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ゲーム!宇宙の絆

 グリード「補給線のびてるけど大丈夫か?」
 サイファ「楽勝でしょ。この倍くらいまでなら大丈夫だよ。」
 グリード「そっか。いや、補給が安定するとこれだけ楽勝できるなんて、すげえな。」
 サイファ「まあね。最近は遠征多くなってきたからね。」
 グリード「だよな。サイファさん、うちの軍はいってよ。」
 サイファ「いやいや、今のが気楽だし、儲かるからね。ああ、ギャラよろしくね。(笑)」
 グリード「残念だな。ああ、今回の勝利でかなりの利益がでそうだから、色つけるよ。」
 サイファ「サンクス!あ、敵が陣形変えてるよ。」
 グリード「ようやく愚かな陣形に気がついたな。でももう遅いけど。」
 サイファ「だね。U字陣形で確実にいったら?」
 グリード「いや、こっちは指揮が高まってるから、I陣形で一気に決めるよ。」
 サイファ「そっか。じゃあこっちにも被害でそうだから、折を見てこっちは引くね。」
 グリード「ういうい。」
俺の名前は、サイファこと神村達也、20歳になったばかりのニートだ。
毎日毎日PCのモニターを睨んで、チャットしながらネットゲームをしている。
まあ、ただのニートではなく、今プレイしているネットゲームで、最低限の生活費は稼いでいるので、それをニートと呼ぶのかどうかは不明だ。
プレイしているネットゲームは、無料参加できるゲームだが、質も人気も現在ナンバーワンで、会員は1000万人を突破している。
どんなゲームか気になる人もいるかと思われるので説明すると、昔流行ったアニメ、ガンダムと銀英伝を足して2でわったような戦闘もの。
宇宙と星と、要塞と地上と、とにかく広大なスケールの陣取りゲームだ。
まあそれだけだったらただのネットゲームで、ユーザーは限られてた人に収まっていたのだろうが、このゲームの魅力はゲームだけではない。
ゲーム内の通貨、ドル以外に、リアルマネーの円が自由に動かせるのだ。
そうする事で、どういった事がおこるのか。
ゲーム内のアイテムを、リアルマネーで取引する事は当然で、リアルな物も簡単に取引ができてしまうのだ。
某ネット銀行が提携していて、ゲーム内で使うリアルマネーを管理している。
支払方法はいろいろ存在するが、今話す事でもないので割愛する。
まあそれができる事で、ゲーム内でリアル企業がリアル物をネット販売しているのだ。
言ってみれば、セカンドライフと楽天市場とネットゲームをうまく融合させたような感じだ。
で、買い物すれば、ゲーム内アイテムがもらえたり、ゲーム内イベントが発生したりして、ゲーム内での利益も得られるから、みんなココで買い物をするわけだ。
ゲームをプレイしていない人も、アイテムがリアルマネーで売れたりするから、一般人もココで買い物をして、アイテムを売って利益を得れるから集まってくる。
後俺みたいに、ゲーム内の兵器を安く買い取って、チューニングして高く売ったり、アイテムに手を加えて売っている奴もいるのだ。
とにかくこのゲームはあらゆる面で、俺を含め沢山の人々のハートをつかみ、ネットゲームの代名詞的存在になったわけだ。
そして今日も俺は、このネットゲーム、「宇宙の絆」をプレイしていた。
先ほどの会話は、ゲーム内でのチャットによる会話。
同じ軍に所属していれば、チャットができる。
それで作戦や指示を伝えて、敵軍と戦闘するのだ。
で、内容だが、俺はサイファ、軍の大将がグリード。
俺はグリードの軍に、ゲストとして参戦している。
一言で助っ人だ。
俺は補給が得意、いや自分でいうのはアレだが、おそらくはナンバーワンで、だから補給部隊で助っ人していた。
俺の華麗な補給により、勝利を目前にしたグリードは、俺を自軍に勧誘してきたが俺は断った。
なんせ助っ人でリアルマネーを稼いでいたりするのだ。
そう簡単には今の状況を手放せない。
で、最後のあがきを敵軍がしてきたので、俺は勝利も確実なので戦線離脱とあいなったわけだ。
てか、残党狩りと残骸集めをするんだけどね。
まあ、補給の助っ人以外にも、ジャンク屋もやってるってわけ。
おそらく、このゲームで今一番稼いでいるのは、俺かもな。
 グリード「今日はサンキュー!後で金は振り込んでおくよ。」
 サイファ「よろ!」
最終的には、グリード軍の圧倒的勝利で終わった。
結構重要な拠点、宇宙に浮かぶ要塞を占拠する事ができたから、これでグリード軍も一大勢力になるのは確実だ。
こういった勢力に恩をうっておくことも、この世界で生きて行くには重要。
今日は上々の収穫だ。
お金はいり~の、大勢力と仲良くなり~の、残骸いっぱいはいり~の、レベルあがり~の。
でも、残骸がこれだけ沢山入ったのは、特にラッキーだったな。
グリードが最後、U字陣形にして時間をかけて完全勝利を目指してたら、味方の被害は皆無だっただろうし、敵ももっと完全破壊されていただろうから。
おそらく時間が無かったんだろうな。
俺の顔は、意図せず笑顔になっていた。
さて、俺はグリード軍から抜けると、本拠地であるシリウス要塞へと帰投した。
旗艦をドックに入れて、今日の収穫をチェックした。
 達也「ほう。生き残りがいたのか。ラッキー!」
生き残りとは、戦闘で生き残った敵軍のNPCの事だ。
NPCとは、コンピュータがAIにより勝手に動かすプレイヤの事。
AIとは人口知能ね。
まあ、部下にできるかもしれない人材をゲットしたって事かね。
俺は登用ボタンをクリックした。
 達也「うっし!」
NPCのチャーリーは、あっさりと俺の部下となった。
ちなみに俺は、軍にも所属していないし、軍の大将でもない。
そんな俺が部下ってのもおかしな話だが、まあ在野の仲間が増えたと考えてほしい。
ああ、ココでひとつ説明しておくと、NPCの忠誠心によって仲間になる確率は変動する。
今回の奴は、おそらく上官への忠誠心が低かったのだろう。
レベルも低いし、登用されたばかりだったようだ。
俺は早速そのNPCのAIデータを開いた。
 達也「うわぁ~攻撃一点張りだな。」
俺の部下にはあまり合わなさそうだ。
まだレベルが低いから、変更しても問題なさそうだが、俺はそのまま人間弾幕部隊(俺命名)の人型第2部隊隊長に任命した。
あ、ココでまた説明だが、人型とは、人型ロボットの事で、ガンダムのモビルスーツのパクリみたいなものだ。
このゲームの戦闘は、この人型と、戦闘機、そして戦艦の3種を中心に行う。
他にもいくつかあるが、それはまた別の機会に。
で、人型は接近戦や地上戦に強い。
コストは若干高めで、宇宙戦を得意とする俺にとっては、あまり使わない兵器だ。
AIを全く書き換えずに、俺はチャーリーの画面を閉じた。
俺の変なポリシーだが、よっぽど使えないか、新人以外のAIは、なるべく書き換えないようにしていた。
次に俺は、全体マップを開いた。
画面いっぱいに宇宙のマップが表示される。
右下側には赤い点が沢山、真ん中上側には青い点が沢山、左下側には黄色の点と卵色の点が沢山あった。
このゲームの世界は今、3人しかいないNPC大将が率いる軍と、プレイヤ名ジークが率いる軍で4つに分かれていると言っていい。
もちろん他にも沢山のプレイヤが大将となり、拠点を持ってはいるが、この4軍と比べるとまだまだ小さい。
このゲームがスタートした時は、NPC軍3軍が3分していたわけだから、この2年でだいぶ変わったと言えば変わったのだろう。
始まった頃は、マップ数も少なく、NPC軍を倒すのはほとんど無理な状態だった。
俺も始めた頃は、NPC風の魔人軍に属していて、日夜補給していたものだ。
ちなみにNPCの後2つの名前は、氷の虎、炎のドラゴンね。
地味な仕事で、正直面白いものではなかったが、まあのめり込むつもりもなかったからこれで良かったんだよな。
ゲームを楽しみたい奴は、戦闘重視でレベルを上げて、前戦で戦ったり、人型乗りになったり、まあそっちのが楽しいだろうから。
それにマップの数が少ない最初は、移動時の補給なんてほぼ無用だったし、補給関係のレベルを上げる奴なんていなかった。
でも、徐々にマップが増えて広くなって、予定の10000マップになって宇宙が完成した時、俺の補給が重宝されるようになっていた。
今俺が、リアルマネーを稼げるほど助っ人として重宝されているのは、はっきりいってたまたまだ。
で、まあ補給を極めるために戦闘機設計やらもしていたから、それらの機体を買ってくれる人も多くて。
少し話を戻すが、半年前までは、風の魔人軍が徐々に勢力を伸ばしていったんだ。
俺のおかげで。
このままNPC軍が宇宙統一に向かうのかと思われていた。
ココで大事な話をしておこう。
このゲームの人気が、これほど大きい理由が、先に述べただけではない事は、おそらくみんなわかるだろう。
え?わからない?
1000万人突破だよ?
まあ、先に述べただけでは無理なのだ。
もうひとつこのゲームには魅力があったのだ。
NPC軍以外の軍が、宇宙統一をした場合、その軍に報酬10億円がもらえるという事。
これにみんな飛びついたんだ。
みんな軍を立ち上げ、仲間集めに躍起になった。
統一したら、報酬の1%を上げるとか、アイテムでつったり、リアルマネーでつったり。
一時はプレイヤの半分くらい軍にしたかもね。
でも、小さい軍は簡単に負けた。
NPC軍は最初から大勢力だったからね。
それでもまあ地道に頑張る軍もあったし、今も残ってるところも多いけど、NPC軍の牙城は高かった。
でも半年前、簡単にNPC軍に対抗出来る軍を作った奴がいた。
ジークだ。
ジークは最初、俺と同じ風の魔人軍に席を置いていたが、徐々に階級を上げてナンパー2まで上り詰めた。
そして工作に工作を重ねて、大きな反乱を成功させたんだ。
俺はそれに巻き込まれるようにして、風の魔人軍を抜けた。
あの時は俺もやばかった。
なんせジークの下で、はたらいていたからな。
反乱したら敵を多く作りそうだったからジークにはつかない、でも、風の魔人軍からは敵と認識される。
もう必死に逃げたよ。
死んだら大変だからね、このゲーム。
お金以外全てリセット。
自身のレベルも半分になるから。
このゲームはうまくやれば、ほとんどの場合死なないけど、流石に戦力差が大きすぎるから、死にかけた。
我が指揮下には戦艦5隻なのに、敵は1000隻とかだもんな。
それに補給特化だし。
でも、逃げる算段は常に万全にしてるから、なんとか無事帰投。
それから放浪の在野をしているわけだ。
さて、俺は自分の部隊の画面をチェックした。
まずは旗艦「補給くん号」。
正直真面目にやるつもりじゃなかったので、適当につけた名前だ。
変更もできるが、愛着がわいているから変えるつもりはない。
もちろん旗艦だから、サイファ自身で動かしている。
人型乗りになりたいプレイヤは、艦長をそだててそれに任せてる奴もいるが、死ぬ確率が上がるからあまりやってる奴はいない。
他に戦艦を10隻もっている。
うち8隻は補給艦で、残り2隻が戦艦だ。
どれも俺がカスタマイズしているので、補給艦の癖にスピードは高速戦艦クラスだ。
旗艦と補給艦には、戦闘機と補給機が搭載されているが、どちらもディフェンス重視の機体が多い。
戦艦はむしろ護衛艦的役割で、戦闘機と人型が搭載されている。
全てを一言で言うと、銀河1のディフェンスと、宇宙1の逃げ足を持った補給部隊だ。
さて、自分の部隊を眺めていても、金も儲からないし強くもならない。
俺は拾ってきたパーツを選別し始めた。
数が多く、嬉しいやらしんどいやら。
 達也「おっ!ボイスレコーダの記録が残ってるよ。」
さっそく記録を開いた。
そこには、敵の通信記録、すなわちチャットログが残っていた。
このゲームは、偶にこういった記録を手に入れる事ができてしまうから、個人的なチャットは控えた方がいい。
チャットには細心の注意が必要だと、改めて思った。
他には欲しかったパーツや、売れば高そうなのが色々出てきた。
攻撃系パーツは、俺にはあまり必要ないから、最低限以外は全部売る事にした。
売りリストにパーツと値段を登録した。
登録したとたんに、いくつかが売れてゆく。
今日売りにだしてるのは、円では無くドル。
ゲーム専用のお金が少し増えた。
ゴミがあらかた片づいたので、俺は戦艦制作に移った。
今俺は、次期旗艦予定の戦艦を作っていた。
てか、補給艦なんだけど。
それでも若干戦艦に近いものだ。
このゲームは、戦艦の形と色、パーツ、出力など、全て好きにカスタマイズできる。
で、それらを決定して組み立てていくわけだが、なかなか思うようには作れない。
それは、自分のキャラのレベルに依存したり、メカニックNPCのレベルに依存したり、運だったり、アイデアだったり。
競艇のエンジンとペラのように相性もある。
同じ物は2度と作れないのだ。
組み合わせ、テストして、分解して、また組み合わせて、とにかくひとつずつ試していった。
凄くしんどい。
だからこうやって完成した、高性能な機体は、リアルマネーでも売れるのだ。
中でも戦艦はコストも高いし、そうそう作れるものでは無いから、良い戦艦が売りに出される事はまずなかった。
だから今作ってる戦艦も、自分で使う為のもの。
過去、旗艦を作ろうと何度も頑張った結果が、持っている他の10隻なのだ。
しかし今回のは、マジで良い感じだ。
補給艦の癖に、高速戦艦以上のスピードと破壊力。
何か間違ってるとは思うが、ゲームだからこういう事も偶にある。
まだ完成していないから、ここから並になってしまう可能性の方が高いが。
でも山はこえてるよな。
俺はこの日の残りの時間、ずっと戦艦作成に燃えていた。

ショボイ戦い

サイファに対して、設定により、ジーク軍と風の魔人軍から敵登録されている。
この登録をしていない軍は、在野の俺に攻撃をする事ができない。
助っ人に入ってる場合は、もちろん敵からの攻撃はうけるが。
まあ、俺にとっての敵は、同じ在野のプレイヤと、ジーク軍と風の魔人軍ってわけだ。
友好状態の軍は、昨日助っ人したグリード軍など数十軍いる。
これらの友好軍は、俺が旗揚げして軍を立ち上げたとき、初期状態が1ヶ月の同盟関係となる。
とまあ、敵と味方を改めて確認したが、超大勢力2つを敵にしてるのはいかがなものか。
そう思った俺は、今日は無償で氷の虎軍に属するサクラさんの助っ人をする事にした。
対戦はジーク軍。
目指すは最前線の拠点。
おそらくこの位置なら、ジーク軍の本軍は間に合わないから、楽に勝てると思っていた。
しかし思わぬ苦戦。
流石というか、強かった。
俺がかつて所属し、強者がそろっている軍。
数では圧倒しているのだが、時間がかかった。
氷の虎軍の今回の隊長は、中将のレイズナーさんだ。
決して下手では無いが、俺は見ていてじれったかった。
レイズナーさんからの通信は、俺のところには届かない。
こちらからも通信できない。
まあ、システムとしては出来るのだが、回線をむやみに開くと、敵に盗聴されるおそれがでてくるのだ。
作戦が漏れれば対応されてしまう。
だから俺が通信できるのは、今はサクラさんだけだった。
 サイファ「サクラさん、このままだとじり貧です。敵の隊長、俺知ってるんです。ココは削りあいにもっていくしかないと思うんですけど。」
俺は作戦の提案をした。
 サクラ「大丈夫だよ。勝てる勝てるw」
返ってきた返事を見て、俺はがっくりした。
この人ヘボだ・・・
ゆっくりしてたら、ジーク本軍が来るかもしれない。
俺は逃げる準備をした。
真っ先に無傷で逃げたら、反感かうだろうなぁ・・・
俺はため息がでた。
 サクラ「サイファさんも、敵軍突破を防ぐのを手伝って。1度止めれれば勝利が決定するから。」
サクラさんからの命令。
おそらくはレイズナーさんからの命令なのだろうが、補給艦に戦力期待するなよな。
俺は泣きたくなった。
しかたないなぁ。
俺は補給機を戻して戦闘機を展開した。
ゆっくりはしていられない。
敵は高速で近づいてくる。
補給を止めてられる時間も多くはない。
すぐにどこかに歪みがでてくるはずだ。
止めていられるのはせいぜい1分だ。
俺はサクラ艦隊の左をつく敵軍の前に、一気に弾幕をはった。
まさか補給艦が、これだけの弾幕を展開できるとは思わなかったようで、一瞬敵軍の動きが止まった。
 サイファ「今!射撃です!」
俺はなるべく短い言葉で、行動を促した。
しかし、サクラさんの軍は動かなかった。
なんで?
しかも俺の旗艦の周りに集まり始めた。
 達也「落ちてるしぃ~!」
そうなのだ。
サクラさんはネット回線が切断されていたのだ。
行軍、戦闘中に落ちた場合、部下にプレイヤがいる場合は、旗艦以外はプレイヤの中で一番階級の高い者の指揮下に入る。
いない場合は全軍自動撤退だ。
俺がいたから撤退はしないが、旗艦だけは高速で撤退を始めた。
俺は慌ててサクラさんのNPCに一斉攻撃を命令。
陣形をI字陣形に変更して全速前進。
更には、補給機展開。
サクラさんの艦隊を盾にして、俺は全速で逃げる形だ。
しかも敵軍も壊滅状態にできるかもしれない展開。
 達也「落ちたサクラさんが悪いのだ。」
俺は悪代官のように独り言を言った。
その後何とか敵軍に勝利したが、サクラさんの艦隊はほぼ壊滅していた。
俺はちゃっかりサクラさんの残骸を集めて持って帰った。

対海賊船

いや~拾い放題だぜ!
今日は友好関係の軍どうしの対戦に、戦場で残骸拾いをしていた。
友好関係の無い軍の戦場でこんな事をすると、すぐに敵対されるからな。
もちろん両軍には許可をとっている。
勝手にこんな事をすると、不信感をいだかせる事になるから。
おれは拾い放題のアイテムにルンルン気分で画面を眺めていた。
この様子だと、おそらく数万円の儲けが出るかもしれない。
なんて思っていると、知らない艦隊の機影が見えた。
警告を表す赤い光が点滅する。
こちらに攻撃可能な機体が近づいたら、コレが点滅するのだ。
最初は残骸拾いに来たプレイヤか、初心者が迷ってきたのかと思っていた。
俺は普通に通信を試みようと思った。
しかしその機体が表示されて、俺は通信をやめた。
そのプレイヤの機体は何とも禍々しい機体で、色は真っ黒。
自分でペイントしたのだろう、ドクロのマークが見えた。
 達也「海賊かよ!」
海賊にはドクロのマークを付けるのが、暗黙のルールになっていた。
海賊とは、主に在野のプレイヤを壊滅させて遊んでいるプレイヤの事だ。
中には軍にもたてつく奴がいる。
俺は残骸拾いを中止して、直ぐに逃げる準備をする。
しかし、相手は海賊、速攻で攻撃してきた。
護衛艦の弾幕が、最初の攻撃をなんとか防いでいた。
俺は慌てて人型を展開。
背後をつかれているので、戦闘機では小回りがきかない。
チャーリー発お披露目~
先日ゲットしたチャーリーを初めて使う時がきた。
しかし、NPCは使ってみるまでその能力の全てを理解する事はできない。
果たしてどれほどの活躍をしてくれるのか。
せめて俺を楽に逃がしてね。
とりあえずディフェンス重視の命令。
かろうじて防いでいる。
やはり守りはきついや。
機体のチューニングは完全守りなのだが、いかんせんチャーリーは攻撃型だ。
撤退準備はまだ終わっていない。
大量損失覚悟で、即撤退か。
それとも現状維持でチャーリーに期待か。
もしくは、反撃?
俺はほとんど攻撃をしたことがない。
まあ少しとか、弱い相手とか、無いことはないのだが、今回のような海賊など勝てる気がしないから。
でも、少し試したくなった。
チャーリーの攻撃力も見たいし、とりあえずこのままやられっぱなしもしゃくだから。
俺は戦艦の弾幕をありったけぶちまけた。
これで10秒ほどは無敵だ。
すぐに補給機のしょぼくれ砲発射。
当たっても痛くない攻撃だが、牽制やフェイントにはなる。
相手がうまくのってきた。
しょぼくれ砲に、ご丁寧に弾幕。
さて、後はタイミング。
しょぼくれ砲に対して、こちらの弾幕よりも強力なのを使われていたら、後は逃げるだけ。
しかしもし、それ相応の弾幕を使っていたら。
なかなか戦いなれしている海賊だ。
きっと・・・
俺の予想は当たった。
俺の弾幕より、敵の弾幕が先に薄れだした。
今だ!
 達也「いけ!チャーリー!」
護衛艦から飛び出していた人型と戦艦の一斉攻撃。
反応は早い。
 達也「おお!早すぎる?」
敵の弾幕は完全には消失してはいない。
今突撃したらこちらに多大なダメージが。
このスピードなら、相手が反応する事は無理だろう。
こっちの攻撃が届く前に弾幕が消えるか、残るか。
それだけだ。
ギリギリのタイミングで、弾幕が消失した。
 達也「よっしゃ!」
俺は直ぐに逃げる準備。
I字陣形全速ぜんし・・・
あら?
俺はゆっくりと反転して菱形陣形にした。
なんとチャーリーが海賊の旗艦を戦闘不能まで破壊していた。
チャーリーおそるべし。
海賊は、ボロ戦艦で必死に逃げようとしていた。
どうしよ?
そんな事を思いながら、既に攻撃機を展開していた。
無意識に攻撃していた。
海賊は壊滅していた。
あーあ。
これでこの海賊はしばらく復活しないな。
掃討して残骸を集めた。
レアなパーツもNPCも、大量にゲットしてしまった。
そこそこの軍にも対抗できるだけの、人材と兵器を手に入れた。

ボロ負け

3日後、俺の艦隊は、旗艦が1、戦艦が4、補給艦が12、制作中戦艦が1となっていた。
しかも全てにNPCを配置し、参謀や個々の機体にまで配置できる有様だ。
あの海賊はかなりの使い手で、NPCのレベルもかなり高かった。
てか、名のある最強の海賊だったようだ。
俺が勝ったのは、完全に相手の油断、おそらく友達に強さの自慢でもしようと、初心者にでも指揮させてたんじゃね?
普通補給部隊にやられる訳ないしな。
ただ、一撃必殺の攻撃を持っていて、それがたまたま当たっただけなのだ。
俺は笑いが止まらなかった。
でも流石に艦船が10を越えてくると、指揮系統がきついな。
今日もグリード軍の助っ人だが、まあ今までどおりの数でいいか。
俺は新しい面子全員と、一部の古面子で足りないところを埋めて、戦場に赴いた。
グリード軍は敵を圧倒していた。
敵はジーク軍だが、本拠地から離れすぎてる辺境の地だし、戦力が少なかった。
今日も楽勝だなぁ~
俺は椅子の背もたれにもたれ、腕を頭の後ろに組んでただディスプレイをみていた。
しかし、なかなか敵軍を壊滅させられない。
少しずつ削ってはいるが、ジーク軍はしぶとかった。
ここまでこの戦力で頑張る必要があるのだろうか。
疑問がわいた。
この空域に、援軍はまずこれないだろう。
時間稼ぎは無意味だ。
何故?
ふと、俺はこの戦場のマップが、かつて自分が攻略したマップである事を思い出した。
ジークの元にいた時の事だ。
あの時はプレイヤがココを守っていて、戦力は負けてたんだ。
でも、俺がふと思い立った作戦。
マップ上部にある隕石群。
ココって突破できないだろうか?
そう思って試したんだ。
航行レベルが後少し低かったら、運が後少しなかったら、俺は突破できなかっただろう。
しかし俺は突破したんだ。
敵の背後を突いた。
敵軍は混乱し、その混乱の中ジークが突撃。
終わってみれば圧勝だった。
やばい!
俺は思った。
 サイファ「撤退準備を」
俺がそう通信した直後、背後に機影が見えた。
やっぱり。
 グリード「どした?援軍か?」
返事が面倒だったが、俺は撤退準備をしながら返事を返す。
 サイファ「大援軍」
そうこうしてる間に、その数はどんどん増えた。
多すぎだよ。
まだ間に合う。
俺は射程距離に入る前に艦隊全てを反転させ、I字陣形、しかも旗艦は二列目に。
コレはもう、旗艦だけでも逃げるぜ陣形だ。
正面の機影は、1000隻ほど。
後ろにグリードの艦隊が戻ってきた。
その時、通信が入る。
俺は回線を開いた。
 ジーク「おひさ!(笑)」
ジークの艦隊は、射程ギリギリで止まっていた。
 サイファ「裏切りものぉ~(泣)」
俺はとりあえず泣きついてみた。
 グリード「どうする?」
ジークとの通信のあいまに、グリードからも通信が入る。
 サイファ「ちょっと待って」
俺はジークとの通信を優先した。
 ジーク「裏切ったのはそっちじゃん?こっちについときゃ良かったのに。」
 サイファ「俺に、あんた以外全てを敵にまわせと?」
 ジーク「宇宙統一には、いずれそうなるんだから。」
ああ、確かにと思った。
でも今更言っても遅い。
 サイファ「逃がしてはくれんかね?」
最後の望みを託してみた。
 ジーク「却下!」
ガックシだった。
 ジーク「サイファが今俺の最大の敵なんだよね。悪いけど味方にならないなら死んでもらうよ♪」
その言葉が最後だった。
ジーク艦隊が動き出した。
俺は通信を切り替え、グリードに最後のメッセージ。
 サイファ「突破口を開く。進路は下。」
 グリード「ええ?下?」
俺はもう返事をする余裕は無かった。
たかだか11隻の艦隊なのに、命令が間に合わない。
これほど追いつめられるのは初めてだ。
ちなみに、グリードが動揺した、下への進路。
実はこのゲームは基本は2Dである。
しかし、宇宙なら上下2艦隊分のスペースがもうけられていて、地上だと上3、下1くらいのスペースがあるのだ。
陣形は全て2Dのみなので、上下を使う場合は、プレイヤがその分必要となる。
もしジークの艦隊が単独なら、上下は開いているはずだ。
俺はその望みに賭けた。
ジークとの通信はつないだままだったようで、ジークの言葉が聞こえる。
正確には表示される。
 ジーク「下か。運が良かったな。そこは開いてるからな。」
俺は心の中でガッツポーズした。
だからといって、戦力は圧倒的に負けてるし、やられる可能性が90%から50%くらいになった程度だ。
上からの攻撃が、俺の艦隊を襲う。
もうなにがなんだかわからない状態だった。
とにかく搭載機を全て出撃、使える弾幕は全て使った。
旗艦にも被弾する。
俺は装甲を極力削り、スピード重視だ。
被弾した時の被害は大きい。
左エンジンが即停止した。
俺はサブエンジンに切り替える。
進路が少し左にずれる。
必死に進路を修正する。
近づく敵艦隊の鼻先にチャーリーの威嚇射撃。
思った所に撃てない。
くそっ!
射線がずれてやがる。
グリードも後ろについてくる。
グリードの攻撃が、若干こちらへの攻撃を和らげる。
それでもジークは俺の旗艦狙いのようだ。
艦船いくつか捨てるか。
俺は自身の艦船を盾に、何とか突破した。
 達也「うしっ!」
ガッツポーズをした後、速やかに戦場を離脱した。
生きた心地がしなかった。
グリードもかなりの被害だったが、俺より全然マシで無事帰還を果たした。
ドックに戻った俺は、被害状況を確認していた。
失った艦船が戦艦2、補給艦3、NPCが6人。
何とか死なずにすんだが、被害は莫大だった。
しかしまもなく、NPCが4人帰ってきた。
捕らえられていたが、登用に失敗して逃がされたようだ。
後2人は登用されたのか、それとも捕らえられたままなのか、それとも処刑されたのか。
まあ、逃がしてくれたジークに、少し感謝した。
って、感謝できねぇ~

補給くん号の被害は大きく、元の能力に戻す事は不可能だった。
一応修理とか、パーツ交換とか、無いものは他のパーツで代用したりしたが、相性やらが合わないようだ。
まあ、旗艦が無いと出航できないので、とりえずこれで我慢だ。
といっても、コレで戦闘に出てやられるのもいやなので、しばらくは戦闘はしないことにした。
それよりも、作成中である旗艦候補の補給戦艦を完成させようと思った。
ジークにやられた事で、装甲を厚くしようかなやんだが、やはりそのままにする事にした。
エンジン系統と出力も良いだろう。
俺はスピード重視だからな。
問題は武装。
ココでひとつ、俺はある研究をしていた。
このゲームには、ドルをつぎ込んで、研究というコマンドを実行できる。
これは、希望する武装パーツを、詳しくどういったものか書いて、予算を決めて、それをこのゲームを運営している「宇宙ネット」に提案するのだ。
それをゲーム審査員が、予算や武装の内容を検討し、提案をそのまま、或いはそれに準じるパーツを、作成可能にしてくれると言うわけだ。
もちろん、ゲームバランスが崩れる提案は、予算だけ没収されて受け入れられる事はない。
だから実現可能で、無理の無いところをうまく狙わないといけないのだ。
後はアイデア。
ちなみに俺が今研究しているのは、全方位発射可能な弾幕用砲塔群。
各方向をカバーする為に、いちいち武装していては艦船が重くなる。
それを解消するためのもの。
コレさえ完成すれば、防御力大幅上昇、スピード上昇、積載量も増えるし武装も可能。
こうして待っている時間も、研究時間としてゲームマスターが調整しているから、早く返事をくれと催促もできないのがじれったかった。
後はコレ待ちだな。
俺はそう思い、人型や戦闘機、補給機を作成していった。
かなりやられたから、沢山必要だった。
金が半分くらい減った。
さて、一段落して、俺はネット回線を切った。
ジークとの敗戦で、俺のハードでの欠点を見つけてしまった。
やはりマウスで選んでクリックしていては、反応が遅いし、数がある場合は指揮しきれない。
俺は秋葉原へと出かけた。
目的の物は、宇宙の絆用のコントローラと、タッチパネルディスプレイ。
コントローラは言うまでもない。
キー設定を色々して、ダイレクト命令を多く登録できる。
そしてタッチパネルディスプレイも、サブモニタとして使用でき、命令をクリックではなくタッチでできるから時間短縮になる。
更には艦内からの視点映像も見れて、臨場感抜群だ。
俺は久しぶりに重たい荷物を抱え、フラフラになりながら家に戻った。
早速セッティング。
タッチパネルディスプレイは正面に、今まで使っていたものは、その右側に少し斜めにして置いた。
さて、改めてネットにつないで動作確認。
うむ。
問題ない。
俺はタッチパネルとコントローラのダイレクト命令の設定をした。
沢山の命令をダイレクトに登録できるようになったので、俺はある細工をしておいた。
それに関しては後に語るが、命令の暗号化だとだけ言っておこう。
登録と設定は夜までかかった。

補給くん2号

次の日、NPCのAIを眺めていたら、NPCメカニックキャラの松島が、弾幕用砲塔群の完成を報告にきた。
しっかり説明を書いていたせいか、それともさほど強力では無いからか、思ったより研究費は安くあがった。
ふふふ、これで俺の旗艦が完成するかもしれない。
まずは弾幕用砲塔群パーツの説明を読む。
運用には艦長のレベルが結構必要だ。
まあでも、サイファには問題なし。
制作には、高いメカニックのレベルが必要で、失敗の可能性も有り。
値段は通常の弾幕用砲塔群パーツよりも若干高い程度だ。
後は設定方法など見たが、特に問題はなし。
ふむ。
俺は早速作成。
作成中は、やる事がないので別の事をしていたが、リアル時間で15分でできあがった。
さてとりあえず付けてみた。
おお~
って、見た目は今までとあまりかわらない。
特に重量負担もない。
後は実際にうまく動くかどうかだ。
俺はドックから出し、宇宙空間へと出した。
この領域では攻撃はできないが、テストはできる。
おれは正常に発射されるか試した。
うむ。
前、後ろ、右、左、上、下、自由自在だ。
俺は上機嫌でドックへと戻した。
さて、後は武器だが・・・
コレが問題だ。
俺は今まで攻撃をほとんどしたことがない。
だから攻撃武装の経験値が少ないのだ。
武器をつけたとたんに、この補給戦艦の能力は激減するはずだ。
とりあえず、ミサイルを武装してみた。
やはり、かなり下がってしまう。
取り外した。
同じ事を何度もやってると、徐々に機体を傷つけて、能力が下がる事がある。
同じ事はあまりできない。
どうするか。
結局補給くん号よりちょっぴり強いので我慢するのか。
いや、それでもかなり強いけど、せっかくこれほどの物が、ココまで順調にできたのだ。
俺は考えた。
と、ふと思いついた。
友達。
リアル友達が何人もこのゲームをしている。
まあ、真面目にやってる奴は2人しかいないが、ひとりは完璧な攻撃タイプ。
最近見かけないが、俺はそいつに電話をした。
 達也「もしもし、達也だけど。」
 正春「あーどした?」
 達也「絆やってるか?」
 正春「いや、ちょっと仕事忙しかったから、やってね。」
 達也「あれ?今日は仕事は?」
俺は今日が平日だと気がつき、疑問に思った。
 正春「ああ、やめた。俺も達也みたいにニートやるは。」
 達也「おいおい。それで絆するのか?」
 正春「これからはやりまくりだぜ!」
うむ。
なんとなく正春のやる気が伝わってきた。
達也「じゃあさ、ちょっと頼めねぇか?そっちに艦船1隻譲るから、それに武装して返してくれね?」
そうだ。
俺は武装部分だけ、得意な奴に頼む作戦にでたのだ。
って、普通にみんなやってる事だけどね。
 正春「ああ、いいよ。俺宛てに1ドルで売りにだしといて。」
 達也「おけ!」
電話を切ってから売りに出すと、すぐに正春が買いとった。
更にしばらくして、俺の期待の艦船は戻ってきた。
その時に、お礼に補給艦1隻と、制作可能になった弾幕用砲塔群をプレゼントした。
正確には、1ドルで売りに出して、買いとらせたわけだが。
するとすぐに、正春から電話がかかってきた。
 正春「ありがとう。これすげえな。俺もコレを元に旗艦作るぜ。」
 達也「もしかしたら俺のよりもつええのできるかもな。」
 正春「おう。じゃあまたゲーム内で。」
 達也「うい。あ、そうそう、俺、そろそろ軍を立ち上げるかもしれんから、そん時はきてくれ。賞金は30%で。」
 正春「ほう。とうとうやるか。まあそんときは。」
そう言って俺達は再び電話を切った。
さて、俺は期待の艦船を調べてみた。
驚きだ。
強すぎる。
攻撃はまあ、補給艦だけど一応ついていると言った感じだが、スピードがスゴイ。
結局ほとんど落ちる事なく、通常の高速戦艦よりも速い。
装甲は最低だが、弾幕は360度サポート。
そして補給艦としても最高レベル。
ほぼ理想どおりの補給戦艦が完成した。
 正春「よし!」
俺は早速旗艦の変更を行った。
名前はどうすべ・・・
俺は良い名前が思いつかず、結局「補給くん2号」にした。

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