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川本真琴さんが物語を書き下ろした絵本「とうめいの龍」「ブリキの姫」が
4月27日に2冊同時刊行!

昨年11月に交通事故に遭いライブ活動などを休止し、
療養期間中に勧められ絵本の原作を書き進めていた川本さん。
川本さん自身のディレクションのもと、
イラストレーターの井ノ上豪さんが絵を担当しています。

今回、絵本の発売を記念し
川本真琴さんの独占インタビューを大公開いたします!

ぜひ、ご覧ください。

「リハビリで絵本屋さんに行ったりとかして。絶対にファンタジーではない毎日なんですけど、絵本のこととか曲のことをやっているときはファンタジーでした」


――初の絵本、しかも二冊同時発売ですが『とうめいの龍』も『ブリキの姫』も思いのほかいい出来だと思うんですよね。

「うん、すごくいいと思います!」

――ある種のちょっと自伝のような、エッセイのような。川本さんって今何をやっているんだろうとか、あの事故からどうしたんだろうって心配している人も、この二冊の絵本で川本さんの音楽でも文章でも変わらない軸みたいなもの感じてくれると思うんですよね。

「絵本の話って、前にspoon.で書いた創作童話の“伝説の白い象”のときから編集の斉藤さんがやりたいですよねって言ってくださっていたので、ずっとあったのかなって。それで去年の終わりくらいからやってみようっていう話になりました」


――最初って手書きで文章を送ってくれたじゃないですか。あれってボールペンで書かれていましたけど、下書きとかはなかったんですか?

「あるわけないじゃないですか!(キッパリ)」

――あれはどういう状態で書いているのかすごく気になって。 なにかが降りてきて“きた!”っていう感じ?

「どういう感じって……とにかく話をまとめようと必死でしたよね。状況をわかるように(笑)」

――これはすごく聞きたかったんだけど、話を作るのって作詞と似ているんですか?

「どうですかねー、似てるかな? でもまあ作詞をしていなかったらやっぱりちょっと違っていると思いますけど。構想みたいなものが曲であったら、そこに歌詞がつくっていう感じではあるけど、やっぱりなんかちょっと違いますね」

――そのときって川本さんの中になんとなくビジュアルが浮かんでいるものなんですか?

「考えているときに結構色々な話が同時に頭の中にあったので、今思うとまとまるはずがない!っていう感じなんですけど、そのときはどうにかまとめようと考えていて。知り合いに会ったときとかに“こういう話ってどう思う?”って聞いてみたり、学校の先生に聞いてみたりしていました」

――そういう経緯があったんですか!

「でも先生には“あなたの頭の中にあるものだからわかりません”って言われて(笑)、“ですよねー”って。でも龍神の話もしていたんですよ。“山の中に水があるところってあるじゃないですか。やっぱりそういうところって行っちゃうじゃないですか”って話して。“そういうところって絶対なにかいると思うんですけど、どう思います?”って話したら“さっぱりわからない。自分で考えろ”って言われたんですけど(笑)。その中でも“それだったら石川の山だね”とか妙なヒントをもらうこともあって。それで“そっか、山は日本なのかもしれない”とか、だんだんと自分の中でかたちになっていきました。ちょこちょこお母さんにも話してみたり。よく絵本が置いてあるカフェとかあるじゃないですか。そこで絵本を見たりとかして。絵本ってやっぱり開くときにリズムがあるじゃないですか。私、今回本当にたくさん絵本を読んだんですけど、同じ言葉でずっと進んでいくのが楽しいんだなと思って」

――絵本の法則として3回同じシーンを繰り返すとかありますよね。

「そうそう、繰り返しが楽しいんだなとか。やっぱり読んでいると自分の中で“こういうのは好き!”っていうのがあるんですよね。今回やるって決まってから、すごく絵本たくさん読みましたね。絵本を見て歩いたりするのはすごく楽しかったです。とくに精神的に落ち込んでいたときとかに絵本を見ると楽しい気分になったりするんですよね」

――これ結構よかったなっていう絵本はありますか?

「やっぱり酒井駒子さん。あと最終的には『ぐりとぐら』にいっちゃいますよね。あとは林明子さんとかを読んで“こういうのをやってもいいんだ”って思いました。それから『ねないこだれだ』とかのおばけシリーズ。わりと同じ言葉でずっと進んでいくものとか、やっぱり好きですね。『スーホの白い馬』を読んで本屋で泣いちゃったりとか(笑)。結構絵本で泣いたりするんですよね。本屋で何回泣いたことか(笑)」

――『とうめいの龍』も『ブリキの姫』ちょっとせつなくて悲しい話なので、読者の方が同じようにグっときてもらえたら嬉しいです。ちなみにこの二冊のストーリーは、昨年末入院していたときに制作されたんですよね?

「そうです。入院していて、なんにもしていなかったから、なんにも影響を受けなかった時期で。自分の曲を作っていたりすると、ロックな要素とかが入ってきちゃう気がするんで」


――絵本のリズムとリハビリの日々が合ってたのかもしれないですね。

「そうですね。そのあとはリハビリで絵本屋さんに行ったりとかして。絶対にファンタジーではない毎日なんですけど、絵本のこととか曲のことをやっているときはファンタジーでした」



「子どもの頃って友達としゃべっているときに、“この子、思ってることと違うことしゃべってるな”ってはっきりわかることありませんでした?」


――そう言えば『ブリキの姫』のほうはもうひとつの世界に通じていて、この子の前世なのかな?って思ったりもしますけど。

「子どもの頃ってこういうことあったよなっていう。子どもの頃って友達としゃべっているときに、“この子、思ってることと違うことしゃべってるな”ってはっきりわかることありませんでした?」

――それは、その友達がうそをついているってわかるということですか?

「うそというか、思っていることと違うことをしゃべっているなって小さい頃ってはっきりわかるんですよ。今はもうわからないですけど、子どもだけのそういうことってあるのかなって。なんとなくじゃなくて、はっきりわかるんですよね。昔はそういうことがあったりとか。でもこの二冊の話がどうやってできたのかっていう経緯とかを話しちゃうとあんまりおもしろくないなと思うんですよね」

――では概略だけ言いますと、『とうめいの龍』は最後に出来た作品ですけど、『ブリキの姫』は最初の習作みたいなものの時点からあったんですよね。

「『ブリキの姫』は私の中に昔からあったんですよ。絵本にするとかではなくて、私の中の七大不思議として」

――それは音楽の詞にしようと思っていたとかではないんですか?

「全然そういうわけではないんですよ」

――背景になる実体験があったんですかね?

「そうですね」

―― “もうひとつの世界もの”っていう絵本は『モモ』とかでもあるじゃないですか。そのもうひとつの世界に行って、成長して帰ってくるという。でも『ブリキの姫』はもうひとつの世界に行けない話なんですよね。ある人にとったら拍子抜けするというか。でもこれ、現実的に子どものとき誰でも経験している精神的な挫折の話だと思ってて。大人は助けてくれないみたいな。ああいうリアルな感じにしたのはどうしてですか?

「うーん、どうしてだろう。なんか書いているときとか、話を進めているときとか、私の中で“こういきたい!”っていうのがあるんですよね。でもそれはもう感覚ですよね。自分の中でこうじゃなきゃ嫌だっていうのがあるんですよ」

――そこは譲らないですよね。

「うん。または誰にもわからないと思うんですよね。私の中ではかたちというか進み方があるんですよ。洋服でもあるじゃないですか、このラインがいい!とか」

――じゃあこれを書き終わったとき、気持ちいいとかあったんですか?

「そうですね。大丈夫!って思いました」


「“この井戸はどこまで続いているんだ?”っていう計り知れないものが、私の中でファンタジーになるんですよね」


――『とうめいの龍』『ブリキの姫』はじつは5つ書いてもらった物語の2編なんですよね。

「お話はほかにも3つあって、これが5つ目だったので、最後は日本的なもので終わりたかったんですよね。やっぱり日本ってほかの西洋の森にくらべて色が濃いような気がして。世界で一番透明な闇が濃いような気がするんです」

――山に何か祭ってありますしね。

「そうなんですよ。あとは心の中の話かな。やっぱり日本の山とか山の奥の湧き水とか神聖なもののような気がするんですよね。そういうのが、日本で生まれたからかもしれないですけど、私たちってないといけないような気がしませんか?」

――それこそ初詣に行くとか。日本人のリズムの中に入っているものですかね? 

「そうそう。なくなっちゃったら嫌じゃないですか、そういうものって」

――太鼓の音とかが作中に出てきますけど、祭りとかそういうものを呼び出すみたいなことなんですかね?

「そうですね」

――『とうめいの龍』はすごく音楽的な感じがしたんですよね。

「琴とか胡弓とか日本の音楽的なところはありますよね。鐘の音とか、とくに日本は音が高い気がするんですよね。よく響くというか。ウィーンとかの鐘の音とはまた違って。日本的なものって元を知っているじゃないですか。山とかが出てきたときに自分の中ですぐ思い出せるというか」

――確かに。『とうめいの龍』はある種みんなの記憶の中に入り込めるというか。

「ふとね。そういうことってあるかもしれないですよね。いつもだったらこことここに行って予定通り帰るはずが、『とうめいの龍』を読んだことでふと“あそこって本当にあるのかな?”って思って近くの謎めいた場所に行ってみるとか。ぜひみなさんで龍の居場所探してみてほしいですよね」

――最後に作画に関して伺いたいんですけど。川本さんの中にある物語の原型を抜き出してもらったのが今回の二作で、絵の井ノ上 豪さんという方との出会いは大きかったですよね。

「最初に井ノ上さんが描いていらっしゃるいつもの絵を見せていただいたときに、こんなにかわいい絵を描ける人がいたんだ!って思って」

――しかも男の人で。

「じつは絵本をやるってなったときに “自分の絵でもいけるんじゃないか”ってちょっとだけ思っていたんですけど、井ノ上さんの絵を見て、もうすぐ隠したい!って思いました(笑)。“ああ、そういうことか”って思って、すごいなあと。本当にびっくりしましたね。私が子どもだったらずっと見ちゃう絵というか」


――川本さんの中に明確なビジョンがあったみたいなので、 “イメージが違う”って言われてしまったらどうしようかと思ってましたけど、全然そんなこともなく。

「そうですね。そこはもうコラボレートということで。すごくうれしかったですよ。こんなふうになるんだ!って思って」

――二冊出すっていうのもすごく意味があるんじゃないかなと思いました。『とうめいの龍』だけだと和の雰囲気が強すぎるかもしれないけど『ブリキの姫』は海外絵本のようで幅を見せられたというか。

「とにかく『ブリキの姫』の女の子の絵はかわいいですよね。でも私、井ノ上さんのすごさをまだちょっとしかわかっていない気がします。なんていうか、これから色々あるんじゃないかなって。すごく奥深いものを感じるんですよね。いっしょに制作をやってみて、言わなくても共有できている部分があったりして。今回、ちょっとだけ垣間見れたわけですけど、きっとずっといっしょに仕事をしていたら、もっと奥深いところを見られるんじゃないかと思いました」

――氷山の一角のような?
「井戸だったら、“この井戸はどこまで続いているんだ?”っていう。私にはきっとわからないんですよね。そういうのが私の中でファンタジーになるんです。計り知れないっていうところが私の中で夢になるんですよね」

――“計り知れないところが夢になる”っていいですね。女性ミュージシャンの絵本って、母親になった記念に出す事例が多くて、類型化されやすいんですけど、今回は両作品とも、それとはまったく違うベクトルで、川本さんがみんなの記憶の中の原型を抽出してくれた作品で、これはミュージシャンの絵本云々を越えてスタンダードになってほしいと思います。

「そうですね。ぜひ図書館とかにも置いてほしいです!」

◆とうめいの龍
日本の地方都市が舞台。雨宿りをしていた少女が、森を抜けたところで自分の願い事を聞く
「とうめいの龍」に出会うお話。

著者: 川本真琴 
制作: 井ノ上 豪 

◆ブリキの姫
雪深い工業国で自転車の部品を黙々と作らされている少女・エメラルドと、
夢の中でエメラルドの心の叫びを聞いた漁港の少女・マミの平行世界が描かれている。

著者: 川本真琴 
制作: 井ノ上 豪

この本の内容は以上です。


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