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母と球児

 

ベンチ入りしたことのない少年も、
足の遅い少年も、
ヒットを打ったことのない少年も、
いつか二塁ベースに辿りつく。
それまで親は歯がゆい、
それまで親はほかの子がうらやましい。
でも子供は、いつの日か突然の成長を遂げる。
それまで、母は微笑んでいてください。


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控えの捕手

 

正捕手がライトフライに倒れ、攻撃終了。

急いで仲間の手を借りてレガースを身に着ける。

控えの捕手がピッチャーの球を受け始める。

もう少し、ゆっくり、正捕手よ、もう少しゆっくり来い。

あと少しだけ、控えの捕手に、受ける時間を与えてやってくれ。

 


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新中学一年生のユニフォーム

 

真っ白なユニフォームが届いたその日の練習は、スライディング。

幾代もの先輩たちの汗が残るグランドの土に染まっていくユニフォーム。

 帰宅後、少年は母親へ、

「ユニフォームもグラブやスパイクと同じ道具。自分で磨くのと同じように、

俺が洗うからね」とつぶやき、風呂場へ向かった。

 


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鳥鍋と野球

 

ある高校野球部の部長と、鳥鍋を囲みながら飲んだ。
話題は部長の同級生で中学校全国大会8位に導いた監督の話題になり、

「あいつは鳥鍋に無理矢理牛肉を入れて調理するような教育はしないんだ。

鳥鍋には鳥。すき焼きには、牛肉。無理せずその子に合わせた教育をやって

成長させるすごいやつだ」としみじみ言っていた。

 


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父子家庭の野球

 

息子と楽しんだキャッチボール。

週末になると、追っかけた息子の少年野球。

息子がヒーローになるかもしれない中学校野球。

そんな平凡な日々を繰り返していたある秋の日。

妻は突然の病から他界した。

 

息子一人残された父は、その日を境に練習試合を追いかけるのをやめた。

一週間分の夕食を仕込む週末が始まった。

カレー、シチュー、グラタン。

むきになって手作り料理を始めた。

父は、息子へ母の愛を授けることはできない。

でも、絶対にコンビニ食だけは、食わせまい。

そう誓って、始まった新しい週末。

息子と向かい合った日曜の夕食のテーブルには、

天国から妻が微笑んで囁いている気がする。

「ありがとう」と。

 



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