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天国

嫌だ
目の前にあるもの
ひとつも変わって欲しくないよ
「花が散るのは
一瞬だから美しい」と人は言うけれど

 

 

この命には何もかえられない
数えきれない瞬間を与えてくれたかけがえのないもの
花は咲いてるから美しい
人は生きてるから美しい
人は死んだ時が世界の終わりなんだ

 

 

この世界がいつまでも終わって欲しくない
もし天国があるとしても
君を置いて行きたくないよ
この瞬間が消えないようにそっと手を伸ばした
なぜなら 君をもう愛してしまったから

 

 

 

 

もし死んだら今よりすばらしい世界があるとしても
死にたくないよ
君をずっと見つめていたいよ
新しいものなんてもう何もいらないんだよ


この瞬間が変わって欲しくない
思い出の中の人になって欲しくない
すべてに終わりがあるなんて認めたくないよ
なぜなら 君をもう愛してしまったから


線香花火

過ぎ去った夏に捧げる 色とりどりの光
夏の終わりの 小さな花の舞

あなたがいなくなってから もう一年が経つ
あなたとの想い出は 闇に消えゆく線香花火

 

 

子供の頃に 好きだった本を思い出して
探したけれど 出てくるはずもなく
失われた物語のように
あなたと出逢った頃を想い出す

 

白い光は 消えていった何かを弔うように輝いた
赤い時間が目の前をゆっくり通り過ぎてゆく
緑の煙が明るく
いつまでも夜空を染めた

 

 

あなたがいなくなってから
あの本がなくなってから
月日はただ流れて
また夏が終わろうとしてる

 

明日から涼しくなるよと 笑い合って家へ帰る
線香花火は 夏を想って落ちた


深海の底に光は差さない

壊れてしまった
ここは海の底
誰もいない 魚も泳がない
瓦礫の中にうずくまっていた
瓦礫はあの日から 少しも変わらない
泥だらけのアルバムを抱いたまま

 

ここは真っ暗 日も差さない
深い悲しみの底
泳いでみたけど誰もいない
みんな 死んでしまったの?


人の笑顔を忘れてしまった
表情というものを失くしてしまった
夢の中で誰かが言った
「いっしょにやり直そう」
うつむいたまま 
「無理だよ」って呟いた

 

 

 

 

家族を愛していた気がする
みんなどこへ行ってしまったの?
この瓦礫の町はどこなんだろう
誰の家にうずくまっているのかもわからない

 

アルバムをめくる
あの日から何も変わらない
家族 犬 愛するひとたちの笑顔
泥だらけで笑ってる
私だけが変わってしまったの?

この町はどこなんだろう
人の笑顔が見たいよ
地面が震えるたび耳を塞ぐ

 

 


私はどうして海の底にいるの?
私はどうなってしまったの?
誰か 誰か そばに来てよ
この冷え切った深海で 震える私を抱きしめて


深海の底に光は差さない
深海の底に光は差さない


希望の雨

雨の中 花束を持って
微笑みながらキミを待ってる
ずっと ずっと 待ってる

白いかすみ草が 雨に打たれて
折れそうになる


気づいてしまった
いつしかキミが好きなこと
心の鏡に映った笑顔 もう誤魔化せない

 

 

キミは来てくれるかな
場所を間違えたりしてないかな
一人ぼっちで不安になるけど
キミと出会って二ヶ月で
伝えたいことがたくさんできた
一生かかっても語りつくせないくらい


雨は勢いを増して 視界が悪くなる
不思議と辛くないよ
この雨は希望の雨だから

 


指が冷たくなってきた
赤い薔薇もうつむいてる

 

キミの姿が見えたら一番に
「この手を握って」って言うだろう
キミの温もりをもう一度感じたい

 

 


どうかこれからも そばにいて
遠くへ離れて行かないで
ピンクの薔薇が一粒だけ泣いたけどそれは…

 

キミの笑顔に触れていたい
キミの肩の前で笑いたい
これからもずっと


キミが来るまで 永遠に待ち続けるよ
雨の中で
すべてのものが洗われていく

 

降りしきる雨に打たれて 心は高鳴る
あのとき泣いたのは 
ただなんとなく嬉しかったから
キミを好きでいるのが

 

心はほら
花束に散りばめられた真珠みたい
希望の雨の中で
キミといっしょに見たい
すべてが光り輝いてる…

 


ヒトガタ

その昔
僕は人間じゃなかった
誰も信じないと決めたその日から

 

人を殺したいとさえ思った
すぐ暴走した
思いやりのかけらもなかった


もう誰も信じない
人間なんて二度と信じるものか
そう誓った
はずだった

 

 

 

 

あっさり信じちゃったね
君のことを

どうしよう
何で僕今幸せなんだっけ


どうしよう
ヤバい
まるで人間みたいな気持ちになる


僕はずっと
人間じゃなかった
君がさまよえる魂に ヒトガタをくれたんだ

 

人間になりきれない僕のネジをまいて
ここまで辿り着かせてくれた
いつも引きこもりがちだったから
とんで走れる手足をつけてくれた

 

まるで本物の人間みたいだ
ありがとう
僕の魂に初めての気持ちが一度に芽生えて 空にひろがった
感謝 感動 尊敬 人を思いやること
君を好きだっていう気持ちも
どうしよう
ヒトガタがはちきれそう


 

色々あったけど
今は人間大好きだよ
そして心から 人間になりたいと思ってる



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