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甘い空気

手拍子にも似た雨音に呼ばれる

この空気の甘さ
風に乗って香る緑

この空の向こうには
見たいものが広がっている

私を呼ぶもの
声にならない

胸の少し下が押される感覚

この空の向こうには・・・


雨音に遮られて聴こえない
でもこの手は微かに触れている

目に見えないもの
見えないからこそ感じるもの

私をここへ連れ戻したのは
他の何でもないよ

この空気の甘さ
とても愛しくて欲していた

浸透していく魂


2006.9.6.

つつじ

つつじの赤は眼に痛い

違う色に際立って光るものは

人を刺して

その美しさ

鮮やかさ

その姿を明らかにする


2007.5.4.

秋月

板の朽ちたベランダのくすんだ赤い屋根に座っていた

その日は息も白い秋の終わりで
ただなお白く輝く月を見つめていた
古い毛布にくるまって

月明かりが眩しくて
雪のにおいがかすかに近づいていたあの日

私はただその月の姿に夢中で
全てはあの空気のように濁りなかった

あの日はもう遠い昔

哀しみも寂しさも本当には知らなかった

ただ密かに感じていただけ
自分の生きていることの不確かさ
この手の感触のぎこちなさ

あの秋の月
美しかったあの日の月
ただ今は恋しくてたまらないよ
あの頃に戻ることはないけれど
もう一度見れるのかな

もう一度見たいよ


2006.7.29.

gone.



空は晴れていて 静かに風なんか吹いていて

「小春日和」

私はここにいるのに ここにいない
 

風がさらう

自分で作った小さなジンクスに逆らって 長く伸ばした髪

他人には見えて 自分には見えない何処かへ

 
私は現実に居て

声を出せば誰かに聞こえる 答えが来る

 
でも私は何も見えない

私は答えない

私には声が聞こえない

 
来ないはずの未来が見えた日

 
来ない未来を葬った日
 

来ない未来と一緒に私は行ってしまった

 
2002.10.25.

花霞



在りし日の形を追い続け 口を閉ざして

触れないように 触れないように

 
壁紙の色褪せる様は年月を刻む

変わらないように振舞う人々の前で


本当は何もかもが変わって

何もかもが別のものになったのに

私たちだけが何もなかったように

横を向いて 砕けている

砕けているのに…

 
2002.4.14.



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