閉じる


<<最初から読む

11 / 62ページ

慢心

今日の戦闘に、開発は間に合わなかった。
だけど、試作機で試したところ、この方法ならそこそこやれる事がわかった。
チョビとの共闘は、お互いの背中をお互い守るのが基本だが、俺はどちらかと言うとサポート。
フェンネルで狙うのは、背後にいるチョビと戦闘をおこなっている敵。
そして俺は後ろにいる敵に攻撃をするわけだ。
即ちチョビと戦闘している敵となるのだけど。
チョビの背後、即ち俺の前方に敵が現れた時だけ、俺はサポートを中断して目の前の敵に集中する。
後ろへの攻撃は、普通ならやりにくいが、前後同じカメラをつけ、切り替えて使う。
だから背後への攻撃も、実質前に攻撃するのと変わらない。
ただ、腕や足の規格から、攻撃の範囲が限定され、融通がきかない部分があり、それを補う為の新パーツ開発だ。
今のところそれができていないから、まだ本当の検証はできていない。
それでもこれだけやれるのだから、良い戦術と言わざるをえないだろう。
フェンネルを使って、チョビと共闘できているだけでも凄いのに、正直チョビに近づける敵はいない。
フェンネルで牽制して、チョビがしとめる。
チョビのライフルは、じぇにぃのライフルほど威力もないし、射程も短いけど、正確さは負けていない。
接近されそうになった場合の対応も早い分、ギリギリまでライフルで戦える。
そして最後には盾だ。
チョビだけでも接近できる敵は限られるのに、俺が完全に押さえれば、単機で俺達に勝てる敵はまずいないだろう。
ドリームでもカズミンでもやれる。
まあ2対1で粋がっても淋しいものがあるけれど、勝てる算段があるだけでも良い。
後は戦略戦術でそういった場面を作れれば良いのだ。
じぇにぃもいるし、紫苑さんだってかなりやるはず。
サイファさんのところと組めれば、今日子さんにどちらか押さえて貰う事も可能。
どうやって勝てば良いのかわからなかったドリームやカズミンに、勝てる可能性が見えてきただけで、俺は俄然やる気がでてきた。
これはチョビのおかげだな。
チョビのおかげで俺の戦闘パターンも増えたし、きっと強くなる。
もしかしたらこうなる事を、紫苑さんは見越していたのだろうか。
そうなら流石紫苑さんだな。
改めて紫苑軍である事に喜びを感じだ。
 チョビ「そろそろわたし寝ないとお母さんが…」
 アライヴ「ああ、おけおけ。後は俺だけでもなんとかなるし。パープルフラワーに戻りな~」
 チョビ「はーい!おやすみなさいー」
 アライヴ「おやすみ~」
さて、チョビの欠点はこれなんだよな。
良い戦いをしていても、23時前にはネットから落ちなければならない。
今日この程度の敵だったらなんとかなるけど、相手が強敵だったら致命傷になりかねないからな。
 紫苑「そっちにじぇにぃ行かせようか?」
 アライヴ「ああ、大丈夫です。楽勝でしょ。」
 紫苑「大将そっちに行ってるけど。」
・・・って。
 一生「ええーーーー!!」
なんと、今日攻めている砦は、結構重要拠点だとは言え、大将自ら人型で出て守る所か?
まあ、俺の常識に当てはめても仕方がない。
目の前には大将自ら出陣してきているのだ。
此処は俺と、敵大将の一騎打ちだ。
大将の名前は、「サクラ」か。
この名前は使っている人が多いから、特定するにはIDを見ないとね。
見ると昔から知っている、しょぼくれプレイヤの「サクラ」だった。
なんだ、楽勝じゃん。
そう思ったのもつかの間、凄いスピードで後ろに回り込まれる。
 一生「はやい!」
俺は全速前進、そして左に旋回。
 紫苑「サクラは前のゲームでは糞プレイヤだったけど、アクション系はかなりの使い手だぞ~」
って、今更言われてもわかってしまってるんですけど~
そして今更助けてとも言えねぇ~
 アライヴ「大丈夫です~」
俺はこれだけ送り返すので手一杯だった。
機体の能力だけなら、スピードはあちらに分がある。
俺はフェンネルの設定を変更した。
コレでそう簡単には近寄ってこれまい。
共闘用そのままでも、並の敵なら楽勝なんだけど、この敵はそう簡単ではなさそうだ。
気を抜くと簡単に背後を取られそうになる。
そんなに背後が取りたければ、取らせてあげようじゃないか!
俺はいつもの、逃げると見せかけてフェンネルで蜂の巣にする戦術を使う事にした。
敵を取り囲むフェンネルが、サクラを攻撃する。
 一生「いまだ!」
その瞬間反転して全速前進。
これで後方のフェンネルも敵を攻撃する。
これだけの一斉攻撃、かわせまい。
まあ、これよりもひどい状況で、ドリームはかわしてきたけどね。
そんな事を思っていたら、サクラ機もこれだけの一斉攻撃をかわし、更にビームライフルで攻撃してきた。
 一生「おい~」
マジかよ。
あれをかわすか?
でも、何かかわしかたが引っかかるな。
考えている間に、爆発音が響く。
 一生「しまった!」
考え事をしていたら、足にビームを当てられてしまった。
足で良かった。
宇宙では大して影響は無い。
バランスが少し崩れるかもしれない程度だ。
  一生「くそっ!もういっちょだ!」
かわし方が何か引っかかったので、俺はもう一度フェンネルでの攻撃を試みる。
不自然に思われないように、上手くフェンネルの射程の中に誘い込む。
そして素早く反転して、フェンネルの後ろへと逃げる。
今度はカメラを後ろのカメラに切り替えた。
しっかりと敵のかわし方を見る為に。
フェンネルの動きがすぐに止まり、一斉射撃。
 一生「って、もしかして、フェンネルが通用しない?」
フェンネルの攻撃は、上手いタイミングでかわされ、更に攻撃もされる。
今度はカメラが切り替えられていたので、敵の攻撃は簡単にかわせた。
しかし、なんだろうか。
フェンネルが、もしかしてフェンネルの攻撃タイミングが読まれている?
それにフェンネルの攻撃する瞬間、一瞬敵機の動きが止まったように見えた。
 一生「キュベレイならフェンネル無しでもやれるのに!」
今俺が操縦しているのは、第3の機体、今開発途上の機体だ。
名前はまだ無い機体だが、機体の性能が落ちたら、俺はこれほどまで使えないのか?
否!
何かフェンネルを上手くかわす方法を、敵は持っているのだ。
それが分かれば、それを逆手にとれば、きっとやれるはず。
俺はもう一度、同じ作戦を使う事にする。
片足を失った機体が、少し悲鳴を上げている。
これだったら、もう片一方の足も必要ないな。
俺は、もう一方の足と、破壊されてほとんど残っていない足を、付け根から切り外した。
多少軽くなったが、足から出る推進力も失われるから、スピードは変わらない。
が、安定感は出た。
上手くフェンネルの射程内に誘い込み、反転前進。
フェンネルは一瞬俺の動きについて行こうとするが、すぐに動きを止めて、敵を一斉砲撃した。
今度も同じように、敵機は一瞬動きを止めたかと思うと、上手くフェンネルの射線を外して、そのままこちらに攻撃してきた。
 一生「あっ!なるほどw」
俺は気がついた。
フェンネルは、攻撃する時、必ず一瞬動きを止める。
動きながら撃っても、狙いが安定しないからだ。
前にドリームが、全てのフェンネルの攻撃をかわせたのは、おそらく止まったフェンネルの射線を見極めてかわしていたのだろう。
そんな芸当は、普通の人間にはそうそうできるものではない。
俺でもおそらくは数機のフェンネルからの攻撃でできれば良い方だ。
それをこの大量のフェンネルでできる人が、何人もいるとは思えない。
さすれば答えは簡単だ。
チョビがいなくなってから出てきた事、大将ではなく、俺に戦いを挑んできた事、それはフェンネルに対して対策があったからだ。
おそらくフェンネルの止まった瞬間、射線を計算して、自動でその射線を外すようなシステムを開発でもしたのだろう。
ならば、それを逆手にとれば良い。
俺はそう断定すると、もう一度同じ事をやるように見せて、フェンネルの射程に敵を誘い込んだ。
敵は、何度やっても同じだよと言いたげに見える。
しかし、今回は少し違うぞ。
私は今までと同じように、反転して全速前進。
さて私の考えが正しければ・・・
私はカメラを後ろに切り替え、チョビと共闘する時のように、後ろへの攻撃をする。
タイミングは、フェンネルの攻撃タイミングと同じ。
私の予想が正しければ、フェンネルの射線を外す事はするけど、その間、操作に自由はきかないはずだ。
フェンネルの射線上以外の攻撃は、避けないはず。
予想どおり、見事にサクラ機に俺の攻撃が命中した。
一度的中してから後は楽だった。
混乱した敵は、敵ではなかった。
私はサクラ機を戦闘不能までにして、そして更に完全破壊した。
大将だけは、それが許されいるし、それをする事が目的だから。
サクラ軍は、次に大将になるであろう人が、それを受け入れなかったので、壊滅する事となった。
しかし、今回の戦いは、思いの他苦戦した。
それは、今までの戦い方に慢心して、油断していたのが原因だろう。
俺は反省の意味も込めて、この機体に、テンダネスと名付けた。
それにしても、フェンネルだけをターゲットにする、こんなシステムを開発する人もいるんだねぇ。
フェンネル使う人なんて、かなり少ないし、これだけ多く使う人に限れば、何十人もいないだろうに。

強敵出現

クライアントとは、依頼人や顧客の事なのだけど、何故ネットゲームやなんかでは、我々ではなくゲーム会社の方をクライアントと呼ぶのだろうか。
正確には、どうやらゲーム自体、アプリケーション自体をそう呼ぶところから、そのゲームやアプリケーションを提供している会社も、ひっくるめて呼んでいるからのようだ。
でも、ゲームをしている我々にとって、会社がどこかなんて問題ではなく、ゲームの中で生きる者にとって大切なのは、その世界の中での出来事なのだ。
だからどうでもいいのだけれど、ゲーム内では、パーツ開発の依頼をしてる俺こそがクライアントだよね、なんて思う今日この頃。

今日、先日開発を開始していたパーツに関して、クライアントから返事がきていた。
性能を落とさないようにと思って開発した物と、とにかく動くものと、2種開発していたわけだけど、どうやら先の方は失敗だったようだ。
クライアントからのメッセージには、「アイデアが無い」旨が書かれていた。
簡単にいえば、高い性能を求めるパーツ開発には、それなりのアイデアをって事だ。
アイデアが無いからまかしていたんだけど、どうやら甘い考えだったらしい。
そして、メッセージはもうひとつあった。
このパーツの意図が分かっているようで、それに関してだ。
俺の依頼したパーツは、関節である。
普通ひじは、まっすぐになってから、逆には曲がらない。
それを曲がるようにしたものだ。
そのパーツでやりたい事は、後ろも前も、同じように動ける人型を作る事。
それができれば、背後を取られるデメリットは完全に無くなるわけだ。
それは蔵のほうも分かっていて、それでこのメッセージだ。
 蔵「前後を逆にして戦う場合、体にうけるGも逆になるが、ゲームではそれを考慮できず、経験値による制限をかける事にする。」
そういった内容だった。
ちなみにこのメッセージは、どうやらゲームシステム全てに関する事なので、全てのユーザーに伝えられているようだ。
もちろん、後ろ向きに戦う場合、コックピットも後ろ向きにできる方法があるなら、その制限はうけない。
で、元々人型には、倒した機体の数や、戦闘時間から、経験値とレベルがついている。
レベルが3以上になれば、それほど強さには関係がなくなるのだけど、レベル1の機体に乗る場合は、多少の制限がある。
初めて他人の自動車に乗ったら、なんだか乗りづらい、まあそう言う事だ。
そして、人型にメインカメラを複数つけた場合、カメラごとに経験値などが分散するシステムへと変わった。
ひとこで分かりやすく言うと、ひとりで持てる人型の数は、5機と決まっているが、今後は、メインカメラの数で管理するって事になるのかな。
メインカメラの無い機体が存在したら、それはそれで1機とカウントされるわけだけど。
もっと分かりやすく言うと、俺のテンダネスは、同じ機体でありながら、経験値とレベルの観点から見れば、テンダネス表とテンダネス裏の2機もっている事になるってわけだ。
それにしても、俺が依頼したパーツで、俺のアイデアで、これだけ蔵を動かしてしまったのが、ちょっと申し訳なかった。
なんにしても、一応関節パーツのひとつは完成していたのだから、とりあえず試してみる事にした。
パーツの付け替えは、ゲーム内のメカニックに依頼して、数時間を要した。
その間、俺は飯を食べて、風呂に入って、テレビを見ていた。
完成のメッセージが届くと、早速シミュレーション能力値を表示してみる。
 一生「思ったよりきつー!」
パワーダウンどころか、パワーは半減しており、当然だけど、重い装備はできそうにない。
ビームライフルでも命中率が若干下がる。
 一生「持ちかえはできないけれど、内蔵するしかないかぁ~」
ビームライフルだと、燃料分撃ち切っても、取り替えができて便利だ。
しかし腕に内蔵したタイプだと、取り替えもできないし、機体本体の燃料の消費も早くなるのが欠点だ。
利点はもちろん、軽量化できて、装備の持ちかえが必要無く、イニシアチブをとりやすい。
 一生「今度はライフル持とうかと思ったけど、俺の宿命かな、」
そう、キュベレイは、ビームライフルが腕に内蔵されている機体だ。
だから使い慣れていると言えば、使い慣れているし、コレで良いかと諦めた。
後の問題は、近接格闘系がかなり弱くなる事。
蹴りを入れてもダメージは少ないだろうし、攻撃を受けとめようとしたら、関節は壊れそうだし、そのままやられそうだ。
ひとつの利点が、多数の欠点を生む形か・・・
それでも、せっかくだから、俺はこのテンダネスを完成させようと燃えていた。

それ以降の戦闘は、極力テンダネスで出撃した。
しかも、後ろのメインカメラを使った、後ろ向きでの戦いだ。
といっても、チョビの後ろに隠れて、敵をコッソリ狙うんだけど。
 一生「まだ射線がずれてやがるよ。」
こんな戦いを繰り返し、既に1週間。
レベルはようやく5まで上がったが、マイナス修正はまだまだ体感できるほど大きい。
 チョビ「どうですかー?調子は?」
チョビが突然話かけてきた。
 アライヴ「まずまずだな。もう少しなんだけど、後数日でなんとかなると思う。」
 チョビ「そうですかー!ココまで強い人いなかったから良かったけど、そろそろ強い人きそうですよー」
 アライヴ「そら、戦ってたら強い奴もいるだろうからな。」
何故チョビがいきなりこんな事を言い出したのか、分からなかったから適当に返事を返した。
そしたらまた、チョビから通信が入る。
 チョビ「ほら。星さんが苦戦してますよ。」
 アライヴ「マジか!」
どうやらチョビは、戦闘を行いつつも、他の状況も把握しているようだった。
俺は広角カメラでマップを広げ、星さんの戦闘空域を映し出す。
見ると確かに、星さんは苦戦しているようだった。
というか、逃げ回っていた。
それを見た瞬間、紫苑さんから通信が入る。
 紫苑「悪い。星の救援頼む。」
 アライヴ「了解です。」
かなり状況は悪いようで、紫苑さんにも余裕は感じられず、それ以降紫苑さんからの返事は無かった。
 チョビ「早く行きましょう。」
通信は、チョビにも送られていたようだ。
 アライヴ「おけw」
俺たちはそれだけ通信をかわすと、星さんのいる空域へと向かおうとした。
しかしそれはすぐに阻止される。
目の前に、1機の人型が立ちふさがっていた。

最大の敗戦

宇宙の絆Ⅱは、少しずつ勢力が整理されつつあった。
宇宙では、拠点が1つしか無いような勢力は、少しずつ淘汰され、もう後数勢力しか残されていなかった。
そのうちのひとつが、今回の攻略ポイント、有人要塞イゼルローンだった。
まだ残っている勢力なので、そこそこの強さは予想していたが、拠点が1つであり、人型の数も限られているので、簡単に攻略できるものと思っていた。
油断していた。
ココまで残っている事に疑問を持つべきだった。
星さんは完全に押されているようだ。
紫苑さんのところも、じぇにぃと互角に戦う機体があらわれたらしい。
いや、むしろ押されていて、紫苑さん自身が、援護しているようだ。
そして俺の目の前にあらわれた機体は、何か迫力があった。
名前はサラで、階級が曹長。
人型名は、レッドストーン。
正直聞いた事はない。
しかし俺が軽く攻撃して抜けようとしても、全く隙は無かった。
突然通信が入った。
サラからだ。
受信しない事もできるが、俺は回線を開いた。
 サラ「こんにちは。あなたね、夢ちゃんが言っていたのは。」
一瞬意味がわからなかった。
 サラ「あ、夢ちゃんって、ドリームの事ね。」
 一生「ええええ!!」
なんだ?
このサラって人、ドリームとリアル友達か何かなのか?
 アライヴ「えっと、ドリームが何か言っていたのかな?」
 サラ「ああ、ごめんごめん。あなたの事、なかなか強いって言っていたから、覚えていたのよね。」
 アライヴ「ありがとう。」
よくわからないが、あのドリームが俺の事を強いと言っていたらしいから、少し嬉しかった。
 サラ「でも、機体はキュベレイって聞いていたんだけど、今日は違うのね?」
いったいこの人は何が言いたいのか?
正直話してる場合でもないのだけど。
そんな空気を察したのか、チョビが星さんの救援に向かおうとする。
しかしサラのレッドストーンが、すぐにその行動を阻止する。
サラはなにやらチョビに通信を送ると、またこちらに通信してきた。
 サラ「それがあなたのメインの機体なの?」
どうやら話さないとダメみたいなので、俺は話す事にする。
 アライヴ「これはメインではないけど、今後メインにする予定だよ。」
 サラ「あら、そう。なら、それなりの戦いはできるわね。おふたりお相手お願いするわ!」
なんだかわからないけど、とにかく戦闘再開らしい。
勝手だと思いつつも、俺とチョビは構えた。
 サラ「では、いくわよw」
その通信を最後に、サラはこちらに攻撃を開始した。
 一生「早!」
動きはやたら早かった。
どうやら標準スピードタイプの機体のようだ。
しかし、俺たちは二人だし、コンビであればドリームだって倒せる算段もあった。
早く倒して星さんを助けないと。
チョビとの共闘で、初めてのマジ勝負だった。

その頃、星さんは追い詰められていた。
スピードは星さんが圧倒的有利なのだけど、敵の攻撃は強力で、少しでもかすると、そこそこのダメージを受ける。
おそらく星さんがココまで苦戦する戦いは初めてだろう。
なんせいつもならスピードで、最悪逃げるわけだけど、それすらも許さない攻撃の嵐が星さんを襲っていた。
少しずつダメージが蓄積される。
全てを把握している紫苑さんが、ハルヒ君を救援に向かわせていたが、じぇにぃと戦っている敵が、簡単には許さない。
この2機は強い。
なんとかハルヒ君が到着した時には、星さんの流星は、戦闘不能状態になっていた。
 ハルヒ「紫苑さんダメです。星さんは既に戦闘不能です。」
 紫苑「なんとか回収できない?」
そんな通信をしていると、流星を墜とした機体、サウスドラゴンは、今度はハルヒ君の機体、ウイングガンマに襲いかかった。
通信など、できる状況ではなくなった。
紫苑さんは、最後の手段か、自ら出撃した。
旗艦パープルアイズは、先日のテストで、唯一艦長として見出された、小麗に任せて。
流石に2対1になったら、敵のマイヒメは押され始めた。
そこに、ハルヒ君をあっさり倒してやってきた、サウスドラゴンがやってきた。
再び2対2で、戦況はこう着した。

こちらは2対1なのに苦戦だ。
ドリームでも倒せるはずだったが、それはあくまで俺が完全体であったならの話。
最近は温い戦いばかりしていたし、この機体はレベルを上げる為の出撃なので、手抜きチューンナップバリバリだ。
それでも勝たなければならない。
紫苑さんの方も苦戦しているし、このままでは全滅もあり得る。
もし俺たちが負ければ、このサラのレッドストーンはあちらに向かうだろう。
さすればおそらく撤退だ。
うまく撤退できれば良いが、失敗したら全滅。
今までで最大のピンチだ。
それにしてもこのサラ、強い。
チョビの戦い方を瞬時に見抜いたのか、正面からは接近してこない。
まああれだけのでかい盾、何かあるとは思うわな。
そして攻撃が正確だ。
こちらの攻撃タイミングに合わせて、うまく隙をついて攻撃してくるから、不用意に動けない。
1対1なら、チョビよりも上の敵。
それをサポートしたいのだけど、フェンネルの威力が発揮できる射程には入ってこないし、完全に俺は置き去りだ。
このままではこう着状態、一か八か、勝負をするしかない。
 アライヴ「一か八か、勝負にでるから集中してくれ。返事はできないだろうから良い。」
俺はそれだけチョビに通信を送った。
こんなギリギリの戦闘中に通信ができる俺って、ホント役に立ってないな・・・
そんな事を思う中、俺は勝負に出た。
フェンネルの設定を、背後から背後ではなく、敵の向こうからこちらへの攻撃に切り替えた。
これだけの距離があれば、拡散ビームでフェンネルが墜とされる事もないだろう。
途端に、今までの位置から、フェンネルが高速で移動を開始した。
すぐに敵の背後へと到達する。
それをいち早く察知した敵は、好機と思ったか、それとも危ないと思ったか、フェンネルの攻撃を回避する為、こちらへと高速で向かってきた。
これで、ある意味いつもの俺の戦術だけど、こちらの機体のメインはチョビ。
敵と共にフェンネルが近づいてくれば、フェンネルの攻撃を自分に受ける危険性もあるし、拡散ビームでフェンネルを撃ち墜とす危険性もある。
そんな中、敵はこちらに向かってくる。
普通ならピンチだけど、こちらには拡散ビーム砲を持った盾がある。
それに敵は、フェンネルよりも早く、こちらに近づいてきてくれていた。
 一生「今だ!」
俺はゲームの中へは聞こえない声を上げていた。
盾から拡散ビームが発射される。
これはそう簡単にはかわせないはず。
しかし、よく考えたら読まれていた戦術。
ギリギリのところでかわして、俺たちの背後へとまわってきた。
これが、1対1の戦いなら、完全に負けていた。
俺の機体が、ただのしょっぱい機体でも負けていた。
しかしおれの機体は、背後にメインカメラのついている、特殊な機体。
そして今までの戦い全てが、背後への攻撃。
俺は今日初めて、メインカメラを前方へと切り替えた。
今まで制限されていた枷も、全て外れた。
全く予想しない事がおこったからビックリしたのか、それとも俺の目にそう映っただけなのか、レッドストーンが一瞬止まって見えた。
ロックオンは早かった。
ピームを発射すると、すばやくビームソードを持って、斬りつけた。
この一撃が勝負を決めた。
チョビがレッドストーンをライフルで仕留めて戦闘不能にした後、俺たちは紫苑さん達の救援に向かった。
紫苑さんは、マイヒメ相手にやや優勢に戦っているようだったが、じぇにぃがかなりやられていた。
もう10秒ももたないかもしれない状況。
俺たちはギリギリだった。
 アライヴ「じぇにぃ、戻っていいぞ!」
俺はそれだけ言うと、今度はサウスドラゴンを相手にしようとした。
しかし結局戦闘にはならなかった。
 紫苑「撤退する!」
紫苑さんの撤退命令だった。
確かにこのままやると、俺たちは全滅の危険もある。
だけど、星さんとかハルヒ君とか、どうするのか。
 小麗「回収完了しました~w」
 紫苑「御苦労(^-^)」
どうやらあの状況で、小麗さんが回収していたようだ。
なかなか凄い。
戦況が不利な中、艦船だけで敵の中を突っ切ったのか。
 紫苑「皆先に行って。俺とパープルアイズなら、大丈夫だから。」
少し心配だが、紫苑さんなら大丈夫だろう。
それにパープルアイズは、超高速艦だ。
撤退は、スムーズにいった。
どうやら敵も、そろそろきつい状況だったようで、追撃はなかった。
皆無事戻っては来れたが、今までで最大の敗戦だった。

明けない夜はない

イゼルローン攻略が失敗に終わり、皆で反省会をしていた。
というか、ただの雑談だけれど。
 じぇにぃ「ぁぃつつよぃよぉ~wこっちがこぅげきしても、かぃひせずにむかってくるしぃ~むちゃくちゃだよぉ~」
じぇにぃの戦いは、フェンネルでけん制して、回避するところを狙い撃つ形だ。
それなのに、あのサウスドラゴンは、回避せずに突っ込んできたので、じぇにぃは完全に意表をつかれたようだ。
 アライヴ「なるほどな。じぇにぃとは相性が悪い敵だったか。」
 ハルヒ「それだけじゃないですよ。星さんも、僕も墜とされてますし。」
ハルヒ君の言うとおり、じぇにぃが墜とされそうだったのは相性だとしても、実際に敵の3機は強かった。
 スピードスター「でもさ、敵の3機、名前どっかで見た事あるんだよね♪」
 一生「え?」
星さんの言葉に、皆興味をもったようだ。
 紫苑「マジ?」
 ハルヒ「僕はしらない。」
 小麗「私も知りません。」
 アライヴ「チョビは?」
 紫陽花「チョビちゃんはもう落ちちゃったよ。」
そう言えば、チョビは撤退早々、11時を過ぎていたから落ちたんだった。
紫苑さんの撤退指示は、絶妙のタイミングだっという事か。
 暗黒天国「折れもそういった名前は、聞いた事ない。」
しばらく沈黙が続いた。
が、突然じぇにぃが声を上げた。
といっても、チャットの文字だけどw
 じぇにぃ「ゎかった!!!ゴッドブレスのメンバーだ!!」
 アライヴ「ゴッドブレス?」
俺には分からなかった。
しかし他の面子は、分かったようだ。
 紫苑「なるほど。」
 スピードスター「だな♪」
 紫陽花「それは強いよ。」
 ハルヒ「へぇ~あの人達が。」
皆納得といった感じだったが、そんなに強ければ、俺が知らないはず無いはずだけれど。
強い人の名前は、掲示板などで出ているはずだ。
俺が疑問に思っていると、じぇにぃが説明してくれた。
 じぇにぃ「ゴッドブレスはねぇ~バトルグリードでゆうめぃなひとたちだよぉ~。ドリームダストのらぃばるてきなかんじのぉ~」
なんと!
ドリームダストのライバル的な人達?
それならメチャメチャ強いんじゃね?
それなのに要塞1つって、このゲームではライバルな感じじゃないじゃん?
色々と疑問は湧いたが、考える間もなく会話は続く。
 紫陽花「でも変ね?ゴッドブレスはダイユウサク軍に所属してるって聞いたんだけど。」
え?何それ?って事は、そのバトルグリードで強い人達は、こぞってダイユウサク軍に?
ある意味それだと、バトルグリード連合軍対、宇宙の絆他連合軍の戦いみたいじゃないか。
 スピードスター「しかしイゼルローンの大将は、聞いた事ない名前だったぞ♪」
そうそう、だからそんなに強い敵だとは思わなかったんだ。
 紫苑「ダイユウサク軍の裏の軍だったのかもな。」
 じぇにぃ「ぇぇ~!ぁそこはフェアプレーのぐんだとおもってぃたのにぃ~」
確かに、ダイユウサク軍が、勝つために他に軍を持って、工作するような軍には思えない。
その後も、工作軍だとか、実はライバルだから別の軍だとか、色々話してはみたけど、結論が出るわけもなかった。
話も落ち着いて、そろそろ寝ようかと思った時だった。
突然の報告だった。
イルマ軍解散。
先ほどまで、俺たちが戦っていた軍の、解散報告だった。

イルマ軍の解散報告があって直後、紫苑さん、紫陽花さん、星さんの上官3人は、仕事の為だとかでネットから落ちた。
でも、イルマ軍の解散が気になった俺や、じぇにぃ、ハルヒ君、小麗さん、暗黒天国さんは、しばらくチャットをしていた。
 ハルヒ「解散って事は、どこかに負けたわけでもないし、どうしてだろう。」
 暗黒天国「なんにしても、明日はイゼルローン争奪戦が起こるな。」
 じぇにぃ「まぁ~たたかぇるなら、ゎたしはなんでもぃぃけどぉ~」
なるほど、皆が落とせずにいた有人要塞が空き家になったのだから、領土が接触している軍はもちろん、離れたところから、強行する軍もいるかもしれない。
しかし私はそんな事よりも、もっと気になる事があった。
それは、あれだけ強いパイロットが、軍を解散して何処に行くのだろうかって事だ。
やはりダイユウサク軍の人なのだったら、ダイユウサク軍に戻るだけなのだろうけど、どうも腑に落ちない。
みんなはチャットを続けていたが、俺はボーっと考えていた。
奇策で勝利したとはいえ、チョビの背後をあっさりとってきたレッドストーン。
星さんとハルヒ君を倒して、更にじぇにぃを追い詰めたサウスドラゴン。
やっぱり強かった紫苑さんには勝てなかったけど、おさえていたマイヒメ。
あの3機がダイユウサク軍に入ったら、今の俺たちには全く勝ち目が無さそうだ。
サイファ軍とおそらく共闘してあたる事になると思うが、それでも全然足りない。
ジーク軍と手を組む事も、検討しなければならないのか。
マクロ的な戦略戦術は俺は得意ではないし、紫苑さんにまかせるしかないけど、少し前までモチベーションが上昇していただけに、少しショックだ。
まだ、あの3機がダイユウサク軍に入るとは限らないし、ゴッドブレスは5人いると聞いている。
今回解散したイルマ大将は、どうやらそのメンバーでは無いらしいけど、そしたら後2人は何処に。
考えれば考えるほど眠れそうにないので、みんなが落ちた後も、俺はオンラインのまま、ディスプレイを眺めていた。
午前4時を過ぎた頃、俺はPCからの呼び出し音で目が覚めた。
どうやら寝オチしていたらしい。
チャット中だった画面は、みんなの「おやすみ」の文字が並んでいた。
そんなPCのディスプレイのスピーカーから、通信呼び出し音が鳴っていた。
どうやら誰かが、俺にアクセスを求めているようだ。
 一生「いったい誰だよ・・・」
俺は半分寝ぼけていたのか、通信相手を確認する事もせず、通信回線を開いた。
すると相手は、予想していなかった相手からだった。
 サラ「こんばんは。先ほど戦闘した、元イルマ軍のサラです。」
なんと、あのゴッドプレスのメンバー、サラさんからだった。
 アライヴ「こんばんは。えっと・・・どうかしましたか?」
俺は眠い頭を必死に覚醒させつつ、文字をタイプする。
 サラ「ちょっとお願いがあるんですが、大将さんに通信したんだけど繋がらなくて、それで紫苑軍の一番の高官のアライヴさんにって事なんですが。」
ああ、そうか。
だいたい知らない人が、俺に通信っておかしいもんな。
大将に用があったのか。
でも、大将に用ってなんだろうか。
 アライヴ「えっと、で、どういった要件ですか?」
一応言葉は柔らかく喋っているが、先ほどまで我が軍は、この人達にコテンパンにやられたのだ。
気持ちとしては、ちょっとムッとしてしまっていた。
 サラ「単刀直入に言います。私と、後2人、昨日戦っていた2人ね、紫苑軍に入れてもらえないかな?」
 一生「えええええ!!!」
俺は驚きで、深夜ってか早朝にも関わらず、部屋で大声を出してしまっていた。
その後しばらく話をして、通信を切る頃には、負けた悔しさもはれ、真っ暗だった窓の外の景色も、少し明るくなり始めていた。

諜報活動

早朝の事は、まだ夢のように感じていたが、ログを確認すると、確かに「サラ」「サウス」「おとめ」と、志願の言葉が残されている。
理由を聞くと、ゴッドブレスは、元々ドリームダストを倒す事が目標で、ライバルなのだとか。
そして、ゲームでお金を稼いで、それで生活する事が目的のサークルでもあるらしい。
ゴッドブレスのうちの2人は、都合があってダイユウサク軍に所属している。
でもやはりライバルだから、残る3人は別の軍でやりたい。
ゴッドブレスとしても、ダイユウサク軍が勝てなかった時の保険も欲しい。
そこで、ダイユウサク軍以外で、優勝を狙える軍を探していたんだそうだ。
自分たちで強い軍を作る事も考えたが、このゲームの戦略面を一から勉強するには、時間が無いし、だったら強いところに入るのが一番だろうと言う事だ。
 紫苑「でも、君たちがダイユウサク軍のスパイである可能性を、完全に否定できないんだけど。」
そうなんだ。
リアル友達が何人もいるダイユウサク軍に、こちらの情報をリークしない保証はどこにもない。
それにいざとなったら、やはり裏切る可能性は十分にある。
この人達が裏切る事で、報酬が貰えなくても、仲間は優勝して大金を手にするわけなのだから。
 サラ「そのあたりは、信用してもらうしかないですね。こちらの情報は一切もらさないし、裏切りもしない。もちろん向こうの情報もこちらに入れる事はできないけど。」
さて、紫苑さんはどうするのだろうか。
この人達の強さは魅力だ。
この力があれば、ダイユウサク軍はもちろん、ジーク軍とだってかなりやれそうな気がする。
問題はスパイになりえるのか、そうでないのかだ。
俺としては、是非我が軍に入ってもらいたいと思っている。
紫苑さんは少し悩んでいるようだ。
メリットは、なんと言っても戦力が格段にあがる。
デメリットは、情報が漏れるリスクであり、裏切り。
だけど、前にドリームと戦った時の感じ、そしてこれだけの有名人だ。
裏切るなんて行為は、このひとたちにとっても凄いリスクになりそうな気がする。
ゲームで生活しようとしているのに、悪い噂があると、今後勝ちにくくなるだろうし。
 紫苑「向こうの情報を提供するとか言われたら、断ろうかと思っていたけど、どうやら信用できそうだ。よろしく!(^0^)/」
俺の期待通りの結論を、紫苑さんもだしてくれた。
少しのは、きっと紫陽花さんと相談でもしていたのだろう。
 サラ「ありがとうございます。階級に関しては何でもオッケーですが、できれば最前線を希望しますのでよろしくです。」
希望されなくても、これだけの人達を最前線で使わないなんて、もったいない。
一緒に戦うのが楽しみになってきた。
しかしその望みは、しばらくは無いと、いきなり告げられた。
 紫苑「階級は、サラが大佐、おとめとサウスが少佐で、小麗の月天に乗ってもらう。そして旗艦とは別部隊を指揮し、今後頑張ってもらいたい。」
なんと、一緒に戦う事を楽しみに思った瞬間、別働隊宣言ですか。
そしていきなりこのサラさんに、隊長を任せるとな。
確かにこのサラって人は、中々やりそうな気がするし、戦えば強い。
でもいきなりすぎるこの優遇。
紫苑さんも思い切ったものだ。
まあ1日1拠点で今まではやってきていて、このまま続ければ宇宙だけで10192日はかかる計算だ。
部隊を分けて、同時攻略はそろそろ必要かもしれない。
 サラ「了解。小麗って、戦闘不能機を回収していた艦長かしら?」
 紫苑「そそ。」
 サラ「なるほど。期待に応えますよ。」
小麗さんの力は、昨日の戦いで確認できた。
艦船運用は、おそらく紫陽花さんクラスか、もしかしたらそれ以上。
我が軍でナンバーワンかもしれない。
そんな人の艦に乗せる事から、期待がうかがえる。
今までは正直、優勝を目指してはいたが、そのイメージというかビジョンは全く見えていなかった。
3人の入隊により、優勝できる可能性が見えてきた気がした。
紫苑さんの旗艦は、言わずもがな我が軍の主力だ。
紫陽花さんの艦は、俺とチョビがいて、かなりやれるだろうし、今後テンダネスのレベルが上がれば、もっともっと強くなる。
星さんのスピードスターは、昨日は暗黒天国さんがいなかったから力を出せなかったけれど、戦局を一変する力があるらしい。
そして小麗さんの月天に、ゴッドブレスの3人。
この艦船が、今うちで最強になっているかも。
だから単独で別働隊。
少し悔しい気持ちもあるが、別働隊なのは、まだ完全に信用していないからかもしれない。
俺はもう、既に疑う気持ちは全くなくなっていたが。
なんにしても、やる気はマックスになっていた。

 一生「やる気マックスだったんだけど・・・」
俺は何故か、諜報活動で今はジーク軍の本拠地、コロニーのイスカンダルに来ている。
サラさんが、一度全ての有人拠点で、諜報活動をするべきだと提言してきた。
確かに、イルマ軍に負けたのは、どんな人がいるのか、どんな戦力なのか、しっかり知らなかったからだ。
敵を知り、己を知れば百戦危うからず。
自分たちの戦力はある程度理解はしているが、敵の事を全く知らなかった。
諜報活動は、ある程度は、一応やってはいた。
NPCに任せていたので、得られる情報は少なかったが。
でもそれではダメだ。
有人拠点なら、一般プレイヤなら、安全に諜報活動ができる。
民に交じって、情報屋から情報を聞くだけだから。
おそらくは、我々の拠点、シオンやカテーナにも、他の軍のプレイヤが出入りしていて、情報を集めていたりするのだろう。
要塞と、移動要塞、要塞戦艦での諜報活動は危険なので、それらでは行わないが、他を全て回る予定だ。
 一生「いったいどれだけ時間がかかるのだか・・・」
俺は最初断りたかった。
しかしだ。
諜報活動で得る情報の信頼性は、キャラのレベルに比例しているらしく、キャラレベルの一番高い俺が行かざるを得なくなった。
一応相棒として、みゆきちゃんもついてきてくれる事になったのだけどね。
ちなみにみゆきちゃんは、最近まで休んでいたけど、つい先日復活した古くからのユーザーだ。
前作の宇宙の絆でも紫苑軍に所属し、そこそこ頑張っていた人。
 アライヴ「みゆきちゃん、あの人に聞いてみようか。」
 みゆき「もしかしたら、情報屋っぽいもんねw」
街には、情報屋と言われる人が2種類存在する。
ひとつは、ノンプレ(蔵の人が操作しているNPC)で、俺たちのレベルによって情報をくれる、正規の情報屋だ。
もうひとつは、プレイヤの情報屋だ。
レベルの高いキャラは、この拠点の情報を売る事で、金儲けをしている。
中にはリアルマネーを要求する、ハイレベルな情報屋もいるが、そこまでして情報を集めるつもりはない。
敵戦力がある程度わかり、俺が納得できる程度集まれば、そこはそれでオッケーだ。
 情報屋「情報が欲しいのかい?」
 アライヴ「はい。教えていただけますか?」
 「君のレベルだと、ココのAランク情報と、軍のBランク情報が、100000ドルだが、どうする?」
十万ドルか・・・
情報内容をランクダウンすれば、おそらく半額以下になるのだろうけど、ココはジークの情報だ。
ケチってる場合じゃない。
それにこの金は、俺個人の金でもないからね。
ちなみに、十万ドルとは言うが、実際のドルの価値とは比べられない。
ただ、リアルマネーで買ったりしている人の相場を考えれば、200円程度から1000円くらいまで。
 アライヴ「ではお願いします。」
俺は相手に、十万ドルを渡すプロセスを行う。
俺の持ち金が、その分減った。
情報を貰う時、相手がノンプレなら、先にお金を渡すのが決まりだ。
しかしプレイヤの情報屋には、詐欺にあう場合があるので、お金と情報ファイルの交換が原則だ。
お互い信用できない場合は、交渉自体成り立たない事もある。
今回はノンプレだったので、先に全額支払う。
 情報屋「では、データを送る。確認してくれ。」
俺はデータベースを開いた。
するとそこには、この拠点のAランク情報の書かれたファイルと、ジーク軍のBランク情報があった。
 アライヴ「確かに。」
 情報屋「では、また何かあったら、聞いてくれ。」
情報屋はそう言って、街中へと消えていった。
さて、情報の内容を見てみるか。
とりあえず、先にファイルをコピーして、みゆきちゃんと紫苑さんに送っておく。
情報ファイルは、コピーする事はいくらでも可能だ。
それを、同じ軍の者に送る事も自由。
俺はファイルを開いた。
まずはこのイスカンダルのデータからだ。
生産性は中の下だか、戦闘の無い平和なコロニーで、最近の人口増加率は高い。
キャパが決まっているから、そろそろ上昇は止まるだろうが、ジークの評判も良い。
感じとしては、我が拠点のシオンとそっくりだ。
あらゆる面で似ていた。
場所も、丁度対角にあるので、当然と言えば当然か。
本拠地ではあるが、ココに駐留する艦船は0。
 アライヴ「流石に、ココに艦船はいないか。」
 みゆき「情報が筒抜けになるもんねぇ。」
こうして諜報活動をして初めて知ったが、自分の艦船を有人の拠点に置く事にはデメリットがある事を知った。
民のいる拠点に艦船をおいていると、自分の情報が筒抜けになっていたのだ。
ただ、民の出入りを規制したり、民との信頼関係を高くする事で、情報が漏れないようにする事は可能で、紫苑さんはおそらくそうしていたのだろう。
出入りを規制すると、生産性は半減するけれど。
情報を守る事を優先するか、生産性を優先するかって事だ。
今ではシオンに駐留する艦船は0なので、出入りは自由にしていると思われる。
それに民との信頼関係も高いし。
さてこのファイル。
残る情報は、一度でもこのコロニーに出入りした艦船データだった。
「2時間前、ジーク、バルバロッサ、詳細情報無し。」
2時間前に、ジークがココに来たようだ。
詳細な情報が無いって事は、短時間だけの滞在、すなわち、設定変更だとか、研究の支持だとか、用があってきただけって事だろう。
滞在する時間が長くなれば、その分情報量は多くなるようだから。
後は、民との信頼関係も関係する。
戦闘の無い平和な場所の民は、みんなジークの味方であるから、なかなか情報は出てこないって事だ。
他の情報は、見ない名前が何人かいたが、細かいデータは無く、特に思うところはなかった。
情報の最後の方には、四天王の群青さんの名前もあったが、データは3カ月ほど前の物だった。
意外にも、その頃の詳細なデータが書かれていた。
流石に、レベルも高いし、撃墜数も多い。
今の俺よりも少ないが、これは3カ月前のデータだ。
3カ月前の俺と比べてどうだろうか。
ふと気がついた。
群青さんも、今は俺のライバルなのだなぁ~と。
では次に軍のデータだ。
こっちの方が興味ある。
軍のBランクデータとなると、かなり詳細に書かれている。
俺のレベルが高いから得られる情報だ。
さて、どんなものか・・・
俺は愕然とした。
 みゆき「ジーク軍、凄い数だねぇ~」
 アライヴ「ああ。」
そうなのだ。
俺たちが必死になって、ようやく40人弱のプレイヤを集めたのに、ジーク軍はすでに200人を超えていた。
しかも、この情報はBランクで、完璧ではない。
おそらく予想するに、300人はいるだろう。
アクティブでないプレイヤも多そうだけど、やはり最大の敵はジークか。
そう思った。


読者登録

秋華さんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について