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あんパンが食べたい

つまらない。
毎日がつまらない。
楽しい事なんて何もない。
それなのに生きている事が、自分自身不思議だ。
死ねない理由は二つ。
一つは両親が悲しむから。
それが無ければ、はっきり言って死んでも良いと思ってる。
だけど、自分で死ぬのは怖い。
これが二つ目の理由だ。
だから俺は死ねないでいるわけだけど、正直生きているとも言えない。
何故なら俺は毎日、何もせずに過ごしているから。
世間ではニートと俺の事を言うらしい。
ニート?
格好いいじゃないか。
横文字だよ、横文字。
そんな格好いいニートから、俺は今日脱退する事を強要された。
「もうすぐ二十歳なんだから、自立しやがれこんちくしょう!」
なんて母親に言われてしまったのだ。
あんなに泣いている母親を見たのは初めてだったから、俺は動揺した。
そして言ってしまったんだ。
「おう!出ていってやるよこんな家!バーカ!」って。
そして俺は家を出て、今久しぶりに外というか表を歩いている訳だ。
まあ2年ほど前までは、一応毎日学校に通っていたわけだから、道は覚えているし、社会ルールもおそらくわかる。
これだけわかれば、たぶん2日くらいは意地をはれるだろう。
さて、今日の夜を過ごす公園でも探そうか。
って、それよりも腹が減ってきた。
家を飛び出して既に6時間、何も食ってねぇー!
もうダメだ。
とりあえずそこのベンチに座ろう。
ああ、俺はこのまま死ぬんだろうか。
歩けないし腹減るし、目の前には小さな魔法使いがいるし、間違いなく死ぬな。
俺は横になって目をとじる。
はぁ~眠い。
 誰か?「おーい!あんさん、私が見えるのかね?今目が合ったよね?」
なんだろう?
すぐ近くで女の子の声が聞こえる。
もしかして死神って、女の子なのかな?
てか俺、日頃の行いいいから、きっと天使だな。
うー眠。
 誰か?「だから、あんさん、私は死神でもなければ、天使でもないのだよ。起きてみてください。」
なんだ?
死神でも天使でも無い?
じゃあ一体なんだよ。
今日の朝飯残したから、もったいないお化けでも出たか?
 誰か?「だから目をあけて私をみてよ!こんな可愛いお化けがいるわけ無いデソ!」
全く五月蠅いなぁ~
ベンチで横になっている俺は、しかたなく目をあけた。
すると俺の顔のすぐ前に、ミニスカートの小さい女の子。
てかいかにも魔女。
まあこの角度で見てると、小さなスカートの中が丸見えなわけで。
うーむ。
 宗司「白だな。」
俺は色を指摘した。
まあやっぱり下着は白が一番だと思うのは、俺だけだろうか。
 魔女?「うわぁ~!何?何が白いのよ!」
魔女っぽい小さい女の子は、後ろの空中に飛び退いて、そのままの場所でスカートを押さえていた。
どう見ても、飛んでるよな。
俺は眠い目をこすりながら起きあがり、空中に停止している魔女っぽい女の子を見る。
 魔女?「な、なに?」
 宗司「小さい。」
 魔女?「えっ!?」
そうなんだ。
女の子だから小さいのはわかるけど、明らかに俺のキャパを越えて小さいのだけれど。
キャパを越えているのに小さいって、なんだか言葉としてはおかしい気がするけれど、この場合、俺の理解を超えていると考えて欲しい。
まあとにかく、普通の人間にはあるまじき小ささだ。
 宗司「ふむ。」
俺はその魔女っぽい女の子のサイズを、指を使って計ってみる。
 魔女?「変なところはさわらないでね。」
少し照れているらしい魔女っぽい女の子が、とても可愛いのですが、テイクアウトしてもよろしいでしょうか?
サイズは約5cm、ジャンガリアンハムスターくらいですかね?
わからない。
こんな小さな女の子の生き物なんて、俺のスーパーコンピュータには未登録だ。
これはいかん。
ちゃんと登録しないと。
 宗司「なあ、君はなんて生き物?」
人間語が通用するかどうかは、先ほど何となく話したところでわかっている。
つまり通用するはずだ。
 魔女?「んー宇宙人?」
ふむ。
そうか。
だから空も飛べるんだ。
納得納得。
 宗司「じゃあ、名前は?」
 魔女?「それで納得するんだ?別にいいけど。名前は・・・みかん。」
んー、美味しそうには見えないけど、本人がみかんだと言うんだから、きっとそうなのだろう。
つうことは、これは宇宙みかんって事だな。
これはきっと、神が俺に与えたもうた今日の食料。
感謝していただこう。
俺は空を飛ぶ宇宙みかんをつかんだ。
 みかん「痛いいたいよー!はなしてー!」
これを食べる?
なんとなく罪悪感があるんだけど、きっとこれは鶏を食べるのと同じだ。
 宗司「あーん!」
俺は宇宙みかんを口に入れた。
 みかん「なにしとんじゃわれー!!」
ボフッ!
口の中で宇宙みかんが爆発して、口から飛び出してきた。
 宗司「あれ?俺は一体何をしてたんだ?」
なんだか寝ぼけていたようなんだけど、目が覚めたぞ?
 みかん「あのー?」
 宗司「うわーー!!お前なんだ?!」
 みかん「だから、みかんだって言ってるよ。」
 宗司「いや、どう見てもみかんじゃ無いし。」
さっきのは夢ではないようだ。
 みかん「だから、私はあなたがたの言葉で言うと、UMAとか未確認生物とか、そんな感じなわけよ。わかる?」
 宗司「まあ、見たこと無いし、未確認生物と言われればそうだけど、問題は何故俺に話かけてるんだって事だよ。」
そうそう、話しかけてきたのは、その、みかんだ。
だからきっと、みかんは俺に用があるに違いない。
 みかん「んー、用って言うか、私が見えるんだよね?」
そらさっきからつかんだり食べたりしてるわけだから、もちろん見えるだろう。
俺は頷く。
 みかん「だから、私のご主人様は、あなたに決定したわけなのさ。」
 宗司「ふむ。俺がご主人様か。では、これからは俺に仕える、そう考えていいのか?」
なにやら怪しいにおいがしてきたぞ。
ふっふっふ!
 みかん「仕えるって言うか、監視?かな。」
・・・
それは却下だな。
 宗司「監視禁止。何故にみかんに見張られにゃならんのだ?」
監視されるいわれはない。
 みかん「そうそう、渡すの忘れてたね。これこれ。」
みかんはそう言いながら、一冊のノートをとりだした。
って、そんなでかい物を何処からだしたんだ?
 みかん「ところであなた、名前なんて言うの?」
 宗司「尾北宗司だけど?」
新撰組の彼と同じ読みだけど、漢字は全く違う。
 みかん「ふむふむ。尾北宗司ね・・・」
みかんはそう言いながら、ノートの後ろに名前を書いた。
漢字を言ってないのに、すぐに書ける奴なんて初めて見た。
 宗司「なんで漢字がわかった?」
 みかん「ご主人様の心は読めるからね。」
だったら、俺に名前を聞く必要がどこにあったんだろう。
みかんは俺にそのノートを渡してくる。
俺は受け取る。
 みかん「契約成立ね。」
 宗司「何が契約成立なんだ?ノートなんか買わんぞ!」
 みかん「違うよ。お金じゃなく、未来を貰うから。」
未来?
どういう事だ?
 宗司「意味がわからんぞ!わかりやすく申せ!」
 みかん「そのノートに書いた事は、現実になる。それを達成したら、私にエナジーが供給されるわけなのさ。」
うーむ。
よくわからんが、昔漫画で読んだウイングマンのドリムノートみたいなもんか?
 宗司「じゃあココに、隣の五月蠅いババァ死ぬって書いたら死ぬのか?」
 みかん「死ぬね。」
もしかして、デスノート?
いや、そんなもの貰っても、俺は神にもなれないし、エルにも勝てないぞ?
しかし、この魔女ッ子が嘘を言っている可能性もある。
 宗司「試してみていいか?」
一応聞いてみる。
笑顔で頷く。
うむ、魔女ッ子のくせして微妙に可愛いじゃねぇか。
俺は書くためにノートを開く。
・・・
ペンが無い事に気がついた。
ドリムノートなら、ドリムペンがあったような・・・
 宗司「おい!ペンは無いのか?」
聞いてみた。
 みかん「仕方ないなぁ。今日だけだぞ。」
みかんはそう言うと、何処からともなくペンを取り出す。
百円ショップで、五本セットで売っているボールペンだ。
まあ、こんな安っぽいノートにはお似合いのペンだな。
俺は、ページの最初に、「あんパンが食べたい」と書いた。
別に何も起こらない。
 宗司「何もおこらんぞ?」
俺はみかんを睨む。
 みかん「それは、日記だよ?食べたいって書いても、食べたくなるだけなのさ。」
ふむ、なるほど。
そう言えば、別に何でもいいから食べたいと思っていた食べ物が、あんパンでなくては納得いかない気持ちになっている。
これは意地でもあんパンを食べるぞ。
今度は、「俺はあんパンを食べる」と書いた。
何もおこらない。
 宗司「どういう事だ?何もおこらないぞ?」
俺はみかんをこづく。
 みかん「痛いよもう。えっと、そのノートは、1ページで一回になってて、最初に書いてもあまり意味がないのさ。」
 宗司「そういう事は最初に言え!」
俺は再びノートの真ん中に、「俺はあんパンを食べる」と書いた。
すると少しして、あんパンを食べると書いたところまで、文字が埋めてゆく。
 宗司「なっ!なんだ?」
 みかん「あんパンを食べるまでの行動が出てきたね。それをその通り行動する事で、あんパンを食べる事が実行可能になるのさ。」
ややこしいノートだ。
 みかん「まあ何かの希望を叶える為には、それ相応の苦労が必要って事。でもやれば確実に叶うから、無駄な努力はしなくてすむのだ。」
なんだか偉そうに話すな。
まあいい。
少し面白そうだ。
 宗司「何々?公園を出た俺は、商店街に向かって歩く。商店街入り口で、転けそうになる老人をかばい自分が転ける。
    その時、自動販売機の下の100円をみつけ拾う。そのままコンビニに入りあんパンを購入。俺はあんパンを食べる。」
微妙な感じだが、何か良いことをしろって事だろうか?
まあいい、俺はあんパンが食べたいのだ。
やるしかないだろう。
俺は公園を出て商店街を目指した。
後ろからみかんが飛んでついてきていたが、まあほうっておこう。
商店街が見えてきた。
さて、老人はどこだろう?
いないな。
まあいい。
どこかにきっと隠れてるんだろう。
俺はかまわず歩く。
すると商店街入り口のところの建物から、老人がでてきた。
そしてすぐ転けそうになる。
 宗司「あっ!危ない!」
俺のからだは勝手に反応していた。
・・・
老人は転ける事なく、そのままスタスタ歩いていった。
なんだ?助けるんじゃないのか?
 みかん「ちゃんと助かったよ。宗司がいなかったら、きっと転けてたのだ。」
ふーん、そうなんだ。
 宗司「おっ!100円落ちてる!ラッキー!!って、ノートに書いてあったとおりじゃん。」
俺は100円を拾って立ち上がった。
 みかん「後はコンビニに入って、あんパンを買うだけだね。」
なんだか、微妙なノートだけど、一応ノートに書いた事が本当になるんだな。
 宗司「ちなみに、この100円を警察に届けたらどうなるんだ?」
まあ、きっとあんパンは食べられないんだろうけど。
 みかん「日記どおりに行動出来なかった場合、基本的にはその後の事は無効だね。でも、先に望みを叶える場合もあるから、その場合はつらい事が強制されるよ。」
なるほど。
って事は、最初にあまり大きな事を書いてはいけないって事だな。
グー・・・お腹が鳴った。
やたらとあんパンが食べたくなってきた。
 宗司「くっ!あんパンが恋しくなってきた。」
俺はすぐ近くにあったコンビニに入った。
あんパンを探す。
あった。
俺はあんパンを一つつかんで、レジにもっていった。
あんパンと一緒に、さっき拾った100円を出す。
 レジの人「このままでよろしいですか?」
いちいち五月蠅い奴だ。
そんな事は聞かずに勝手にやってくれ。
 宗司「ああ、このままでよろしいですよ。」
ほら、日本語が変になってしまったじゃないか。
俺は今すぐ食いたいんだよ。
あんパンの袋にシールをはられ、そのまま差し出された。
なんだかあんパンが、超豪華料理に見えてくるんですが。
俺は大事にあんパンを手に取ると、コンビニを出た。
外では魔女ッ子みかんが空中で待っていた。
 みかん「後は食べるだけなのさ。」
・・・
 宗司「やらんぞ!」
 みかん「ふ、ふん!いらないモン。」
俺は袋を開けて、あんパンにかじりついた。
 宗司「う、う、うんめぇ~!ホントはみかんも食いたいんだろ?」
 みかん「うー・・・」
なんだこの美味さは。
味を説明したら、パンとゴマとあんこの味なんだけど、メチャメチャ美味しい。
もしかして、これがいつも我が母君が言っているあれなのだろうか?
「自分で稼いだお金で飯食べやがれ!」って、いつも言ってるもんな。
この感動を俺に知ってもらう為に、あんな憎まれ口を・・・
ありがとう、母さん。
 みかん「あのぉ~。感動中悪いんですけど~、私にも少しくれませんか?」
みかんがあんパンを食いたいと?
さっきいらないとか言っていたような気もするが、今俺は母の愛に感動している。
苦しゅうないぞ。
それに上目遣いのみかんが、微妙に可愛いから、俺はあんパンを目の前の魔女ッ子につきだした。
 宗司「ほら、食えよ。」
 みかん「わーい!」
みかんは子供のようにあんパンにかぶりつく。
まあ、子供だから子供のようで当然なんだけどな。
顔にいっぱいあんこをつけて食べる姿が可愛い。
うむうむ、なんだか泣けてきた。
ん?なんだ?
俺はふと周りを見た。
 通りすがりのおばちゃん「さっきからあんパンに話かけてるのよ。」
 立ち止まるおばちゃん「可哀相に。まだ若いのに。」
 犬「く~ん・・・」
なんだ?どうした?
俺があんパンに話しかけてる?
 通りすがらなかったおばちゃん「それにさっき、みかんも食べたいって。」
 立ち止まりまくるおばちゃん「そうとう悲しい食生活なのね。」
 犬「く~ん・・・」
もしかして、この魔女ッ子が見えない?
あら、そう言えばさっき公園で、私が見えるからご主人様とかなんとか言ってたような。
俺は、あんパンを食べるみかんに顔を近づける。
 宗司「おい、お前って、他の人からは見えないんだっけ?」
俺はできるだけ小さな声で聞いた。
 みかん「う、うん。じぇんじぇん見えないよ。全く見えないよ。しかも触る事も感じる事も無いよ。」
てことは、こいつと人前で喋ると、俺は危ない人になってしまうって事か?
 通り過ぎようとしていたけど、止まったおばちゃん「あら、今度はあんパンにささやいてるよ。」
 座り込むおばちゃん「愛の告白の練習でもしてるのかしら?」
 犬「く~ん・・・」
てか、犬の鳴き声は、何か意味があるのか?
とにかくこのままではやばい。
戦線離脱だ。
 宗司「うおーーーーー!!!!」
 みかん「きゃあぁ!急にどうしたのさ!」
俺は風になった。
とにかく商店街から離れた。
戻ってきてた、公園に。
 宗司「ふぅ~!」
俺はさっき座っていたベンチに再び座る。
 みかん「つか、どうしたのさ?急に走り出して。」
んー・・・どうしたんだろう?
 宗司「俺とお前が話してるところを、他の人が見たら、どう思うと思う?」
さっきのおばちゃん達は、独り言を喋る変な青年とでも思っていたように見えたが。
 みかん「んー。嫌らしい目で、可愛い女の子をくどくおっさん?」
そんな風に見られるのか?
それはひどい。
 宗司「でも、お前の事、他の人は見えないんだよな。」
 みかん「だね。」
良かった~
最悪の結論だけは免れた。
 宗司「じゃあ、あんパンに話しかける可哀相な人に見えるって事か?」
 みかん「あー!あんパンもっとちょうだい!」
俺は手に持ったままの、半分くらいになってるあんパンを差し出した。
みかんは再び美味しそうに食べ始めた。
ふむ。
なんかどうでも良くなってきた。
とりあえず、こいつと話す時は、誰かの視線を気にする事にしよう。
俺は残りのあんパンを、みかんと一緒に食べた。
なんで俺、こんな不思議な奴と普通に馴染んでるんだ?なんて思いもしたが、まあ可愛いしいいか。
結局夜10時には家に帰った。
両親には軽く嫌みを言われたが、今日は機嫌が良かったから、別になんとも思わなかった。
むしろニヤニヤしている俺を見て、両親が不快な気持ちになったようで、嫌みも軽かった。
日付が変わる頃、みかんと一緒に布団に入って寝た。
もちろん抱きしめて。
 みかん「んなわけあるかぁ!!適当に机の上にポイッとかしやがって、怒畜生だよ!」
勝手に俺の心の日記、読まないでくれる?

100万円拾う

俺はニートだ!
だから、今日が何月何日で、何曜日かもわからない。
まあ、毎日が日曜日ってやつ?
いやー愉快愉快。
 みかん「なー。日記になんか書いてよー。でないと私のエナジーたまらないんだけどさ。」
寝ればこの小さな魔女ッ子も、夢だったって感じでいなくなるかと思いきや、ちゃっかし机の上にいた。
まあ、この魔女ッ子は嫌いではないし、別にいても差し支えない。
少し、エロビデオを鑑賞する時に恥ずかしいような気がするだけだ。
食費も俺の飯の1/10000程度を与えてやるだけで事足りる。
問題は、このノートに日記を書くって事だ。
俺はノートを見つめる。
ただのノートだ。
とても何らかの力が備わっているとは思えない。
しかし昨日の事が夢でないなら、このノートは結構凄いノートだ。
ドリムノートやデスノートには負けるけど、ある意味俺好みかも。
 宗司「なあ、これに100万円拾ったって書いたら、俺は拾うんだよな?」
 みかん「うん。拾うよ。」
 宗司「だったら俺、簡単に金持ちになるんじゃね?」
多少何か試練があったとしても、おそらくできない事なんて要求してこないでしょ?
 みかん「簡単かどうかは、書き方によるのさ。たとえばページの最初に書いても、それは自力で探すしかなくなる。」
 宗司「ああ、それは昨日のでわかるよ。」
 みかん「もし、最後に書いたら、詳細が事細かに書かれて、最後にそれが達成される。でも、沢山の事をしなければならないかもしれない。」
なるほど。
 宗司「だったら、真ん中くらいに書けば、要求も少なく、やることも、ある程度具体的にわかって良いって事かな?」
 みかん「まあ、書いてみたらわかるけど、書いた事の後に行動が書かれる事もあるのさ。」
ふむ。
とにかく使って試せって事か。
面倒くさいけど、面白そうではあるし、まあ、使ってやるか。
 宗司「よし、それならちょっと書いてみよう。」
 みかん「いやっほ~い!!」
みかんが机の上で踊っている。
くっ!ちょっと可愛い。
俺はなんとなくノートに書いた。
ページの真ん中に、「100万円拾った」と・・・
少しすると、ページに文字が書かれてゆく。
これを見るのは二度目だけど、昨日見た時より不思議な感じだ。
昨日は半分寝ていたような気分だったからな。
今日はさっき起きて、朝昼兼用の飯を食ったばかり。
どうやら書き終わったようだ。
読んでみる。
「俺は散歩に出た。昨日行った公園に行きたくなったからだ。天気はとても良い。緑の葉っぱが必至に光合成しているようだ。」
・・・
なんだこれは?
無駄な事がやたらと書いてあるように見えるけど?
ああ、空白を無理矢理埋めているのか。
再び続きを読む。
「すれ違う犬、昨日見た犬。ああ犬。くーん!」
て、ホントに無駄だな。
「もうすぐ公園だ。見えてきた。公園だ。公園についたんだ!俺はやったぞ!!冒険は終わった。その時!!!!ダダダン!!」
・・・
もうやめようかな。
「昨日のベンチの上に、鞄が置いてあるのに気がつく。俺は走ってかけより、鞄をつかみ、懐に抱き寄せる。辺りを見回し、誰もいない事を確認。中身を確認した。」
おお、これが100万円か?
「猫だ・・・猫が入っていた・・・」
おいおい、なんだよ。
サクッとゲットさせてくれ。
「ん?鞄の底、猫の下に敷き詰められた紙、万札じゃね?俺は紙を全て鞄から出す。もちろん猫はそのままだ。」
ああ、面倒くせー!
「札の数は丁度100枚。100万円拾ったようだ。」
おおすげえ!!
「しかし俺は、こんなお金を今までに持った事がない。怖くなった。つーか、拾ったら警察に届けないと。」
なんだ?続き?
しかも警察に届けるだぁ?
俺はなんてチキンなんだ。
持っていくんじゃない!!
「鞄にお金を戻すと、俺は交番を目指す。交番の前まできた。俺の認識では、交番は怖い所だ。チキンな俺は、交番の前に鞄を置くと、家まで走って逃げ帰った。」
・・・
これじゃあ、結局100万円はもらえないじゃん。
 宗司「おい、これ行動しても、何も意味無いような気がするんだけど?」
 みかん「書いた事は実現するのだ。」
 宗司「でも、無駄足じゃん?疲れるだけじゃん?」
 みかん「私にエナジーが入ればそれでいいのさ。」
・・・
寝よう。
俺は横になった。
 みかん「ああ、そう言わずにさ、行こうよ公園。私いきたいなぁ。」
みかんが近くにきて、目をウルウルさせている。
くっ!なんだか昨日の公園に行きたくなってきた。
つーか、一応100万円拾うんだよな。
その後うまくやれば、貰えるなんて事も。
てか、ちゃんと交番に届ければ20%まで要求できるとか聞いた事あるぞ?
 宗司「ああ!わかった。わかったから。」
 みかん「わーい!」
むむむ、なんて可愛いのだ。
反則ですな。
俺は起きあがると、みかんを肩に乗せて家を出た。
飛べるから、肩に乗せなくても良いような気もするけど、なんかこの方が、俺がかっこよく見えない?
 宗司「ああー天気いいなぁー」
いい季候だ。
春か秋か。
ああ、あそこの葉っぱが必至に光合成してるから、今は春から夏に向かってるところか。
 犬「くーん!」
・・・昨日の犬だな。
尻尾振ってやがるよ。
犬だからな。
 宗司「バイバイ犬!」
俺は犬とすれ違う。
さて、もうすぐ公園だ。
見えてきた。
ふふふ、もうすぐ公園だぜ!
 宗司「よっしゃー公園だぁ!!」
・・・って、なんで俺はこんなに喜んでいるんだ?
って
 宗司「うわ!マジでベンチの上に鞄が置いてあるよ!」
 みかん「ココまで順調だね。」
 宗司「そんな落ち着いてる場合かよ!」
俺は慌ててベンチに駆け寄り、鞄を胸元に抱き寄せた。
周りを警戒したが、誰もいない。
 鞄「ニャーニャー!」
 宗司「にゃーにゃーだと?ああ、そういや猫が入ってるんだっけ?」
俺は鞄を開けた。
猫がいた。
ちょっとむかつく顔してやがるな。
まあいい。
金金っと。
 宗司「おおおおお!!!マジで一万円だぁ!!!!」
っとっとっと。
やばいやばい興奮してきた。
ん?
俺はココで、数を数える事になっているはずだ。
そして鞄に入っているのは、合計100万円である事を知るんだ。
 宗司「みかんよ。ココで俺が100万円数えなかったらどうなるんだ?」
もし、後の事が無効になるなら、俺は100万円ゲットのチャンスを得る事になる。
 みかん「それ以降は無効だね。でもそれをすると、それ相応の試練が来るか、結局はメリット無しの状況になるはずだよ。」
うーむ試練か。
しかし100万円だぜ?
多少の試練は受けて立とうじゃないか。
 宗司「俺はこれを持って帰る!」
 みかん「たぶん無駄に終わると思うのさ。」
 宗司「俺は永遠のチャレンジャーなのだ!」
 みかん「ニートなのにチャレンジャーね。」
 宗司「うおーー!!!!!」
俺は家に向かって走り出した。
 誰か女「きゃあ!!」
・・・
 宗司「いててて・・・」
いきなり誰かにぶつかった。
誰だよ全く。
俺は、いつの間にかとじていた目を開ける。
ん?この光景は・・・白だ・・・
 誰か女「何処見てますの?」
おっと、素晴らしい物が見えていたから、つい見とれてしまった。
俺はその白いものから視線をあげた。
んー、時給1200円くらいかな。
少しきつそうな目してるけど、概ね可愛い女の子に見える。
頭も良さそうだし、覚えるのも早そうだ。
 宗司「仕事覚えたら、時給1250円にするよ。」
 誰か女「はあ?何言ってますの?」
女はそう言うと、自力で立ち上がって、スカートについた砂をはらった。
残念。
俺も立ち上がった。
すると女は、俺の抱えている鞄を見た。
 宗司「しまっ・・・」
俺は言いかけて、鞄を後ろに回す。
 誰か女「ああ、その鞄、届けてくださったの?」
 宗司「いえ、猫なんて入ってませんよ。」
 鞄「ニャーニャー」
鳴くんじゃありませんとの事よ。
 誰か女「ありがとうございます。忘れ物を届けてくださって。」
 宗司「いえいえ、そういう訳では。」
 みかん「もう無駄だって。」
 宗司「うるさい!」
 誰か女「お、お礼を言っているのに、五月蠅いってどういう事ですの?!」
ココで逃げるか?
 みかん「逃げたら犯罪だよ。」
 宗司「くっ!」
俺は諦めた。
 宗司「いえいえ、さっきから猫が五月蠅いなぁって。はい、鞄、お返しします。」
 誰か女「ええ、ありがとう。」
女は差し出した鞄を受け取ると、少し重そうに顔をゆがめて一瞥をくれた後、何事も無かったかのように、鞄を持って去っていった。
結局無駄骨かい。
 みかん「そうでもないよ。服、胸の辺り見てみるのさ。」
 宗司「ん?」
服に、なんか臭い物が、うんこが、ついていた。
無駄骨ってか、踏んだり蹴ったり?
 みかん「そのノートは、善意には易しく、悪意に厳しいのさ。」
・・・そういう事は、早く言って・・・
 みかん「素直に交番に届ければ良かったのに・・・」
俺はトボトボと我が家に向かった。

みかんの友達

みかんが俺を睨んでいる。
これは俺に、ノート使えという無言の圧力だ。
昼過ぎに起きて飯を食った後、部屋に戻ってから10分、ずっとこの状況が続いている。
 宗司「はぁ~。今日もなんか書いてみるか。」
 みかん「宗司最後ーー!!!」
それを言うなら最高でしょ?
それともホントに最後なのか?
死ぬのか俺?
そう言えば、2日前まで俺は死にたいと思っていたんだよな。
でもなんだろう。
今はそんな気が全くしない。
 宗司「みかん?」
 みかん「うーん。早く~!書いて書いて~!」
・・・
可愛い。
こいつのおかげかな?
なんだか死ぬのが惜しくなってきたような気がする。
よし、ノート書くか。
で、何を書く?
欲望のままに書いても、それはどうせ達成されない気がする。
些細な事を書くか?
些細な事なら、自分で普通にできるよな。
てか、善意に優しく、悪意に厳しいとか言ってたな。
ココは自分の為じゃなく、誰かの為に使うってのがいいのかも。
でもさ、俺友達いないじゃん?
ニートじゃん?
そんな事言っても、誰にも俺の善意を与えられないじゃないか。
ふと、俺の目に入るのは、小さな魔女ッ子みかん。
 宗司「おまえさ、何か欲しい物とか望みとかあるか?」
俺はみかんに聞いてみた。
 みかん「望み?んー、エナジーくれ!」
ノートを書いてくれれば良いって事か?
それだとなんにもならないんだけど。
 宗司「それ以外だと?」
 みかん「遊ぼう!!」
・・・子供だ・・・
あっ!そうか。
よく考えたら、こいつはどう見ても子供。
まあ、このまま人間サイズになったら、子供ってよりも、中学生くらいの容姿っぽいけど、子供に必要なのは友達じゃないだろうか?
 宗司「お前、仲間とかっているのか?」
 みかん「仲間?」
 宗司「ああ、お前と同じ、ちっこい魔女ッ子がいるのかと聞いている。」
 みかん「んー。いるんじゃないかな?見たことないけど。」
ほう、いるのか。
でも見たことが無い?
 宗司「見たことないのに、どうしているってわかるんだ?」
 みかん「この星にいるかどうかはわからないけど、いるのは確かなのさ。で、おそらくはこの星にも、いる確率はそこそこあるのだ。」
 宗司「ふむ。じゃあ、誰かと一緒にこの星に来たわけではないのか。でもおそらくいるだろうと。」
 みかん「うん。」
 宗司「じゃあ、ココに魔女ッ子に会うって書いたら、会えるのか?そしてみかんと友達になったって書いたら、友達になれるのか?」
やっぱり、友達って大切だよね。
俺友達いないから、凄く欲しいモン。
なんでも話せる友達が。
できれば女の子がいいけど。
 みかん「宗司優しいのだ・・・」
みかんは目に涙を浮かべて感動していた。
しかし・・・
 みかん「でも、無理だと思うのさ・・・」
みかんの顔はすぐに悲しそうな顔になった。
 宗司「どうしてだ?ノートに書いたら、実現されるんだろ?」
悲しそうな顔を見ていたら、こっちも悲しくなってきた。
 みかん「そうなんだけど、この星にいないと流石に無理なのさ。」
 宗司「さっきいるっていったじゃん?」
いるって言ったのにいない?
どういう事だ?
 みかん「おそらくいるけど、出会う事のできる魔女ッ子がいないのさ。」
こいつ、自分で魔女ッ子って言ってやがる。
ふふふ。
って、それはどうでもいいんだけど。
 宗司「どうしてだ?」
いるのに会えない。
なんか悲しくなるだろが。
 みかん「んー。一言で言うと、ノートを持つ人間同士が干渉しあえないように、魔女ッ子同士ではお互いが見えなくなるの。もちろん人間の方からも。」
なるほど。
こんなノートを持つ奴が集まったら、何しでかすかわからないとでも言うのだろうか。
確かに、今俺一人だから何していいか思いつかないけど、沢山集まれば何かとんでもないことができてしまうかもしれない。
ん?まてよ。
でも、俺はこいつにノートを貰う前に出会ったわけで、もう一人同じように見えれば、そいつも俺の魔女ッ子になるんじゃ?
 宗司「ご主人様が決まってない魔女ッ子に会っても見えないのか?」
 みかん「ううん。見えるよ。でももう何日も経ってるし、ご主人様をみつけてない魔女ッ子なんて、いないと思う。」
見込みはほとんどないって事か。
でも、ゼロではないんだよな。
 宗司「試してみて、いいか?」
おれは一応聞いてみた。
 みかん「そんな事する人って、いるんだね。ご主人様の過去の歴史の中で、そんな事する人見たことないのだ。」
 宗司「おお!俺って史上最初の人間になるのか。なんかかっけぇー!」
俺はノートに書き始めた。
魔女ッ子がいれば、見つけるのに、たいして手数が必要な気がしない。
それにこれは善意だ。
と思う。
俺はノートの二行目に、「俺はみかん以外の魔女ッ子に出会った」と書いた。
 みかん「きっと、出会ったの後に、気分をあじわったとか書かれちゃうのさ。」
なるほど。
無理な事を書いた時は、そんなふうにかわされるのか。
文字が書かれ始めた。
一行だけだったので、すぐにその行為は終わった。
なになに、「今日も俺は散歩に出る。すると公園で」書かれていたのはこれだけ。
その後に、俺が書いた、「俺はみかん以外の魔女ッ子に出会った」があるだけ。
 みかん「えっ!?もしかして、まだ本当にご主人様が決まっていない魔女ッ子がいるの?てか、こんなに近くに?」
みかんが驚いている。
これはそうとう珍しい事なのだろう。
ってか、俺が初めてこんな事を書いたんだから、珍しいどころか初めてなんだろうけど。
 宗司「まあ、そういう事だ。とりあえず公園、行ってみるか。」
俺は少しフリーズ状態のみかんを肩に乗せると、家を出た。
今日は犬とすれ違う事もなく、すぐに公園についた。
パッと見、魔女ッ子らしい姿はない。
 宗司「小さいからな。」
俺はちょっと不安そうなみかんの頭を指でなでた。
みかんはちょっと嬉しそうにしていた。
ベンチまで来た。
しかし魔女ッ子らしい姿は見えない。
 みかん「やっぱり、何かの間違いだったのかなぁ~」
少し、いやかなり、みかんは残念そうな顔をしていた。
 宗司「そうあわてなさんな。ココで会うことになってるんだから、少し待ってみるべ。」
俺はベンチに座って、背もたれに体をあずけて上を見る。
ポコッ!
白だ。
何かが上から落ちてきた。
そして顔に乗っかった。
おそらく、ベンチの上まで張り出している枝から落ちてきたのだろう。
もちろん、鳥の糞が落ちてきたわけではない。
なんせドキドキワクワクな白が見えたのだから。
 魔女ッ子「あれ?どうしたんだろ?この人、私を通り抜けないよ?もしかして、ご主人様?」
ちょっと喜んでいるようだ。
良かった良かった。
でも、先に顔からおりてくれないかな?
ずっと白いのが見えてるんですけど。
 みかん「・・・」
 宗司「どうしたみかん。お前にも見えるのか?」
 魔女ッ子「ええっ!もしかして、この方は、既に所有者になっちゃってる?」
俺の顔の上で立つ魔女ッ子の前に、みかんが立つ。
ってか、俺の顔の上で、なにしてんだこの野郎。
野郎じゃないな、白いのが二つ見えるもんな。
 みかん「うん。こいつは私のなのさ。」
いや、別にみかんの持ち物になった覚えは無いぞ?
 魔女ッ子「うーん。譲ってくれる気は?」
なんと、譲る事とかもできるんだ。
ってか、二人とも俺が面倒みる事はできないのか?
 みかん「譲るなんて、できないのさ。」
 魔女ッ子「だよね・・・」
魔女ッ子は俺の顔の上で、ガックリと座り込む。
白いのが見えなくなった。
 宗司「てか、いつまでチミ達は、俺の顔の上にいるのかね?」
俺は二人を捕まえる。
 みかん「うわぁぁ!!」
 魔女ッ子「きゃー!な、何を?」
暴れる二人を、二人?
まあいいや、二人をベンチの上に置いた。
二人とも、ちょこんと座ってこっちを見ていた。
・・・
可愛いよな。
俺はオタクではないけど、美少女フィギュアを集める方々の気持ちが、少し分かった気がした。
 宗司「お前達、今日から友達な。」
俺は二人を、交互に指さす。
 みかん「んー。ロボダッチ?」
 宗司「いや、全然違うし。しかもなんでそんな古いもの知ってるんだ?」
 魔女ッ子「あっ!勉強ロボ!」
 宗司「ああいたね。って、お前もなんでそんなの知ってるんだ!?」
俺のツッコミは無視して、みかんと魔女ッ子は見つめ合っていた。
 みかん「よろしくなのさ。」
 魔女ッ子「うん。こちらこそ。」
うんうん、良かった良かった。

俺は、両肩に両魔女ッ子を乗せて、家路に向かっていた。
 宗司「で、お前名前は?ああ、俺は尾北宗司だ。」
 みかん「ああ!名前言っちゃった!」
どういう事だ?
 宗司「名前言っちゃダメなのか?」
 みかん「契約を成立させるには、名前を聞き出して、それをノートに書く事なんだよ!」
 宗司「じゃあ二人とも俺に仕えればいいじゃないか。」
 みかん「ダメだよ。後から契約されちゃうと、先の人が追い出されるのさ。きっと・・・」
・・・
きっとってのは、過去に実例がないからって事なんだろうけど。
 魔女ッ子「そんな事しないよ。だって友達でしょ。」
魔女ッ子はニッコリと笑った。
 みかん「うん。ありがとう。」
んー、俺としては、この子でも全く問題ないんだけどな。
 みかん「うわーん。今、宗司が私を捨てようと考えたよー!」
 宗司「いや、そんな事しないって、大丈夫だから、大丈夫。」
 みかん「ほ、ほんと?」
 宗司「ああ、この目を見てみろ?な?」
・・・
今一信じられないか?
でも俺はみかんを捨てる気はないけどな。
みかんの顔が笑顔になった。
 みかん「わーい!」
みかんが俺の顔に抱きついてきた。
 宗司「顔に張り付くな。全く・・・」
通りすがりのおばさんの顔が、不信感いっぱいだ。
やばい。
俺は顔のみかんを引き剥がすと、元の肩にのせて、黙って歩いた。
 魔女ッ子「私は、ゆずっていいます。ヨロシクです。」
さっきの質問の答えだ。
 みかん「あれ?名前教えても大丈夫だったっけ?」
 ゆず「そう言えば、前例がないね。」
 みかん「やっぱり私、追い出されちゃうのかな?うう・・・」
 宗司「ああ!大丈夫だって。捨てたりしないし。」
俺はなんだかとても楽しかった。
数日前からは考えられないくらい、充実した時間をすごしている気がした。
だが、この後とんでもない事に巻き込まれる事になる。
この時の俺には、気づくよしもなかった。

ゆずの契約者と住まい

今日は朝っぱらから騒がしい。
昨日友達ができたからって、みかん、騒ぎすぎ。
この声も別に近所に聞こえているわけではないから、近所迷惑にはならないけど、俺迷惑だ。
ゆずも、みかんほどではないにしても、かなりはしゃいでいる。
まあ、話を聞いたところによると、みかんよりも早い時期から、地球にいたらしい。
どこから来たのかは、全くわからないけど。
まだ、あの萌え系芸能人が言ってるコリン星の方が信じられる。
みかん達の話によれば、宇宙は無限にあって、それは宇宙の中に存在する。
俺の体の細胞の一つ一つにも宇宙があるとか。
でまあ、地球に住む誰かの中の宇宙から来たらしいんだけど、理解もできないのに、信じられるかっての。
それでもこの二人の存在を、普通に受け入れてるんだけどね。
 みかん「へぇー!犬の中の宇宙から来たんだ。」
 ゆず「そうなんだ。結構田舎の宇宙だけど、気楽で良いよ。」
意味がわからない。
つーか五月蠅い。
 宗司「はぁ~」
俺はため息がでた。
朝から幸せが一つ逃げてしまっただろが。
俺は仕方なく布団からでた。
今日はもう、これ以上眠れないだろう。
 みかん「あれ?宗司今日は起きるのが早いのさ。」
 ゆず「宗司さん、おはようです。もしかして起こしちゃった?」
うーん。
やっぱりみかんを捨てて、ゆずに乗り換えた方が、俺の為ではなかろうか。
 みかん「あー!また宗司がひどいこと考えてるー!うわーん!」
 宗司「あっ!大丈夫だって。考えてるだけで実行しないから。」
 みかん「わーん!やっぱり考えてるんだぁー!」
てか、この可愛いのを捨てられるわけないだろが。
全く・・・
 みかん「あ・・・可愛い?てへへ・・・」
てか、本当に心読まれてるな。
しかも100%だ。
まあ別に読まれて困る思考はないけど。
 宗司「よし、それじゃ、せっかく早起きしたし、朝飯食いにいくぞ!」
俺は自室を出て、居間に向かった。
居間に入ると、両親が朝の食事をしていた。
 母上「どうしたの宗司、こんなに早く起きて。飯なんか用意してないよ。」
 父上「かあさん、それは可哀相だろう。パンの耳くらいやったらどうだ?」
 母上「甘やかしたらダメなの。息子がニートだなんて、私恥ずかしくて言えない・・・」
 父上「確かにな。よし、自立してもらうために、今日から小遣いも無しだ!」
 母上「良い考えね。じゃあそのお金で、私に何か買って。」
 父上「よしよし、うまい棒か、チロルチョコか、それともチュッパチャップスか?」
 母上「ああん。うれしいーーー!!」
俺は、無言で居間から出た。
もうこの家には、俺の居場所はないのだと悟った。
自室に戻った俺は、ひとまず空腹は我慢して、今日もノートを使う事にした。
 みかん「ねね、今日は何書くのさ?」
 ゆず「いいなぁー。私も早くご主人様を見つけたい。」
 宗司「うん。それだ!なあみかん、1ページに二つ同時に書く事は可能か?」
俺は今日かなえたい事が二つある。
無理なら一つは明日でも良いのだけれど、善意と欲望を同時に書いた方が、叶いやすそうだから。
 みかん「書けるよ。でも、話の流れに無理があったりしたら、うまくいかないよ。」
 宗司「そっか。」
俺はみかんの返事を聞いて、ノートに未来日記を書き始めた。
まずはページの真ん中に、「ゆずのご主人様が見つかった。良かった。」と。
 ゆず「うわぁ。あ、ありがとう。」
ゆずの目に少し光るものがあった。
俺は続けてページの最後に未来を記す。
「ココが俺の新たな生活の場所だ。両親の元を離れて生活するのははじめてだけど、頑張って生きてゆこう。」
そう書いた。
 みかん「ココから出たいの?」
みかんがあどけない顔で聞いてきた。
 宗司「別にココが嫌なわけじゃないけど、両親にずっと迷惑かけられないからな。」
 ゆず「おお、えらいです!自立するわけだね。」
 みかん「朝飯食わせてもらえなかったから、すねてるだけだけどね。」
心読むのやめてよね。
ノートを見ると、今日の日記が書き上がってゆく。
果たして、うまくいきそうな物が書かれるのだろうか。
書き上がった。
「俺は家に戻るつもりはなかった。だからなるべく遠くに行こう、そう思って駅を目指す。名残惜しむように街を見て歩く。歩いていて気がついた。
 俺は働かないと独り立ちできないのではと。なら、住み込みで働ける所を探そう。キョロキョロとしながら歩いていると、死の交差点に来た。
 ココは、見通しが悪くてよく事故がおきる交差点だ。そんな事を考えていたら、うしろから何かがぶつかってきた。俺は前方、道路へと飛ばされた。
 ココは道路の真ん中で、車がすぐ近くまで来ていた。気がついたら、俺はどこかの部屋で寝ていた。横には心配そうに俺をみる女の子。
 ゆずがその女の子の肩に座っていた。ああ、ゆずのご主人様が見つかった。良かった。」
ふむ。
なかなか凄い展開だな。
俺はこれからあの交差点に行って、何かにぶつけられて道路に放り出され、車にひかれると。
おいおい、そんな事知ってて、そのとうりにするのって、メチャクチャ怖くないか?
死なないとわかっていても、ジェットコースターが怖いような感じ?
いや、それ以上にこわいだろう。
つーか、絶対痛いだろうし。
とりあえず続きを読もう。
「安心して、再び俺は眠りにつく。目が覚めた時、既に外は暗くなっているようだった。部屋の明かりがまぶしい。つーかシャンデリア?やたら高そうなやつ。
 俺が体を起こすと、みかんが俺の胸の辺りから、膝の上に落ちた。良かったーなんていって泣いていた。どうやら心配してくれていたようだ。ちょっと嬉しい。
 少し落ち着き、部屋を見渡した。なんだかやけに豪華な部屋だ。部屋にさっき見た女の子が入ってきた。話を聞くと、どうやら俺は、車にはねられたらしい。
 この子がぶつかって来たのが原因だ。女の子は、俺の事を命の恩人だといった。俺にぶつからなかったら、死んでたと。そして是非お礼がしたいと。
 ココにおいてほしいって言ったら、あっさり了解された。ココが俺の新たな生活の場所だ。両親の元を離れて生活するのははじめてだけど、頑張って生きてゆこう。」
ほう。
二つがつながる形でうまく達成されている。
いや、かなり強引だけど。
割と簡単な感じがするけど、こんなんで本当に住まわせてもらえるのだろうか?
辛いのはやはり車にひかれる事か。
怖いよー!
まあそうも言ってられないので、俺は必要な物を持って家を出た。
車にひかれるから、壊れそうな物はもたない。
ためていた少しのお金とか財布とか。
携帯電話は置いていくか。
親に、解約するように書いて、机の上に置いておいた。