目次
序章  「日曜日の朝」
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第一章「アル晴レタ、昼下ガリ」
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第二章「精霊と青年」
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第三章「決戦、妖怪都市」
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第四章「夏の想い出」
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第五章「堕天使の囁き」
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第六章「世界ノ終ワリ……」
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最終章「永久に醒めぬ夢」
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 おいコラ、赤夏、何てこと言うんだ! 変な誤解を招くことを言うな。どこをどう解釈したら俺と瑠璃が恋人ってことになるんだ! わかったぞ、これは陰謀だな。お前、先輩に気があるんだな、だから俺を彼女持ちってことにしてこっちになびかないようにしたんだな、姑息な男めっ!

 幸い真尋さんは、俺たちのノリがわかってるので本気にはしていないようだ。まったく、どうしようもない奴だ、こいつは……。

「大丈夫、冗談なのはわかってるから。でもね、迅君」

「は、はい?」

「君はもうちょっと女心がわかるようになった方がいいかな」

 そう言って瑠璃の方に視線を向ける真尋さん。瑠璃は赤夏の隣で不機嫌そうにこちらを睨んでいる。

 何か気に入らないのは見て取れるがそれが何なのかわからない。睨んでいるのは俺か、真尋さんか、いやたぶん両方だ。さっきから変だな、こいつ……たしかに女の考えることは俺にはわからん。

「さて、殺陣を教えて欲しいって言ってたけど、私、殺陣はわからないわ」

「いえ、普通に剣術の形を教えてくれたらいいですよ。それに剣道の方も、ここしばらく竹刀握ってないんでかなり腕落ちてると思うんで」

「そう、それは鍛え甲斐がありそうね。さ、行きましょ」

 出た、真尋さん必殺の氷の微笑。正直、この人に見られるとかなりドキドキする……ええ、でもそれは嫌な感じのドキドキじゃなく、なんかこう、心地良いゾクゾク感。ちょっと危ない? でもね、俺だけじゃなくて赤夏だって、他の部員だって、それは同じだったんだよ。真尋さんが来たときは皆、いつにも増して一生懸命やってたわけ。そう、倒れるくらいに。

 そういう不思議な魅力が彼女にはある。その何だかわからないオーラのようなものが、女王様と呼ばれる所以だ。

「ねえ迅君」

「何だ、瑠璃?」

 悪いが俺は今、準備運動の途中なのだ。木刀を振っているのがわからんかね? 用事ならあっちで暇そうにしている赤夏の方に……って赤夏、何、真尋さんと話してるんだよ、二人で、しかも離れたところで! おのれ、抜け駆けは許さん!

「さっきの先輩のこと好きだったでしょ?」

「フゲッ!」

 素振りに失敗し、振り上げた木刀の柄が額にぶち当たる。

 な、何を言うんだこの娘は……いや、そりゃ、真尋さんのことは綺麗だと思うぞ、美しいと思うぞ。素敵な方だとは思うぞ、だがそれは単なる憧れであってですね……。

「そ、そりゃ嫌いならわざわざ呼んだりしないさ」

「ふーん、じゃあ好きなんだ?」

「す、好きっていっても色々あるだろう。それなら、お前のことだって好きだよ、友達なんだからな」

「……あっそ」

 あのだね、恋愛というのはそもそも釣り合いの取れたもの同士においてのみ発生するもので、高嶺の花を眺めて綺麗だっていうのを好きとは言わないだろう。それに、高嶺の花は遠巻きに見るからこそ美しい、近くで見ると思わぬ棘があることもあるというし。特に真尋さんみたいなタイプはかなり棘が強そうだ……。

「さて、じゃあ基本からいこうか。木刀持って並んで」

 木刀を構える俺と赤夏。瑠璃も渋々従う。

 刀の柄を左手が一番下、右手が上で鍔に手が触れない程度の位置で握る。力の配分は左手がメインで、右手は添えるだけという程度。背筋を伸ばし、足を肩幅に開き、右足が前、左足が後。軽く膝を曲げて、後のかかとを上げる。これが剣道の基本構え。


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 初心者である瑠璃に丁寧に教えつつ、俺たちの構えもチェックする真尋さん。

「ほら赤夏君、背中が曲がってる。迅君は剣の切っ先が左にずれてるわよ、ちゃんと正中線を維持して」

 久しぶりだとやっぱり基本を忘れてるな。注意されて修正しつつ、体の記憶を思い出す。部活で毎日のようにやっていたのだから一度要領を思い出すと後は簡単なはずだ。

 真尋さんは瑠璃のところで何か話している。素人の瑠璃に手取足とりで教えているようだが、それとは別に何か囁きかけているようにも。残念ながら、内容まではよく聞き取れないが……。

「基本構えは大体できたわね。じゃあ次は別の構え。剣道の場合、構えは五種類だったけど、剣術には十三種あるから。それをまず教えてあげる」

 十三種類……この数を聞いただけでちょっと頭がフラついてきた。剣道の構え五種というのは、さきほどの中段。

振り上げた形の上段。剣先を下げた下段。顔の横に刀を立てる八層。剣先を後ろに向ける脇構え。これですら試合で使うのはせいぜい中段と上段程度で、他はまったく馴染みがないというのに、さらに八種類もプラスされるとは……。

「じゃあ一つずつ順番に教えていくわね。まず、上段から……」

 それから三時間ほどみっちり稽古をつけられた。夏の日差しは何もしていなくても、体力を消耗する。一見、剣の構えというのはただ立ってるように見えるが、全身の筋肉をバランスよく配分しいつでも動けるような体勢にいなければならず、著しく体力を消耗する。

 さらに基本構え十三手が終わると、十五種の基本攻撃型の指導に入る。

 上段から足元まで斬りつける斬り下ろし、手首辺りまでを狙う斬り下し止め、斜めに斬りつける袈裟斬、横に払う凪、腰溜めから突く突き、肩から突く突き、斜め下から切り上げる逆袈裟、それらの左右逆バージョン、八層からの袈裟斬り……この辺りになるとはじめてやる動きばかりなので、もうチンプンカンプンだ。

 構えと攻撃が完璧にできるまで何十、何百回も木刀を振らされる。剣道部時代のことがフラッシュバックした。素振り用の太く重い木刀を一日何千本も振った日々、よくやっていたと自分でも感心する。あれに比べたら今の稽古は随分、楽なものだ。

 結局、終わる頃には皆、立つことも出来なくなっていた……。

「ハァ……情けないわね、二人とも」

 地面に座り込む、俺と赤夏を見て呆れ顔で言う真尋さん。

 いや、真夏の太陽の下で三時間木刀振ってたら誰でもこうなりますよ。むしろ汗一つかいてない真尋さんが変だ……この人、人間じゃないな絶対。サイボーグかなんかかも。

「鈴木さんの方がまだ元気じゃない」

 たしかに、瑠璃も汗だくではあるがまだ自分の脚で立っている。まあ、この娘は元気だけが取り柄みたいな娘ですから……。俺以上に体力不足の赤夏など喋ることもままならず、最早、見た目生きているか死んでいるかもわからない有様である。

「調理は体力勝負ですから」

「へえ、今度是非ご馳走になりたいわ」

「はい、そのうちお弁当持ってきます」

 何か知らんがす多少は打ち解けてるなこの二人。まだ間に壁のようなものは感じるが……会ったときは険悪そのものだったからな。というより瑠璃が一方的に機嫌悪くしてただけだけど。

「どう? 殺陣指導ってよりは剣術指南になっちゃったけど、何か参考になった?」

「ええ、アクションの幅が広がりましたよ。剣道の動きって正直、あんまかっこ良いとはいえないし」


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 良くも悪くもスポーツ化した剣道は、ポイントをとることに重点が置いてあるので刀を持ったアクションでやるとどうしても不自然になる。それに古流剣術の下から切り上げたり、腰を深く落として突いたりとかって見た目が何かかっこ良いし。実戦性に関してはよくわからんけど、映画なんだから見た目よければ問題無し。

「なら良かった。私はこれからちょっと予定あるから、また何かあったら連絡頂戴」

「ほんと、すいません。忙しいのに……」

「いいのよ。じゃあね」

 そう言うと、真尋さんは例のごとく素敵な笑顔を投げかけ去っていった。

「さよーならぁ、真尋さぁんー」

 赤夏のアホな言葉が森にこだます。

久しぶりにあったけど、やっぱカッコいい人だなぁ。彼氏とかいるのかな? いや、俺たちより四歳年上だから、彼氏どころか結婚しててもおかしくないか……ま、どっちにしても俺には関係ないことだけど。

「何、ぽーっとしてんのよ」

 瑠璃が木刀の柄で脇腹を小突いてきた。

「べつにぽーっと何かしてねぇよ」

「ふーん。ま、いいけどさ」

 まったく、ほんと、こいつの考えることはわからない……。

 森には、相変わらず耳障りなアブラゼミの鳴き声が響き渡っていた。


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 卒業制作企画書

 

 タイトル、「妖鬼海産都市(仮)」

 

・企画意図

 今まで自分たちは、学校の受けの良いもの、そこそこ成績がとれるものを狙って作品作りをしてきた。しかし、そのほとんどがことごとく失敗し、校内で大きな評価につながることはなかった。よく考えれば当然のことである。そもそも俺たちはアート映画やイメージ映像のようなクソ面白くもない映画は嫌いであり、本人たちがつまらないと思って作っているものが名作になるはずなどあるまい。

 そこで今回はもう、学校の校風とか講師に受けるとか一切考えず、自分たちの好きなものではっちゃけようという結論にたどり着いた。幸い、卒業制作発表は一般客も含んだ批評。学校の校風に惑わされることなく、客観的な評価が下されるだろう。学校のクソったれ共に目にものみせてやるんじゃ、ゴルァ!

 まずどういうものがやりたいか? まず特撮だ。そしてモンスターとアクション。この個人の趣味丸出しのジャンルを、いかに自己満足に終わらせず、一般のお客さんに楽しんでいただくかが問題だ。

 役者、スタッフの調達を考えると撮影は主にT県で行う。となると、せっかくなのでT県を舞台に、そこでしかできない物語を作らない手はない。地元であるT県S市の名産といえば妖怪だ。これは大阪でも観光ポスターを見るくらい他県でも有名だ。妖怪ものであれば特撮もできるし、モンスターも出せる。ラストに戦いをいれればアクションも可能。  

 Oh、理想的素材! というわけで、卒業制作は妖怪アクションの映画を撮ると決定します。

 

・物語、舞台設定、登場人物

 舞台は畑に囲まれた小さな田舎町。主人公はそこに引っ越してきた一人の少女(←ツンデレ、萌え系美少女)。都会育ちの彼女には見るもの全てが珍しく、また近所の人々ともすぐに打ち解け、楽しい日々を過ごす。

そんなある日、近所の探険をしていた彼女はある神社を見つける。そこは九十九神(古い物に魂が宿って妖怪化したもの)を祭る神社で、うっかりそこの祠を壊してしまう。それにより本殿に祭られていた古い物たちが妖怪化、襲いかかってくる。

 神社横の森に逃げ込むも、追い詰められる少女。そこに村の青年(少女のことが好き、クールだが一途)が助けに。

 何とか妖怪の手を逃れるも、祠を壊したことを知った村人たちは激怒。襲いくる妖怪と、村人たちを相手に戦いながら(素手、日本刀、ナイフ、ガンアクション(猟銃とかで)等の派手なアクションシーン)村を脱出、二人は隣町に逃避行しハッピーエンド。

 だがしかし、妖怪と狂った人々により、村では新たな惨劇が幕を上げようとしていた……。

 

追記:ベタベタな話だけど、そこはキャラクターと演出でカバー。目指せ、萌えて燃える妖怪ファンタジーアクションホラー!  アヒャ!(゜∀゜)


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「はあ? 同窓会!? しかも今日かよ?」

 昼頃かかってきた電話に俺はすっとんきょうな声を上げる。携帯の向こうで赤夏のとぼけたような口調の言葉が。

「あれ、言ってなかったっけ? てかメールで連絡来なかった?」

「全然、知らん……」

「二中の卒業生には知り合い同士で連絡回せってメール来たんだけど、お前来なかったの?」

 ……なんてこった、俺だけ連絡が無かったのかよ。たしかに昔から外交的な性格ではなかった、それゆえに友達も少なくクラスで浮いた存在だったかもしれない。でも、多少なりとも仲良くしていたやつ等はいた。それなのに、そいつらは赤夏には同窓会の連絡をして、俺にはしなかったのだ。

 たしかに中学卒業後、皆それぞれ別々の高校になってからは、赤夏以外とは一緒に遊ぶことは少なくなったが……ん、ちょっと待てよ……?

「おい赤夏、お前、携帯買ったのっていつだ?」

「は? 携帯? 俺は高二くらいだったけど」

「俺も、同じ時期だ」

「あ、そうそう。そういや一緒にドコモショップ行って買ったよな」

 当たり前のように言う赤夏に、俺は苛立ってきた。

「俺は高校違う学校行ったから、中学の知り合いは俺のメアド知らないんだよ、お前以外!」

「あ、そうだっけ?」

「そうだっけじゃねえ! お前が連絡回してこなきゃいけないはずだろうが!」

「ああー、ごめんごめん。まあ、いいじゃん。今こうやって連絡したんだから」

 まったく、この男は……。

「で、時間は?」

「えっと、何時からだったかな、ちょっと待てよ……」

「ああ、もういい。お前、今からこっちこい。どうせ暇だろ?」

「いやさすがにまだ早いぞ。確か夜だったし」

「んなことはわかってる。必要な情報を回さなかった罰だ、これからベース模型に小道具買いに行くの付き合え」

 今日は撮影小道具を買いに市内の模型店に行く予定だった。べつに昼間行っても同窓会には間に合うが、自転車だと片道三十分以上かかるんで赤夏の車を使った方が早い。

 俺の考えを見抜いたのか、赤夏はあからさまに不服そうな声を出す。

「はー、嫌だよ、面倒くせえ」

「何ぃ、面倒くせえだとぉ? 俺がそんな理由で見逃すのは友希英たんとポン太だけだ!」

 猫のポン太は喋らねえだろと、受話器の向こうから小声が聞こえたのは無視しておく。

「しゃあねえな、じゃあ二十分くらいしたらそっち行くから待ってろ」

「わかった、なら早くしてくれよな」

 そう言って、通話終了ボタンを押す。何だかんだ文句言いながらも来てくれるから、良いやつだ。

 しかし中学の同窓会か……懐かしいな。皆どうしているのだろうか? 思えば中学時代といえば受験とか、思春期の微妙な時期の人間関係やらで一番面倒だった時期だが、反面、一番楽しかった時期でもあると思う。何だかんだで楽しみだ。

 カップラーメンで昼食を済ませ、着替えているうちに赤夏が迎えにやってきた。

「ったく、遅ぇっての」



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