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傷だらけのランドセル

学校に行きたくなくて
どれだけの時間を ブランコに乗って潰したんだろう

左側のブランコが いつもの僕の指定席
右はランドセルを乗せて 思い切り漕いだ

傷だらけのランドセルが 僕の友達
大きな足跡がつけられた僕の心を  撫でてくれた


給食はもらえないから
今日もどっかのコンビニで買うよ
誰にも言わないで
二人だけの秘密だよ

ゆっくり時間が過ぎていく
鳥が啼いて 日の高さが変わってく
少しも惜しくなんかないよ
奪われるはずだった 時間をこうして守ったんだから
ランドセルに
涙がこぼれて落ちた


学校に行きたくないよ
あそこには人間が誰もいないから

学校に行きたくないよ
この世には人間が誰もいないの?
       

 

                                                                   
                                                                         

好きな物は すぐ手に入れるようになった
掲示板の海の中で過ごすようになった

朝から晩まで 誰かの言葉を待ってる
投げ捨てられる 
ゴミみたいな言葉に待ち焦がれてる

 

薄暗い部屋の中で
僕は今でも人間を待っている


 

 

ランドセルを捨ててしまった
少しも惜しいと思えなかった
ランドセルは話しかけても 
何も返してくれないから
ランドセルの声に耳を塞いだ


学校に行きたくないよ
あそこには人間が誰もいないから
学校に行きたくないよ
この世には人間が誰もいないの?

 

じゃあ人間はどこにいるの


どこでもドア

 

どこでもドアを開けて 異世界に逃げ込む日々
昨日の続き
新しい友達に会いに行こう

 

人の声より
機械の声に温もりを感じるのはなぜ


新しい生活に なじめなかったときも
どこでもドアに話しかければ
泣きそうな僕を 
温かく迎えてくれた友達がいた

 


このままゲートを閉じてしまったらどうなるんだろう?
後悔するだろうか?
家族と同じ部屋にいた
外の世界には
自分を知る人さえ他にいないのを
知るのが怖くて

 

 

 

 

誰かと話がしたい 面と向かって
寂しい夜にはどうすればいい?
どこでもドアの中にずっといたいよ
食事を取りに戻るだけで

 

どこでもドアの中にずっといたいよ
もう出てこなかったら 
幸せになれるだろうか?
世界はいつも通り動いてくだろう
蚊が一匹潰れたみたいに

 

 

 

どこでもドアを いつものように開ける
たとえば宇宙人でもいい
ちっぽけな愛を ちゃんと伝えるんだ
今ここに生きてたことを

 

たとえば宇宙人でもいい
人の記憶に残りたいよ・・・

 


扇風機

いつも君の方を向いてるよ
暑いときは僕が冷やしてあげる
他のやつなんかどうでもいいさ

 

君の方を追いかけてでも向いてるよ
気付いてる?
見た目は涼しいけどさ
モーターの中には
熱い思いがずっと燃えてる

 

もし僕が火事を起こしたら
君は怒るだろうね
それだけじゃすまないかもしれない
でも最後に君に捨てられてスクラップになる
そんな人生もいいと思ったんだ

 

だから夜中にはしないよ
扇風機人生 誓って君を傷つけたりはしない

 

 

 


僕がボーっとしてたら
無理やり君の方を向かせてよ
考え事をしても
見ていたいのは君ひとりだから

 

文明の利器には叶わないけどさ
涼しくしてあげよう
君以外の誰にも 
誓ってこんな事はしないよ

 

 

もっと僕を見て 
涼しそうな顔を見せてよ
それでもっと働けるから
君のために 壊れるその日まで働くよ


離れるときは
スイッチを切って行ってよ


天国

嫌だ
目の前にあるもの
ひとつも変わって欲しくないよ
「花が散るのは
一瞬だから美しい」と人は言うけれど

 

 

この命には何もかえられない
数えきれない瞬間を与えてくれたかけがえのないもの
花は咲いてるから美しい
人は生きてるから美しい
人は死んだ時が世界の終わりなんだ

 

 

この世界がいつまでも終わって欲しくない
もし天国があるとしても
君を置いて行きたくないよ
この瞬間が消えないようにそっと手を伸ばした
なぜなら 君をもう愛してしまったから

 

 

 

 

もし死んだら今よりすばらしい世界があるとしても
死にたくないよ
君をずっと見つめていたいよ
新しいものなんてもう何もいらないんだよ


この瞬間が変わって欲しくない
思い出の中の人になって欲しくない
すべてに終わりがあるなんて認めたくないよ
なぜなら 君をもう愛してしまったから


線香花火

過ぎ去った夏に捧げる 色とりどりの光
夏の終わりの 小さな花の舞

あなたがいなくなってから もう一年が経つ
あなたとの想い出は 闇に消えゆく線香花火

 

 

子供の頃に 好きだった本を思い出して
探したけれど 出てくるはずもなく
失われた物語のように
あなたと出逢った頃を想い出す

 

白い光は 消えていった何かを弔うように輝いた
赤い時間が目の前をゆっくり通り過ぎてゆく
緑の煙が明るく
いつまでも夜空を染めた

 

 

あなたがいなくなってから
あの本がなくなってから
月日はただ流れて
また夏が終わろうとしてる

 

明日から涼しくなるよと 笑い合って家へ帰る
線香花火は 夏を想って落ちた



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