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宇宙の彼方へ

後方にパープルリリーを取り残すような感じで、俺達は美菜斗軍領域へと入っていた。
パープルリリーは航行速度がバカ遅いので、一緒に行動はできない。
こんな時に要塞戦艦があればと思うが、まだ見た事もないものを求めるのもおかしな話だ。
公式に発表されている説明でしか、その機能を知らないのだから。
要塞戦艦は、要塞の機能を持った巨大な戦艦らしい。
細かくその機能を話すと長くなるので割愛するが、要するに拠点を色々なところに移動して戦える便利なものと言えるだろう。
現在1隻はジーク軍、1隻は美菜斗軍、もう1隻はランキング12位のまさくん軍が所持している。
今行われているであろうジーク軍と美菜斗軍の戦いでも、きっと活躍しているに違いない。
さて、その美菜斗軍領域に侵攻しているわけだが、美菜斗軍の影も形も無い。
既に有人要塞ネコミミを視界にとらえられる距離にいるのに、防衛行動がないところをみると、これは無人である可能性が高いだろう。
一応、要塞の防衛機能による攻撃がもうすぐ始まるだろうが、無人なら攻略に1時間もかからない。
 アライヴ「とりあえず出ますね。」
 紫苑「そうだな。速攻片付けてくれ(^0^)」
 アライヴ「了解!」
 美夏「りょーかいぃ」
 ハルヒ「はいw」
 じぇにぃ「らくしょぅ~」
それぞれに返事をして出撃すると、要塞へと近づいてゆく。
射程距離に入ると攻撃がとんでくるが、敵の人型もいない状況では、楽に回避しながらネコミミに接近できた。
 アライヴ「本当に誰もいないね。」
 美夏「これなら俺一人で制圧できるなw」
確かに要塞攻略は、敵がいなければ、時間さえかければ攻略が可能だ。
ただ、防御力が高ければ高いほど、時間だけがかかる。
一応言っておくが、やられる可能性はゼロではない。
能力の低いパイロットや、俺でも油断していたらやられる事もある。
NPCの並のパイロットなら、30機ほど人型が必要かもしれない。
 紫苑「じゃ、美夏一人でやってくれるか(^0^)」
美夏さんは、要塞攻略の得意な人だ。
というか、要塞攻略ばかりやっていて、いつの間にか得意になっていた感じ。
だから美夏さんなら確実だろう。
 美夏「お前らどうすんの?」
美夏さんの返事に、確かにそう言えばそうだと思った。
俺達もただ黙って見ていも仕方が無い。
 紫苑「落としたら、後からくる紫陽花に拾ってもらって(^0^)俺達は、ジークを助けにいく(^-^)v」
 一生「えっ?」
俺は紫苑さんの発言に、一瞬目を疑った。
結果的にジークを助ける事になるとは思っていたが、直接ジークを助けに行くというのだ。
そしてそれは、全面対決している戦場に向かうという事。
危険だし、遠いし、そこまでする必要があるのだろうか。
パープルリリーを発進させたのは、最初からジーク軍領域まで行くつもりだったのだろう。
最初に、一応このネコミミを攻めたのは、確認の為か、それとも使える有人要塞だからか。
きっと両方か。
 紫苑「アライヴ早く戻ってこい(^0^)おいてくぞ!」
一瞬ボーっとしてしまっていた。
俺は「すみません」と一言いれて、急いでパープルアイズに帰還した。
俺が帰還するとすぐに、パープルアイズは発進した。
次いでスピードスターや部隊所属艦船も後に続いた。
紫苑さんはどうやら、少しの時間も惜しいようだ。
だが、遠征するとなると、しばらく俺は暇になりそうだ。
一応PC前の待機は必要だし、アライヴはテンダネスに乗せたまま。
やる事もないので、暇つぶしに、俺は現在の状況を確認する為、宇宙の勢力マップを開いた。
まだ1日もたっていないのに、昨日とは大きく違っている。
マップ上では分からないが、このジーク領域内で、激しい戦闘が行われているのだろう。
それとももしかしたら、ジークが反撃して、美菜斗軍領域に侵攻している事もあるのだろうか。
そんな事を考えていたら、今思っていた考えをうち砕くような変化が始まった。
ジーク領域が、ドンドン別の軍の領域へと変わっていく。
奪っているのは、美菜斗軍ではない。
ジーク軍に隣接している軍や、その近隣の軍だ。
俺は早速、紫苑さんに通信を入れる。
 アライヴ「ジーク領域がどんどん奪われてるよ。奪ってるのはよく知らない軍ばかり。」
そう、特に今まで目立った活躍をしてきた軍ではない。
どちらかと言うと平和主義の軍で、戦わずに終盤までマッタリプレイを望んでいる軍。
賞金を貰う事や、勝つ事を目的としていない、ゲームを内わで楽しむ人達。
強い人型をつくって、模擬戦闘を中心に楽しむ人もいる。
そんな人の中には、もちろん隠れた名プレイヤもいるわけだが、今はそんな事はどうでもいい。
 紫苑「美菜斗はこんな軍まで動かすのかw(^0^)」
相変わらずの笑顔マークだが、なんとなく凄く驚いている気がした。
いや、俺も驚いたから。
まあ間違いなく、美菜斗さんが声をかけて、攻めさせているのだと思う。
ブラウザ戦国大戦では味方だったけれど、協力関係にある軍を、味方ですら全て把握する事はできなかった。
底知れないコネクションだ。
美菜斗さんの戦略は一環している。
とにかく多くの人と仲良くなり、仲間を増やし、都合が良いように攻めてもらったり、守ってもらったり。
そして必ず、WinWinの関係を築く。
戦い方や兵器に関しては、とにかく強いものをシンプルに使う。
多くの人を集めたり、強い武器を作ったり、コレを戦略と言うなら、美菜斗さんは凄い戦略家だ。
ジーク以上だろう。
でも、やっている事は、ネットゲームとしてはごく普通の事だ。
だから美菜斗さんを評価しない人も多いけど、だからこそ俺は凄いと思う。
当たり前の事を、当たり前にやる事、実はこれは難しい事だから。

1時間後、ジーク軍領域だった場所は、色々な軍が混在する場所へと変わっていた。
その変化によって、今ジークがいるであろう場所を示しているように、一本の道を浮き上がらせていた。
美菜斗軍領域から、ジーク軍本拠地、イスカンダルへ。

運命を変える時間

ジークはおそらく、本拠地近くにいる。
宇宙の全体マップを見ていたら、まず間違いなくそう見えた。
場所は、我が紫苑軍の領域がある右上ブロックではなく、左下ブロックの左下隅。
コロニーシオンとは真逆の位置だ。
我々からみれば、正に宇宙の彼方。
日曜日でもなければ、こんなところまで行こうなんて思えない。
ただ高速で移動するだけでも、イゼルローンから2時間はかかりそうだ。
索敵し、警戒しながら進む今は、その倍はみておいた方が良いかもしれない。
面倒なところを本拠地にしてくれたものだ。
ちなみに、本拠地と言っても、システム上で決められているわけでもなければ、此処を落とされたら負けるわけでもない。
ただ、予備の艦船や人型を格納していたり、生産性の要だったりするので、他より重要な場所であるってだけだ。
その本拠地へ向けて進む俺達。
退屈だが、緊張感のある時間が静かに流れて行く。
そんな静けさの中、時々チョビから通信が入る。
 チョビ「だいじょうぶ?まだへいき?」
親の目を盗んでは、状況を気にして通信をいれてくる。
一応チョビのキャラと人型ガードナーは、スピードスターに乗せてはいる。
昼間は戦えないが、今夜参戦するであろう、かつてないほどの大規模な戦闘では、きっとチョビの力が必要になる。
俺達二人のコンビなら、人型で敵など存在しないはずだ。
 アライヴ「うん、大丈夫だよwこのままいくと16時から17時くらいになるんじゃないかな。」
時計を見ると、14時を回ったところだ。
 チョビ「そっか!17時にはさんせんできるようにがばんよ!!」
 アライヴ「無理しないでねwもし辞めろとか言われたら、200万円貰えるかもって言えば、もしかしたら許してくるかもしれないよw」
チョビが無理をして、ゲーム参加できなくなったら、紫苑軍には大きな痛手だ。
でもさ、親も大金が手に入るかもしれないと分かれば、許してくれそうな気もするんだけどねぇ。
確か前に発表された賞金予想だと、チョビは200万円くらいあった気がする。
そしてきっと俺とは逆に、その後増えていると思われる。
 チョビ「あ、ママだ!じゃ!!」
一言残して、チョビは又ネットから落ちていった。
この子が完全体だったら、と、前にも思った事だな。
できる子ってのは、何故かこういうハンデを持つ事が多いんだよね、きっと。
あのサッカーアニメの貴公子も、心臓病を抱えて15分しか試合に出れなかったし。
そんな事を考えている自分が、自分自身おかしかった。
それにしても眠い。
3時間程度しか寝ていないし、ずっとPC前で待機だ。
そろそろ戦闘でもしないと眠ってしまいそうだ。
ヤバイ。
瞼が下がる。
ちょっとくらい寝ても大丈夫かな。
敵襲があったら、きっと警報音が知らせてくれるだろう。
俺は睡魔という名の誘惑に負けようとしていた。
とその時、まさに警報音が敵襲を知らせてくれた。
 一生「うおっ!」
俺はビックリして、椅子から落ちそうになった。
モニタを見ると、既に紫苑さんから命令が入っていた。
 紫苑「美夏!はいねぇ、じぇにぃ、ハルヒ、アライヴ、その他もろもろ、発進よろしく(^0^)」
 じぇにぃ「きたぁ~」
 ハルヒ「眠りそうだったw」
俺も少し遅れて通信を入れる。
 アライヴ「俺は寝てたよw」
 紫苑「w」
だけど、もう目が覚めた。
俺は発進した。
発進したはいいが、肝心の敵はどこの軍なのか。
当然美菜斗さんの軍だと思っていた。
なんせ此処はまだ、美菜斗軍の領域だったからだ。
だけど敵は、聞いた事もない軍だった。
流石に、美菜斗軍領内を突き進んでいたわけで、俺達がイスカンダルを目指して動いている事は、美菜斗さんにもバレバレのはずだ。
それでも美菜斗さんは手が離せない。
そこで仲良くしてる軍に足止めを依頼したと考えるのが普通だろう。
それにしてもいったい、美菜斗グループはどれだけいるのだろうか。
もしかしたら、紫苑軍とサイファ軍とジーク軍以外全てがそうなのではと思ってしまう。
ま、それならそれでも良いけどね。
何故だかわからないけど、俺は嬉しかった。
戦いは意外に手こずった。
普段戦闘をしていない聞いた事もないような軍は、意外と強かったりする。
それはセオリー通りにいかないからだ。
こう打って出たら、こう返してくるって当たり前の事が、当たり前ではなくなる。
麻雀なんかで、弱い人が1人入ると、強い人は逆に手こずるってのと似ているかもしれない。
とにかく戦っていて、面倒くさい相手だった。
それでも実力の差は明らかで、なんとか殲滅できた。
 紫苑「早くもどれー!直後にパープルリリーが追い付いてきてるぞー(^0^)」
なんとまあ、かなり先を行っていたと思っていたけれど、それほどでもなかったようだ。
実際、こっちは索敵しながら慎重に進んでいるわけで、その後を全力で追いかけてくれば、いくら遅い艦船でもそれなりにはついてこれるって事か。
帰還したのは俺が最後だった。
一瞬パープルフラワーを探して遅れてしまった。
しかしこの遅れが、この後絶妙なタイミングを生む事になるとは、俺は思いもしなかった。

セオリー

俺達はようやくジーク軍の領域に入っていた。
此処も美菜斗軍の領域と同様、どこもかしこも無人の空域。
これの意味するところは、総力戦で対決しているって事だろう。
そこに俺達が入っていって、ジークに加担する。
もし、ジークが勝っていたらどうするのだろう。
ふと思った。
いくら戦力差があると言っても、ジーク軍にはあの四天王がいるんだ。
そう簡単にはやられないはず。
群青さん、元気だろうか。
もしかしたら今日、一緒に戦う事もあるのだろうか。
少しドキドキしてきた。
時間は16時を過ぎていた。
予定ではもう間もなく到着のはずだったが、戦闘で足止めされていたので、1時間近く遅くなりそうだ。
17時頃かな。
17時にチョビが戻ってくると言っていたが、果たして戻ってこれるだろうか。
とにかく、確実に戻ってこれる時間は、19時だ。
いつもは18時頃には顔を出してるから、それくらいには戻ってくるかな。
そんな事を考えていたら、時計の長針は、真下をさしていた。
16時半。
イスカンダルまであと30分くらいか。
いよいよ決戦だ。
此処から先は食事もトイレも行けないかもしれない。
食事はさっき、パンを食べたので24時まではもつだろう。
トイレは今のうちに行っておいた方がいい。
 アライヴ「ちょっとトイレw今のうちに行っておかないとねw」
 紫苑「行ってら~(^0^)」
紫苑さんの返事を確認して、俺はトイレに行った。
サクッと行って、サクッと済ませ、サクッと俺は戻ってきた。
特に慌てて行ったわけでもない。
きっと何事もないだろうから。
そう思って戻ってきたのだが、俺は画面を見てビックリした。
美菜斗軍の大艦隊が、索敵画面に映しだされていた。
 紫苑「どうやらこっちにはまだ気がついてないようだな(^0^)」
紫苑さんの通信に何人かが返事を返していた。
 ハルヒ「ジーク軍と戦闘中みたいですね。」
 じぇにぃ「ぁのかずぅ~はんぱなぃぃ~」
 暗黒天国「背後とれたし、奇襲するべwでもまさか、有人要塞阿蘇山で迎え撃っていたとはね。当たり前と言えば当たり前か。」
 スピードスター「コロニーじゃ戦いにくい♪」
俺の思った事は、皆が代弁してくれていた。
そう、まずは数が凄い。
艦船がこれだけ集まるなんて、前作ファーストの頃のような艦隊戦でもしようと言うのか。
そしてどうやら美菜斗軍は、ジーク軍と交戦中らしい。
だからか、背後の索敵を怠っていたようで、こちらに気づく様子も無く、何か動きがあるわけでもない。
奇襲をすれば成功するかもしれない。
それにしても、戦い方はシンプルというか、織田の鉄砲隊のようだ。
艦船を3グループに分けて、補給しつつ攻撃しているのだろうか。
詳細はまだわからないが、そのような戦術に見えた。
 紫苑「では星、暗黒天国いつものかましてくれ(^0^)」
なんにしても今がチャンス。
紫苑さんは迷わず、奇襲を指示した。
まずは俺達の攻撃パターンのひとつで、相手に先制パンチを食らわず。
星さんの艦船、スピードスターに、動きは重いが火力は最強の、暗黒天国さんの人型ボスを乗せて突進する。
スピード最強のスピードスターにボスを乗せる事で、火力のある高速戦艦の出来上がりだ。
少ししたところでどうやら相手も気がついたようだが、今更遅い。
 紫苑「アライヴ達も、出撃よろw(^0^)」
 じぇにぃ「もぅぃってるよぉ~」
 ハルヒ「はいw」
 アライヴ「俺も今出るところ!」
それぞれに返事を返して出撃し、星さんの後を追った。
先制攻撃は成功した。
敵はかなり乱れていた。
それでも数が多いわけで、すぐに体勢を整えてくる。
どうやら対応策は最初から用意してあったようで、ジーク軍への攻撃と、こちらへの攻撃、そして補給グループに分けて、ローテーションして対応し攻撃してきた。
大量の艦船が、一斉に攻撃してくると、俺達は近づくどころか、攻撃をかわすので精いっぱいになった。
向こうはただ、大量の艦船で、単純な攻撃を繰り返しているだけ。
こっちはコントローラーの操作に必死で、息つく間もない。
完全な物量作戦だ。
弾切れまで頑張ればとか、一瞬甘い期待ももったが、初めて見る要塞戦艦がそれをうち砕く。
 一生「バカでかい・・・」
きっと今日の24時までは補給できるように、物資を積んである事は確実だ。
いずれ俺が操作ミスすれば、そこでジエンドって事かよ。
それにしても、敵の人型が見えないのは助かった。
いやこの作戦は、人型がいては、味方も関係なく攻撃してしまう。
最初から人型なんて使わない作戦なんだ。
要塞内にジークがいる場合は人型も出すのだろうが、今はまだ敵戦力を削ぎ落す時間なのだろう。
それにしてもなんて作戦だ。
人型で戦うのがセオリーのこのゲームで、艦隊戦を繰り広げるなんて。
美菜斗さんらしいと思った。
人型よりも、艦船の方が火力あるもんな。
より強いものを使うのもセオリー。
それを素直に実行する、それが美菜斗さんだ。
でも、このまま人型をないがしろにされては面白くない。
絶対、どこか隙をついてなんとかしてやる。
そう決意して、俺は我慢比べを続けた。

チョビ!完全体!

ただ敵の攻撃をかわす事を繰り返し、20分ほど経っただろうか。
俺は手がしびれてきていた。
本当に息つく間もないとは、こんな状態を言うのだろう。
人型同士の対戦なら、1機倒したところで息をついたり、攻撃にも間がある。
しかし無数に飛んでくるミサイルとビームは、それを許さない。
じぇにぃは大丈夫だろうか?ハルヒくんは?
確認しようにも、チャットする余裕は全くない。
一応スカエポはいつでも使えるようにしているが、連絡が無いって事は、なんとかやっているのだろう。
ハルヒくんは最近、逃げるのだけは上手くなったもんな。
言い方が悪かった。
よく言えば、敵の攻撃をかわす事にかけては、右に出る者少数w
タイプとしては、カズミンに似ているかもしれない。
それにしもヤバイ。
手がしびれてきて、気力も衰えてきた気がする。
いかん。
気合入れないと。
俺は自分の体勢を立て直そうと、椅子に座りなおそうとした。
その時、思わぬ事がおきてしまった。
不用意に動いたからか、俺はコントローラーを落としてしまった。
 一生「しまった!」
すぐにコントローラーを拾ったが、敵の大量の攻撃が、テンダネスに向かってきていた。
駄目だ、墜とされる。
それでも必死にかわそうとする。
無理か。
諦めかけた時、俺の前にチョビの機体、ガードナーがあらわれた。
 一生「チョビ!」
俺は思わず声をあげた。
聞こえるわけもないが、俺は「ありがとう!」と言った。
 チョビ「だいじょうぶ?おまたせ~」
チョビは意外と余裕で、通信してきた。
そうか、盾か。
チョビの盾は強力で、前方からの攻撃をほぼ完全にシャットアウトできる。
盾なんて動きが遅くなるし、戦闘の後のメンテナンスも必要だから、いらないものだと思っていた。
だけど地球での要塞戦の時も、今回も、ギリギリのところで助けてくれたのは、チョビの盾だった。
チョビとコンビを組んでいて、本当に良かったと思った。
そして、美菜斗軍領域での戦闘で、俺の帰還が5秒遅れたのを思い出し、その5秒でチョビが間に合ってくれたのだから、あの時の自分にも感謝した。
 一生「ありがとう。よし、これから反撃だ!」
チョビの盾のおかげで、俺も余裕がでてきた。
チャットも可能な状態。
行ける!
 チョビ「そうそう、お母さんにしょうきん200万円もらえそうって言ったら、ゲームやっていいことになっちゃったw」
 一生「えっ!?」
こんな時に話すのもどうかとは思ったが、これはもしかして、チョビが完全体になったという事だ!
そう考えると、俺はにやける顔を元に戻せなかった。
 アライヴ「さて、話は戦いが終わってからだw行くよw」
 チョビ「らじゃw」
チョビがライフルで敵の艦船を狙い撃つ。
俺はチョビが取りこぼした、敵からの攻撃をフォローする。
いつもの俺達の戦い方だ。
流石にこの状況でフェンネルは使えないが、この状態だと負ける気がしない。
チョビのライフルは、1隻、また1隻と、敵艦船を落としていった。
一気に戦況は変わった。
小学生盾使い恐るべしだ。
いや、あれからもう1年以上経っているかな。
だったらもう中学生か。
ずっとゲームばかりしているから、時間の流れがわからない。
たぶんもう中学生だろう。
俺の最高のパートナーが中学生ってどうよ?と思わなくもないが、ゲームに年齢は関係ない。
リアルじゃ、年功序列だとか色々五月蠅くて、人づきあいが面倒くさいけど、ゲームって良いなと思った。
気がつくと、じぇにぃもこちらにやってきていた。
 じぇにぃ「ゎたしもぉ~よせてw」
 アライヴ「いえいw」
元はじぇにぃとコンビを組んでいたんだよな。
この子もまだ中学生か。
俺って、子供と相性が良いのかな。
じぇにぃが来た事で、更に艦船への攻撃は勢いを増していた。
チョビのライフルより、じぇにぃのライフルの方が、威力が格段に上だ。
もう3人で無双状態だった。
ただビームとミサイルを撃ってるだけの艦船など敵ではない。
でも、この無双状態は長くは続かなかった。
前方の艦船が全て、青く輝いていた。
全方位バリアだった。
ビーム兵器が通用しない。
俺達は再び、打つ手を失った。

カウントダウン

全方位バリアに、俺達は打つ手を失っていた。
今までよりも断然攻撃はかわしやすくなったが、持っている武器全てが、敵に通用しない。
バリアは、ビーム兵器のほぼ全てを無力化する。
ビームソードなら、多少のダメージは与えられるが、艦船にちまちまダメージを与えても、逆にそこでやられるリスクの方が高い。
じぇにぃのライフルならもしかしたらと思ったけれど、雀の涙程度で意味がなかった。
暗黒天国さんのボスにミサイル兵器はあったが、狙い撃つタイプではないし、接近できないようでは簡単に迎撃された。
ミサイル兵器なんて無駄だと思っていたけれど、こうなってくるとミサイル兵器を持つ事も考えなければならないか。
とりあえず、今はそんな事を考えている場合ではなかった。
お互い打つ手の無い状態は、むしろ美菜斗軍に好都合。
この間に、ジークを倒す為に、全力を尽くせるだろう。
早くなんとかしなければならなかった。
こちらが打つ手がないと見るや、バリアを解いて、再び全力攻撃をしてくる。
再びチョビの元に集まると、バリアを張られる、こんな事を繰り返していた。
しばらくこう着状態を続けていると、ようやく紫陽花さんのパープルリリーが後方に到着した。
 紫苑「アライヴ、一度リリーに撤退して(^0^)その後艦船も参戦する!」
 アライヴ「了解!」
パープルリリーが到着したって事は、艦船への兵器補給が可能になったわけだが、ミサイルの撃ち合いができるようになったところで、数に差がありすぎる。
とにかく命令に従って、パープルリリーに帰還だ。
俺は一旦戦場を離れた。
パープルリリーに着艦すると、紫陽花さんが通信してきた。
 紫陽花「どれがいい?」
一瞬言ってる意味が分からなかったが、すぐに兵器リストが送られてきた。
紫苑さんからも通信が入る。
 紫苑「どれでもいいから、近距離からぶち込めないか?」
リストには、バズーカー、ミサイルランチャー、グレネード、他にも通常のソードなんかもあった。
バズーカーもミサイルランチャーもテンダネスには重すぎる。
ソードはあつかえなくはないかもしれないが、パワー不足で大きなダメージは求められない。
となると、グレネードしかない。
俺はグレネードを選んだ。
早速装備をつけると、俺は再び宇宙にでた。
少し動きが鈍い気がするが、そう大したステオチはないだろう。
チョビに協力してもらい、なるべく敵艦に近づき、グレネードをぶつける作戦だ。
紫苑さんのパープルアイズやスピードスターも、ビームとミサイルを撃ちまくって、援護してくれる。
パープルリリーは、長距離砲を装備した高コストの艦船なので、敵の射程距離の外から、ちまちまミサイルを撃っていた。
そのほぼ全てが迎撃されていたが、そちらに気がいけば、こっちが手薄になる。
俺はなんとか接近し、グレネードをぶつけまくった。
地味な攻撃だけど、停滞していた戦況が、ほんの少しだけど動き出した。

敵を1隻落としては、パープルリリーに戻ってグレネードを補充する戦いでは、なかなか状況を変える事は出来なかった。
停滞しているよりはマシだが、こうしてる間にも、ジークがやられるかもしれない。
そうなると、今度はこちらに全力で攻撃してくるだろう。
今、俺達とジークは、運命共同体になってしまったのかもしれない。
少なくとも、逃げなければならない状況になれば、パープルリリーはやられるだろう。
逃げようにも、この艦だけは逃げられるスピードがない。
懸念は、徐々に現実へと動いていた。
美菜斗軍の動きが変わってきた。
全ての艦船が、どうやらこちらに攻撃対象を変えようとしている。
ジークがやられたのか?そう思ったが、どうやらあちらには人型を発進させているようだ。
最終段階に入ろうとしている。
群青さんは無事だろうか。
これは負けたなと思った。
ジーク軍を攻撃していた艦船が、こちらに向かってきている。
そしてローテーションで補給中だった艦船もこちらに集まってきているように見える。
 紫苑「そろそろ潮時か。残念。」
紫苑さんがそう通信してきた直後、我々の背後に沢山の機影をレーダーが映し出した。
サイファさんだった。
そしてすぐに、サイファさんが、我が軍上層部のメンバー特定通信に、通信の許可を求めてきた。
紫苑さんがすぐに回線を開く。
 サイファ「お待たせ!しゃにゃ軍に手こずりました。えっと、とにかく、我が艦船の前、あけてください。アレいきますw」
 紫苑「まってました!(^0^)」
アレとはもちろん、波動砲だ。
負けたと思った戦いに、少しだけど光が見えてきた。
サイファさんの艦船、補給できないじゃまいか!が、惰性でこちらに向かいつつ、波動砲の充填をしている。
その先は、今敵艦船が集まってきている場所。
このチャンスを逃したら、敵のフォーメーションが完成して、今後波動砲に大きな戦果は求められないだろう。
敵のフォーメーションは、縦横に平面に艦船を並べるのだから、波動砲で倒せるのはごく一部になるからだ。
この最初の一発に、今後がかかっていると言えた。
俺はこの一発の重要性を考え、通信を入れる。
 アライヴ「発射までのタイムを教えてください!」
俺はそれだけ通信を入れると、できるだけ戦場にとどまった。
何かあると思わせてはいけない。
そしてギリギリまで、敵を集める。
 サイファ「後50秒!」
すぐに時計を確認。
そして目標退避時間を算出。
前に波動砲を見た時の事を思い出し計算すれば、このテンダネスなら退避に20秒ちょっと。
通信のタイムブランクを加味して25秒、保険に2秒入れて、残り27秒前まで中心にいる。
俺はそう決めて、戦場に残った。
23秒が過ぎるのはあっという間だった。
俺は波動砲の射線上から退避する。
しかし、敵の攻撃がそれを阻む。
しまった!敵の妨害を計算に入れていなかった。
かわすだけでも大変な状況で、まっすぐ逃げられないのは当然じゃないか。
多少のダメージは覚悟して、突き進むしかない。
だけど敵のビーム砲による攻撃が止まった。
 紫苑「はやく(^0^)」
どうやら紫苑さんが、ビーム砲でけん制し、敵艦船にバリアを使わせているようだ。
ミサイルだけなら、逃げ切れる。
俺は、全てのグレネードを投げつけ、弾幕にしながら突き進んだ。
そしてなんとかギリギリ、波動砲の射線上から退避する事ができた。
直後、俺のすぐ後ろを、光の柱が敵艦船の集まる場所へと伸びていった。

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