閉じる


<<最初から読む

39 / 62ページ

カウントダウン

全方位バリアに、俺達は打つ手を失っていた。
今までよりも断然攻撃はかわしやすくなったが、持っている武器全てが、敵に通用しない。
バリアは、ビーム兵器のほぼ全てを無力化する。
ビームソードなら、多少のダメージは与えられるが、艦船にちまちまダメージを与えても、逆にそこでやられるリスクの方が高い。
じぇにぃのライフルならもしかしたらと思ったけれど、雀の涙程度で意味がなかった。
暗黒天国さんのボスにミサイル兵器はあったが、狙い撃つタイプではないし、接近できないようでは簡単に迎撃された。
ミサイル兵器なんて無駄だと思っていたけれど、こうなってくるとミサイル兵器を持つ事も考えなければならないか。
とりあえず、今はそんな事を考えている場合ではなかった。
お互い打つ手の無い状態は、むしろ美菜斗軍に好都合。
この間に、ジークを倒す為に、全力を尽くせるだろう。
早くなんとかしなければならなかった。
こちらが打つ手がないと見るや、バリアを解いて、再び全力攻撃をしてくる。
再びチョビの元に集まると、バリアを張られる、こんな事を繰り返していた。
しばらくこう着状態を続けていると、ようやく紫陽花さんのパープルリリーが後方に到着した。
 紫苑「アライヴ、一度リリーに撤退して(^0^)その後艦船も参戦する!」
 アライヴ「了解!」
パープルリリーが到着したって事は、艦船への兵器補給が可能になったわけだが、ミサイルの撃ち合いができるようになったところで、数に差がありすぎる。
とにかく命令に従って、パープルリリーに帰還だ。
俺は一旦戦場を離れた。
パープルリリーに着艦すると、紫陽花さんが通信してきた。
 紫陽花「どれがいい?」
一瞬言ってる意味が分からなかったが、すぐに兵器リストが送られてきた。
紫苑さんからも通信が入る。
 紫苑「どれでもいいから、近距離からぶち込めないか?」
リストには、バズーカー、ミサイルランチャー、グレネード、他にも通常のソードなんかもあった。
バズーカーもミサイルランチャーもテンダネスには重すぎる。
ソードはあつかえなくはないかもしれないが、パワー不足で大きなダメージは求められない。
となると、グレネードしかない。
俺はグレネードを選んだ。
早速装備をつけると、俺は再び宇宙にでた。
少し動きが鈍い気がするが、そう大したステオチはないだろう。
チョビに協力してもらい、なるべく敵艦に近づき、グレネードをぶつける作戦だ。
紫苑さんのパープルアイズやスピードスターも、ビームとミサイルを撃ちまくって、援護してくれる。
パープルリリーは、長距離砲を装備した高コストの艦船なので、敵の射程距離の外から、ちまちまミサイルを撃っていた。
そのほぼ全てが迎撃されていたが、そちらに気がいけば、こっちが手薄になる。
俺はなんとか接近し、グレネードをぶつけまくった。
地味な攻撃だけど、停滞していた戦況が、ほんの少しだけど動き出した。

敵を1隻落としては、パープルリリーに戻ってグレネードを補充する戦いでは、なかなか状況を変える事は出来なかった。
停滞しているよりはマシだが、こうしてる間にも、ジークがやられるかもしれない。
そうなると、今度はこちらに全力で攻撃してくるだろう。
今、俺達とジークは、運命共同体になってしまったのかもしれない。
少なくとも、逃げなければならない状況になれば、パープルリリーはやられるだろう。
逃げようにも、この艦だけは逃げられるスピードがない。
懸念は、徐々に現実へと動いていた。
美菜斗軍の動きが変わってきた。
全ての艦船が、どうやらこちらに攻撃対象を変えようとしている。
ジークがやられたのか?そう思ったが、どうやらあちらには人型を発進させているようだ。
最終段階に入ろうとしている。
群青さんは無事だろうか。
これは負けたなと思った。
ジーク軍を攻撃していた艦船が、こちらに向かってきている。
そしてローテーションで補給中だった艦船もこちらに集まってきているように見える。
 紫苑「そろそろ潮時か。残念。」
紫苑さんがそう通信してきた直後、我々の背後に沢山の機影をレーダーが映し出した。
サイファさんだった。
そしてすぐに、サイファさんが、我が軍上層部のメンバー特定通信に、通信の許可を求めてきた。
紫苑さんがすぐに回線を開く。
 サイファ「お待たせ!しゃにゃ軍に手こずりました。えっと、とにかく、我が艦船の前、あけてください。アレいきますw」
 紫苑「まってました!(^0^)」
アレとはもちろん、波動砲だ。
負けたと思った戦いに、少しだけど光が見えてきた。
サイファさんの艦船、補給できないじゃまいか!が、惰性でこちらに向かいつつ、波動砲の充填をしている。
その先は、今敵艦船が集まってきている場所。
このチャンスを逃したら、敵のフォーメーションが完成して、今後波動砲に大きな戦果は求められないだろう。
敵のフォーメーションは、縦横に平面に艦船を並べるのだから、波動砲で倒せるのはごく一部になるからだ。
この最初の一発に、今後がかかっていると言えた。
俺はこの一発の重要性を考え、通信を入れる。
 アライヴ「発射までのタイムを教えてください!」
俺はそれだけ通信を入れると、できるだけ戦場にとどまった。
何かあると思わせてはいけない。
そしてギリギリまで、敵を集める。
 サイファ「後50秒!」
すぐに時計を確認。
そして目標退避時間を算出。
前に波動砲を見た時の事を思い出し計算すれば、このテンダネスなら退避に20秒ちょっと。
通信のタイムブランクを加味して25秒、保険に2秒入れて、残り27秒前まで中心にいる。
俺はそう決めて、戦場に残った。
23秒が過ぎるのはあっという間だった。
俺は波動砲の射線上から退避する。
しかし、敵の攻撃がそれを阻む。
しまった!敵の妨害を計算に入れていなかった。
かわすだけでも大変な状況で、まっすぐ逃げられないのは当然じゃないか。
多少のダメージは覚悟して、突き進むしかない。
だけど敵のビーム砲による攻撃が止まった。
 紫苑「はやく(^0^)」
どうやら紫苑さんが、ビーム砲でけん制し、敵艦船にバリアを使わせているようだ。
ミサイルだけなら、逃げ切れる。
俺は、全てのグレネードを投げつけ、弾幕にしながら突き進んだ。
そしてなんとかギリギリ、波動砲の射線上から退避する事ができた。
直後、俺のすぐ後ろを、光の柱が敵艦船の集まる場所へと伸びていった。

今結ばれる絆

サイファさんの艦船、補給できないじゃまいか!から放たれた波動砲は、敵艦船の多くを破壊した。
流石にバリアしていた艦船を完全破壊する事は出来なかったが、戦闘不能状態にはなっていた。
この様子だと、破壊された艦船のプレイヤは、脱出すらできなかっただろう。
ちなみにプレイヤキル、PKのペナルティは、人型でのみの適用である。
要塞を占拠する事と、艦船の破壊が戦闘の目的なのに、それができなくなってしまうから当然だ。
とにかく、状況を一変とまではいかなかったが、まだなんとか戦える最低限の戦果は得られたようだ。
俺達は再び、我慢比べの戦いを続ける事となった。

サイファさんから、作戦の提案があった。
次の波動砲で、敵の壁に穴をあけ、そこを突破し、敵の背後を突く、又はジークを助けに行くってものだった。
サイファさんは、何故だかジークを助ける事にノリノリだ。
前作からのライバルで、助けてやったらどんな顔をするのか見てみたい、だそうだ。
ま、ネットだから顔なんて見えないわけだが、そこは何を意味しているのか察して欲しい。
俺達はその作戦を採用し、順番に補給を行っていた。
じぇにぃ、ハルヒくん、暗黒天国さん、そして紫苑さんのパープルアイズ、スピードスターも万全にした。
最後はチョビ。
チョビは、現在のこう着状態を維持している要だ。
もしかしたら、チョビが補給に行ったタイミングで、敵が攻撃を強めてくるかもしれない。
そこで一気に艦船を前にだしてくるかもしれない。
美菜斗さんにしてみれば、現状維持で十分だから、リスクを負う戦術はとらないと思うけど、一応警戒して、チョビがいなくても前線で敵をけん制し続けた。
結局、特に戦術を変えてくる事もなく、とりあえず現状維持には成功したが、此処で問題が起こった。
敵の要塞戦艦が、場所を移動し、艦船の壁のすぐ向こう側に来ていた。
今までは端に位置し、ジーク側とこちら側、両方をカバーする形をとっていたのに。
艦船補給はこちらだけで良くなったからだが、全てが後手の状況にジレンマを感じた。
作戦成功の可能性は、これでほぼ皆無ではあるが、どちらにしても波動砲の攻撃はする事になる。
俺達はどうするか話し合っていた。
と言っても、人型に乗っている俺が、話に入る余裕は全く無かったが。
 紫苑「一か八か、やるしかないか。」
 サイファ「失敗すると、みんなで敗走する事になりますよ。」
 紫陽花「でも、このままの状況を続けたら、ジーク軍はからなず終わりますよ。」
 真でれら「一応撤退準備は万全にして、やるしかないっしょ!」
美菜斗軍の人型は、既にジーク側の空域には、姿は見えない。
既に要塞内での戦いに突入しているって事だ。
此処の要塞は、確か防御力が高いから、そうそう拠点エリアまでは到達できないだろうが、このままいけば、必ず落とされるだろう。
そしてその前に、必ずジークがやられているわけだ。
次の機を逃したら、どちらにしても我々には撤退しかないだろう。
撤退か、逃避か、少し意味合いが変わるだけ。
行くしかないと思った。
その後結局、決行する以外に選択肢は無いって事でまとまっていた。

作戦としては単純である。
あちら側に向かうのに一番最短である左端に波動砲を打ち込む。
スピードスターに暗黒天国さんのボスを先頭に、チョビ、俺、じぇにぃ、ハルヒ、その他数人を乗せて、穴の開いたところを一気に突破。
突破できたら、スピードスターとボスは艦船の背後を襲い、他の人型は要塞へ向かう。
問題は、索敵できない死角に、敵艦船が潜んでいる可能性がある事と、要塞戦艦の能力がどれほどのものか知らない事だ。
ま、もちろん艦船をまだ隠していると考える方が普通だし、今要塞戦艦とまともに戦うのは、無理だろうけどね。
もう俺達には、わずかな可能性にかけるしかなかった。
作戦はスタートした。
補給できないじゃまいか!から、波動砲が撃たれる。
すると敵の艦船による防衛ラインに穴が開いた。
スピードスターが高速でその穴に向かう。
紫苑さんのパープルアイズや、他の友軍艦船は援護射撃。
紫陽花さんのパープルリリーは、既にこの領域を去っていた。
失敗したら即撤退なわけだが、パープルリリーで撤退は不可能だからだ。
そうなったら、誰も安全とは言えないけどね。
追撃されれば、みんなどうなるかわからない。
此処は敵軍領域で、我々の帰るべき場所は、遥か宇宙の彼方なのだから。
美菜斗軍は、すぐに対応に動いていた。
流石に簡単には突破させてはくれない。
沢山のビームとミサイルが襲ってくる。
それを、スピードスターの弾幕と、ボスの攻撃で撃ち落とす。
前の見えない光の中を突き進む光景は、なんだか幻想的だ。
星さんと暗黒天国さんは、いつもこんな戦いをしていたのか。
これはこれで楽しそうだなと思った。

一縷の望みを託した作戦は、成功を目前としていた。
この調子なら突破できる。
誰もがそう思ったかもしれない。
だが、やはりそれほど甘くはなかったようだ。
壁を埋めるべく、何処からともなく敵の艦船が集まってきていた。
やはり、死角に艦船を隠していたか。
それともただ単に上手くやられたのか。
今の俺には知るすべが無かった。
今、星さんがどうするか、急ぎ紫苑さんと話していた。
 スピードスター「突進する?俺死ぬけど♪」
 紫苑「それでも他が突破できればねぇ。」
 スピードスター「暗黒天国も死ぬな♪」
 紫苑「いろんな意味でイタイな(^0^)」
追い詰められているとは思えない、軽い会話だった。
だからだろうか、何とかなるような気がした。
 紫苑「ちょっとまって、通信がw」
一体誰だろう?
今、我が軍の上層部と、サイファ軍上層部のメンバーは、メンバー指定通信をしている。
この中のメンバーなら、何かあればチャット画面に表示されるはずだ。
すなわち、紫苑軍でも、サイファ軍でもない人から、通信が入った事になる。
美菜斗さんだろうか?
それともジークか?
その答えはすぐに分かった。
 紫苑「回線に入れます(^0^)」
回線に入れるという事は、おそらく味方だろうが、俺達に味方などいただろうか?
紫苑さんの通信の後、すぐに表示された通信と、発信者の名前。
俺は見て驚いた。
 ドリーム「やっほーw仲間に入れて!」
なんと、ダイユウサク軍の夢さんだった。
そしてすぐに、索敵マップにダイユウサク軍の艦船の機影が表示されていた。
助けにきてくれたのか。
俺達の選択肢に、撤退と逃避以外の選択肢が、再び輝きを増していた。

力の差

とうとう此処に、前作の宇宙の絆、上位4軍が集まった。
いや、グリードさんもいるから上位5軍か。
そしてそれがみんな、ジークを助けようとして集まってきているのだ。
一時的なものではあるが、全てが味方だ。
そして敵は、ネットゲームのカリスマ、不敗の美菜斗さん。
数時間で圧倒的勢力をつくり上げた彼に、絆連合が挑む。
 サイファ「よし、俺達も続くぞ!」
 紫苑「(^0^)」
 ビューティフルベル「敵艦船は我々が引き受けます。夢と和己は一緒に行って良いよ。」
ダイユウサク軍の大将は来ていないようなので、どうやら中将のこの人が、ダイユウサク軍の指揮官のようだ。
俺はバトルグリードはやった事がないので知らないが、きっとこの人もかなりやる人なのだろう。
この状況で引き受けますとか、簡単に言えるものではない。
 今日子「えーー!!私も行きたい。今すぐ行きたい。とにかく行きたいーーー!!」
これは・・・
サイファ軍の今日子さんが言っていた、同じ名前の人か。
どうやら性格は全く違うようだ。
 チサト「では私もぉ~いくねぇ~」
 ビューティフルベル「ちょっ!あんたら。まあ良いけど。て事は、ダイスケとトイキも行くんでしょ。」
 ダイスケ「俺はチサトを守らないといけないからね。」
 トイキ「ダイスケとは、ゲーム内ではパートナーだから行くしかないさ。あ、サラ達がお世話になってます。」
ダイスケさんとトイキさんは、確かドラゴンブレスのメンバーだ。
うちのサラさんとサウスさんとおとめさんが所属するゲームグループ。
チサトさんはドリームダストのひとりだし、正に「ドリーム」チームだなと思った。

戦況は変わりつつあった。
ダイユウサク軍のメンバーは、真っ向勝負と言わんばかりに、俺達が作った突破口ではなく、敵艦船のいる場所へと突進していった。
じっくり戦いを見られないのは残念だけど、あの人たちなら突破してくる、そう思った。
で、いくらダイユウサク軍が助けにきたと言っても、俺達の目の前の敵がいなくなるわけでもなく、残念ながらスピードスターは、突破と同時に破壊されていた。
直後足元を失った暗黒天国さんのボスも、戦闘不能になった。
星さんは直前、人型で脱出していた。
艦船を失うのはかなり痛いが、戦場に残れただけでも良しとしよう。
それにこの戦いは、おそらくこの先の展開を、大きく左右する戦いなのだから、艦船の1隻くらい、仕方のないところだ。
さてこれからどうするか。
前衛の艦船の壁は突破したが、既に前方には新たな壁ができていた。
この中で更なる突破に挑むのか、それともダイユウサク軍のメンバーが突破できるように、艦船の背後を攻撃するのか。
俺は迷わず、正面突破を挑む事にした。
 アライヴ「チョビ、つきあってくれ!」
 チョビ「えっ?えっとあの・・・」
ん?どうしたんだ?
 一生「あ・・・」
戦闘中の咄嗟の通信だったので、短く簡潔にしたら、どうやら勘違いされたようだ。
つか、中学生にゲーム中に告白する大人って、ないでしょ。
俺は再び、しっかりと伝わるように通信しなおした。
 アライヴ「正面突破につきあってw」
 チョビ「あ。はい~」
どうやら分かってくれたようだ。
 アライヴ「じぇにぃ、ハルヒくんもよろしくw」
 じぇにぃ「やるきだよぉ~ぃくよぉ~」
 ハルヒ「マジっすか。僕死にたくない~」
じぇにぃは、迷う事なくついてきてくれた。
ハルヒくんも、なんだかんだ言って、今日の戦いで此処まで生き残ってきたプレイヤだ。
大丈夫だ。
俺達はただ4機で、気合をマックスに再び敵の大艦隊に向かっていった。

戦闘は困難を極めた。
今まで無理だったのに、気合でなんとかなるものでも無かった。
結局此処でもこう着した。
そんな中、ダイユウサク軍の通信だけが、通信画面を動かす。
 ビューティフルベル「弥生、右の艦船止めて!こっちに向き変えてるよ。あんじゅ、あんたの妻が危険よ。フォローして。達也、死んで良いから突撃!!」
 弥生「簡単に言うわね。マナ!3秒後行くわよ。」
 あんじゅ「おねぇさま~今行きます~」
 スター「おい!俺を何度殺す気だ!ポイントが全くねぇぞ!」
 ビューティフルベル「おかげで艦船スタッフレベル最高じゃん!攻撃くるわよ!」
 ウララ「私も守りますから大丈夫です。」
 ビューティフルベル「夢、和己、左開いたよ。ゴーゴー!」
 ドリーム「分かってる!」
 カズミン「分かってる!」
 チサト「流石夫婦~息があってるぅ~」
 ダイスケ「う~俺もチサトと組みたい・・・」
 トイキ「ゲームなんだから、今は忘れるのさ。」
 今日子「死ね死ね死ね~うははははは~」
この手の離せない状況、ただ驚いているわけにもいかない。
だけどなんだこの人達のこの余裕。
通信の文字がひらがなだけではない事から、スカエポの通信を使っているものではない。
となると、戦闘中にも関わらず、これだけのタイピングをしている事になる。
キーボードの上にコントローラーを固定するアイテムもあり、俺も通信する時は使っているが、この状況では通信などできるものではない。
向こうの方が多少余裕のある状況だとしても、凄すぎる。
それに今も流れる通信ログ、ゲームで食べていると言われる人たちは、此処までやっていたのか。
状況を完璧に把握する司令官、その指示を確実に実行するメンバー、今の俺達では、全く歯が立たない相手だと感じた。
もしかしたら、今日同じ通信網で戦ってくれているのは、コレを見せる為だったのかもしれないと、俺は勝手に思った。
俺達が苦戦する中、間もなくダイユウサク軍の面々が、美菜斗軍の壁を突破してきた。

勝負

ダイユウサク軍の面々が、敵を突破してきた。
戦力の数だけで言えば、俺達よりも少ないダイユウサク軍なのに、それでも突破してきたのは、やはり力の差を認めざるを得ない。
でも、軍の能力で負けていても、個人的に負けたと思うのは癪だ。
此処からは条件は五分。
必ず俺が1番に突破してやる。
とは言っても、接近するのに、チョビの力を借りている事は内緒だ。
艦船には、ある程度までは近づく事ができる。
だが、艦船を抜ける時に挟み撃ちに合うので、どうしても此処だけが抜けられない。
 ドリーム「アライヴさん、人型だけで突破しようなんて、無茶するねw」
俺達に追いついてきた夢さんが、通信をいれてきた。
俺は通信する余裕がなく、仕方なくスカエポの音声変換機能で話す。
 アライヴ「まけたくなかったんで」
此処でも、ダイユウサク軍の「要塞戦艦落とすよ~」とか、「はさみ撃ちでおけw」とか、通信が画面を流れていたが、夢さんとの会話に関係ないので割愛してお伝えする。
 ドリーム「じゃあ私も負けたくないから、人型で突破しよw」
 アライヴ「きょうそうだな」
 ドリーム「とはいえ、流石に接近するまでは、誰かに協力を願いたいね。チリ!よろしく!」
 チサト「おっけぇ~だよぉ~」
こうして、なんとなく夢さんと競争する事になってしまった。

人が集まってきて攻撃が分散したからか、多少余裕も出てきた。
飛んでくるミサイルは、誰かが落としてくれるし、ビームにだけ気をつければ行けそうな気がした。
チラッとモニターの隅に、美菜斗軍の艦船が、体勢を立て直し更に向こう側に壁を作るべく、移動しているのが見えた。
時間がない。
俺は一か八か、突き進んでみようと思った。
これだけのメンバーが集まっている。
きっと誰かが、助けてくれるはずだ。
 アライヴ「チョビ!じぇにぃ!ハルヒくん!戦闘タイム0520丁度に、俺は突撃する。援護頼む!」
画面の隅に、軍が戦闘を開始してから、どれくらいの時間が経過しているかが表示してある。
これを元にタイムを合わせて作戦行動するわけだが、同じ軍でないと時計表示は一致しない。
だから波動砲の時は使えなかったが、今度は正確にタイム指定した。
 チョビ「はい!」
 じぇにぃ「りょぅかぃですぅ~」
 ハルヒ「無茶ですってば!」
みんなの言葉が心強い。
ハルヒくんの言葉の何処が?なんてツッコミは無しだ。
これがハルヒくんなりの最高の返事である事は、今までの戦いで理解していた。
 ドリーム「カズミン!うちらも行くよ!チリ、今日子、大輔、トイキ、援護よろしく!」
 カズミン「はい!」
 チサト「シールドフェンネル使うよぉ~」
 今日子「了解いいいいいい!!!」
 ダイスケ「俺達は普通に後方から援護するよ。」
 トイキ「わかったさ。」
ダイユウサク軍も此処で行くようだ。
チサトさんの通信に「フェンネルシールド」という文字が見えたので俺は気になった。
つい最近導入されたもので、あのアニメでは、シールドビットと呼ばれるものだ。
導入を検討していたので、後で見る事ができれば参考にしよう。
そんな事を考えていたが、0520の数字を見た瞬間、全てを忘れて、俺は敵の中へと向かって行った。
思ったとおり、ミサイルは誰かが撃墜してくれるので、俺は真っすぐ飛んでくるビームにだけ気をつけて突き進んだ。
突破できる。
此処を突破したら、要塞まで一直線。
そしてようやく、俺の得意な対人型戦だ。
艦船に最接近した。
もう一息だ。
正面以外は、爆発の光で眩しい。
そして俺は見事に突破した。
 一生「やった!」
部屋で一人声を上げた。
しかし、まだ、最後の攻撃が俺に向かってきていた。
艦船から後方に撃ちだしたミサイルが、鋭角に向きを変え、艦船前方に進む。
それは俺の前方から、まっすぐ俺に向かってきていた。
盾もない俺に、コレをかわす術は無かった。

覚醒

向かってくる大量のミサイル。
俺に、かわす術は無かった。
いや、無いはずだった。
俺は無意識のうちに、フェンネルを前方に、半球状に出していた。
さっきチサトさんが「シールドフェンネル」とか言っていたからだろうか。
それとも、俺のフェンネルへの信頼からだろうか。
両方かもしれないし、どちらでもないかもしれないが、とにかく俺は、ミサイルにフェンネルをぶつけて、九死に一生を得たようだ。
やろうと思ってやったわけではない。
体が勝手に動いた。
自分でも信じられない。
俺、覚醒した?なんて思って、少し嬉しくもあるが、まだ現実感が無かった。
そして今も無意識のうちに、ジークの要塞へと向かっていた。
 ドリーム「ちょっと負けちゃったwやるねぇ!」
夢さんの通信に、俺は我にかえった。
どうやら夢さんも無事、あの壁を突破したらしい。
そしてどうやら、俺は夢さんよりも先に、あの壁を突破したようだ。
夢さんに勝ったのか。
仲間があっての勝利だが、勝ちは勝ちだ。
俺は顔がにやけた。
それでも、さっきの自分はなんだったのだろう。
今一受け入れられず、俺に慢心は全くなかった。
 アライヴ「まぐれだよ。なんか勝手に体が動いてさ。」
俺は正直に話した。
すると夢さんは、それが当然と言わんばかりだった。
 ドリーム「ん?いつも勝手に動くよ。違うの?」
それを聞いて理解した。
いつも夢さんは、さっきのあの感覚の中で戦っているのではないか。
だから人間業とは思えないスピードが得られるのではないか。
もしそうなら、勝てるわけがない。
でも、もしさっきのアレが、再び俺にできるなら、ようやく俺は、夢さんに追いついたのかもしれない。
今更ながらドキドキしていた。

突破したのは、俺と夢さん、そしていつの間にか、カズミンさんもこちら側にいた。
俺は要塞を目指したが、夢さんとカズミンさんは、後方から艦船を攻撃していた。
ありがたい。
残った仲間の事は、任せて大丈夫そうだ。
俺はただ一機、広がる空域を突き進んだ。
そして間もなく、要塞内へと突入した。
要塞内は、静かだった。
本来ジークから見れば、紫苑軍は敵であるわけだから、防衛機能が働いていたら、攻撃があるはずだ。
それが無いって事は、この辺りの防衛システムは既に破壊されている事になる。
当然だが、美菜斗軍にやられたのだ。
これは一刻の猶予もない。
俺は先を急いだ。
しばらく進むと、両軍の人型の残骸が、そこかしこに見られるようになった。
この辺りから、本格的な戦闘が行われたのだろう。
美菜斗軍の人型が一機、こちらに攻撃してきた。
俺は軽くかわして、敵機をビームソードで切りつけた。
その後も要塞内で、何度か美菜斗軍の人型と戦闘した。
俺はことごとく勝利する。
そして、もうすぐ司令室のある拠点エリアに入ろうかという辺り、広くなった場所で、信じられない光景を見た。
無数の人型が、その空間を埋め尽くすように漂っていた。
屍がゾンビとなって、行く手を阻んでいるようだった。
これだけ沢山の人型が、導入された大戦争、それほどまでに重要な戦い。
此処でジークが負ければ、美菜斗軍に宇宙は制覇されるって事だろうと理解した。
人型をどけながら、俺は進んだ。
一刻も早く進みたいのに、本当にじれったい。
それでも焦らず、俺は残骸の海を渡り、ようやく拠点エリアへとたどり着いた。
さて、此処からは迷路だ。
そして、より一層美菜斗軍とはち合わせる可能性が高まる。
それでも俺は全速で司令室を目指した。

拠点内では、何度も美菜斗軍の人型と遭遇した。
その度に俺は速攻で倒して、先を急いだ。
そんな時、通信が入った。
 紫苑「その有人要塞阿蘇山、美菜斗に持ち主が変わってるんだけど。(^0^)」
どういう事だ?
ジークは司令室にいたのではなかったのか?
この拠点が落とされたからと言って、ジークが負けるわけではない。
生き残る事が目的なら、別に司令室を放棄して、何処かに時間切れまでかくれている事もできる。
俺はふと思いついた。
隠れるのに、うってつけの場所。
さっき通ってきた、屍の海。
木を隠すなら森の中。
人型を隠すなら、人型の中。
俺はまた無意識に、先ほど通ってきた、人型の残骸の海を目指して、来た道を戻っていた。

読者登録

秋華さんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について