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前書き

「コミュニケーション」という言葉を辞書で調べると「社会生活を営む人間が
互いに意思や感情、思考を伝達し合うこと。」と出ています。
意思を伝達し合う、という事は当然、発信と受信があって成立します。

相手と上手くコミュニケーションを図るために、会話術や話し方の本、
「話し方」教室はよく見かけます。
ですが意外と話の「聴き方」に付いて書かれている本や教室は、
みたり聞いたりした事が無いと思います。

コミュニケーションというと「話し方」や「表現の仕方」がメインのように
思われがちですが、実は話の「聴き方」もコミュニケーションを語る上で
とても大切なんだという事に、心理カウンセリングを学ぶ事で気付く事が出来ました。

あなたは普段、どんな風に話を「聴いて」いますか?

この冊子では「話の聴き方」をテーマに、心理カウンセリングの技法を用いて
あなた自身のコミュニケーションが変わって行けるお手伝いをいたします。

話の「聴き方」が変わると、コミュニケーションが変わります。
あなたの話の聴き方次第で、あなた自身が変わるだけでなく、周りの人達も変わって来ます。
話が聴ければ、発する言葉が変わり、行動が変わり、あなた自身が変わり、やがてあなたの
周りに居る方々も変わって来ます。
より良いコミュニケーションが取れるよう、本冊子をお役立て頂ければ幸いです。


心理カウンセリングってどういう事をするの?

・普段、皆さんはどのように相手の話を「聴いて」いますか?

このような質問をされた事って、あまり無いのではないかなぁ…と思います。
「普段、どのように話をしていますか?」というような事を訊かれる事はあっても、
どんな話の「聴き方」をしているか、という事に付いては、あまり気にしている人はいないのが普通です。
私もその一人でした。 心理カウンセリングを学ぶまでは。

・心理カウンセリングって? 心理カウンセラーって?
そもそも、皆さんの身の周りに「心理カウンセラー」という人が居る事自体、
あまり無い事じゃないかな、と思います。
私も「心理カウンセラーに初めて会った!」とよく言われます。
それほど、心理カウンセリングとか心理カウンセラーって、皆さんにとって身近では無いはずです。

現在の日本で「カウンセリング」というコトバの持つイメージとは、ネガティブ、病的、といった
イメージを持たれています。
何だか、ココロを病んでしまったような、精神病院に行かなくてはならないような、自分とは
縁遠い存在、という感じだと思います。

ですが実は、心理カウンセリングってもっと身近で気軽なモノなんだ、という事を
学んでみて初めて知りました。

ココロに病を持ってしまった方はもちろんの事、普通に過ごせている人にとっても、
ココロの健康を保つ意味で、カウンセリングを利用して頂きたいと、今は思っています。
皆さんは恐らく、年に一度くらいはカラダの健康診断をされていると思います。
ですが、ココロの健康診断というのは受けていませんよね?

欧米などでは、エグゼクティブと呼ばれるような、仕事などで成功されている方などは特に、
自分専任の心理カウンセラーが居て、年に一度とか二度、特に何の問題が無くても、
専任のカウンセラーの所に赴いて、自分のココロの状態を確認しているそうです。
専任のカウンセラーが居る、という事は一つの社会的なステータス、自己管理が
しっかり出来ている証として尊重され、受け止められています。
ではそういう人が実際に、カウンセラーの元で何をしているのかと言えば、
それはずばり「愚痴」を吐き出しているんですね。

例えば、愚痴=ストレスを誰にも話さず、溜めているとどんどん不安に変わって行きます。
不安に変わるとそれは深層心理に作用し、行動や言動が不安定になって来ます。
そこから自律神経系にも影響がでて、具体的な身体的症状となって出て来ます。
イライラ、頭痛、肩コリ、胃痛、吐き気、不眠、朝、起きられない、それまでの興味対象に
興味が無くなる、新聞を読まなくなる、やる気が起きなくなる…
と、これは「うつ病」の典型的な身体症状なんです。
やがてそれが重篤になって来ると、仕事や学業に影響し休職、登校拒否などに陥って
引きこもりなどになってしまう、という負の連鎖が起こります。

心理カウンセラーとは、ご家族や仕事の同僚、お友達などにも話せないような愚痴や悩みを
何の気兼ねも無く話せる「話し相手」と思って下さい。
正しいカウンセラーであれば、あなたに対して横柄な態度も、尊大な態度も取りません。
「あれをしろ、これをしろ」というような指示も出しません。
ただ、皆さんの悩みや愚痴をひたすら聴いてくれます。
そうする事によって、皆さん自身がココロの健康診断をしている、と思って下さい。

逆に、やたらと色々な指示をしてきたり、これ見よがしなアドバイスなどをして来る
ばかりのカウンセラーというのは、まだ技術的に未熟である事が多いんです。

・話を聴くだけ?
私が学んでいるカウンセリング技法はロジャースの「非指示型クライアント中心療法」で
その基本は「傾聴と共感」になります。
これは、相談者(クライアント)の悩みや愚痴をひたすら聴きます。
とにかく、聴きます。
その上で、相談者のその時々の気持ちや想いに共感しながら、相談者の
ココロに寄り添います。

それだけ?と思われる方がきっと多いと思います。
ですがこれは、実際に経験されてみると分かる事なのですが、自分で
自分の想いや悩みを口から外に出す事によって、それまで自分では
気付いていなかった事が分かる事があります。
それは、独りで自問自答していてはなかなか出来ない事なんです。
話し相手がいて、自分の口から外に「想い」を出す事によって
「意外な自分」を見付け、そしてそこから自分の悩みの本質に
気付ける事があるんです。
そして何より、それまでと比べてココロが少しだけ軽く、
気分的にスッキリとしている事に気付いて頂けるはずです。

但しそこに行きつくまでには、相応の時間も掛かります。
多くの皆さんはそこに行く前の段階で「カウンセリングって言っても、話を聞いてるだけじゃないか。
お金の無駄だよ!」と、止められてしまうんですね。
これはとてももったいない事です。

例えば、長い時間を掛けて信頼関係が出来ている友人や家族でも、話せない事ってありますよね?
それを、まだ信頼関係が出来るかどうかも分からないカウンセラー相手に、
皆さんは最初から自分のココロの奥底を話す事が出来ますか?

もちろん、そこにはカウンセラーの持つ技量も必要ですし、やはり
人間同士ですから、相性といったモノもあります。
まずお互いの信頼関係を築く、そこまで行く事に時間が掛かる、
時間を掛けるという事を理解して頂けると、カウンセリングにも
大切な意味合いが出てくるものなんです。

心理カウンセラーとはそんな「話し相手」となり、相談者の悩みと共に向き合い、
そしてより良い人生を歩んでもらえるよう、その環境を作ったり、お手伝いをする存在なんです。


話の「聴き方」?

・話を「聴く」とは?
ここまで私は話を「聴く」と書いて来ました。
違和感を感じられていた方も多いと思います。
これは、小学校の国語の問題であれば間違いです。
「話」は「聞く」が正解ですね。

ですがロジャース理論では「話」は「聴く」モノとして教わります。
コレを初めて学んだとき、私はその文字の感じから、こんな事を思いました。

「聞く」は「門」の下で「耳」がふんぞり返っている…
「さぁ、話を聞いてやるから、話してみろ!」
そんな風に言っているような…

一方で「聴く」は「耳」の横に「十四」の「心」が居る。
この「十四」を「大きい」とか「多い」、「たくさん」とするのは
ちょっと苦しいんですけど、コッチの方は耳と共に広いココロ、大きなココロが
寄り添っていて、あなたの話を聴かせて下さい…と語りかけているように感じたんです。

英語で言う「Hear」と「Listen」のニュアンスの違いだったら、何となく分かり易いでしょうか。

もしこのような話の「聴き方」を皆さんが出来るようになれば、例えばご家族とか、
職場の同僚やお友達、皆さんの周りに居る方々とのコミュニケーションを変える事が
出来るのではないか?
もしそれが出来るようになれば、家庭環境や職場の環境、地域のコミュニティや、
最終的には人同士の関係がより良いモノになれる、そんな風に考えてみました。

では、広いココロで相手の話を「聴く」事は、難しいのでしょうか?
もちろん、専門的にカウンセリングを学んで来ている心理カウンセラーのように
相手の話を「聴く」事が出来るようになるには、お金も時間も掛かりますし、経験も必要です。

ですがその初歩、基本であり、始めの一歩は皆さんでもこの冊子を読んで頂ければ、
そして日常生活の中でちょっとだけ意識して頂ければ、必ず出来ます。
その具体的な方法に付いて、ご紹介して行きましょう。

・頭では分かっているんだけど…
「頭では分かっているんだけど、ココロが付いて行かない…」
そんな風に感じる事、ありませんか?

これは頭での理解→「理論的な理解」とココロの理解→「現実の理解」の間に
ギャップがあって、そのギャップが大きければ大きいほど、ストレスも増えるという訳です。
「理想と現実」という言葉に置き換えても良いかも知れませんね。

このギャップを埋めるためには、自分が頭で考えている事、ココロで思っている事を
口から外に出して、その差を少しづつ近付けて、ストレスを少なくするために
自分と共に話を聴いてくれて、確認してくれる相手が居ると、それがたやすくなって来ます。
そのための「話し相手」になれる、傾聴に付いてお話しようと思います。

・傾聴という事
ロジャース理論の基本は「傾聴と共感」です。
まず大切な事は、皆さん自身がその環境、心構えを作る事です。

『話したい事柄を、自由に話す事のできる安心した環境(姿勢)』

『相手から批判されることなく、話す内容を受け入れてもらえる環境(姿勢)』

この二つを心掛けるようにして下さい。

話したい事柄を、自由に話す事のできる安心した環境とは、
自分のココロの内を安心して話せる相手、話せる場所がある事だけで、心が安らぐ事があったり
そういう相手、そういう場所があると知っているだけで、安心出来るという事を
相手に知ってもらう事によって、あなたに話が出来る、話がしやすいと思ってもらえます。

もう一つの相手から批判されることなく、話す内容を受け入れてもらえる環境は、
話している時に、その話を遮られたり、否定されたり、批判された時には不安や不満が
募ってしまいますし、それ以上話しても無駄、と思われた時に関係は途絶えてしまいます。
それを防ぐためにも、ひとまずは話を最後まで聴く姿勢、相手の話に「。」が付くまで
話を聴く、ダメ出しをせずに最後まで話を聴く姿勢を大切にして下さい。


積極的傾聴とは?

・積極的傾聴(アクティブ リスニング)
積極的傾聴とは、「自分の想いや考え」を込めない聴き方です。
ちょっと難しく言うと「無条件の肯定的配慮」という事になります。

自分の想いを込めない…
どういう事かというと、皆さんは普通の会話の中では、相手が話している事に対して
自分の考えとか、意見がその都度出てくると思います。
普段の会話はそれで良いんですが、カウンセリングという事になると、それは
邪魔な存在、という事になるんです。

誰もがそうですけど、相手とまったく同じ想いになる、という事は不可能です。
所詮、生い立ちも違えばそれまで育ってきた環境、受けた教育など、
人それぞれで、違った人格、それぞれの感じ方や考え方が形成されています。
ですから、相手とまったく同じ想いになる、という事は親兄弟と言えど、誰にも出来ません。

ですがカウンセラーは、相談者のココロに少しでも近付こう、想いに少しでも寄り添おうとします。
その想いを共有する事によって少しでも相談者のココロに近付いて、アタマでの理解と
ココロでの理解を近付けようとします。
その際に、カウンセラーには「自分の想いや考え」は邪魔な存在になるだけです。

そこでカウンセラーは、相談者の話を聴く時、自分の想いをココロの底に沈めます。
そして相談者の話だけに集中し、その言葉や表情から、相談者のココロに近付こうと努力します。
ただ、こういう姿勢を皆さんがすぐに出来るかと言えば、なかなか難しいモノです。
ですからこれは、このような姿勢で臨むんだな、という事をココロのどこかに置いておいて下さい。

その上で、実際に積極的傾聴を示せる態度、姿勢に付いてお話しましょう。

・相槌を打つ
これはもう、その通りの事です。
相手の話を聴く上で、「私はあなたの話を聴いているよ」という事を、動作で
示す事によって、相手がより話しやすい環境を作る事になります。
多少大袈裟になっても構いません。
ただ、あまり細かくし過ぎると逆に不信感を持たれる時もありますので、
その辺は注意が必要です。

・オウム返し
これも言葉通りです。
話し手のその時の感情を受け入れつつ、相手の言葉を時折繰り返します。
カウンセラーには一言一句、相談者の言葉を間違えずに繰り返す事が
要求されますが、皆さんはそこまでする必要はありません。
話し手の話が途切れたところで、「あなたは~な感じに思っているんですね」というように、
話し手が言った言葉を、相手の感情に寄り添いながら繰り返して下さい。

・話の途中で言葉を差し挟まない(拒否しない)
相手の話に対して「それは違う」とか、「そうじゃない」と反論したり否定してしまうと
相手は委縮してしまい、本音の部分が話せなくなってしまいます。
それは結果的に、そこまでの間に築いて来た「信頼関係」を一気に崩してしまう事にもなります。
「拒否された」「受け入れてもらえない」と感じさせないよう
話に読点が付くまでは、きちんと話を聴く事が大切です。

以上の3点に気を付けながら、相手との話をしてみるとそれまでとは少し違う
コミュニケーションがそこに生まれてくるはずです。

・注意したい事
先述しましたが、相手の話に対してそれを否定したり、反論したりという事は
通常の会話の中にはよくある事です。
ですがそれは、相手の事を評価しているに過ぎず、相手の事を理解し、受け入れている事には
ならないんです。
これを「評価的理解」と言います。

アドバイスなども同じ事で、自分の想いを差し挟んで、話し手のココロや想いから
離れてしまう事になります。
それでは話し手は、「自分の想い」に気付く事は出来ないんですね。
(例えそれが、相手のために良かれと思って、という想いからだったとしても、です)

例えば、あなたのお友達との会話のシーンを想像してみて下さい。

例:「昨日、かみさん(旦那)と大喧嘩しちゃってさぁ…」
あなたならどんな風に言葉を返しますか?

「何で?」←こんな風に返したいところですが、これはカウンセリング的にはダメな例です。

これでは、相手の本心よりもむしろ、感情の部分だけが引き出されてしまう恐れがあります。
感情だけがぶり返してしまい、冷静になれなくなってしまU可能性がありますね。

「そうか、奥さんとケンカしたのか…」←これが正解のオウム返しとなります。

では更に進んでみましょう。

「俺はかみさん(旦那)のあんなところを直して欲しんだけど。」
「いや、それはお前の方が悪いよ」←これは評価的理解となりますね。

それでは

「そうだな、あそこは直した方が良いよな」←これは一見すると共感しているように見えますが
聴いている方の意見や想いを言っている、評価的理解となっています。

一つの正解としては、こんな感じになります。

「そうか、お前は奥さん(旦那さん)のあんなところを直して欲しいのか。」

自分の想いを込めず、相手の話を否定も評価もしていませんね。
つまり「ダメ出しをしない」という事を念頭に置いてみると良いかも知れません。

これによって相手に「この人は私の話を真剣に聴いてくれている」
と受け入れてもらえると同時に、信頼関係が生まれて来るものです。

これらの事をいきなりする事は難しく、訓練が必要です。
ただ、普段のコミュニケーションの中で意識して行く事によって身に付いて行きます。

日常の会話(家族、同僚、友人)や雑談の中でも、これらの事を意識して行くだけで、
周囲との人間関係が変わって来ます。

「あの人、少し変わった」と周りから見られるようになれば、相手からの反応が変わります。
それはあなたが変わったおかげで、相手が変わった、という事になりますよね。


あとがき

心理カウンセリングを学んでいると、人とのコミュニケーションの中でいかに
「話を聴く」事が大切か、という事を思い知らされます。
ただ「聞く」のではなく、「聴く」とする事によって、相手の事をより深く知る事が出来るようになり、
それが実は「自分を知る」事にもつながって行く、という事を学びました。

「私はあなたを変える事は出来無い。けれど、私が変われば、あなたも変わるかも知れない」

言葉足らずの部分もありますが、皆さんが毎日を送り、周囲に居てくれるたくさんの方々と
コミュニケーションを日々取って行く中で、このような事を少しだけココロに留めて置いて頂いて、
皆さんと皆さんの周りに居る方々が少しだけ良い一日が、良い明日が過ごして頂けるように
なって頂ければ幸いです。

なお、この内容は私も参加しております「ココロスクール」第1回目に
させて頂いているお話をほぼそのまま、冊子としてまとめたモノです。

少しでも自分の「明日」を「ちょっとだけ良く」してみたい方、また
日頃の自分に何か少し物足りなさを感じられている方、もしくは
ちょっとでもこの内容に興味を持たれた方はぜひ、今後行われる
「ココロスクール」にご参加頂けますよう、お願いいたします。
開催日程等は下記のHP、ブログ等でお伝えしておりますので、
チェックしてみて下さいね。

全日本カウンセリング協議会 認定カウンセラー
カウンセリングスペース Healing Forest代表
佐伯 昌典(のり)
Healing ForestのHP→http://forest.gcmc.jp/
Healing Forestのブログ→http://ameblo.jp/healingforest2011/


この本の内容は以上です。


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