目次
第一章 序論 
第一章
1.1  はじめに
1.2  本書の目的
第二章 カフェ経営者の思考方法
第二章
2.1  リーダーシップ、役割・責任
2.2  自分がやりたいこと、お客様がしてほしいこと
2.3  経営者になった理由
2.4  危機一髪のとき、厳しかった頃を振りかえる
2.5  カフェの地域性や土着性について
2.6  不確実性への対処
2.7  消費者の選好、価値観のパラダイムシフト
2.8  震災後のメンタリティーについて
2.9  情報の価値と確率や期待値の捉え方
2.10 サンクコストを考える
2.11 より客観的にという主観
2.12 彼を知り己を知れば百戦して殆うからず
2.13 専門外のことに対する理解と知識
2.14 錯覚から学ぶ自分の知覚の甘さ
2.15 錯覚を科学する
2.16 アイディアと実行
2.17 安定と不安定
第三章 カフェ開業と経営のポイント
第三章
3.1  飲食業、カフェって儲からない!?
3.2  それでもなぜカフェを開業するのか?
3.3  特徴付けとポジショニング(その1)
3.4  特徴付けとポジショニング(その2)
3.5  コンセプトの重要性(その1)
3.6  コンセプトの重要性(その2)
3.7  コンセプトの重要性(その3)
3.8  コンセプトの構築方法(その1)
3.9  コンセプトの構築方法(その2)
3.10 カフェの収益構造
3.11 カフェ経営のポイント(その1)
3.12 カフェ経営のポイント(その2)
第四章 カフェのプロデュース方法
第四章
4.1  プロデュースのやり方
4.2  開業フロー① 業態
4.3  開業フロー② コンセプト
4.4  開業フロー③ 商品企画
4.5  開業フロー④ 事業計画・資金調達
4.6  開業フロー⑤ ブランディング戦略(その1)
4.7  開業フロー⑤ ブランディング戦略(その2)
4.8  開業フロー⑥ 店舗デザイン
4.9  開業フロー⑦ 物件探し
4.10 開業フロー⑧ 物件契約
4.11 開業フロー⑨ 店舗工事
4.12 開業フロー⑩ メニュー・業者の選定
4.13 開業フロー⑪ 販促計画
4.14 開業フロー⑫ 開店準備
4.15 開業フロー⑬ 運営
4.16 付録 SEO対策(目黒・世田谷・駒沢通り・学芸大学の場合)
第五章 結論
第五章
5.1  おわりに
5.2  弊社概要
奥付
奥付

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第一章

序論






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最終更新日 : 2012-06-11 03:16:55

1.1  はじめに

 わたくし、not for sales Incorporated株式会社の代表をしております、西脇建治と申します。「けんじ」と読まれることが多い、というか、「けんじ」と読まれたことしかないのですが、これで「たつじ」と読むことになっています。指摘するのに飽きたので、けんじと言われても90%以上の確率で流すようになっています。

 弊社は、飲食店の総合プロデュース・コンサルティングサービスをご提供させていただいており、おかげさまで、2012年から7期目に突入することができました。これもひとえに、弊社のスタッフ一同のガンバリ、そして、お客様(顧客の皆様)のご厚意のたまものだと感じております。ここであらためて御礼申し上げます。

 さて、私の出身地は大阪です。建築の専門学校に通いまして、町の建築屋さんに入社したのが20歳の時でした。そちらで4年間ほど現場監督という仕事をしていました。現場監督とは、工事の予算や全体の進行を管理しつつ、図面通りに工事を効率的に、事故なく進めるというお仕事です。なので、職人とはちょっと違います。現場にいると細かな仕事もたくさんありますし、一通り、職人さんの仕事を見ているので、ある程度のことは自分で出来ますが、どれひとつ、職人レベルではないという、とても中途半端な技能をここで身につけました。

 まぁ、それはオマケ的な感じでして、ひとつの工事(プロジェクト)の予算や納期などを管理しつつ、たくさんの専門職の方々を入れ替わり立ち替わり使って行き、出来る限り無駄なく進行させ、利益をねん出するというこの仕事は、完全にマネジメントでした。いわゆる、管理職です。部下にあたる職人の方々は、自分より年上の人がほとんどで、もちろん、父親より上の方もいたりする訳ですが、その人を「使って」仕事を進めて行くというのは、初めの内はなかなか難しかったような記憶が・・・、実はあんまりありません。

 当初より、自分にはこの仕事は向いていると感じていました。もちろん、自分より経験も知識もある年上の職人さんに、ダメ出しされることもあれば、バカにされることもありましたが、現場を知ることにより、だんだんと自分のやり方で管理できるようになって行きました。

 そして、入社した建築屋さんがそんなに大きな会社ではなかったことから、入社後、半年もすれば、現場を完全に任せてもらえるようになりました。工事が問題なく進行していれば、現場でとりあえず一番偉いという立場を手に入れ、自由な感じで仕事をしていたような記憶があります。そんなこんなで、マネジメントという仕事をひとつずつ覚えて行き、鉄骨も鉄筋コンクリートも木造の住宅も、ひとしきりこなしたところで、景気があまり良くなかったということもあり、一旦一区切りという気持ちで、4年間の現場監督生活にピリオドを打ち、晴れて無職の身となりました。それが24歳の頃です。

 次に、会社員になったのが、今も取引先として良くしていただいている、話題のパワーフルーツ、「アサイー」の日本におけるパイオニア的存在であるFRUTA FRUTAさんです。神戸国際会館に一店舗あるのみで、社長とアルバイトの方数名という、今から考えるとかなり小規模だった時代に、1人目の社員(店長)として入社し、そこでまた、4年の月日を過ごしました。

 まさしく、ベンチャーという雰囲気の伸び盛りの会社に、かなり早いタイミングで参画することができ、成長過程の会社の様々な場面に立ち会う機会に恵まれ、大変勉強になりました。そしてさらに有り難いことに、大手の飲食チェーンの会社様(上場企業)が、店舗をFC展開してくれたおかげで、飲食チェーンのノウハウや収益構造、利益の上げ方、管理の方法など、多数の面で学ばせて頂きました。その時にお世話になった方が、創業当初より弊社の取締役として名を連ねております。(2012年の春、その方との共同事業として、大阪で店舗「唐揚兄弟」を出店することとなりました。ついに来たぁー!という感じで、すでにワクワクが止まりません。)

 そんなこんなで、大雑把に言うと、飲食と工事と進行管理という、飲食店の開業に必要な要素の大部分をいつの間にか学んでおり、また、個人的に、経営やマネジメントなど、コンサルティングをするのに役立つ知識も蓄えていたことから、開業する方々のお役に立てるのではないか?と考え、起業するに至った次第です。

 同時に、今後の差別化や、起業の戦略として、「デザイン」や「ブランドイメージ」の重要性は、ますます大きくなって行くことも予想しておりましたので、それならデザイン会社も一緒にやってしまおうと考え、現在のスタイルによる設立となりました。

 以上のような経緯で、弊社、not for sales Incorporated 株式会社は、開業のお手伝いが得意です。 人からお金を貰って儲かるノウハウを伝える側が、お店をひとつも持っていないのはいかがなものかと常々感じておりましたので、開業の実績づくりとして、飲食の中でも、最も儲かりにくいと思われる「カフェ」業態を自社で開業・運営し、継続することが、最低限必要だと考えました。そこで、EMPORIOカフェダイニング駒沢通り学芸大学店を起業と同時にオープンさせ、今もたくさんのお客様にご来店いただいております。

 さて、ここで少し余談ですが、24歳で現場監督を辞めて、27歳でベンチャー企業に入社するまで、空白の3年間がありました。簡潔に言うと、社会的には無職、「プー太郎」でした。

 仕事を辞めた当初はまだ余裕もあったので、海外留学している友人のお宅に3ヶ月以上も居候させてもらってブラブラしたりもしましたし、自由になる時間がたくさんあったので、朝から晩まで興味ある本を読みふけったり、それはもう、まさしくプー太郎でした。もちろん、生きて行かないといけないので、なにかしら仕事はしていました。倉庫でアルバイトしたり、手堅く最低限の収入を得つつ、安く買って高く売るという、商売じみたことも色々やりました。売るものによって、売る場所やターゲットが変わるので、より効率的に売れるように頭をひねったり。

 今思えば、その期間で学んだことはすごくたくさんあったような気がしています。とりあえず、お金がないので、極力お金を使わないようにする方法もそうですし、ちょっとしたことから、誰かのニーズを満たすことによってお金を手に入れるアイデアを思いつく重要性とか、リスクやリターンを考えて判断する力とか。たくさん失敗もしましたが、それも今となっては良い勉強になったと思っています。ハードだと言えばハードですし、ゆるいと言えばゆるい3年間でした。面白い話もいくつかありますが、本書にはとても書けないので、それはまた、仲良くなった時にでも是非聞いてください。

 というのが、おおよその設立までの過去の経歴です。そういった経験の上に、コンサルタントとして何よりも重要なお客様・消費者の意思決定や行動の分析というか、深い理解というか、科学的に裏付けられた対策について学ぶ必要性を強く感じ、行動経済学や行動分析学、ゲーム理論やマーケティング理論、ブランディング関連、プライシングなど、また、ちょっと飛んでるようにも思われるかもしれませんが、遺伝子の本とか、量子力学の本とか、日常的に本を読み漁っています。

 今の立場や役割がどうあれ、「知らないことは罪」という言葉をいつも心に置くようにしています。確かに、知らなければ直接損してしまうことはあまりないと思います。そもそも、損していることに気づかなかったり、それを人のせいにできたりします。しかし、もし、知っていたら儲けられた、誰かを助けられた、無駄を省けた、他のことに時間を使えた、などという状況は、どれだけ知っていても必ず発生すると思うのです。それらを出来る限り軽減していくための作業が「知ること」だと思っています。


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最終更新日 : 2012-06-12 03:53:01

1.2  本書の目的

 私は、カフェ開業を目指す方向けの専門学校「レコールバンタン」の講師も勤めておりますが、講師やコンサルティング業務の際に気をつけていることは、次の4点です:

⑴ サカナを与えるのではなく、サカナの釣り方を教える。
⑵ 手法を伝えるのではなく、その手法が良いと思われるに至った科学的根拠や原因を伝える。
⑶ 手段のみではなく、手段を展開できるだけの情報を伝える。
⑷ 応急処置ではなく、問題解決ができる能力を高めることに力点を置く。

 実際に現場レベルでは、そういった能力が必要であると感じています。その中身を理解しないで手法だけ講じても、ある時しか使えない応急処置でしかありませんが、「なぜそれをするのか?」を理解していれば、その後、状況が変わっても、その応用で対応できる可能性が格段に高まるからです。

 本書の読者の方、講義を聞いてくださっている方の中には、もっとすぐに使えるようなやり方が聞きたいというご希望もあるかもしれませんが、すこし回り道をして、そのやり方を自ら発見するための基礎的な能力を高めることに繋がると思って、お付き合いいただければと存じます。

 手段はそのとき一度使えても、すぐに使えなくなってしまう可能性が大いにありますが、理解し身に付けた方法論は、時に間違っていることもあるかもしれませんが、より深くなっていく性質のものです。方法論が深まるほど、より良いアイデアを思いつく可能性は高まると思います。

 もちろん、お客様に対しては、時間とのバランス、機会費用や制約条件を常に意識しなければなりません。そのため、私がこれだと思う手法や手段をそのまま提案して、即実践することもありますが、より効果を継続したり、発揮させるためには、上記の方法がベストだと思っています。

 弊社の詳細な仕事内容については、事例集のwebページがありますので、お時間のあるときに見ていただけたら幸いです。業務のスキルとしては、店舗デザイン・広告デザイン・Webデザインはそれぞれ別のものです。しかし、顧客(例えば、飲食店さん)の立場では、弊社へのオファーの目的は、「お店に来てくださるお客様に見てもらうため」ですので、ひとつの会社で同じ方向を向いて各デザインを同時に制作する方が伝わりやすいし、より無駄なく、結果として安く良いものができるのではないかと考えています。

 また、弊社の飲食店舗の総合プロデュース業務は、多岐にわたる専門業種(不動産やコンサルティングなどを含む)を、顧客目線で、ワンストップでご提供するサービスです。求められる知識や情報、スキルの幅は、それはもう広範囲で、日々学ぶことを怠れません。弊社の専門性は、それぞれの専門業者さんよりもやや浅いところに留まるかもしれませんが、目的を顧客と共有する深さにおいては、どこにも負けないつもりです。



 たとえば、不動産の店舗情報について、専門業者さんなら100件提示できるところを、弊社だと80件しか集められないとして、顧客がご自身で 100件の中から、開業されるお店にとってベストな物件を選択できるなら、弊社の存在は不要だと思います。しかし、80件の中から、弊社のもつノウハウやスキルを利用して、共にベストな物件を探し出し、または、物件に合わせて店舗企画や事業計画をカスタマイズし、結果的に、店舗運営を成功させる可能性を上げることを望まれる方には、ご愛顧いただいております。



 ここまで読み進めていただき、ありがとうございました。本書の構成は、以下の通りです。まず、続く第二章では、カフェの経営、会社の運営に際して役立つであろう思考方法について述べさせていただきます。これまでの経験を基に身に付けた知識や考え方が、読者の皆さんのお役に立つことが出来れば幸いです。第三章では、経営学的な視点から、カフェを開業するための具体的なプロセスにおけるポイントを述べます。世の中にカフェや飲食店の開業本はたくさんありますので、細かな点については他の本も参照していただくとして、第三章では、開業においてとりわけ重要かつ不可欠な、「コンセプト」の立案・構築について掘り下げます。第四章では、弊社のカフェ「EMPORIOカフェダイニング駒沢通り学芸大学店」を例にあげ、実際のプロデュース方法をご説明します。


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最終更新日 : 2012-06-12 04:00:11

第二章

カフェ経営者の思考方法






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最終更新日 : 2012-06-11 03:17:12

2.1  リーダーシップ、役割・責任

 経営者として、一個人として、社会的責任を常々感じています。私の行動指針は、基本的にはリベラル寄りの考え方が軸になってはいますが、それでも、世間一般のルールや法律さえ守っていればなんでもあり!という風潮には同意しかねます。

 

 最近、『インサイド・ジョブ』という映画を見ました。リーマンブラザーズ破綻の原因の一つともなったサブプライムローン(住宅ローンの証券化)に関する、ドキュメンタリー映画です。証券会社や保険会社が、ハイリスクな金融商品を投資家に売り(そのようなブームに乗じてバブルを起こし)、莫大な利益を上げ、バブル崩壊によって危機的状況を招いたあげく、米国政府の救済を受けました。しかし、それまでに受け取っていた報酬は返還せず、救済後に多額のボーナスも受け取っていた実態はいかがなものか、という視点に基づいて描かれていました。

 私は、現在の金融システムは、ハイリターンの追求という面では行き過ぎであり、また、 あまりにも基盤が脆弱であると考えています。資本主義や市場経済も、不完全で不安定なシステムですが、金融システムについては際立って不安定であり、不健全であるとすら感じています。自分や自社の経済活動の結果に対し、厳密な意味で100%の責任を負える人はいないとは思いますが、彼らの報酬と責任の取り方との間に、あまりにも大きな乖離があるのではないかと感じています。

 

 私は、カフェの経営において、お金はやはりとりわけ重要であると考えていますので、専門学校の講義でもかなりの時間をその話題に割いてはいますが、お金が全てだと思っている訳ではありません。


 そこで、経営者の役割や責任についてですが、「あなたにとって、リーダーシップとは何ですか?」と問われた場合、私にとってのそれは「自社の方向を示すこと」であり、マネジメントとは、「自社内やチーム内のメンバーが、その方向へ進む際、より効率的に、より無駄なく進めるように手伝うこと」であると考えています。経営者の役割とは、組織の規模にもよりますが、その両方であると思います。また、経営者の責任については、まず、社員や従業員の方々との約束を守ること、そして、弊社のクライアント様やカフェのお客様といった社外との約束を守ること、この二点であると思います。

 

 その約束の内容は色々かと思いますが、ここでもやはり、お金というのはとても重要です。社外に対しては、取り決めた通りの額をきちんと支払うことは絶対です。社内に対しては、約束の種類はお金に関するものだけではないのですが、つまるところ、お金の約束を果たせなくなったら経営者失格ではないかと考えています。


 色々な事業にチャレンジしたいといつも思っていますが、会社の成長と同時に、経営の安定、社員の生活の安定を提供する責任があるので、そのバランス感覚を常に向上させる必要があると考えています。


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最終更新日 : 2012-06-09 01:21:04


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