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今結ばれる絆

サイファさんの艦船、補給できないじゃまいか!から放たれた波動砲は、敵艦船の多くを破壊した。
流石にバリアしていた艦船を完全破壊する事は出来なかったが、戦闘不能状態にはなっていた。
この様子だと、破壊された艦船のプレイヤは、脱出すらできなかっただろう。
ちなみにプレイヤキル、PKのペナルティは、人型でのみの適用である。
要塞を占拠する事と、艦船の破壊が戦闘の目的なのに、それができなくなってしまうから当然だ。
とにかく、状況を一変とまではいかなかったが、まだなんとか戦える最低限の戦果は得られたようだ。
俺達は再び、我慢比べの戦いを続ける事となった。

サイファさんから、作戦の提案があった。
次の波動砲で、敵の壁に穴をあけ、そこを突破し、敵の背後を突く、又はジークを助けに行くってものだった。
サイファさんは、何故だかジークを助ける事にノリノリだ。
前作からのライバルで、助けてやったらどんな顔をするのか見てみたい、だそうだ。
ま、ネットだから顔なんて見えないわけだが、そこは何を意味しているのか察して欲しい。
俺達はその作戦を採用し、順番に補給を行っていた。
じぇにぃ、ハルヒくん、暗黒天国さん、そして紫苑さんのパープルアイズ、スピードスターも万全にした。
最後はチョビ。
チョビは、現在のこう着状態を維持している要だ。
もしかしたら、チョビが補給に行ったタイミングで、敵が攻撃を強めてくるかもしれない。
そこで一気に艦船を前にだしてくるかもしれない。
美菜斗さんにしてみれば、現状維持で十分だから、リスクを負う戦術はとらないと思うけど、一応警戒して、チョビがいなくても前線で敵をけん制し続けた。
結局、特に戦術を変えてくる事もなく、とりあえず現状維持には成功したが、此処で問題が起こった。
敵の要塞戦艦が、場所を移動し、艦船の壁のすぐ向こう側に来ていた。
今までは端に位置し、ジーク側とこちら側、両方をカバーする形をとっていたのに。
艦船補給はこちらだけで良くなったからだが、全てが後手の状況にジレンマを感じた。
作戦成功の可能性は、これでほぼ皆無ではあるが、どちらにしても波動砲の攻撃はする事になる。
俺達はどうするか話し合っていた。
と言っても、人型に乗っている俺が、話に入る余裕は全く無かったが。
 紫苑「一か八か、やるしかないか。」
 サイファ「失敗すると、みんなで敗走する事になりますよ。」
 紫陽花「でも、このままの状況を続けたら、ジーク軍はからなず終わりますよ。」
 真でれら「一応撤退準備は万全にして、やるしかないっしょ!」
美菜斗軍の人型は、既にジーク側の空域には、姿は見えない。
既に要塞内での戦いに突入しているって事だ。
此処の要塞は、確か防御力が高いから、そうそう拠点エリアまでは到達できないだろうが、このままいけば、必ず落とされるだろう。
そしてその前に、必ずジークがやられているわけだ。
次の機を逃したら、どちらにしても我々には撤退しかないだろう。
撤退か、逃避か、少し意味合いが変わるだけ。
行くしかないと思った。
その後結局、決行する以外に選択肢は無いって事でまとまっていた。

作戦としては単純である。
あちら側に向かうのに一番最短である左端に波動砲を打ち込む。
スピードスターに暗黒天国さんのボスを先頭に、チョビ、俺、じぇにぃ、ハルヒ、その他数人を乗せて、穴の開いたところを一気に突破。
突破できたら、スピードスターとボスは艦船の背後を襲い、他の人型は要塞へ向かう。
問題は、索敵できない死角に、敵艦船が潜んでいる可能性がある事と、要塞戦艦の能力がどれほどのものか知らない事だ。
ま、もちろん艦船をまだ隠していると考える方が普通だし、今要塞戦艦とまともに戦うのは、無理だろうけどね。
もう俺達には、わずかな可能性にかけるしかなかった。
作戦はスタートした。
補給できないじゃまいか!から、波動砲が撃たれる。
すると敵の艦船による防衛ラインに穴が開いた。
スピードスターが高速でその穴に向かう。
紫苑さんのパープルアイズや、他の友軍艦船は援護射撃。
紫陽花さんのパープルリリーは、既にこの領域を去っていた。
失敗したら即撤退なわけだが、パープルリリーで撤退は不可能だからだ。
そうなったら、誰も安全とは言えないけどね。
追撃されれば、みんなどうなるかわからない。
此処は敵軍領域で、我々の帰るべき場所は、遥か宇宙の彼方なのだから。
美菜斗軍は、すぐに対応に動いていた。
流石に簡単には突破させてはくれない。
沢山のビームとミサイルが襲ってくる。
それを、スピードスターの弾幕と、ボスの攻撃で撃ち落とす。
前の見えない光の中を突き進む光景は、なんだか幻想的だ。
星さんと暗黒天国さんは、いつもこんな戦いをしていたのか。
これはこれで楽しそうだなと思った。

一縷の望みを託した作戦は、成功を目前としていた。
この調子なら突破できる。
誰もがそう思ったかもしれない。
だが、やはりそれほど甘くはなかったようだ。
壁を埋めるべく、何処からともなく敵の艦船が集まってきていた。
やはり、死角に艦船を隠していたか。
それともただ単に上手くやられたのか。
今の俺には知るすべが無かった。
今、星さんがどうするか、急ぎ紫苑さんと話していた。
 スピードスター「突進する?俺死ぬけど♪」
 紫苑「それでも他が突破できればねぇ。」
 スピードスター「暗黒天国も死ぬな♪」
 紫苑「いろんな意味でイタイな(^0^)」
追い詰められているとは思えない、軽い会話だった。
だからだろうか、何とかなるような気がした。
 紫苑「ちょっとまって、通信がw」
一体誰だろう?
今、我が軍の上層部と、サイファ軍上層部のメンバーは、メンバー指定通信をしている。
この中のメンバーなら、何かあればチャット画面に表示されるはずだ。
すなわち、紫苑軍でも、サイファ軍でもない人から、通信が入った事になる。
美菜斗さんだろうか?
それともジークか?
その答えはすぐに分かった。
 紫苑「回線に入れます(^0^)」
回線に入れるという事は、おそらく味方だろうが、俺達に味方などいただろうか?
紫苑さんの通信の後、すぐに表示された通信と、発信者の名前。
俺は見て驚いた。
 ドリーム「やっほーw仲間に入れて!」
なんと、ダイユウサク軍の夢さんだった。
そしてすぐに、索敵マップにダイユウサク軍の艦船の機影が表示されていた。
助けにきてくれたのか。
俺達の選択肢に、撤退と逃避以外の選択肢が、再び輝きを増していた。

力の差

とうとう此処に、前作の宇宙の絆、上位4軍が集まった。
いや、グリードさんもいるから上位5軍か。
そしてそれがみんな、ジークを助けようとして集まってきているのだ。
一時的なものではあるが、全てが味方だ。
そして敵は、ネットゲームのカリスマ、不敗の美菜斗さん。
数時間で圧倒的勢力をつくり上げた彼に、絆連合が挑む。
 サイファ「よし、俺達も続くぞ!」
 紫苑「(^0^)」
 ビューティフルベル「敵艦船は我々が引き受けます。夢と和己は一緒に行って良いよ。」
ダイユウサク軍の大将は来ていないようなので、どうやら中将のこの人が、ダイユウサク軍の指揮官のようだ。
俺はバトルグリードはやった事がないので知らないが、きっとこの人もかなりやる人なのだろう。
この状況で引き受けますとか、簡単に言えるものではない。
 今日子「えーー!!私も行きたい。今すぐ行きたい。とにかく行きたいーーー!!」
これは・・・
サイファ軍の今日子さんが言っていた、同じ名前の人か。
どうやら性格は全く違うようだ。
 チサト「では私もぉ~いくねぇ~」
 ビューティフルベル「ちょっ!あんたら。まあ良いけど。て事は、ダイスケとトイキも行くんでしょ。」
 ダイスケ「俺はチサトを守らないといけないからね。」
 トイキ「ダイスケとは、ゲーム内ではパートナーだから行くしかないさ。あ、サラ達がお世話になってます。」
ダイスケさんとトイキさんは、確かドラゴンブレスのメンバーだ。
うちのサラさんとサウスさんとおとめさんが所属するゲームグループ。
チサトさんはドリームダストのひとりだし、正に「ドリーム」チームだなと思った。

戦況は変わりつつあった。
ダイユウサク軍のメンバーは、真っ向勝負と言わんばかりに、俺達が作った突破口ではなく、敵艦船のいる場所へと突進していった。
じっくり戦いを見られないのは残念だけど、あの人たちなら突破してくる、そう思った。
で、いくらダイユウサク軍が助けにきたと言っても、俺達の目の前の敵がいなくなるわけでもなく、残念ながらスピードスターは、突破と同時に破壊されていた。
直後足元を失った暗黒天国さんのボスも、戦闘不能になった。
星さんは直前、人型で脱出していた。
艦船を失うのはかなり痛いが、戦場に残れただけでも良しとしよう。
それにこの戦いは、おそらくこの先の展開を、大きく左右する戦いなのだから、艦船の1隻くらい、仕方のないところだ。
さてこれからどうするか。
前衛の艦船の壁は突破したが、既に前方には新たな壁ができていた。
この中で更なる突破に挑むのか、それともダイユウサク軍のメンバーが突破できるように、艦船の背後を攻撃するのか。
俺は迷わず、正面突破を挑む事にした。
 アライヴ「チョビ、つきあってくれ!」
 チョビ「えっ?えっとあの・・・」
ん?どうしたんだ?
 一生「あ・・・」
戦闘中の咄嗟の通信だったので、短く簡潔にしたら、どうやら勘違いされたようだ。
つか、中学生にゲーム中に告白する大人って、ないでしょ。
俺は再び、しっかりと伝わるように通信しなおした。
 アライヴ「正面突破につきあってw」
 チョビ「あ。はい~」
どうやら分かってくれたようだ。
 アライヴ「じぇにぃ、ハルヒくんもよろしくw」
 じぇにぃ「やるきだよぉ~ぃくよぉ~」
 ハルヒ「マジっすか。僕死にたくない~」
じぇにぃは、迷う事なくついてきてくれた。
ハルヒくんも、なんだかんだ言って、今日の戦いで此処まで生き残ってきたプレイヤだ。
大丈夫だ。
俺達はただ4機で、気合をマックスに再び敵の大艦隊に向かっていった。

戦闘は困難を極めた。
今まで無理だったのに、気合でなんとかなるものでも無かった。
結局此処でもこう着した。
そんな中、ダイユウサク軍の通信だけが、通信画面を動かす。
 ビューティフルベル「弥生、右の艦船止めて!こっちに向き変えてるよ。あんじゅ、あんたの妻が危険よ。フォローして。達也、死んで良いから突撃!!」
 弥生「簡単に言うわね。マナ!3秒後行くわよ。」
 あんじゅ「おねぇさま~今行きます~」
 スター「おい!俺を何度殺す気だ!ポイントが全くねぇぞ!」
 ビューティフルベル「おかげで艦船スタッフレベル最高じゃん!攻撃くるわよ!」
 ウララ「私も守りますから大丈夫です。」
 ビューティフルベル「夢、和己、左開いたよ。ゴーゴー!」
 ドリーム「分かってる!」
 カズミン「分かってる!」
 チサト「流石夫婦~息があってるぅ~」
 ダイスケ「う~俺もチサトと組みたい・・・」
 トイキ「ゲームなんだから、今は忘れるのさ。」
 今日子「死ね死ね死ね~うははははは~」
この手の離せない状況、ただ驚いているわけにもいかない。
だけどなんだこの人達のこの余裕。
通信の文字がひらがなだけではない事から、スカエポの通信を使っているものではない。
となると、戦闘中にも関わらず、これだけのタイピングをしている事になる。
キーボードの上にコントローラーを固定するアイテムもあり、俺も通信する時は使っているが、この状況では通信などできるものではない。
向こうの方が多少余裕のある状況だとしても、凄すぎる。
それに今も流れる通信ログ、ゲームで食べていると言われる人たちは、此処までやっていたのか。
状況を完璧に把握する司令官、その指示を確実に実行するメンバー、今の俺達では、全く歯が立たない相手だと感じた。
もしかしたら、今日同じ通信網で戦ってくれているのは、コレを見せる為だったのかもしれないと、俺は勝手に思った。
俺達が苦戦する中、間もなくダイユウサク軍の面々が、美菜斗軍の壁を突破してきた。

勝負

ダイユウサク軍の面々が、敵を突破してきた。
戦力の数だけで言えば、俺達よりも少ないダイユウサク軍なのに、それでも突破してきたのは、やはり力の差を認めざるを得ない。
でも、軍の能力で負けていても、個人的に負けたと思うのは癪だ。
此処からは条件は五分。
必ず俺が1番に突破してやる。
とは言っても、接近するのに、チョビの力を借りている事は内緒だ。
艦船には、ある程度までは近づく事ができる。
だが、艦船を抜ける時に挟み撃ちに合うので、どうしても此処だけが抜けられない。
 ドリーム「アライヴさん、人型だけで突破しようなんて、無茶するねw」
俺達に追いついてきた夢さんが、通信をいれてきた。
俺は通信する余裕がなく、仕方なくスカエポの音声変換機能で話す。
 アライヴ「まけたくなかったんで」
此処でも、ダイユウサク軍の「要塞戦艦落とすよ~」とか、「はさみ撃ちでおけw」とか、通信が画面を流れていたが、夢さんとの会話に関係ないので割愛してお伝えする。
 ドリーム「じゃあ私も負けたくないから、人型で突破しよw」
 アライヴ「きょうそうだな」
 ドリーム「とはいえ、流石に接近するまでは、誰かに協力を願いたいね。チリ!よろしく!」
 チサト「おっけぇ~だよぉ~」
こうして、なんとなく夢さんと競争する事になってしまった。

人が集まってきて攻撃が分散したからか、多少余裕も出てきた。
飛んでくるミサイルは、誰かが落としてくれるし、ビームにだけ気をつければ行けそうな気がした。
チラッとモニターの隅に、美菜斗軍の艦船が、体勢を立て直し更に向こう側に壁を作るべく、移動しているのが見えた。
時間がない。
俺は一か八か、突き進んでみようと思った。
これだけのメンバーが集まっている。
きっと誰かが、助けてくれるはずだ。
 アライヴ「チョビ!じぇにぃ!ハルヒくん!戦闘タイム0520丁度に、俺は突撃する。援護頼む!」
画面の隅に、軍が戦闘を開始してから、どれくらいの時間が経過しているかが表示してある。
これを元にタイムを合わせて作戦行動するわけだが、同じ軍でないと時計表示は一致しない。
だから波動砲の時は使えなかったが、今度は正確にタイム指定した。
 チョビ「はい!」
 じぇにぃ「りょぅかぃですぅ~」
 ハルヒ「無茶ですってば!」
みんなの言葉が心強い。
ハルヒくんの言葉の何処が?なんてツッコミは無しだ。
これがハルヒくんなりの最高の返事である事は、今までの戦いで理解していた。
 ドリーム「カズミン!うちらも行くよ!チリ、今日子、大輔、トイキ、援護よろしく!」
 カズミン「はい!」
 チサト「シールドフェンネル使うよぉ~」
 今日子「了解いいいいいい!!!」
 ダイスケ「俺達は普通に後方から援護するよ。」
 トイキ「わかったさ。」
ダイユウサク軍も此処で行くようだ。
チサトさんの通信に「フェンネルシールド」という文字が見えたので俺は気になった。
つい最近導入されたもので、あのアニメでは、シールドビットと呼ばれるものだ。
導入を検討していたので、後で見る事ができれば参考にしよう。
そんな事を考えていたが、0520の数字を見た瞬間、全てを忘れて、俺は敵の中へと向かって行った。
思ったとおり、ミサイルは誰かが撃墜してくれるので、俺は真っすぐ飛んでくるビームにだけ気をつけて突き進んだ。
突破できる。
此処を突破したら、要塞まで一直線。
そしてようやく、俺の得意な対人型戦だ。
艦船に最接近した。
もう一息だ。
正面以外は、爆発の光で眩しい。
そして俺は見事に突破した。
 一生「やった!」
部屋で一人声を上げた。
しかし、まだ、最後の攻撃が俺に向かってきていた。
艦船から後方に撃ちだしたミサイルが、鋭角に向きを変え、艦船前方に進む。
それは俺の前方から、まっすぐ俺に向かってきていた。
盾もない俺に、コレをかわす術は無かった。

覚醒

向かってくる大量のミサイル。
俺に、かわす術は無かった。
いや、無いはずだった。
俺は無意識のうちに、フェンネルを前方に、半球状に出していた。
さっきチサトさんが「シールドフェンネル」とか言っていたからだろうか。
それとも、俺のフェンネルへの信頼からだろうか。
両方かもしれないし、どちらでもないかもしれないが、とにかく俺は、ミサイルにフェンネルをぶつけて、九死に一生を得たようだ。
やろうと思ってやったわけではない。
体が勝手に動いた。
自分でも信じられない。
俺、覚醒した?なんて思って、少し嬉しくもあるが、まだ現実感が無かった。
そして今も無意識のうちに、ジークの要塞へと向かっていた。
 ドリーム「ちょっと負けちゃったwやるねぇ!」
夢さんの通信に、俺は我にかえった。
どうやら夢さんも無事、あの壁を突破したらしい。
そしてどうやら、俺は夢さんよりも先に、あの壁を突破したようだ。
夢さんに勝ったのか。
仲間があっての勝利だが、勝ちは勝ちだ。
俺は顔がにやけた。
それでも、さっきの自分はなんだったのだろう。
今一受け入れられず、俺に慢心は全くなかった。
 アライヴ「まぐれだよ。なんか勝手に体が動いてさ。」
俺は正直に話した。
すると夢さんは、それが当然と言わんばかりだった。
 ドリーム「ん?いつも勝手に動くよ。違うの?」
それを聞いて理解した。
いつも夢さんは、さっきのあの感覚の中で戦っているのではないか。
だから人間業とは思えないスピードが得られるのではないか。
もしそうなら、勝てるわけがない。
でも、もしさっきのアレが、再び俺にできるなら、ようやく俺は、夢さんに追いついたのかもしれない。
今更ながらドキドキしていた。

突破したのは、俺と夢さん、そしていつの間にか、カズミンさんもこちら側にいた。
俺は要塞を目指したが、夢さんとカズミンさんは、後方から艦船を攻撃していた。
ありがたい。
残った仲間の事は、任せて大丈夫そうだ。
俺はただ一機、広がる空域を突き進んだ。
そして間もなく、要塞内へと突入した。
要塞内は、静かだった。
本来ジークから見れば、紫苑軍は敵であるわけだから、防衛機能が働いていたら、攻撃があるはずだ。
それが無いって事は、この辺りの防衛システムは既に破壊されている事になる。
当然だが、美菜斗軍にやられたのだ。
これは一刻の猶予もない。
俺は先を急いだ。
しばらく進むと、両軍の人型の残骸が、そこかしこに見られるようになった。
この辺りから、本格的な戦闘が行われたのだろう。
美菜斗軍の人型が一機、こちらに攻撃してきた。
俺は軽くかわして、敵機をビームソードで切りつけた。
その後も要塞内で、何度か美菜斗軍の人型と戦闘した。
俺はことごとく勝利する。
そして、もうすぐ司令室のある拠点エリアに入ろうかという辺り、広くなった場所で、信じられない光景を見た。
無数の人型が、その空間を埋め尽くすように漂っていた。
屍がゾンビとなって、行く手を阻んでいるようだった。
これだけ沢山の人型が、導入された大戦争、それほどまでに重要な戦い。
此処でジークが負ければ、美菜斗軍に宇宙は制覇されるって事だろうと理解した。
人型をどけながら、俺は進んだ。
一刻も早く進みたいのに、本当にじれったい。
それでも焦らず、俺は残骸の海を渡り、ようやく拠点エリアへとたどり着いた。
さて、此処からは迷路だ。
そして、より一層美菜斗軍とはち合わせる可能性が高まる。
それでも俺は全速で司令室を目指した。

拠点内では、何度も美菜斗軍の人型と遭遇した。
その度に俺は速攻で倒して、先を急いだ。
そんな時、通信が入った。
 紫苑「その有人要塞阿蘇山、美菜斗に持ち主が変わってるんだけど。(^0^)」
どういう事だ?
ジークは司令室にいたのではなかったのか?
この拠点が落とされたからと言って、ジークが負けるわけではない。
生き残る事が目的なら、別に司令室を放棄して、何処かに時間切れまでかくれている事もできる。
俺はふと思いついた。
隠れるのに、うってつけの場所。
さっき通ってきた、屍の海。
木を隠すなら森の中。
人型を隠すなら、人型の中。
俺はまた無意識に、先ほど通ってきた、人型の残骸の海を目指して、来た道を戻っていた。

無意識の中の決着

人型の残骸の海に戻ってくるまで、ただただ俺は、向かってくる美菜斗軍を倒した。
それは覚えているのだが、いつからか、どんな戦闘をしてきたかも思い出せなくなってきた。
眠気からだろうか。
それとも疲れだろうか。
俺の意識は、先ほどからハッキリしない。
まる一日以上ゲームをしていれば当然か。
そして今も、更に意識が薄れていくようだ。
そんな状態で、俺は再び残骸の中へと入って行った。
今度は此処でも、敵の攻撃があった。
お互いむやみに攻撃はできない。
戦闘不能となった人型を盾に、敵はこそこそと攻撃してくる。
でも、面倒くさいとか、ましてや勝てないなんて思わなかった。
俺はいつもどおり。
来る敵来る敵、俺は排除していった。
そして少しずつ、屍の海の果てを目指して進んでいった。
とうとう見つけた。
追い詰められたジークが、今、目の前にいた。

その後の事は、もうほとんど覚えていない。
ジークのそばには、群青さんと疾風さんがいた。
四天王の残りの二人、麒麟さんと紅蓮さんは既にやられていた。
その時群青さんと通信してそう聞かされた事を、かろうじて覚えている。
後は24時まで、ジークを守る為に、美菜斗軍の人型を倒しまくっていたようだ。
気がつけば夢さんがいて、カズミンさんがいて、じぇにぃがいて、チョビがいて。
戦闘時間が終了した後、寝オチした俺が目を覚ました時には、有人要塞ネコミミに戻っていた。
俺は慌てて、状況を確認した。
ジーク軍は健在だった。
もちろん、紫苑軍も、サイファ軍も、ダイユウサク軍も、問題なかった。
俺達は、負けなかったのだ。
宇宙の領域マップは、多くが美菜斗軍の領域になってはいたが、ギリギリ対抗できるだけの状況は守れたと言える。
もしあのままジークがやられ、美菜斗さんが完全勝利していたら、もっと多くの人が、美菜斗さんに味方する事になっただろう。
やはり勝てないと諦めていただろう。
勝負が決しようとしていたが、まだまだこのゲームは終わりそうになかった。

美菜斗軍は、大量の物資を投入した作戦だったので、3カ月程度、大規模に戦闘はできない。
いや、おそらくもうこんな戦いはできないだろう。
かたやジークは、本拠地を地球へと移し、復活にかけるようだ。
サイファ軍は、相変わらずの戦いを、ダイユウサク軍は地味に領地を増やしていた。
そして我が軍はと言えば、あの大戦の後、快進撃を続けていた。
まずは曹操軍を叩き、再び地球方面へと侵攻していた。
あの大戦の後、俺は紫苑さんに進言した。
 アライヴ「俺達も、艦長と指揮官を分けて、ダイユウサク軍のように指揮する人が必要ではないかと。」
でも紫苑さんは、その進言を受け入れなかった。
 紫苑「あれはあの軍だからできる事。逆に言えば、あんな作戦は、あの軍の司令官じゃなきゃ出せない。俺達は俺達のやり方を貫く。それでも勝てる!(^0^)」
正直その時は納得できなかったが、俺は紫苑さんに従うしかなかった。
それでも、今の快進撃があるわけで、あの大戦の後、俺達は強くなったと感じられる。
結局は、今までのやり方があっていたのだと納得できた。

大戦から2カ月が過ぎた頃、面白い現象がおきていた。
地球から月の外側二周り分くらいの領域が、ぽっかり空いてしまっていた。
コロニーや有人要塞には所有者は存在したが、要塞は皆取ろうとしなかった。
取っても空家状態。
生産性の無い要塞を維持したり、守ったりするコストがもったいないってわけだ。
それに中心付近は、戦場になる事も多いから、誰も欲しがらなかった。
そんな状況を見て、一人のプレイヤが、その地を狙って動こうとしていた。
そしてまた別の軍が、この状況をチャンスととらえて、作戦行動を開始していた。
この偶然のタイミングの一致が、こう着状態になりつつあった戦況を、大きく動かす事になった。

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