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【1】

 

 岡山の求職者は、ちくわの揚げ物の食感を思い出した。

 

 ふにゃ、かり。

 

 そのとき、歯が抜けた。急に抜けた。なにも予告なしに抜けた。岡山の求職者は、抜け落ちた歯を見つめた。イライラしてきた。片足を上げた。力いっぱい、抜け落ちた歯を踏みつけた。ボキっと抜け落ちた歯が砕けた。

 

 岡山の求職者は、自分の口から血が、血が出ていることに気付いた。歯が抜け落ちた跡から、サラサラと血が流れている。

 

 「服に血が付かなかなくて良かった」  岡山の求職者は、やっとしゃべった。ここ四日で、初めてしゃべった。

 「どんな歯でも、歯は大切だ。」  よくわからないまま、つぎつぎしゃべった。

 岡山の求職者は、ビックカメラに入った。トイレに向かった。だれも岡山の求職者を見なかった。口から落ちた血は、手のひらの中にたまった。

 

 岡山の求職者が、外に出た。もうしゃべれない。口の中にはトイレットペーパーがつまっている。口を開ければ、トイレットペーパーが見える。きっと、おかしな人間に見られるだろう。だから、もうしゃべれない。岡山の求職者は、180度回転した。ゆっくり、時計回りに。

 


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