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4月30日のおはなし「ツンデレねーさん」

 えー、毎度たくさんのお運びをありがとうございます。いつもどおりではございますが、おかしな噺をせっせとさせていただくのでございます。

 どうもなんですな。昨今はツンデレなんて言葉が流行ってるんでございまして、お噺の世界もこういう流行を取り入れていかなくてはなりません。ツンデレというのはふだんはツンツンつっかかるようなキツい性格の女人ですとか、ツンとすました態度のおなごさんがですね、どうかするとこう急にデレデレいちゃいちゃ甘えて来ると、そういうのが人気と言いますか、そんなんだったら最初から甘えていてくれたらいいのに、なんてあたしなんかは思うんでございますが、まあ近ごろの若い方はそういう大層面倒くさいのがいいんだそうで。

男「ねーさん、ねーさん」
女「んだよタツ。朝からうるせーな」
男「すごいこと思いついちゃいました」
女「どうせまたろくでもねえ話だろう」
男「まあそう言わないで聞いてくださいよ」
女「聞かなくったってしゃべるんだろうが」
男「へへ。あのね、今朝目覚めた時にですね、夢を覚えてたんですがね、これがあなた大層面白い夢でね、こう、あたしが手を伸ばしますとね、あれ? これ何だろう」
女「どさくさに人の胸触ってんじゃねーよ!」
男「あっすいませんすいません。いたい痛いいたいいたたたたた! か、勘弁してくだせー」
女「タツ!もうしないか」
男「もうしません」
女「ほんとうか」
男「次はもっとムードを出してから、いたたたたたたたたたた! しません! 本当にもうしません! 絶対にしません!」
女「絶対か?」
男「絶対です! 一生しません!」
女「一生?」
男「一生しません」
女「えー? 一生しないの? やあだあ!」
男「あっ。出た! ツンデレねーさんっ。たったまりません。もうしんぼうたまりません」
女「どんなふうに?」
男「もうあたしはこんなかちんかちんになっちゃって。今しましょう。すぐしましょう夕べの続きを」
女「あまえてんじゃねーよ!」
男「ああ戻っちゃった。ねーさん、デレが短過ぎますぜ」
女「話の続きをやんな。面白かったら夕べの続きもさせてやるから」
男「へい〜。何の話でしたっけ」
女「夢の話だよ」
男「へい。夢ですか? そうですね。小さいころからあたしの夢は大きくなったらアメリカの大統領に痛ててててててて、違った違いましたいま気づきました今朝の夢の話でげすね。しますします今します」
女「わかったんならいいんだよ。続けな」
男「へい! 面白い夢を見たんでさ。これ、映画にしたら一儲けって話で」
女「言ってみな」
男「おじおば夫婦の元でいじめられながら育てられているひょろひょろの坊やの元に、魔法学校から入学許可証が届いていてイテ痛てててててて」
女「それは『ハリー・ポッター』だよ」
男「何ですそれは」
女「映画だよ。あんた『ハリー・ポッター』の話をしてるんだろう」
男「めっそうもない。あたしは映画なんてこれっぽっちも見たことねーんで」
女「どうせ名前を言っちゃいけない例のあの人とかいう魔法使いと戦うんだろう」
男「違うんで違うんで。ここからが面白いんで」
女「続けな」
男「でもって主人公は豪華客船に乗って魔法学校に向かうんですが、船ン中で一人の金持ちの女の子と知り合いましてね。でもポッターは」
女「ポッターって言ってるじゃねーか」
男「あいや。これは“カッコ仮”でさ。ほら、名前がないと話しにくいから」
女「ふん。続けな」
男「ポッターは貧しいですから三等船室に、女の子は一等の世界。でもポタプリオは絵心があるもんで」
女「ポタプリオって何だよ。その船、氷山にぶつかって沈むな?」
男「あれ? なんでわかったんで? あ。ごめんなさいごめんなさい。痛いのはかんべ……」
女「面白いから続けな」
男「へ? へい。で生き残った女の子がかろうじてたどりついたのは、何と世界中の神々が湯治にやって来る温泉場で」
女「豚の姿に変えられた両親を見事言い当てるんだろう」
男「いえそうじゃなくて、この温泉場にそびえる塔にはちょっといわくがありましてね」
女「ふーん?」
男「一階ごとに武術の達人がおりやしてね。これを一人ずつ女の子がカンフーで倒していくんでさ。こう、黄色のトレーナーに身を包みましてね」
女「あんたもカンフーで倒されたいのかい?」
男「まだ倒さないで命だけは」
女「ばかばかしいけど続けな」
男「ところがこの塔の下に希少な金属の鉱脈があるとわかったからさあ大変! 地球からやってきた軍人たちが」
女「地球じゃねーのかよ」
男「軍人たちがこの鉱脈を発掘しようってんで、神さまたちのいるところへ」
女「神さま、全身青塗りだろ」
男「よくおわかりで。で、で、でも、まだあります」
女「くだらないけど続けな」
男「その軍人の総帥が全身機械化されてて、呼吸の音なんかコオーッコォーッて」
女「それ、主人公の父親だろう」
男「うへえ、ねーさん、テレパシーがあるんですかい」
女「それで終わりか?」
男「いえいえ。それがみんなコンピュータがつくりだした世界だったってことにネオが気づいて終わるんでさ」
女「ネオって誰だよ」
男「どうです。閉塞した世界に風穴を開ける作品になりますね」
女「ならねーよ」
男「さあ、ねーさん夕べの続きを」
女「どてっ腹に風穴あけられたいのかい、タツ!」
男「お。サム・ライミの『クイック&デッド』でげすね」
女「映画、詳しいじゃねーか」
男「あ!」
女「そんなタックンがだあいすき♡」

 犬も食わないようなお話でございます。

(「閉塞した世界に風穴を開ける」ordered by あとう ちえ-san/text by TAKASHINA, Tsunehiro a.k.a.hiro)


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奥付



ツンデレねーさん


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著者 : hirotakashina
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