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書評『ものぐさ将棋観戦ブログ集成』

書評『ものぐさ将棋観戦ブログ集成』

  書評『ものぐさ将棋観戦ブログ集成』
清水らくは

 vol.4で小説も発表したshogitygoo氏が、これまでのブログ記事をまとめた『ものぐさ将棋観戦ブログ集成』という本をパプーから出版した。ツイッターなどでは「巨匠」と言われる氏は、将棋観戦のガイドとなる記事をこれまでたくさん書いてきた。そしてその表紙をまるぺけさんが、解説をぜいらむさんが書いている。本誌でもお世話になっている方々である。
 ここでは私とものぐさ将棋観戦ブログとの関係について少し触れさせてもらいたい。私がこのブログと出会ったのはそれほど古くなく、ツイッターを始めてしばらくたったころである。最初私は将棋のことはたまにつぶやくぐらいで、将棋ファンの方々のことも全く知らなかった。今から思うと、最初に会話したのはまるぺけさんだったような気がする。しばらくして将棋を観戦するディープなファン、いわゆる「観る将」という方々がいること、そして観戦しての感想などをブログで記事にしている人がいることを知った。ただ、当時の私はまだ「そんな人がいるんだなー」という感想で、将棋観戦はするもののそれほどブログを読んでいなかったのである。
 しかし忘れもしない、「羽生善治・吉増剛造「盤上の海、詩の宇宙」を再読して」(2010年07月01日)という記事により、私はものぐさブログに深く興味を持つようになった。私は詩誌の読書投稿欄に詩を出していながら、詩人のことをあまり知らなかった。よって、羽生と詩人の対談などというものがあることすら想像していなかったのである。この記事を読んで私は、これはこの本を読まねばならない、と思った。そして読んだ後、巨匠によって読むべき本をきちんと読まされた、と私は思った。ちなみに「羽生のアガペーと深浦のエロスーー相思相愛問題をめぐって」(2010年06月09日)という記事の中で私の発言が少し引用されている。この頃からツイッター上で少しずつ会話をするようになったようである。
 巨匠は思ったことを率直に、それでいながら角が立たないように書いている印象である。時にはクスッとするようなネタ的な記事も書くし、本当に引き出しの多い方である。そしてそんな氏の魅力をさらに引き出すのがぜいらむさんのおちょくりである。これは非常にいいおちょくりである。ぜいらむさんが細かいところをつつくと、巨匠はそれにいろんな角度から応じる。私自身も経験があるのだが、ぜいらむさんの投げ込む球は非常に打ち返しがいがあるのだ。それ以外にも、ツイッター上で他のファンとのやりとりから生じた記事は結構あるだろう。その意味でこの本はshogitygoo氏のブログをまとめただけではなく、将棋ファンたちの歴史も反映されたものであると言える。
 最近では将棋だけでなく、巨人ファン(巨匠)と阪神ファン(らくは)ということで会話させていただくこともあるのだが、ふとした瞬間に「しかし巨匠とはいったい誰なのだろう」という思いに駆られるのだ。これだけブログが有名で、ツイッターの発言も多い氏であるが、その実態はほとんどわかっていない。観る将の多くは公開対局やイベントなどに出かけたりするものだが、巨匠はあくまで自宅から観戦している模様である。それどころか「散歩をした」とか「買い物に行った」とかそういうことすらほとんど書いているのを見たことがない。自宅でネットをして、本を読んで、野球を観て、音楽を聴く。それだけで人生を存分に楽しめる、そんなライフスタイルを提示している気すらする。もちろん語っていないところではどんな生活をしているのかまったくわからないのだが、私の想像の中では「新時代のかっこいい将棋好きのおじさん」、それがshogitygoo氏なのである。
 ネット観戦にブログに電子書籍、新時代のツールが良質の将棋観戦記事に新しい息吹を与えた。そして、『駒.zone』の「友と書いてライバル」の誕生である。第二段の出版にはしばらくの時間が必要だろうが、ブログの更新は今後も続いていくはずだ。巨匠の新作を、これからも存分に楽しもうと思う。


shogitygoo氏のブログ 「ものぐさ将棋観戦ブログ