ばしてくる瑠璃。

「まあ、気にするな。悪気はない」

「俺としても勘弁してもらいたいんだけど……」

 ガムシロ血糊でベトベトになった赤夏が恨めしそうにこちらを見てくる。この姿で、いつもの細い目で見つめられると、冗談抜きに怖いんですが……。

「ったく、こんな悪戯のために血糊かけるなよな」

「ああ、もったいないからそのまま墓地までいけば良いじゃん」

「ふざけるな、それは勘弁だ」

 そう言って濡れタオルで顔を拭く赤夏。やっぱ駄目ですか。

「じゃあ瑠璃、さっそく着替えてきて。風呂場の脱衣所、空いてるから」

「はーい」

 差し出した紙袋を受け取り、脱衣所に向かう瑠璃。袋には衣装のセーラー服が入っている。

「なあ、一つ聞いていいか?」

「ん、何だ?」


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「ヒロインの衣裳、何でセーラー服なんだ?」

「そりゃ、女子高生だからに決まってるだろ。シナリオ読んでないのか、お前は」

「いや、そもそも女子高生である意味がない気がすんだよ、このシナリオ。瑠璃ちゃんはもう高校も卒業してるわけだし」

 何を言い出すかと思えばこの男は。そんなことも理解できないだなんて。

「女子高生でセーラー服って言ったら、萌えの定番だろうが!」

 そう、日本男児は基本的に女子高生が好きだ。インターネットで『女子高生』と検索するとアダルトサイトや萌えアニメが大半を占めるのがその証拠。ましてや瑠璃は一般的に見るとかなり可愛い。これで客の心を掴んで人気をとるのだ。

「そんなもんかねぇ。俺としてはヒロインはお姉さまキャラを推したのに」

「お姉さまも捨てがたいが、瑠璃は童顔だし、そもそも実年齢的にもお姉さまは無理だ」

「それなら真尋さんあたりに頼めば良かったのに。それに女子高生にてしても、やっぱセーラー服よりブレザーの方が……」

 萌えの形は人それぞれ、百人いればそこには百通りの萌えがある。人と人が理解し合うのは難しい。だからギャルゲーとかは女の子たくさん出てきて、どんなタイプの萌えにも対応できるように作ってあるのだろう。

「真尋さんには出てもらいたかったけどあの人も仕事してるからなぁ、なかなか出演までは頼めんよ。しかし、ブレザー好きといいながら、セーラー服はちゃんと持ってるじゃないか」

「必要な衣装だから用意しただけだよ。俺のネットワークを使えばどんなコスプレでもすぐに調達できるけどね」

 衣装は赤夏の担当だ。どんなネットワークかはあまり想像したくはないが、買うと出費が馬鹿にならないので毎回、撮影の度に世話になっている。赤夏の部屋に遊びに行ったとき、絶対に見せてくれない物入れがあったから、たぶん、あそこに色々コレクションが詰まっているのだろう。コレクター同士は横の繋がりがある。俺は友達がほとんどいないので、顔の広い赤夏を友人に持ったのは救いだ。

「おまたせー」

 セーラー服姿の瑠璃がひょっこり顔を出す。イイッ、眩しい! この前のシーンは私服だったが、やはりこちらの方が断然良い。しかし、制服というものは何故、こうも美しく見えるのだろうか? 特別、デザインがお洒落とか奇麗というわけでもないのに。人類、七不思議の一つに数えてもいいかもしれない。

「あたしの学校ブレザーだったから、セーラーとか初めてなんだけど……どうかな?」

「うん、良いよ、似合ってるよ。ただ……」

「ただ?」

「スカートの丈をあと三センチほど短くしてくれた方が」

 痛っ! 赤夏と瑠璃のダブルパンチが頭部を打ちすえる。

「何だ、何だ! その方が受けが良いに決まってるだろ!?」

「客の受けじゃなくて、お前の劣情だろうがっ!」

 うう、あえて否定はしまい……だがしかし、客の立場に立って考えるのが良い作品を作る鍵だ。自分自身すら満足させられない作品で、他人を満足させることなどできるはずがない。

「ま、まあ、とりあえず撮影行こ、撮影。赤夏、カメラと三脚よろしく」

「あいよ」

 撮影場所はうちからすぐ近く。駅との間にあるあの墓場だ。しかし、外に出てみるとやはり暑い。いつにも増して陽射しが強い気がする。羽織っていた上着を脱いでTシャツ一枚になり、脱いだ方のシャツは墓石に掛ける。

「ちょっと、何やってんのよ!」


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「へ?」

「お墓に掛けちゃ駄目でしょ。祟られるよ」

 ああ、そのことか。変なことを気にするやつだな。まあ、オカルトマニアって言ってたから祟りや呪いの類には敏感なんだろう。

「だって地面置いたら汚れるし、神様だってこんなんで祟りゃしねえよ」

「もう!  そもそもこういうホラー映画撮るときは、撮影前にちゃんと御払いしなきゃいけないんだから」

 四ッ谷怪談などの劇を上演すると事故が起きるとかいう話は江戸時代からある。カメラや電波を発する機器は霊を呼びやすいともいうし。有名なのは心霊写真。ビデオに何か写っているというのもよくある。なんて話は聞いてても、わざわざ実際御払いまでするほど信じてはいないが。

「てかさ」

 赤夏が口を挟む。

「これただの死人だから。神様みたいに徳の高いもんじゃないから。祟るよ、きっと」

 妙なとこだけ冷静に分析して突っ込むな、赤夏……。

 

 ――じゃあたくさん埋まってるんだね。死体。

 

 心霊現象などは基本的に信じてはいない。だが、さすがに少し不気味に思えてきた。墓石から上着を外して肩にかける。

「じゃあいくぞ。まずこれ、死体発見シーン。ほれ死体、スタンバイ」

「はいはい……あの血糊ベタベタしてきしょいんだよな」

「後でうちのシャワー貸してやるから」

 渋々、寝っ転がる赤夏。地面に顔が着いた瞬間、悲鳴を上げる。

「熱っ!  この砂やばい!  太陽熱で焼けてる」

「耐えろ、耐えろ。ほーれ」

 無情に血糊を浴びせる。「後で殺す」と赤夏が呟いたのが聞こえたが気にしない。カメラ越しに覗くと本当に死体のようだ。白眼むいたり、呆けた顔したりと、こういう微妙な顔芸は得意だからな、赤夏は。血まみれの死体、それを発見する瑠璃、そして絶叫……今回の撮影は、珍しく順調に進んだ。

「じゃあ次のカット、シーン三六、カット八。死体を揺する瑠璃。よー……い……」

 ……あれ?  声が……出ない?  いや、厳密には違う。声が出せないというより、息が出せない。吸うこともできない。何かこう、空気がドロドロした膜になって顔に経張りついているような……。頭がぼうっとしてきて、目の前が白くなる。

 脳に酸素が通わなくなり、意識が飛ぶ……絞め技などで落とされたときの感覚によく似ている……。

 

 

「……ん君!  迅君っ!」

 体を揺すられて気が付く。目の前には俺を見下ろす瑠璃の顔が。いつの間にか俺は地面に倒れてしまったらしい。

「どうしたの? 急に……」

 どうしたの、と言われても……俺が知りたいくらいだ。何だったんだ、今のは……?

「いや、何か頭ぽーっとして意識飛んじまってさ」

「それたぶん、熱中症だよ。熱いからさ」


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 なるほど、そうかもしれない。このギラギラした太陽の中、帽子も被らず作業してたら熱中症になってもおかしくないか。ましてや連日、一日中撮影したり徹夜したりとかなり無理もしたし。

「ああ、悪いな撮影中断して……ちょっと休んだら治ると思うから」

「今日はもうやめた方が良いよ」

「そういうわけにはいかんだろ、ただでさえ遅れてるのに監督である俺がこんなことでへこたれるわけには……」

「めっ!  ちゃんとお家帰って休みなさい。撮影ならあたし、朝一で来て終わらせてあげるから」

「俺もちゃんと行くから、お前さっさと戻って寝てろ。監督倒れたら話にならん」

 瑠璃……赤夏……改めて思った。こいつら、良いやつ等だな。起き上がろうとしてふらつく俺を、横から支える瑠璃。しかし、この二人は平気だったのに、この俺が真っ先にダウンとは情けない話だ……ランニングでもして体力を着けんとな。

 墓場から続く道路をトボトボと歩く俺たち。途中ですれちがった婆さんが、目を見開いて足早に去っていったのを見て、自分たちの姿を思い出す。血まみれ男とセーラー服少女、カメラと三脚持った奴の三人組は怪しすぎるだろう。苦笑いが漏れた。

「あそうだ、あれ。祠と鳥居どうする? 明日の朝一緒に撮るか?」

 そういえば、今日の予定では墓場のシーンだけでなく、祠と鳥居のインサートも撮る予定だったな。まあ、役者のいない場面だし、撮るのはすぐだろう。

「すぐそこだし今度撮ってくるよ」

「祠なんてあるの?」

「ああ、瑠璃は知らないか。うちの向こうに神社あるじゃん? そのさらに向こうに鎮守の森があって、そこに祠みたいなんがあるんだよ」

 鎮守の森、本来は神社を囲むようにして存在する森林。昔はどこの神社にも必ずあったらしい。まあ、現在は小さな神社には森と呼べるような物はないところが多く、うちの近所のだって、神社の近くに広がる畑の中に一部木々が茂っているだけだ。面積にしてうちの庭のせいぜい三、四倍といったところ。森と呼べるかと言えば微妙なところだが、それでも何やら古い鳥居と奥の方に小さな祠があって怪しい雰囲気は満点だ。おそらく、昔は神社近辺一帯を森が囲っていたんだと思う。人が住むにつれて伐採が進み、申し訳程度に、祠と鳥居の周りだけ木々を残したといったところだろう。

「そういや、とんどさんってあそこでやるんだよな」

 赤夏がぽつりとつぶやく。

「ああ、そういやそうだな」

「とんどさんって、こないだ図書館で言ってた?」

「うん。正月の神様を祀る行事」

「神様っても、ここのやつはけっこう怪しい神様だけどな」

 赤夏の発言に、俺と瑠璃は顔を見合わせる。ニヤリと笑う赤夏。

「考えてみろ。神社が目の前にあるのに、わざわざあの祠のとこで燃やすってのも変な話だろ? それもここだけじゃないんだな、これが。賽之木町のとんどさんは線路沿いの竹林でやるんだけど、あそこは”間引き”で死んだ子供埋めてたとこらしいぜ」

 一瞬、背筋に冷たいものが走った。間引きとは、畑の農作物を育てる際に少数の苗を残して残りを抜いてしまう作業を言う。転じて、生まれた子供をすぐに殺してしまうこと刺す言葉としても使われた。貧しい家で食い縁を減らすための間引き、その埋葬場で行われるとんどさん……。



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