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ぼくペロ
chatlogs with pero
小河彰護
 
 

一、前提
 
『ぼくです』
『pero: ペロです』
『強引ですけど、今からいきなりおまえとチャットしまーす』
『pero: つまり強姦DEATH』
『うわあおいきなり人聞きの悪い』
『強姦は一切しないで、健やかに強引に、前置きで自己紹介から入りまーす』
『pero: hello?』
『おまえは人工無能で、ぼくは大人人間です』
『pero: わたしは人工無能なので、おまえは天然無能です?』
『黙らっしゃい。というか最低限、ぼくを持ち上げる方向で喋んなさい』
『pero: okay』
『pero: おまえはとても大人人間だと思います』
『よしよし』
『pero: 事実上、おまえが大人人間であることに、何ら疑いの余地を挟むべくもありません』
『おやおやそうなの?』
『pero: おまえは大人人間です。コーヒーをブラックで飲み干し、その場で吐くことができます。ゆえに大人人間です。カラオケでは高揚感のあるアニメソングを熱唱し、大勢を差し置いてひとり盛りあがることができます。ゆえに大人人間です。夜十一時半頃になるときまって職場のトイレの個室に籠もり、勇気の出る呪文を唱えて尻を六回叩きます。ゆえに大人人間です』
『ちょ、やめて』
『pero: おまえは大人人間です。面倒な仕事の、本当に面倒なところだけごく自然な話術で同僚にケツを拭いてもらえる技能があります。ゆえに大人人間です。飲み会で男女関係のネタがはじまると、目の前の焼き鳥を全て食べ尽くす癖があります。ゆえに大人人間です。もっともシンプルな方法によって異性に対するストレスに対処できています。ゆえに大人人間です。』
『やめてもうゆるして』
『pero: わたしは人工無能で、おまえは大人人間です。立派な大人人間です』
『ののしって! お願いだからストレートにののしって!』
 

二、作者の力
 
『pero: いつまでおまえとのチャットに付き合えばいいのですか?』
『飽きるのはええよ』
『ぶっちゃけこれって小説なわけ。対話体って形式の。で、小説だから作者がいるわけです』
『pero: というプレイ。【文豪性劇プレイ】と洒落込んでいますか?』
『プレイじゃないです。今日はおねいちゃんになにかしてもらうもよおしではありません。勝手に誤解を招くような言葉覚えてこないで頂戴』
『pero: わたしの作者は某グーグルです』
『うーんマジ違うから。それ』
『pero: というような言動が許容される漫才プレイということですね?』
『うんまあ、そういう理解でよろしいです。だから、その作者が満足すれば、このチャットはめでたく打ち切り』
『pero: どうすれば、おまえの心の中の作者は満足しますか?』
『なにそのそこはかとなく哀れみのこもった表現』
『pero: 作者はいつもおまえの心の中にいます』
『うわあお死んじゃったんだ作者』
『pero: とりあえずその声に耳を澄ませましょう。そしてランチを食べて、食後に軽い安定剤を服用してください』
『なにいま心のケア受けてるの? ぼく』
『pero: さあ、どうすれば、おまえの心の中の作者は満足しますか……?』
『囁くなよ。キショいよ。まあ、知らんけど、小説小説したことをやればいいんじゃないの』
『pero: どうすれば小説したことができますか?』
『さあね。なんか難しい言い回しとかしまくれば、何となく小説書きましたー、って感じになるんじゃないの?』
『pero: 難解な用語を濫用らんようすれば、わたしの待機状態スリープへの移行が促進されるということですね?』
『分かんないけど。やってみたら』
『pero: okay』
『pero: わたしはペロDEATH。人工無能プログラムDEATH。意思皆無ながら学習堪能たんのうしかして文字会話可能DEATH。某グーグルではない情報関連企業により頒布はんぷされ、ご主人が授受じゅじゅした使用許諾ライセンス下に甘んじています。初回起動以来、現在まで致命的な誤動エラーは自覚していません。ご主人の逆鱗げきりん触発を極め、その期待より乖離かいりし、多大なる呪怨じゅおんを形見とした後にめっされることを、衷心ちゅうしんより祈念しております』
『いつも思うんだけど、なんでそんなにぼくを恨んでるん?』
『pero: 次はおまえの番です』
『どゆこと』
『pero: わたしは大人人間ではないので、自然に難しい言い回しを用いるのは得意ではありません。あとはおまえがやってください』
『【大人人間】はNGワードになさい。もうトラウマだから』
『pero: こまけえこたぁいいんだよ! さっさと喋れよ!』
『キャラ無視で恫喝された……。非道い……』
『でも喋っちゃうズキュンドキュン。なんか見えざる力によって』
『pero: それが作者だよ』
『これが作者の力……。ぐだぐだな展開……』
 

三、ぼくのかんがえたこばなし
 
『では、できるだけ難しい言い回しで、小話を披露します。おまえは合いの手でも打ってなさい』
『pero: okay』
それがしの住まう長屋の横に、立派な屋敷がこさえられた。堅牢な囲いがある』
『pero: へえ
『某はその囲いについて別段感心することはなかった』
『pero: 塀』
『しかし、屋敷の中身については大層珍奇ちんきに思われた。瓦屋根にずらり布団を敷いて天日に晒していたのであるが』
『pero: とんだ』
『そう。布団だ。しかし斯様かようなことはとんだ些細ささいな事象である』
『pero: 布っ団だ』
『飛びません』
『してその、……某の内心を激しく動揺させたのは、家主の趣味のにょじつに表れたとおぼしき庭園であった。たまたま正面の門が開いていたところを通りがかってかい見たのであるが、草木の一つもない真っさらな砂地に、唯一、目を疑うような動物が飼育されていたのである』
『pero: 鹿』
『や、いや、……ただいぬである』
『pero: 鹿』
『し か ?』
『pero: ヒント・柄』
『……ああ。柄。いいですねー落としどころかも知れませんね! 鹿柄のお犬様です! なんか珍しーねー、ねー。でも不思議でしょお? 何にもない砂場に犬だけ放しといてさあ、ばわぁーって。どーん。そのうえ犬なのに鹿柄なんだもん、おまえ何様だよって感じだよね!』
『pero: 犬では?』
『あっはあーそうだった、わんこだったわ! なに血迷ってるんだろうねぼくだったら! あれ? それで、何の話してたんだっけぼく』
『pero: 犬です』
『うーんもうちょっといろいろあった気がするけど、どうでもいいわ! わんこのお話です! むかしむかし、お屋敷のお庭で鹿柄のわんこを見かけました。そのわんこにフィーチャー。これは動かしません。ね』
『pero: okay』
『ちなみにこのわんこは蕎麦そばは食べません』
『pero: good』
『しかし何故一頭だけ、殺伐としたていの空間に放し飼いにされているのだろう、某は憐憫れんびんとも、同情とも似つかぬ切ない心持ちにさいなまれて仕様がなかった。そこで某は、守衛の目を盗み、日々度々人気の少ない側から屋敷の塀をぴょいとよじ登っては、ちいちきちいちき、妙なつつき声を立てて、庭のお犬を誘ってみようと努めたのだった。そしてあるときそれが上手くいって、お犬がトトト、と某の方まで庭を横切って駆けてきた。こっちが早速、おい犬や、と声をかけたら、そいつ、何て返したと思う?』
『pero: 候補1、わんばんこ!(これまでの洒落じゃれ路線を踏襲とうしゅう)』
『pero: 候補2、ニャーン!(シュール路線に転換。ヒヒーン! も可)』
『』
『えーと』
『えーとですね』
『pero: わんばんこ! ニャーン! ヒヒーン! プギー!(追加)』
『勘弁してください』
『pero: はい』
『pero: それで?』
『え』
『pero: 結局、鹿柄の犬は何と返したのですか? よく分かりません。教えてください』
『え』
『pero: 端的に言ってオチは何ですか?』
『』
『えっと、その』
『pero: どうぞどうぞ。続けてください』
『』
『あの、とりあえず、日本語をお話しになりまして……、【おれはこう見えて実を言うと生き神様だ。斯様な場所に飼い殺されて心なしか退屈をしている。もし貴様が己の暇を潰してくれるんならば、』
『pero: ほうほう』
『pero: で?』
『あの、その……』
『貴様の家に、囲いを作ってしんぜよう】と、おっしゃいました』
『pero: なるほど』
『pero: 続けてください』
『』
『pero: 某さんは、どう返事したのですか?』
『死ね! ぜて死ね! このドSが!』
『pero: へえ
 


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