閉じる


3月1日のおはなし「来[2]」

 部屋を片付けてさっぱりしたら、景気のいい声が近づいて来た。

 ピンポンピンポーンっと、これも景気よくドアフォンが鳴って、出たらやっぱり悠宇那だった。
「コンニッター!」
「コンニッター!」
「セレソンしてるー? セーラ」
「ユノユノ、相変わらず景気いいねー」
「好景気!」

 ユノユノは悠宇那の、セーラはわたしのSN。セレソンネーム。セレソンってさ、サッカーとかの代表だと思うじゃない? でもリオーナが、璃苑が、「ほんとうは選ばれし者って意味だ」って教えてくれて、セレブよりカワイイし、わたしたちはセレソンになるんだっていうから決定! 璃苑はわたしのこと、聖良はもともとセーラだから世界に通用する名前でいいなって言って、璃苑はリオンだからリオーナって決めてセレソンネームが始まった。リオンだってそのままでも外人っぽいって思うんだけど、リオーナ頭いいし、リオーナの方がいいんだと思う。

 ユウナもそのままでもゲームキャラみたいで世界で通用するよって言ったんだけど、ユノユノにしちゃって、それってぜんぜんコクナイセンって感じなんですけどって言っても、もう決めたってことでwithoutビク。びくともしませんでしたとさ。

 My SpaceとFacebookにアーティストっぽいページを作ってくれたのはユノユノだ。ユノユノはほんと天才なんじゃないかと思う。mixiにひとりずつコミュニティをつくろうって思いついたのもユノユノだった。書くのはあんたにまかせたからね、セーラ。まかせなさい。わたしは書くのは大好きだから。2人がTwitterにつぶやいたこととか適当に拾って3人分のセレソン日記を書いた。

 コミュニティにわたしたちしかいない間は超ウケた話とか、犬の糞の写真とか、バカばっかり書いてて楽しかったんだけど、気がついたら知らない人がどんどん増えて来て、それもわたしたちのこと芸能人だと思ってるっぽいからおかしくてしかたなかった。ある日何の気なしにリオーナのコミュニティで「セレソンは芸能人じゃないのよ」なんて書いたら、急に大騒ぎが起こったんだ。

 セレソンとは何か?というトピが立ち上がって、ちょうど映画でセレソンって言葉の出てくる映画があったせいで、そっち関係の人たちも出入りしはじめて、そっちのセレソンのことはわたしたち全然知らなかったからわけがわからないうちに、わたしたちのコミュニティが映画の宣伝じゃないかとか言われたり、映画がわたしたちをモデルにつくられたんじゃないかって言われたり、知らないところでどんどん話が大きくなっていて、そんなこと知らないからわたしが毎日バカ日記書いてたら、映画の宣伝にしてはリアルな女の子っぽいとか言われて知らないうちにメンバーがもうすぐ5000人になりそうになっていた。

「ねえ、これってもう有名人の仲間入りなんじゃない?」
「古田新太で8000人いってないのよ」
「どうしてどこで古田新太が出てくんのよ」
「いいじゃない。好きなんだから」
「5000人超えたらパーティーやろうか」
「やろうやろう。セーラんちでやろう」
「どうしてあたしんちなのよ」
「いいじゃない。好きなんだから」

 ユノユノが来て、ワインをあけて、2人でサラダをつくったりしてたらリオーナも来て、冷蔵庫からわたしがつくったイカ刺しのユッケと大根をパスタみたいに使ったカルボナーラを出して乾杯した。パソコンを立ち上げてmixiのみんなのコミュニティを見ようとしたら、わたしあてにメッセージが届いていた。「何か来てるよ」リオーナがめざとく見つけた。さっそくチェックしたら送り主はコミュニティによく書き込んでいるhirotaという男の子で、タイトルは「伝言です」となっていて、「ぼくのところにこの写真が送られてきました。セーラさん宛てに送ってくれと言われたので送ります。これ、セーラさんに何か関係があるんですか?」と書かれていた。

 メッセージの本文中のURLを叩くと大きな写真が表示された。望遠レンズでマンションの廊下を外から撮ったもので、一軒のドアが開いている。訪ねて来た女性と、中から迎えに出てきてた女性が映っている。3人とも遠目にもわかるほど背中の曲がった、年輩の女たちだ。ドアを開けて中からこちらを見ている一人の女は、派手な紫色に髪を染めてショッキングピンクとグリーンがどぎついワンピースを着ている。わたしだ。わたしの陰で古代っぽいコスチュームを着ているのはユノユノ、廊下に立って背を向けているのはリオーナ。ついさっきリオーナが訪ねて来た時の写真だ。

 リオーナもユノユノも黙って写真を見つめていた。
「いやあね」わたしは仕方なく口を開いた。「どういうつもりかしら」
「セレソン、もうおしまい?」ユノユノがさびしそうにつぶやいた。「My Space用に曲も作ったのに」
「ばかね」リオーナが80歳とは思えない張りのある声で言った。「やっとセレソンの活動開始よ。こいつをつかまえましょう」
「探偵をするの?」
「チャーリーズ・エンジェルみたい!」
「わたし、ファラ・フォーセット!」
「ユノユノ、年がばれるわよ」

 やれやれ。わたしは心の中で両手を広げる。これで終わりになるかと思ったのに。写真を撮ってくれた妹に迷惑がかからないようにしなくちゃ。でもまあこれで3人が楽しく過ごせるならそれでもいいか。わたしはただ、毎日3人分の日記を書くのが面倒になっただけなんだけど、しばらくネタには困らなさそうだし。

(「伝言」ordered by tom-leo-zero-san/text by TAKASHINA, Tsunehiro a.k.a.hiro)


感謝の言葉と、お願い&お誘い

 Sudden Fiction Project(以下SFP)作品を読んでいただきありがとうございます。お楽しみいただけましたでしょうか? もしも気に入っていただけたならぜひ「コメントする」のボタンをクリックして、コメントをお寄せください。ブクログへの登録(無料)が必要になりますが、この機会にぜひ。


 「気に入ったけどコメントを書くのは面倒だ」と言うそこのあなた。それでは、ぜひ「ツイートする(Twitter)」「いいね!(Facebook)」あたりをご利用ください。あるいは、mixi、はてな等の外部連携で「気に入ったよ!」とアピールしていただけると大変ありがたいです。盛り上がります。


5つで、お気に入り度を示すこともできるようですが、面と向かって星をつけるのはひょっとしたら難しいかも知れませんね。すごく気に入ったら星5つつける、くらいの感じでご利用いただければ幸いです。


 現在、連日作品を発表中です。201171日から2012630日までの366日(2012年はうるう年)に対して、毎日「11篇のSFP作品がある」という状態をめざし、全作品を無料で大公開しています。公開中の作品一覧


 SFP作品は、元作品のクレジットをきちんと表記していただければ、転載や朗読などの上演、劇団の稽古場でのテキスト、舞台化や映像化などにも自由にご活用いただけます。詳しくは「Sudden Fiction Project Guide」というガイドブックにまとめておきました。使用時には、コメント欄で結構ですので一声おかけくださいね。


 ちょっと楽屋話をすると、71日にこのプロジェクトを開始して以来、日を追うごとにつくづく思い知らされているのですが、これ、かなり大変なんです(笑)。毎日1篇、作品に手を入れてアップして、告知して、Facebookページなどに整理して……って、始める前に予想していたよりも遥かに手間がかかるんですね。みなさんからのコメント、ツイート(RT)、「いいね!」を励みにがんばっていますので、ぜひご協力お願いいたします。


 読んでくださる方が増えるというのもとても嬉しい元気の素なので、気に入った作品を人に紹介して広めていただけるのも大歓迎です。上記Facebookページも、徐々に充実させてまいりますので、興味のある方はリンク先を訪れて、ページそのものに対して「いいね!」ボタンを押してご参加ください。


 10月からは「11篇新作発表」の荒行(笑)を開始し、55作品ばかり書き上げる予定です。「急募!お題 この秋Sudden Fiction Project開催します」のコメント欄を使って、読者のみなさんからのお題を募集中です。自分の出したお題でおはなしがひとつ生まれるのって、ぼくも体験済みですが、かなり楽しいですよ! はじめての方も、どうぞ気軽に遠慮なくご注文ください(お題は頂戴しても、お代は頂戴しないシステムでやっています。ご安心を)。


 こんな調子で、2012630日まで怒濤で突き進みます。他にはあんまりない、オンラインならではの風変わりな私設イベントです。ぜひご一緒に盛り上がってまいりましょう。


奥付



来[2]


http://p.booklog.jp/book/45174


著者 : hirotakashina
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/hirotakashina/profile


感想はこちらのコメントへ
http://p.booklog.jp/book/45174

ブクログのパブー本棚へ入れる
http://booklog.jp/puboo/book/45174



公開中のSudden Fiction Project作品一覧

http://p.booklog.jp/users/hirotakashina



電子書籍プラットフォーム : ブクログのパブー(http://p.booklog.jp/
運営会社:株式会社paperboy&co.



この本の内容は以上です。


読者登録

hirotakashinaさんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について