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水中戦

次の日、我が紫陽花部隊は、宇宙へ戻る事を命じられた。
しかし俺は、地球でやり残した事があったので、これを拒否した。
地球でやり残した事。
それは、まだ水中戦を経験していなかった事だ。
先日の戦闘で手に入れていた、水陸両用の機体を、少し俺仕様に改造していて、是非試してもみたかった。
紫苑さんは俺の希望を聞くと、快く地球に残る事を了承してくれた。
代わりにサラさんが、紫陽花さんのパープルフラワーに乗って、宇宙へと飛び立った。

19時になった。
今日は俺の気持ちを酌んで、南の島にある拠点へ遠征する事を、紫苑さんは許可してくれた。
これは負けられない。
ただ、紫苑さんは「駄目ならすぐに戻ってきても良いよ。」とも言ってくれていた。
なんとなく、意地でも攻略したいと思った。
まず一つ、敵の領域を通って行く事になる。
俺の機体は、今日初めて乗る「モノトーン」だ。
名前は、白と黒のツートンカラーでペイントされた機体だから、そう名付けた。
モノトーンを乗せた小麗の艦船月天が、高速で敵領域を突っ切る。
敵は拠点の周りに集まって、守りを固めていた。
これはすんなり通らせてもらえそうだ。
それにしても驚いたのは、乗ってる艦船のスピードと操舵だ。
この領域のマップの、もっとも航行しにくい山岳地帯を、山をぬうように高速で突き進んでいた。
艦船の操作は複雑ではないが、これだけの航行には、反射神経がかなり必要だろう。
小麗さんは、レースゲームが得意なのかも、そんな事を考えていた。
敵領域を一つ抜けて、いよいよ目的の領域へと入って行った。
陸地が途中までしかなく、後は海が広がっていた。
艦船でこのまま進むと、水中から攻撃を食らうだろう。
 アライヴ「そろそろ人型行くよ。」
 おとめ「了解~w」
 サウス「蹴散らしてくれるわ!」
この面子で戦うのは初めてだ。
俺は少しワクワクした。
まずは砂浜に降下する。
一応警戒はしたが、特に攻撃はなかった。
とても静かだった。
だけど、水中に必ずいる。
何故か確信があった。
俺達は後方に小麗さんの月天を残して、3機水中へと入って行った。
NPCの乗る人型は出さなかった。
初めての水中戦だし、逃げる事も考えていたから。
水中に入ると、体が少し重く感じた。
動きも遅い。
これは、今日初めて乗る機体だからレベルが1な事も影響しているが、それだけではない。
でも、これだけ反応が鈍い動きも、テンダネスで経験していたので、すぐに対応できる自信があった。
レーダーに反応があった。
魚雷の接近だ。
既に敵には、こちらが捉えられているようだ。
俺はすぐに迎撃用ミサイルを発射した。
水中で爆発がいくつも起こった。
その向こうで、おとめさんのマイヒメが、スクリューのように、島の方へと進んでいる姿が見えた。
 一生「すげぇw」
おとめさんは、変わったフィールドの戦闘が得意だ。
だから水中戦も得意だとは聞いていたが、コレは凄い。
サウスさんも迫力がある。
俺は少しにやけながら後に続いた。
すぐに敵機を目視できた。
同じくしてレーダーにも捉えた。
敵の数は15機といったところか。
数では圧倒的に不利だが、頼もしい味方もいるし、なんとかなりそうな気がした。
だがやはりそう簡単では無かった。
相手は水中戦になれた人達だ。
こっちには、素人もいる。
おとめさんが3機、サウスさんが4機落としていたが、俺はまだ0だった。
そして、サウスさんの人型サウスドラゴンが、かなり傷んでいるように見えた。
サウスさんは、強烈な攻撃力が売りな人だ。
だけど守りが弱く、誰かが守ってあげないと、その戦闘時間が長くはない。
俺は自分の無力さを受け入れ、サウスさんを守る事に戦い方を絞った。
後ろをフォローし戦う感じは、チョビとのコンビに似ていると思った。
今までやってきた事が、色々なところで生きている事が嬉しかった。
時間はかかったが、敵の数が残り3機となったところで、俺は1機でも落とそうと、戦いを挑んだ。
この戦闘の中で、人型レベルが2に上がっていた。
少し動かしやすくなってきた。
戦いは一進一退だった。
ただ戦っていて思ったのだが、地上戦よりは、宇宙戦に似ている気がする。
上下関係なく戦えるし、重力を感じない。
浮力と重力のバランスが釣り合えば、こんな感じになるのか。
宇宙戦をスローにした感じだと思った。
俺は試しに、フェンネルを出してみた。
横に動く事はできないが、地上で使うよりも使えそうだ。
水流はあるが、静止もできる。
フェンネルが使えたこの後の戦いは、俺は正に水を得た魚のように、縦横無尽に動き回って戦闘に勝利した。
島に上がって、小麗の艦船も参戦し、拠点は意外と簡単に落ちた。
敵側としては、頼りにしていた水中戦で負けたのが、痛かったようだ。
こうして、地上8つ目の拠点「尖閣」を手に入れた。

水中戦を経験した俺は、モノトーンを改良ドックに入れて、宇宙に帰る。
水中戦の要領はつかんだ。
次に水中で戦う時は、完璧にする。
その日から、俺は暇さえあれば、尖閣での模擬戦を繰り返した。

発表

今日の軍チャットは騒がしかった。
チャットだけではない。
2chや外部チャットでも、そしてテレビのニュースでも放送されていた。
いよいよ、このゲームの賞金と、査定ポイントの細かい内訳が発表されていた。
査定ポイントに関しては、ちょくちょく個別に発表があったので驚くところはない。
勝てば増えるし、負けたり、裏切ったりしたら減る、当然の配分だ。
テレビで騒いでいるのは、もっぱら賞金総額だった。
俺達から見れば、既に噂されていた事なので驚きは無かったが、20億という事でうわさどおりだった。
では、チャットで騒がれているのは、一体なんなのか。
それは、現状のランキングが発表された事だった。
そしてそれを見て、一番驚いたのは、俺だったかもしれない。
 一生「俺が3位?」
テレビでは、このままいくと誰がいくら貰えるとか、予想までしている。
どうやら俺は3億貰えるらしい。
あり得ない。
ちょっと手が震えていた。
ちなみに1位は、多くの人が予想したとおり、ジーク、2位がサイファさんだった。
サイファさんと俺の差はほとんどなく、次いで4位が紫苑さんだったが、俺との差は結構大きかった。
ジークトップの内訳をみると、あらゆるポイントが多く、中でも買い物ポイントが多かった。
どれだけ買ってるんだとも思ったが、なんだかゲームに関係ないポイントが多いのもどうだろうか。
それがなくても1位だけどね。
サイファさんは、レベルの高さと、友好関係、共同作戦ポイントが多かった。
そして俺は、プレイヤキル、PKポイントが多かった。
プレイヤキルにデメリットが設定される前、俺は大量のプレイヤキルを続けた。
今では安易にプレイヤキルできないようになっているので、この3位は今だけのものであると理解できた。
ちなみに、一緒にプレイヤキルをしていたじぇにぃは、13位だった。
俺達二人は、いままでどおりやれば、確実にこの順位より落ちるのだろうと思った。
 一生「でも、10位くらいはキープできるんじゃね?三千万くらいは貰えるんじゃね?」
俺はちょっと浮かれていた。

今日の戦闘は、なんでもない戦闘のはずだった。
しかし、金が目の前をちらつくというのだろうか、戦闘が雑になってしまっていた。
 一生「しまった!」
俺が声を上げた時には、背後をとられていた。
テンダネスに乗っているので、冷静ならばすぐにカメラを切り替えればいいものを、何故か前方へ進んで距離をとろうとした。
すぐに距離を詰められ、背後から斬りつけられた。
 みゆき「どうしたの?今日はなんだか調子悪いね。」
 チョビ「そのぶんがんばる。」
2人から通信が入ったが、俺は返事をする余裕がなかった。
今の攻撃で、テンダネスのシステムに不具合が出て、動きが20%落ちていた。
金の事は忘れてやらないと。
やられて目が覚めた。
そこからは、チョビとのコンビネーションに集中し、上手く敵を倒していった。
致命傷でなくて良かった、強い敵がいなくて良かった。
運があるのかなと思った。

戦闘を終えて、テンダネスをパープルフラワーに帰還させた。
今回の戦闘では、久しぶりにかなりの修理が必要だ。
実際の時間で、1日では直らないように感じる。
こういう場合、リアルマネーをつぎ込めば、即時だったか早くだったか忘れたが、修理する事ができる。
一瞬リアルマネーをつぎ込みそうになったが、こんな簡単な事でつぎ込んでいてはきりがない。
三千万円くらい入ると思ったら、少し金銭感覚がくるってきたのかもしれない。
俺は自嘲し自重した。
修理は結局、次の日の戦闘には間に合わなかった。
これだけやられるのは、俺にとっては敗戦と同じだ。
この敗戦を忘れない為に、俺は切られた背中に、傷の形のペイントを入れた。
背中に稲妻を背負っているような感じになったが、格好良いとは思わなかった。
何処かの漫画に出てくる剣士が、背中の傷は恥だと言っていたが、ホントだなと思った。

静かな日々

テンダネスが修理中で使えなかった日から、俺は少し前から計画していた、水陸両用人型モノトーンの宇宙戦を実践していた。
理由は、モノトーンのレベルを上げる為。
しかし水陸両用人型を、宇宙で使うなんて普通あり得ない。
だけど、意外と環境が似ているからか、それともただのゲームだからか、不可能ではなかった。
仕様追加の改造を行ったら意外に早く完成した。
これにウイングでもつければ、どこでも戦える万能人型の完成だ。
と言っても、あのテレビアニメで有名な白い奴は何処ででも戦っていたし、ぶっちゃけあれをパクっていると思われるゲームなので、この程度はアリなのだろう。
俺は不思議な感覚で宇宙にでた。
 チョビ「なんかうけるw」
 みゆき「だねwただのバカみたいw」
 アライヴ「うるさいなwま、俺も自分で凄く変な感じだけどなwww」
水陸両用の人型は、宇宙で戦う人型と比べれば、頭が大きくまるい感じだ。
水中での移動は、水の抵抗を避ける為に、頭から進む感じになるからだ。
宇宙でそれをやると、頭突きしているように見えて面白い。
水どころか空気すら無い空間で、頭から進むメリットはなさそうだ。
 アライヴ「でも意外と戦えるなw」
 みゆき「全然戦えてないから!!!www」
ま、確かに、未だに1機も落とせてはいないけど。
でも、こちらも全くダメージをくらっていない。
瞬発力には劣るけど、トップスピードに乗った時のスピードなら、飛行タイプの人型のような戦い方ができる事がわかった。
あのアニメで表現するなら、モビルアーマーって事ねw
ただし、あのアニメに出てくるこのタイプは、火力があるから強いわけだが、これはただの人型なので、その利点はない。
不利な戦いをする事にかわりはなかった。
俺はなんとか弱っている敵の人型を1機撃破した。
 アライヴ「ふ~なんとか1機w」
パイロットはもちろんNPCだろう。
これで対人とか、まだしばらく無理そうだった。
 みゆき「私の方が今日は倒してるねw勝ったら初めてかも~」
みゆきちゃんの言うとおり、一緒に出撃して、みゆきちゃんの方が俺より多く墜とすなんて事は、おそらくなかったように思う。
そう言われると、なんとなく悔しくなった。
 アライヴ「まだ終わってないーー!!」
俺は一番弱そうな人型を探して、突進していった。
結局この日落とせた敵機は、2機だった。
みゆきちゃんに負けて、ちょっと悔しかった。

こんな戦いを続けて、1カ月が過ぎた頃、ようやくレベルが6になっていた。
これで一応、問題なく動かす事ができるレベルだと言われている。
俺クラスのパイロットだと、それでも動作ブランクを感じるが、パソコンの性能などでも、これくらいのブランクを感じる事がある。
ま、一般的には、問題無いレベルって事だ。
これだけ動けば、地球での水中戦も大丈夫だし、一応紫苑さんに報告しておこう。
紫苑さんには、ここ1カ月色々配慮してもらっていた。
紫苑さん本人はそうは言っていないが、比較的弱そうなところを、我が紫陽花部隊にまかせていた。
我が軍もいつの間にか大所帯になっていて、担当を決めて、紫苑さんと行動を共にする事は減っていた。
ちなみに我が軍の現状を説明すると・・・
紫苑さんの主力部隊、紫陽花さんの紫陽花部隊、スピードスターさんの星部隊、小麗さんの月天が中心のサラ部隊が、攻撃担当。
敵の強さに応じて、単独で攻めたり、行動を共にしたりしている。
本拠地の守りは壁さんが担当。
地上最前線基地の守りは、アブサルートさんだ。
宇宙の守りと管理は、レイズナーさんが仕切り、スクランブル担当として、てけとー部隊とジークさんがいた。
それにしてもこのところ、各軍大きな動きがなくなっていた。
こう着状態と言うか、なんとなく静かと言うか、前回の宇宙の絆の時の、ジーク対連合軍の大戦を思い出す。
俺は少し気になって、久しぶりに2chを除いてみた。
此処の掲示板では、日々情報戦が行われている。
ただの誹謗中傷も多いが、時々真実も存在する。
真実と嘘を見分ける事できたら、戦いはかなり有利に進められるだろう。
それにしても、改めて見て、嘘が多い事が分かった。
ジークと紫苑が繋がっているだとか、ダイユウサク軍がそろそろジーク軍に前面攻撃を考えているとか、紫苑がサイファに対して、次の同盟終了時に攻撃を仕掛けるだとか、冷静に考えてあり得ないだろう。
ま、強いチームを敵視させて戦わせたいのだろうけど、サイファさんとは最後まで仲良くする約束だし、裏切られるなんてこれっぽっちも思っていない。
向こうもおそらくそう思っているはずだ。
ダイユウサク軍に関しては、強い人達も多いし、ジーク軍を攻める事もあり得るとは思うが、前作の戦略や、夢さんと話をしてみて、それはあり得ないと思う。
俺は続けて、古いレスから順番に読み進めていった。
このあたりは、査定基準が発表された時か。
「3位アライヴってだれよ?ww」
なんてのもある。
そらそうだな。
なかなか大将以外の名前ってのは出てこない。
実際戦った事のある人なら分かるかもしれないが、まだまだ戦った事の無い軍は沢山ある。
きっと、強い人もいるのだろうな。
少しのワクワクと、かなりの疲れを感じた。
そろそろレスの日付が、ここ数日まできていた。
ようやく読み終えられそうだ。
「アライヴ、水中戦用人型で宇宙で戦っとるぞw落とすなら今だぞww」
もう乗らないけどね。
次は久しぶりに、テンダネスか、キュベレイで出るよ。
そんな事を考えながら、最後のレスまできた。
読み終わった。
特に気になる事は無かったな。
そう思ってブラウザのタブを閉じようとしたが、何かが引っかかった。
あれ?最後のレス。
そのまま見過ごしそうになったが、チラッと見えた文字に、俺はもう一度見直した。
「賞金見て参戦か?美菜斗よ。もう入る余地ねぇぞw」
このレスを見た瞬間、間もなくゲームが大きく動き、荒れる予感がした。

美菜斗

最近の俺は、再びテンダネスに乗り、宇宙で暴れまわっていた。
日本最大の掲示板サイト2chで、俺が水陸両用機で、バカみたいに宇宙で戦っている事を書かれたのが、1カ月前。
それからやはりと言うか、わざわざ遠征して戦いをいどんでくる奴がいた。
しかし俺は、もうモノトーンで出撃していない。
乗りなれた最近の主力機、テンダネスに乗っている。
来る敵来る敵、倒しまくっていた。
するといつからか、白い稲妻とか、稲妻アライヴとか、言われるようになっていた。
二つ名は、強い者につけられる勲章みたいなものだから、俺は嬉しかったが、同時に照れくさくもあった。
ちなみに、ジークやサイファさんにも二つ名はあるし、ダイユウサク軍には、二つ名持ちが大勢いた。
俺もようやくその仲間になったのだなと思った。
ところで、俺がそう呼ばれるようになった理由にはもちろん強さもあるが、稲妻ってのは、テンダネスにペイントした背中の傷。
雷みたいだとは思ったけれど、まさかこれが二つ名になるとはね。
俺にとっては戒めの為のペイントだったのに。
少し苦笑いした。
俺がテンダネスで出撃するようになったからだろうか。
このところは戦闘も、各軍の動きも活発になってきた気がする。
戦闘時間中は、頻繁に各軍の戦闘結果が表示されているし、静かだった頃が嘘のようだ。
前に見た、あの2chに書いてあった最後のレス。
「賞金見て参戦か?美菜斗よ。もう入る余地ねぇぞw」
これを見た時、何かが起こりそうな予感がした。
俺は美菜斗という名前に見覚えがあったから。
俺はすぐにこの名前を、宇宙の絆Ⅱ内で検索した。
確かにいた。
そしておそらく本人に間違いないと思った。
美菜斗さん。
シミュレーションネットゲームでは、超有名な人。
アクション系ではドリームダストが有名だが、シミュレーションでは美菜斗さんと言われるような人。
でも決して、戦略が凄いとか、戦術に長けているってわけではない。
一言で言うなら、エンターテイナー。
高い能力値を言うなら、カリスマ。
長くネットゲームをやっているそうで人脈も広いし、人柄も良い。
宇宙の絆Ⅱを始める前まで、俺はこの人と、ブラウザ戦国大戦というネットゲームで、半年ばかり一緒に遊んでいた。
たった半年だったが、シミュレーションが得意ではない俺でも、この人の元だと楽しめた。
とにかく味方からの評判は良い。
ただし、美菜斗さんに負ける人は、すっごく面白くない負け方をする。
だから一部、凄く嫌っている人がいるのは、仕方の無いところだろう。
不敗の美菜斗と呼ばれる彼が、美菜斗にだけは手を出すなと言われる彼が、宇宙の絆Ⅱに参戦してきたのだから、きっと何かが起こる気がしていた。
先日までの静けさも相まって、俺はそう確信していたわけだが、いつの間にか忘れるくらい、普通の日々へと変わっていた。
2chで見た時は、もちろんすぐに紫苑さんに連絡を入れた。
紫苑さんは全く知らなかったようで、気をつけておくって話だった。
それ以後、この話が話題に上る事は無かった。

更に数日が過ぎても何事もなく、紫苑軍は絶好調。
元々戦力は、ジーク軍、サイファ軍に続いて3位だったが、下との差はドンドン広がって、サイファ軍とももう差は無い。
ちなみに戦力ってのは、プレイヤの数と、生産性で判断している。
人型の数や、艦船の数は、だいたい生産性で決まると言っていいからね。
2位や3位と言っても、今まではそれ以下ともドングリの背くらべ、五十歩百歩だったが、今では確実に抜け出そうとしていた。
ちなみにダイユウサク軍は相変わらずで、軍の戦力としては、30位前後といったところ。
それでも、トップレベルの軍と差の無いポテンシャルを持っているからね。
一騎当千って言葉があるけれど、ダイユウサク軍のメンバーは本当に、一機が千機の働きをするから。
こう考えると、4軍がやや抜け出しつつある状況だ。
ファーストの時と同様な展開だなと思った。
 一生「結局美菜斗さんでも、此処からじゃ何もできないか。」
俺は独り言をつぶやき、PCの電源を切った。
2chのスレに、「そろそろ美菜斗がくるぞw上位の軍は気をつけろよww」と書かれていた事を知るのは、全てが終わってからだった。

前触れ

土曜日の朝、紫苑軍はドタバタしていた。
原因は、紫苑さん宛てに送られてきた、1通のメール。
宇宙の絆Ⅱでは、メールに相当する機能は無かったが、銀河バリューネットの会員として、別の会員にメールを送る事はできる。
以前、ゲームのシステムに組み込む話もあったが、無駄な機能だとして、その話は無くなっていた。
まあそんな話はどうでもいい。
とにかく、問題は送られてきたメールの差出人と、その内容だ。
差出人は美菜斗。
内容は、紫苑軍領域に隣接する曹操軍が、今夜、我々に大攻勢をしかけてくると書かれていた。
狙いは、有人要塞カテーナ。
我が軍領域の後方に位置するこの要塞は、かつての最前線基地であり、後方を守る重要な場所でもある。
普通に今までどおり対応しても、そう簡単に落とされる要塞ではないが、落とされると流石に痛い。
とりあえず曹操軍への対応と、美菜斗さんがこういったメールを送ってきた意図を相談したいが、紫苑さんは「これから会社だから。対応は帰ってから(^0^)」と言い残し去って行った。
土曜日なのに仕事とは、全くついていない。
さて、どうしたものか。
誰かと相談したいが、こんな時間に相談といっても、相談できる人はおそらくいないだろう。
俺はぼんやりとモニターを眺めていた。
それにしても、とうとう美菜斗さんが動いた。
少し嬉しい気持ちもあった。
美菜斗さんと直接話をしてみるか?
いや、俺は戦国大戦の時と名前も違うから、話しかけても分からないだろうし、戦国大戦の時の名前を告げても、覚えてくれているかどうか。
それに通信じゃなく、わざわざIDナンバー宛てにメールを送ってきたわけだから、何か意図があるのかもしれない。
更にどうして、こんな情報を教えてくれたのか。
美菜斗さんの軍はまだまだ小さな軍なのに、現在3位の我が軍に有利な情報を、わざわざ教えてくれるだろうか?
これが、相手がジーク軍だとかなら話は分かる。
強い軍が更に強くなるのを防ぐ為って事だから。
でも、曹操軍が勝った方が、美菜斗軍には有利なはずだ。
だいたいこれは正しい情報なのだろうか。
いや、正しい情報だろう。
美菜斗さんが嘘を言うとは思えない。
美菜斗さんの人徳は知っている。
冷静に考えれば結論は一つ。
曹操軍は今夜、カテーナに大攻勢をかけてくる。
そして現在紫苑軍は、ERROR軍と交戦中だ。
今日も攻める予定だったし、向こうももしかしたら反撃を考えていたかもしれない。
マップ下側はサイファ軍との隣接地帯が多いから安全そうだが、以前戦闘状態だったしゃにゃ軍との隣接は切れてはいない。
曹操軍、ERROR軍との交戦を知ったら、空き巣狙いにしゃにゃ軍が攻めてくる事も十分あり得る。
だがこの中で、一番番厄介なのは、攻撃箇所、軍の規模、領域の場所、全てで曹操軍が際立っている。
ERROR軍も軍全体としては規模が大きいが、領域が二つに割れていて、我々と隣接している方は重要視されていない観がある。
俺の考えは固まった。
美菜斗さんの情報を信じ、今日は曹操軍に対応するべきだと。
紫苑さんが来たら、そう伝えようと思った。

18時頃、ようやく紫苑さんがあらわれた。
俺は既に他の人にも意見を話し、概ね同意を得ている。
だから紫苑さんも、そうする事に決定するものだと思っていた。
しかし紫苑さんは、ハッキリと言い放った。
 紫苑「今日もERROR軍領域に進行する!土曜日だし、今日と明日で、こちら側の領域を全部奪うぞ!(^0^)」
どういう事だろうかと思った。
曹操軍は間違いなく攻めてくる。
 アライヴ「いやでも、前面にERROR軍、後背に曹操軍、しゃにゃ軍もどう動くかわからないし、此処は曹操軍に全力であたった方が良くないの?」
 紫苑「曹操軍は別に怖くない。背後つかれてカテーナとか、シオンまで取られるかもしれないけれど、曹操軍なら簡単に取り返せる!(^-^)v」
紫苑さんは、カテーナも、そして最初の本拠地だったコロニーシオンさえも、取られて良いと考えているのか。
確かに、まともに戦ったら、俺達は確実に勝てる相手だけど、取られないに越したことはないのではないだろうか。
そこまでして、今日ERROR軍を攻める意味はあるのだろうか。
せっかく得た情報を無駄にする事もないようなきもするが。
 紫苑「レイズナー、もし曹操軍が攻めてきたら、カテーナ取られても問題ないから、なるべく損害を少なく、敵のダメージは多く、これだけ考えてくれ。」
 レイズナー「取られても良いのかよwだったら衛星兵器爆破してやるかw」
 紫苑「イイネ!まかせた!(^0^)」
マジでそんな事するのだろうか。
 アライヴ「そんな事したら、取り返しても、元に戻すまで時間も金もかかるよ。」
 紫苑「俺達は、既に地球に拠点を持っている。多くのコロニーや有人要塞もあるし、生産性は十分足りている。今更この程度の有人要塞を失っても、全く問題なし!(^0^)」
言われれてみればそうかもしれない。
俺は愛着ある要塞だったから、失う事が嫌だっただけなのだろうか。
 アライヴ「了解!じゃあ地球の人の作戦行動もそのままで?」
 紫苑「もちろん!(^0^)壁はガンダーラの守備、アブサルートはサハラの守備を、サラには地球での攻守全ての作戦指揮を頼む。宇宙はイゼルローンを中心に、てけとーとジークが駐留、レイズナーは後方全ての指揮を、前面は俺と紫陽花と星で。しばらくはこの形で大丈夫。」
此処までついてきた紫苑さんだ。
ファーストの頃からずっとやってきたんだ。
紫苑さんを信じよう。
俺はそう思った。
 アライヴ「美菜斗さんへの対応は?」
 紫苑「無視無視!(^0^)」
紫苑さんらしい。
そう思うと、なんだか安心してきた。
そして、程なくして、時計は19時をさしていた。
この紫苑さんの決定が、全ての人の勝敗を左右するほどの、大きな結果を、いや功績をもたらすとは、この時誰も知る由もなかった。

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