目次

閉じる


【グラフィカルな食品の国とは】

 

 グラフィカルな食品の国は、食品たちが暮らしている国です。

 食品たちの楽しみの一つは、国の中心に建っている大聖堂の窓をのぞきこむことです。

 大聖堂には無数の窓があります。

 窓をのぞくと、人間の暮らしが見えます。

 別の窓をのぞくと、また別の人間の暮らしが見えます。

 窓一つ一つが別々の人間の暮らしを映しています。

 食品たちは、人間の生活を見ることが大好きです。

 

 そして、食品たちが人間の暮らしを見に来るのには、もう一つ理由があります。

 この国では、人間の暮らしを見ると、食品たちが若返ります。

 古くなったお米も、新鮮なお米に戻ります。

 古くなったお肉も、新しいお肉に戻ります。

 この国の食品たちは、人間の暮らしを見ないでいると、次第に鮮度が落ち、腐り、朽ちてしまいます。

 この国の食品たちは、人間の暮らしを見ることで、定期的に若返っています。

 そして、何年も新鮮なままで元気に暮らしています。

 

 

【お米のノガたとは】

 

 いいかげんな性格のお米

 

 

【空を飛ぶ石とは】

 

 この国の食品たちが移動のために使うもの

 

 

【天の声とは】

 

 時々、空の上から聞こえる声。国中の食品たちに聞こえる大声。  

天の声に呼ばれると、食品たちは、雲の上に連れて行かれます。

 


【花びら餅】

 

 お米のノガたが、花びら餅に会った。

 「こんにちは、今日は地面を歩いているの?」

 「…」

 「いつもは、空を飛んで来るのに。飛べなくなったの?」

 「私を誰かと間違えてない?」 と花びら餅が言った。

 「むらすずめのジョンでしょ」

 「私、ジョンじゃないよ。むらすずめでもないよ。花びら餅だよ」

 「花びら餅? そんなお餅あるの? 見た目は似てるよ」

 花びら餅は、「私って、むらすずめという食べ物に似ているのかな?」と思った。

 

 翌日、花びら餅とむらすずめが一緒にお米のノガたのところへ来た。

 「ノガたさん、僕と花びら餅さんが似てるって言ったって?」

 むらすずめが言った。

 「よく見て、違うでしょう」

 「そうだね、ふたり並ぶと違うかも。 でも、外側は違うけど、中のほうはどうなの?」

 お米のノガたは、むらすずめの皮の中に入ろうとした。

 「なにするんだ!」

 むらすずめは、怒って空を飛んで帰って行った。

 

 

【きびだんご】

 

 「むらすずめの中には、あんが入っていたよ」

 お米のノガたが、花びら餅に言った。

 「そうですね。でも、勝手に皮の中に入ったらだめだよ」

 「そうなの?」

 「ノガたさん、あなた食欲が強すぎるのでは? 食べること以外に何かやってみたら?」

 「何をすればいいの?」

 「………」

 

 マスカットオブアレキサンドリアが歩いてきた。花びら餅が、マスカットオブアレキサンドリアを呼び止めて、お米のノガたが何をすればいいか聞いた。

 「雑学をお勉強してみたら?」

 「いいね。雑学おしえて」 お米のノガたが興味を示した。

 「じゃあ、僕の知り合いの、きびだんごの雑学にしよう」

 「桃太郎のきびだんご」

 「そうだね、岡山のおみやげ物として知られているきびだんごは、日清戦争のころから全国的に有名になったらしいよ。戦争から帰ってきた兵隊さんにね、『鬼をたおした桃太郎のきびだんごをお土産にいかがですか?』って言って売ったら、兵隊さんにとてもうけたんだって。その兵隊さんたちが自分の地元に伝えたから『岡山のおみやげ=きびだんご』ということになったらしいよ」

 「…」

 「あれ…ノガたさん、聞いてる?」

 「ノガたさん、寝てるね」と花びら餅が言った。

 「こりゃだめだ」

 「マスカットオブアレキサンドリアさん、私の友達においしい抹茶がいるので、そこに行ってお茶にしませんか?」

 「いいですね、このひとは置いていきましょう」

 花びら餅とマスカットオブアレキサンドリアは、お米のノガたを置いて行ってしまった。

 

 


この本の内容は以上です。


読者登録

zen-akuさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について