目次
序章  「日曜日の朝」
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第一章「アル晴レタ、昼下ガリ」
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第二章「精霊と青年」
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第三章「決戦、妖怪都市」
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第四章「夏の想い出」
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第五章「堕天使の囁き」
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第六章「世界ノ終ワリ……」
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最終章「永久に醒めぬ夢」
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 まあ映画作りとは一般人からみたら意味不明な行動の積み重ねだが。クリエーターとは常に孤独なものである。

「さてと……」

 必要事項は記入完了。持ち出した図工本三冊を抱え児童書コーナーに向かう。先程の本を棚に戻し奥の掛け時計に目をやる。午後三時、図書館に来てから一時間ほどか。閉館は六時だからまだまだ時間的余裕はあるな。

 工作コーナーの裏側、怪談コーナーを覗いてみる。『悪魔百科』『怪獣百科』『世界の妖怪』『幽霊・怪談全集』……懐かしいな、子供の頃はこういったタイトルを見るだけでわくわくしたものだ。

 下の方には古い怪談の原文や、妖怪や伝承を民族学的に検証した大人向けの怪談本が並んでいる。そこから目についたタイトルを適当に二冊とって、次の棚へ進む。

 アニメ・漫画コーナー。といっても図書館なので、漫画本がそのまま置いてあるわけではなく、漫画の描き方とか歴代アニメの全集やビジュアルファンブック等がある棚だ。そこから一冊手にとり、すでに持っている本に重ねる。漫画やアニメの描き方は絵コンテ(絵コンテというのは、映画の画面をカットごとに絵であらわした漫画のようなもの。これを元に、絵と同じになるように撮影していく)を描くのに役立つのだ。あとは……。

「おっ」

 見つけた、このコーナーに来たもう一つの目的の物を。それは棚の端の方にまとめて並べられていた。

 『コスプレヒロインの描き方』『戦闘少女解析』『萌え萌え美少女図鑑』……そう、男は美少女が大好きだ。作品を作る以上はユーザーのニーズに応えなければヒットは望めない。

 瑠璃は素材としては申し分ない美少女だ、あとはその魅力を引き出せるかは俺たちの描くキャラクター性次第。どういう性格が受けるか、やはり今流行りはツンデレか?  それとも妹キャラか?  ご主人様ぁとか言うメイドキャラか?

 衣装はどうすべきか、セーラー服、メイド服、チャイナドレス、着物……どういうものが萌えを誘い、劣情を掻き立てるのか?  そういうことを研究するための資料である。一応、断っておくと、決して俺の趣味ではない……ほんとだって。

しかし、これを児童書コーナーの一角に置いとくのはどうかと思うが。他に適切な場所なかったんだろうけど、明らかに大きなお友達向けだろう、これは。さすがに十八禁になるようなものはないけど、水着とかパンチラとか下着姿とか普通に載ってるし。

「ふーん、迅君、そんなの読むんだ……」

「うおぉっ、瑠璃!」

 いつの間にか背後に立っていた瑠璃につい大きな声を出してしまう。静粛な利用者たちの非難の目線がこちらに集中した。

「な、何だよ」

「暇だったからついて来たんだけど」

 ついてきたってことは最初からいたのか?  全然気配を感じなかった……この娘は尾行とか、暗殺とかの才能がありそうだ。とにかく無言で人の後ろに立つ癖をなんとかして欲しい。

「まさかそんな人に言えないような本、探してるとは思わなかったから、ごめん」

「い、いやこれは資料だ! ヒロインを描く為の……」

「ヒロインって、あたしにそんな格好させる気なの?」

 ああ、なんかどんどん墓穴掘ってややこしい方向に……。

「……いいけどさ、べつに」

「いいんかい!」

 普通にオーケーする瑠璃に、ついまた大きな声で突っ込んでしまう。


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 わからん、こいつの考えてることは俺にはまったくわからん……まあとりあえずコスプレキャラはオーケーということは、こちらにとってはありがたいことだが。とりあえず目当ての本を手にした俺は赤夏のいる机にと戻る。

 赤夏は『小説の書き方』を読んでいる最中だった。

「何かいいネタあったか?」

 俺の問いに、本から目を離すことなく答える。

「ああ、これけっこう話作る参考になるぞ」

「そうか、後で内容教えてくれ」

 映画を作るにおいて、漫画や小説の書き方を基にして研究していく。学校でアート映画を作ってる人間からは失笑しかされないだろう。

 だがそれで良い、俺たちは俺たちのやり方でぶちかます! 人と同じことやってたってトップはとれない、観客のニーズに応えつつ、いかに俺たちにしかできないことをするか。情熱無き作品に名作無し、この形式縛られない情熱が俺たちの武器だ。

 真面目になんてクソ食らえ、芸術なんてクソ食らえ! 娯楽上等、B級上等、萌え上等だ! 

 再び調べ物に励む俺の隣で一人することのない瑠璃はつまらなそうにしている。俺の持ってきた本を適当に手に取りパラパラとめくり始めた。

「この辺って、けっこう色んな風習あるんだね」

「ん? そうかな」

「何か色々書いてあるよ」

 瑠璃が手にしているのはS市の祭りや行事ごとに関する文献だ。

「ああ、昔はどうか知らないけど、最近はあんまないと思うよ。俺の知る限りでは、とんどさんくらいのもんかな」

「とんどさん?」

 聞きなれない単語に首を傾げる瑠璃。無理もない俺も初めて聞いたとき、この奇妙な名称はかなりひっかかった。とんどって何だ? 何でさんづけなんだ? と。真相はいまだにわからない。

「あれだ、何か正月に習字とかお札とか持ち寄って燃やす行事」

「はぁ……?」

 瑠璃はいまいち、ピンと来ていないようだ。まあ、俺自身も詳しくは知らないのだから、そんな奴の説明で理解できる方がおかしいか。

「それって、行事なの?」

「燃やすもの集めるときに、行列組んで笛吹いたり太鼓叩いたりして、一応儀式みたいなことするらしい。そこで餅やいて、食べると一年健康にすごせるとか、どうとか。俺は参加したことないからよくわからんけど。とりあえず厄除けの儀式なんだと」

「ふーん……」

 おそらく全くビジョンが浮かんでないであろう瑠璃は、パタンと本を閉じアニメの解説ブックを読み始めた。

俺も読みかけの『日本の妖怪』に目を落とし、研究を続ける。


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『「鬼」

 

 鬼は多くの民話などに登場し、邪悪な者、恐ろしい者の象徴とされている。日本の妖怪の中でも最も有名な物の一つだろう。

 一般的に伝わる姿形は、頭部に角を生やし、鋭い爪と牙を持つ大男である。肌の色は赤や青で、虎の毛皮の褌をしていたり、棘のある金棒を持った者もいる。』

 

 解説文の隣には江戸時代に描かれたという、人を食らう鬼の絵が掲載されていた。絵本などに載っているコミカルなものではなく、恐ろしい形相の人食い鬼だ。

 桃太郎といった有名どころを中心に、日本にある鬼の伝説がいくつか紹介されている。

 

『これらの中で最も恐れられていた最強の鬼が酒吞童子だ。酒呑童子については室町から江戸時代にかけて書かれた中世小説、御伽草子に詳しく描かれている。

 その姿は、真っ赤な顔に乱れた赤髪、見上げるほどの巨大な体躯に五本の角と十五個の目玉を持つ。大江山にて多数の鬼を従え、龍宮のような御殿に棲んでおり、たびたび若い貴族の娘をさらいに京の都へ降りてきたといわれる。

 誘拐した姫は側に遣えさせ、ときに生のまま喰らい、生き血を啜ったこともあったという。あまりの凶悪さ強大さから、後述する白面金毛九尾の狐と崇徳天皇の大天狗と並び、日本三大悪妖怪と謳われている』

 

 こんな具合に有名な者、強大な者、愛嬌のある者、全国の様々な妖怪について、参考画付きで詳しく説明されている。恐ろしく分厚い本なのでここで全てを読み切ることは不可能だ。五分の一程度読み終えた辺りで閉館時間に。

 この一日で書き写したのはノート三冊分。さらに読みきれなかった家で深く読み込みたい本(先程の『日本の妖怪』、そして『S市の怪談・伝承』『小説の書き方』『萌え萌え美少女図鑑』)を貸し出し手続きする。

 夏は日が長いので、この時間でもまだ外は明るい。ほんのり夕日色に照らされながら、赤夏の車に揺られ、三人で本日の収穫を語り合う(ちなみに俺は車の運転はできない、免許は一応高校卒業時に取得したのだが、それ以降まったく乗っていないペーパードライバーだ)。

 前日の話し合いで既にある程度のあらすじは固まっていたが、今日のでかなり細かいところまで物語は完成した。後は家に帰り、参考資料を見ながらパソコンでシナリオを作る。今夜は眠れそうにないな。

「ほらよ」

 いつの間にか車は俺の自宅に到着していた。S市は小さな市で、車なら三十分もあれば一周できる程度の広さしかない。

 俺は助手席から降り、後部座席のドアを開けてやる。瑠璃は軽くお礼を言って、ヒョッコリと出てくる。

「じゃあ、シナリオできたら連絡するわ」

「おお、こっちもいい案あったらメールする」

 そう言って、車を出す赤夏。赤い太陽に照らされた車は、ネギの道の彼方へ消えていった。

ふと玄関の方を見ると、家の前に学ラン姿の一人の少年が。中学生くらいだろうか。俺たちを見て、あからさまに挙動不審になる。

「あ、あの……鵲さんとこの方ですか?」

「そうだけど。君は?」

「はい……友希英さんの同級生の、松井茂って言います。あの、これ……」


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 そう言って、プリントの束を差し出す。夏休みの心得、新学期の予定、その他諸々。なるほど教師に頼まれて、休みの友希英に配布物を持ってきたわけか。専門学校は既に休みだが、中学は今日が終業式だったか。

 家まで行って知らない家族と会うというのは非常に緊張する。先程の挙動不審具合も、納得した。俺も人見知りだから気持ちはよくわかる。女の子の家だったら尚更だろう。

「ありがと」

「は、はい……じゃあ」

 茂は軽く会釈すると自転車に乗って走り去って行った。彼も大変だねえ。

「何もあんなに逃げるように去っていかなくてもいいのにな」

「迅君が怖いんだよ、目付き、きついもん」

 そう言ってクスクス笑う。てか、気にしてるんだからそういうこと言うなよ……。

 さて、時刻は一八時半、もう親も戻ってるだろう。俺も家に戻って、今日得たインスピレーションをキーボードにぶちまけるとするか。

「じゃあな、瑠璃」

「ちょっと待ってよ!」

 目の前にある自宅に足を進める俺の腕を、瑠璃が思い切り引っ張った。

「何だ?」

「駅まで着いてきてよ」

 瑠璃の家はS市ではなく、隣のY市にある。だから毎日、電車でこっちまで来ているのだ。こちらとしても気を使うので、べつに役者として出るときだけで良いよって言ってるのだが、作る段階から参加したいと言って聞かない。まあ瑠璃はS市の専門学校行ってるから定期券持ってるみたいだし、こちらとしては人数は多い方が嬉しいのでべつに構わないが。

「ん、駅まで歩いて三分もかからんぞ」

「電車の時間が何分かわかんないからさ」

 ああ、なるほどね。これが田舎の嫌なところなのだ。大阪では電車を乗り過ごしても五分~十分後には次のが来るが、ここではタイミングが悪いと一時間待ちとかざらにある。その間、一人で待っている暇さは筆舌に尽くしがたい。無論、近くに時間が潰せるような店などは存在しない。

「ったく、何か本でも借りてくりゃ良かったのに」

「あたしはS市民じゃないから貸し出しカード持ってないの」

「べつにY市の人でも作れるはずだぞ」

「ああ、もう。うだうだ言わない、とっとと来る」

 さっさとシナリオを書きたい俺の気持ちを他所に勝手に駅の方に歩いていく瑠璃。放っておいてもよかったかもしれないが、それはそれで気が引けるので渋々ついていった。まったく、しょうがないやつだ……。

「ねえ」

「ん?」

 周りを見回しながら瑠璃が呼びかけてくる。今度は何だ? ていうかこの辺の何をそんなに見て面白いんだろうか。

「ここってお墓多いよね」

 ……墓? 瑠璃の目線の先にはたしかに墓場があった。その向かい側、俺たちのいる道路をはさんで反対側にある石垣、その上にも墓地が広がっている。少し後には、どういうわけか民家の隣に三つだけぽつんと墓石が立っている。

 今まで、当たり前のように住んでいたから特に考えなかったが、言われて見ると多いな。周囲を墓に囲まれた道路……夕暮れ時の薄暗さと相まって、なんとも不気味に感じられる。


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「ああ、この辺は土着の信仰が強いみたいだから。だから死んだ後も民家に近いとこで埋葬してるんだよ、たぶん」

なんとなく口にしたが、自分でもよくわからん意味不明の理屈だ……あまりにめちゃくちゃなんで、言った後、突っ込みを入れられるかと思ったが、瑠璃はにっこり笑っただけだった。

「そっか……てことは沢山埋まってるんだね、死体」

 なんとなく背中にゾクッとするものを感じた。死体が埋まっているということに恐怖したのではない、何というか瑠璃の口からそういう言葉が出てきたことに。

俺の知る限り、瑠璃は死体とかそういうエグいものの話をする人間ではなかったから。先日、映画のディスカッションで殺人鬼の話を出したときも妙に拒絶していたし……。

 そんな俺の疑問とは裏腹に、瑠璃は一人言葉を続ける。

「ここには、死んだ人の怨念が渦巻いてるってわけだねぇ」

「……いや、べつに死んだからって恨み持ってるとは限らないと思うぞ。寿命で死ぬ人もいるわけだし」

「ええー、そんなことないよ。あたしなら死ぬの絶対怖いもん、たとえお婆ちゃんになってても。きっと、死にたくない、死にたくないって恐怖に怯えながら死んでいったんだよ……可哀想にね」

 夕日に赤く照らされる瑠璃の顔、言葉では可哀想と言いながらも、その顔は笑っていた。それもいつもの屈託のない笑みではなく、なんかこうニターッとした不気味な笑顔。

 朱色の空を流れる雲、遠くから鴉の鳴き声が聞こえる……周囲には俺たち以外に誰もいない。正直、俺は家に帰りたかった。というより、こいつと一緒にいたくない。

いつの間にか駅まで到着していた。遠くから遮断機の警報と規則的な車輪音が聞こえる。

「ごめんごめん♪ あたしね、オカルト系ってけっこう好きなんだ」

「え……ああ……」

 オカルト系が好き……?

「だから幽霊出そうなとこって、ワクワクしちゃってさ」

 そういう瑠璃はいつもの可愛い笑顔だった。

 ……なんだよ、それ。ごめんごめんって言う辺り、意図的に怖く演じていたようだ。たく趣味の悪い。いや、むしろ自分が情けない……瑠璃としては俺がこれほどビビッているとは考えてもいないだろう。さすが演劇部一の演技派は伊達じゃないな。

「迅君はさ、幽霊とかって信じる?」

「ん? どうだろうな。ほんとにいたら面白いかもっていう程度だな」

 というのは過去の話で正直、今ので幽霊嫌いになった。って信じる信じないとは別問題だな、それは。

「そうなんだ。あたしは信じてるよ」

「ああ、そう」

「でも、信じてるってより、願望かもね。死んだ人に会えるかもっていう」

「は?」

 耳障りな警報機の音が鳴り始めた。真っ赤な光の点灯と共に遮断機が下り始め、線路の奥に目をやると電車がこちらに向かって近づいてくる。

「電車来たから、じゃあね♪ シナリオできたら連絡頂戴」

「あ、ああ……うん、じゃあ」

 ホームに入ってきた妖怪電車(車体一面に妖怪の絵が描いてあるS市独特の電車)に乗り込み、窓からこちらに手を振る瑠璃。しばらくすると汽笛と共に電車は発進し、夕闇の彼方へ走り去っていった。

「ハァ……」

 軽く溜息をつく。さて、帰ってシナリオを書かなければ。

 しかし瑠璃がオカルト好きというのには驚かされた。彼女との付き合いは数年だが知らないことがまだまだあるようだ。

 今までそんな素振りは見せていなかったのに……いや、そうでもないか。俺の部屋で怪奇映画の本見て喜んでたし。これだけ映画制作に首突っ込んでくるのも、出演するからってだけじゃなく、妖怪を題材にした怪奇ホラーだからというのが大きいのかもしれない。そう考えると納得だ。

 しかし、最後に言っていた言葉は何だったんだろう? 死んだ人に会いたい……彼女は何か脛に傷でもあるのだろうか。まあ人の過去をあまり詮索するもんじゃないか。大した意味はないのかもしれないし。

 辺りはもう暗くなり始めている。俺は墓に囲まれた道を、街灯に照らされながらとぼとぼと歩いていった。



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