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絆決戦

時計の針は、朝の6時をさしていた。
流石にぶっ続けで戦闘を続けるのは辛い。
だが、此処で眠るわけにはいかない。
要塞を落として、艦船に戻って移動している間が唯一の休憩タイム。
わずかな時間に食事をして、風呂にも入ったが、寝る事は不可能だった。
寝たら数時間は起きられそうになかったから。
敵も同じだろうと思う事で、なんとか気力を振り絞ってコントローラーを操作していた。
みゆきちゃんは今日予定があるとかで、1時を回ったあたりで早々にネットから落ちていた。
最前線で残っている主力は、紫苑さんのパープルアイズに、じぇにぃとハルヒくんと美夏さん。
紫陽花さんのパープルフラワーに俺。
スピードスターに暗黒天国さんだけだった。
こういった、朝まで戦闘ってのは何度か経験しているが、準備もせず一睡もしないのは初めてかもしれない。
実際やってみると、かなりグダグダになる事がわかった。
曹操軍の侵攻も勢いを無くし、2つ目の要塞を落とされたところで、動きは止まっている。
動きがあるのは、俺達がいる戦場と、しゃにゃ軍の領域が、徐々にサイファ軍へと変わっていくだけだった。
それにしてもおかしいのは、ジーク軍と美菜斗軍との戦闘だ。
サイファさんからの情報だと、確かに今も戦闘は続いているとの事だ。
だけど、未だに1つも拠点の持ち主が変わる事が無かった。
それはすなわち、お互い要塞を占領する事を考えていないって事だろう。
美菜斗さんのやり方を考えれば、おそらくジーク狙いだと確信できる。
そしてジークがもしやられれば、ジークの性格を考えると、軍を消滅する事も考えられる。
それで決着がついてしまう。
この戦いは、美菜斗さんがジークを倒せるか倒せないかで勝敗がきまりそうだ。
いや、この状況をつくっただけで、既に美菜斗さんがこの週末の勝利者である事は、誰の目にもあきらかである。
だからせめて、完全勝利だけは、なんとしても阻止しなければならなかった。
結果ジークを助ける事になったとしても、それは必要な事だと思った。

8時になろうかという時間、チョビがあらわれた。
少しの間だけならやれるというので、俺は一旦チョビと代わって寝る事にした。
紫苑さんと紫陽花さんは、指揮をどちらかに任せて交代で寝ているようだ。
星さんは、寝なくても大丈夫って事でフル活動。
それに付き合って、暗黒天国さんも頑張っていた。
そして11時を過ぎた頃、ようやくERROR軍の最後の要塞を落とす事に成功した。
ちなみに俺が寝ている間だった。
すぐにチョビと交代して、一旦イゼルローンに戻る。
これからが本番。
美菜斗軍との戦闘の前に、補給と休息の時間がとられた。
補給は本来、あまり必要がない。
土曜日から日曜日の戦闘をフルに戦えば、艦船でも流石に燃料は尽きるが、ずっと戦い続けるなんて事はまずあり得ないから。
時々ミサイル兵器と言うか、物理兵器が底をうつ事もあるが、そもそもミサイル兵器の利点はそれほど多くはなく、無ければ無いでそれほど困らない。
物理兵器の利点は、追尾ミサイルや、弾幕に必要なくらいで、スピードも遅く目視で十分回避できるので、デメリットの方が多い。
後は、バリア対策くらいか。
実はこのゲームにはバリアというシステムがある。
艦船でピンポイントバリアを使うのが一般的だが、艦船、人型共に、全方位バリアが存在する。
ただ、全方位バリアをはると、ビーム兵器が使えなくなるし、自分の意思で動くことも不可能になる。
コストもバカみたいに高いし、使う人はごくわずかだった。
とはいえ、バリアを使った戦術を得意とする人もいるし、バリアを張られるとビーム兵器の多くがほぼ無力化されるので、保険程度の物理兵器を搭載する人が多かった。
 紫苑「一応この後の戦いは遠征もあり得る。アライヴはこっちに乗って、紫陽花にはパープルリリーで、後方支援と補給艦的役割を果たしてもらう。」
紫陽花さんの第二の艦船パープルリリーは、とにかく火力重視の鈍重な艦船である。
あらゆる兵器を大量に搭載しているが、もちろんこんなただ兵器を搭載しただけの艦では、まともな戦いはできない。
では何故こんな艦船を造ったのかと言えば、補給の為である。
この宇宙の絆Ⅱでは、補給艦は存在しない。
だけど、別の艦船の物資を移してくる事は可能だ。
そこで補給艦的役割の艦船を、こんな形で造っているというわけ。
 アライヴ「遠征になるの?美菜斗さんなら、守りも考えていると思うけど。」
俺は一応の疑問に対して、答えを求めた。
これから攻撃をしかけるのは、美菜斗軍の要塞であり、領域である。
その要塞や領域は、昨日から続く戦闘タイム内に手に入れたものだ。
となると、もともとその要塞を管理していた軍のプレイヤの、艦船や人型が残されたままである可能性が高い。
美菜斗さんはこういったところにも配慮する人だから、みすみすそれを渡してしまうかもしれない作戦はとらないだろう。
ならば守りも考えているはずで、我々が侵攻して行ったら、そこでの戦いになる可能性が高い。
たとえ守りがいなくても、要塞を落として行くには時間もかかるし、遠征をする可能性は限りなく0なような気がした。
 紫苑「おそらく守りは無い。曹操軍がこちらに攻めてくる事を伝えてきたのは、守りができないから、他に気をそらせる為でしょ。(^-^)v」
なるほど、確かに紫苑さんの言うとおりだ。
対策はしていた。
おそらくこういった方法で、多くの軍に対して、今回の対ジーク戦に介入してこないように、なんらかの手をうっていたに違いない。
俺の勘だけど、その対策にのらなかったのが、紫苑軍とサイファ軍だったってわけだ。
今回の作戦は、宇宙の絆Ⅱでは非常識な戦略だが、美菜斗さんはシミュレーションゲームの王道的戦略を、素直に持ちこんだに過ぎない。
でもこれだけやられてしまっている。
なんとなく、宇宙の絆Ⅱの古くからのプレイヤがバカにされている感じだ。
宇宙の絆Ⅱのゲーマーと、美菜斗さんの対決のような気もした。
 紫苑「よし、そろそろ時間だ。勝つぞ!(^0^)」
12時ちょうど、紫苑さんの命令を受けて、俺達は出発した。

宇宙の彼方へ

後方にパープルリリーを取り残すような感じで、俺達は美菜斗軍領域へと入っていた。
パープルリリーは航行速度がバカ遅いので、一緒に行動はできない。
こんな時に要塞戦艦があればと思うが、まだ見た事もないものを求めるのもおかしな話だ。
公式に発表されている説明でしか、その機能を知らないのだから。
要塞戦艦は、要塞の機能を持った巨大な戦艦らしい。
細かくその機能を話すと長くなるので割愛するが、要するに拠点を色々なところに移動して戦える便利なものと言えるだろう。
現在1隻はジーク軍、1隻は美菜斗軍、もう1隻はランキング12位のまさくん軍が所持している。
今行われているであろうジーク軍と美菜斗軍の戦いでも、きっと活躍しているに違いない。
さて、その美菜斗軍領域に侵攻しているわけだが、美菜斗軍の影も形も無い。
既に有人要塞ネコミミを視界にとらえられる距離にいるのに、防衛行動がないところをみると、これは無人である可能性が高いだろう。
一応、要塞の防衛機能による攻撃がもうすぐ始まるだろうが、無人なら攻略に1時間もかからない。
 アライヴ「とりあえず出ますね。」
 紫苑「そうだな。速攻片付けてくれ(^0^)」
 アライヴ「了解!」
 美夏「りょーかいぃ」
 ハルヒ「はいw」
 じぇにぃ「らくしょぅ~」
それぞれに返事をして出撃すると、要塞へと近づいてゆく。
射程距離に入ると攻撃がとんでくるが、敵の人型もいない状況では、楽に回避しながらネコミミに接近できた。
 アライヴ「本当に誰もいないね。」
 美夏「これなら俺一人で制圧できるなw」
確かに要塞攻略は、敵がいなければ、時間さえかければ攻略が可能だ。
ただ、防御力が高ければ高いほど、時間だけがかかる。
一応言っておくが、やられる可能性はゼロではない。
能力の低いパイロットや、俺でも油断していたらやられる事もある。
NPCの並のパイロットなら、30機ほど人型が必要かもしれない。
 紫苑「じゃ、美夏一人でやってくれるか(^0^)」
美夏さんは、要塞攻略の得意な人だ。
というか、要塞攻略ばかりやっていて、いつの間にか得意になっていた感じ。
だから美夏さんなら確実だろう。
 美夏「お前らどうすんの?」
美夏さんの返事に、確かにそう言えばそうだと思った。
俺達もただ黙って見ていも仕方が無い。
 紫苑「落としたら、後からくる紫陽花に拾ってもらって(^0^)俺達は、ジークを助けにいく(^-^)v」
 一生「えっ?」
俺は紫苑さんの発言に、一瞬目を疑った。
結果的にジークを助ける事になるとは思っていたが、直接ジークを助けに行くというのだ。
そしてそれは、全面対決している戦場に向かうという事。
危険だし、遠いし、そこまでする必要があるのだろうか。
パープルリリーを発進させたのは、最初からジーク軍領域まで行くつもりだったのだろう。
最初に、一応このネコミミを攻めたのは、確認の為か、それとも使える有人要塞だからか。
きっと両方か。
 紫苑「アライヴ早く戻ってこい(^0^)おいてくぞ!」
一瞬ボーっとしてしまっていた。
俺は「すみません」と一言いれて、急いでパープルアイズに帰還した。
俺が帰還するとすぐに、パープルアイズは発進した。
次いでスピードスターや部隊所属艦船も後に続いた。
紫苑さんはどうやら、少しの時間も惜しいようだ。
だが、遠征するとなると、しばらく俺は暇になりそうだ。
一応PC前の待機は必要だし、アライヴはテンダネスに乗せたまま。
やる事もないので、暇つぶしに、俺は現在の状況を確認する為、宇宙の勢力マップを開いた。
まだ1日もたっていないのに、昨日とは大きく違っている。
マップ上では分からないが、このジーク領域内で、激しい戦闘が行われているのだろう。
それとももしかしたら、ジークが反撃して、美菜斗軍領域に侵攻している事もあるのだろうか。
そんな事を考えていたら、今思っていた考えをうち砕くような変化が始まった。
ジーク領域が、ドンドン別の軍の領域へと変わっていく。
奪っているのは、美菜斗軍ではない。
ジーク軍に隣接している軍や、その近隣の軍だ。
俺は早速、紫苑さんに通信を入れる。
 アライヴ「ジーク領域がどんどん奪われてるよ。奪ってるのはよく知らない軍ばかり。」
そう、特に今まで目立った活躍をしてきた軍ではない。
どちらかと言うと平和主義の軍で、戦わずに終盤までマッタリプレイを望んでいる軍。
賞金を貰う事や、勝つ事を目的としていない、ゲームを内わで楽しむ人達。
強い人型をつくって、模擬戦闘を中心に楽しむ人もいる。
そんな人の中には、もちろん隠れた名プレイヤもいるわけだが、今はそんな事はどうでもいい。
 紫苑「美菜斗はこんな軍まで動かすのかw(^0^)」
相変わらずの笑顔マークだが、なんとなく凄く驚いている気がした。
いや、俺も驚いたから。
まあ間違いなく、美菜斗さんが声をかけて、攻めさせているのだと思う。
ブラウザ戦国大戦では味方だったけれど、協力関係にある軍を、味方ですら全て把握する事はできなかった。
底知れないコネクションだ。
美菜斗さんの戦略は一環している。
とにかく多くの人と仲良くなり、仲間を増やし、都合が良いように攻めてもらったり、守ってもらったり。
そして必ず、WinWinの関係を築く。
戦い方や兵器に関しては、とにかく強いものをシンプルに使う。
多くの人を集めたり、強い武器を作ったり、コレを戦略と言うなら、美菜斗さんは凄い戦略家だ。
ジーク以上だろう。
でも、やっている事は、ネットゲームとしてはごく普通の事だ。
だから美菜斗さんを評価しない人も多いけど、だからこそ俺は凄いと思う。
当たり前の事を、当たり前にやる事、実はこれは難しい事だから。

1時間後、ジーク軍領域だった場所は、色々な軍が混在する場所へと変わっていた。
その変化によって、今ジークがいるであろう場所を示しているように、一本の道を浮き上がらせていた。
美菜斗軍領域から、ジーク軍本拠地、イスカンダルへ。

運命を変える時間

ジークはおそらく、本拠地近くにいる。
宇宙の全体マップを見ていたら、まず間違いなくそう見えた。
場所は、我が紫苑軍の領域がある右上ブロックではなく、左下ブロックの左下隅。
コロニーシオンとは真逆の位置だ。
我々からみれば、正に宇宙の彼方。
日曜日でもなければ、こんなところまで行こうなんて思えない。
ただ高速で移動するだけでも、イゼルローンから2時間はかかりそうだ。
索敵し、警戒しながら進む今は、その倍はみておいた方が良いかもしれない。
面倒なところを本拠地にしてくれたものだ。
ちなみに、本拠地と言っても、システム上で決められているわけでもなければ、此処を落とされたら負けるわけでもない。
ただ、予備の艦船や人型を格納していたり、生産性の要だったりするので、他より重要な場所であるってだけだ。
その本拠地へ向けて進む俺達。
退屈だが、緊張感のある時間が静かに流れて行く。
そんな静けさの中、時々チョビから通信が入る。
 チョビ「だいじょうぶ?まだへいき?」
親の目を盗んでは、状況を気にして通信をいれてくる。
一応チョビのキャラと人型ガードナーは、スピードスターに乗せてはいる。
昼間は戦えないが、今夜参戦するであろう、かつてないほどの大規模な戦闘では、きっとチョビの力が必要になる。
俺達二人のコンビなら、人型で敵など存在しないはずだ。
 アライヴ「うん、大丈夫だよwこのままいくと16時から17時くらいになるんじゃないかな。」
時計を見ると、14時を回ったところだ。
 チョビ「そっか!17時にはさんせんできるようにがばんよ!!」
 アライヴ「無理しないでねwもし辞めろとか言われたら、200万円貰えるかもって言えば、もしかしたら許してくるかもしれないよw」
チョビが無理をして、ゲーム参加できなくなったら、紫苑軍には大きな痛手だ。
でもさ、親も大金が手に入るかもしれないと分かれば、許してくれそうな気もするんだけどねぇ。
確か前に発表された賞金予想だと、チョビは200万円くらいあった気がする。
そしてきっと俺とは逆に、その後増えていると思われる。
 チョビ「あ、ママだ!じゃ!!」
一言残して、チョビは又ネットから落ちていった。
この子が完全体だったら、と、前にも思った事だな。
できる子ってのは、何故かこういうハンデを持つ事が多いんだよね、きっと。
あのサッカーアニメの貴公子も、心臓病を抱えて15分しか試合に出れなかったし。
そんな事を考えている自分が、自分自身おかしかった。
それにしても眠い。
3時間程度しか寝ていないし、ずっとPC前で待機だ。
そろそろ戦闘でもしないと眠ってしまいそうだ。
ヤバイ。
瞼が下がる。
ちょっとくらい寝ても大丈夫かな。
敵襲があったら、きっと警報音が知らせてくれるだろう。
俺は睡魔という名の誘惑に負けようとしていた。
とその時、まさに警報音が敵襲を知らせてくれた。
 一生「うおっ!」
俺はビックリして、椅子から落ちそうになった。
モニタを見ると、既に紫苑さんから命令が入っていた。
 紫苑「美夏!はいねぇ、じぇにぃ、ハルヒ、アライヴ、その他もろもろ、発進よろしく(^0^)」
 じぇにぃ「きたぁ~」
 ハルヒ「眠りそうだったw」
俺も少し遅れて通信を入れる。
 アライヴ「俺は寝てたよw」
 紫苑「w」
だけど、もう目が覚めた。
俺は発進した。
発進したはいいが、肝心の敵はどこの軍なのか。
当然美菜斗さんの軍だと思っていた。
なんせ此処はまだ、美菜斗軍の領域だったからだ。
だけど敵は、聞いた事もない軍だった。
流石に、美菜斗軍領内を突き進んでいたわけで、俺達がイスカンダルを目指して動いている事は、美菜斗さんにもバレバレのはずだ。
それでも美菜斗さんは手が離せない。
そこで仲良くしてる軍に足止めを依頼したと考えるのが普通だろう。
それにしてもいったい、美菜斗グループはどれだけいるのだろうか。
もしかしたら、紫苑軍とサイファ軍とジーク軍以外全てがそうなのではと思ってしまう。
ま、それならそれでも良いけどね。
何故だかわからないけど、俺は嬉しかった。
戦いは意外に手こずった。
普段戦闘をしていない聞いた事もないような軍は、意外と強かったりする。
それはセオリー通りにいかないからだ。
こう打って出たら、こう返してくるって当たり前の事が、当たり前ではなくなる。
麻雀なんかで、弱い人が1人入ると、強い人は逆に手こずるってのと似ているかもしれない。
とにかく戦っていて、面倒くさい相手だった。
それでも実力の差は明らかで、なんとか殲滅できた。
 紫苑「早くもどれー!直後にパープルリリーが追い付いてきてるぞー(^0^)」
なんとまあ、かなり先を行っていたと思っていたけれど、それほどでもなかったようだ。
実際、こっちは索敵しながら慎重に進んでいるわけで、その後を全力で追いかけてくれば、いくら遅い艦船でもそれなりにはついてこれるって事か。
帰還したのは俺が最後だった。
一瞬パープルフラワーを探して遅れてしまった。
しかしこの遅れが、この後絶妙なタイミングを生む事になるとは、俺は思いもしなかった。

セオリー

俺達はようやくジーク軍の領域に入っていた。
此処も美菜斗軍の領域と同様、どこもかしこも無人の空域。
これの意味するところは、総力戦で対決しているって事だろう。
そこに俺達が入っていって、ジークに加担する。
もし、ジークが勝っていたらどうするのだろう。
ふと思った。
いくら戦力差があると言っても、ジーク軍にはあの四天王がいるんだ。
そう簡単にはやられないはず。
群青さん、元気だろうか。
もしかしたら今日、一緒に戦う事もあるのだろうか。
少しドキドキしてきた。
時間は16時を過ぎていた。
予定ではもう間もなく到着のはずだったが、戦闘で足止めされていたので、1時間近く遅くなりそうだ。
17時頃かな。
17時にチョビが戻ってくると言っていたが、果たして戻ってこれるだろうか。
とにかく、確実に戻ってこれる時間は、19時だ。
いつもは18時頃には顔を出してるから、それくらいには戻ってくるかな。
そんな事を考えていたら、時計の長針は、真下をさしていた。
16時半。
イスカンダルまであと30分くらいか。
いよいよ決戦だ。
此処から先は食事もトイレも行けないかもしれない。
食事はさっき、パンを食べたので24時まではもつだろう。
トイレは今のうちに行っておいた方がいい。
 アライヴ「ちょっとトイレw今のうちに行っておかないとねw」
 紫苑「行ってら~(^0^)」
紫苑さんの返事を確認して、俺はトイレに行った。
サクッと行って、サクッと済ませ、サクッと俺は戻ってきた。
特に慌てて行ったわけでもない。
きっと何事もないだろうから。
そう思って戻ってきたのだが、俺は画面を見てビックリした。
美菜斗軍の大艦隊が、索敵画面に映しだされていた。
 紫苑「どうやらこっちにはまだ気がついてないようだな(^0^)」
紫苑さんの通信に何人かが返事を返していた。
 ハルヒ「ジーク軍と戦闘中みたいですね。」
 じぇにぃ「ぁのかずぅ~はんぱなぃぃ~」
 暗黒天国「背後とれたし、奇襲するべwでもまさか、有人要塞阿蘇山で迎え撃っていたとはね。当たり前と言えば当たり前か。」
 スピードスター「コロニーじゃ戦いにくい♪」
俺の思った事は、皆が代弁してくれていた。
そう、まずは数が凄い。
艦船がこれだけ集まるなんて、前作ファーストの頃のような艦隊戦でもしようと言うのか。
そしてどうやら美菜斗軍は、ジーク軍と交戦中らしい。
だからか、背後の索敵を怠っていたようで、こちらに気づく様子も無く、何か動きがあるわけでもない。
奇襲をすれば成功するかもしれない。
それにしても、戦い方はシンプルというか、織田の鉄砲隊のようだ。
艦船を3グループに分けて、補給しつつ攻撃しているのだろうか。
詳細はまだわからないが、そのような戦術に見えた。
 紫苑「では星、暗黒天国いつものかましてくれ(^0^)」
なんにしても今がチャンス。
紫苑さんは迷わず、奇襲を指示した。
まずは俺達の攻撃パターンのひとつで、相手に先制パンチを食らわず。
星さんの艦船、スピードスターに、動きは重いが火力は最強の、暗黒天国さんの人型ボスを乗せて突進する。
スピード最強のスピードスターにボスを乗せる事で、火力のある高速戦艦の出来上がりだ。
少ししたところでどうやら相手も気がついたようだが、今更遅い。
 紫苑「アライヴ達も、出撃よろw(^0^)」
 じぇにぃ「もぅぃってるよぉ~」
 ハルヒ「はいw」
 アライヴ「俺も今出るところ!」
それぞれに返事を返して出撃し、星さんの後を追った。
先制攻撃は成功した。
敵はかなり乱れていた。
それでも数が多いわけで、すぐに体勢を整えてくる。
どうやら対応策は最初から用意してあったようで、ジーク軍への攻撃と、こちらへの攻撃、そして補給グループに分けて、ローテーションして対応し攻撃してきた。
大量の艦船が、一斉に攻撃してくると、俺達は近づくどころか、攻撃をかわすので精いっぱいになった。
向こうはただ、大量の艦船で、単純な攻撃を繰り返しているだけ。
こっちはコントローラーの操作に必死で、息つく間もない。
完全な物量作戦だ。
弾切れまで頑張ればとか、一瞬甘い期待ももったが、初めて見る要塞戦艦がそれをうち砕く。
 一生「バカでかい・・・」
きっと今日の24時までは補給できるように、物資を積んである事は確実だ。
いずれ俺が操作ミスすれば、そこでジエンドって事かよ。
それにしても、敵の人型が見えないのは助かった。
いやこの作戦は、人型がいては、味方も関係なく攻撃してしまう。
最初から人型なんて使わない作戦なんだ。
要塞内にジークがいる場合は人型も出すのだろうが、今はまだ敵戦力を削ぎ落す時間なのだろう。
それにしてもなんて作戦だ。
人型で戦うのがセオリーのこのゲームで、艦隊戦を繰り広げるなんて。
美菜斗さんらしいと思った。
人型よりも、艦船の方が火力あるもんな。
より強いものを使うのもセオリー。
それを素直に実行する、それが美菜斗さんだ。
でも、このまま人型をないがしろにされては面白くない。
絶対、どこか隙をついてなんとかしてやる。
そう決意して、俺は我慢比べを続けた。

チョビ!完全体!

ただ敵の攻撃をかわす事を繰り返し、20分ほど経っただろうか。
俺は手がしびれてきていた。
本当に息つく間もないとは、こんな状態を言うのだろう。
人型同士の対戦なら、1機倒したところで息をついたり、攻撃にも間がある。
しかし無数に飛んでくるミサイルとビームは、それを許さない。
じぇにぃは大丈夫だろうか?ハルヒくんは?
確認しようにも、チャットする余裕は全くない。
一応スカエポはいつでも使えるようにしているが、連絡が無いって事は、なんとかやっているのだろう。
ハルヒくんは最近、逃げるのだけは上手くなったもんな。
言い方が悪かった。
よく言えば、敵の攻撃をかわす事にかけては、右に出る者少数w
タイプとしては、カズミンに似ているかもしれない。
それにしもヤバイ。
手がしびれてきて、気力も衰えてきた気がする。
いかん。
気合入れないと。
俺は自分の体勢を立て直そうと、椅子に座りなおそうとした。
その時、思わぬ事がおきてしまった。
不用意に動いたからか、俺はコントローラーを落としてしまった。
 一生「しまった!」
すぐにコントローラーを拾ったが、敵の大量の攻撃が、テンダネスに向かってきていた。
駄目だ、墜とされる。
それでも必死にかわそうとする。
無理か。
諦めかけた時、俺の前にチョビの機体、ガードナーがあらわれた。
 一生「チョビ!」
俺は思わず声をあげた。
聞こえるわけもないが、俺は「ありがとう!」と言った。
 チョビ「だいじょうぶ?おまたせ~」
チョビは意外と余裕で、通信してきた。
そうか、盾か。
チョビの盾は強力で、前方からの攻撃をほぼ完全にシャットアウトできる。
盾なんて動きが遅くなるし、戦闘の後のメンテナンスも必要だから、いらないものだと思っていた。
だけど地球での要塞戦の時も、今回も、ギリギリのところで助けてくれたのは、チョビの盾だった。
チョビとコンビを組んでいて、本当に良かったと思った。
そして、美菜斗軍領域での戦闘で、俺の帰還が5秒遅れたのを思い出し、その5秒でチョビが間に合ってくれたのだから、あの時の自分にも感謝した。
 一生「ありがとう。よし、これから反撃だ!」
チョビの盾のおかげで、俺も余裕がでてきた。
チャットも可能な状態。
行ける!
 チョビ「そうそう、お母さんにしょうきん200万円もらえそうって言ったら、ゲームやっていいことになっちゃったw」
 一生「えっ!?」
こんな時に話すのもどうかとは思ったが、これはもしかして、チョビが完全体になったという事だ!
そう考えると、俺はにやける顔を元に戻せなかった。
 アライヴ「さて、話は戦いが終わってからだw行くよw」
 チョビ「らじゃw」
チョビがライフルで敵の艦船を狙い撃つ。
俺はチョビが取りこぼした、敵からの攻撃をフォローする。
いつもの俺達の戦い方だ。
流石にこの状況でフェンネルは使えないが、この状態だと負ける気がしない。
チョビのライフルは、1隻、また1隻と、敵艦船を落としていった。
一気に戦況は変わった。
小学生盾使い恐るべしだ。
いや、あれからもう1年以上経っているかな。
だったらもう中学生か。
ずっとゲームばかりしているから、時間の流れがわからない。
たぶんもう中学生だろう。
俺の最高のパートナーが中学生ってどうよ?と思わなくもないが、ゲームに年齢は関係ない。
リアルじゃ、年功序列だとか色々五月蠅くて、人づきあいが面倒くさいけど、ゲームって良いなと思った。
気がつくと、じぇにぃもこちらにやってきていた。
 じぇにぃ「ゎたしもぉ~よせてw」
 アライヴ「いえいw」
元はじぇにぃとコンビを組んでいたんだよな。
この子もまだ中学生か。
俺って、子供と相性が良いのかな。
じぇにぃが来た事で、更に艦船への攻撃は勢いを増していた。
チョビのライフルより、じぇにぃのライフルの方が、威力が格段に上だ。
もう3人で無双状態だった。
ただビームとミサイルを撃ってるだけの艦船など敵ではない。
でも、この無双状態は長くは続かなかった。
前方の艦船が全て、青く輝いていた。
全方位バリアだった。
ビーム兵器が通用しない。
俺達は再び、打つ手を失った。

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