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08 厳戒体制

 マネージャーの小松原さんのお説教は止まらない。
 携帯を持ってなかったこと・・・
 一人で行動したこと・・・
 写真週刊誌に撮られたら・・・・
 首をうなだれてじっとしてるしかない。
 あの後、ケーキバイキングの前で胡桃と小松原さんと出会って・・・
 二人ともすごい探したらしい。

「わかった?」
「はい・・・」



 終わったのかなっ。
 顔を上げる。

「美月は期待の新人なんだから、ちゃんとしてよ。絶対、美那子みたいに人気者になれるよ。わたしが保証する」
 いつもお説教のあとは熱っぽく語る。
「はい・・・ごめんなさい」
 
「美月・・・集合だって」
 なんか元気がない愛莉さん。
 わたしは、愛莉さんについて会議室へ。

 わたしたちだけじゃなく卑弥香さんや安城さんたち幹部まで集まっている。
「みんなそろったね」
 周りを見回す卑弥香さん。
「睦美と麻衣がやられたんだ」
 えっ。
 睦美さんと麻衣さんが・・・・
 愛莉さん、それで元気なかったんだ。
 睦美さんとすごい仲良かったから・・・

「相手は、この東都のマフィア。
 今まで、小競り合いはあったんだけど、今回はちょっと違うみたい。
 それで、みんなに集まってもらったの」

 後の説明は安城さんがする。
「睦美たちはイベント後を襲撃されて、
 睦美とマネージャーの綾が捕まってる。
 希美と栞は逃げられたんだけど・・・」
 前には泣きそうな顔の栞・・・
 横を向いてなんか考えてるっぽい希美が座っている。

「次に麻衣のチームだけど、
 スタジオを襲われて
 麻衣と優菜とカメラマンの百合が行方不明。
 真奈美だけが戻ってきたの」
 真奈美さんは真剣な顔で座っている。

 でも、優菜が行方不明って・・・
 あの最強の技を持っているのに・・・
 なんか信じられない。
 
「敵は同じですか?」
 美那子さんの質問。

「睦美は希美と栞から聞いた話だけど、魂を抜き取るエナミーにやられたらしい。
 あと、巨大な魔獣と鉄の爪みたいなのを使う男。
 でも、今、確認中だよ。
 真奈美の報告では
 麻衣たちは全く別のエナミー
 相手をマリオネットにして操る男
 ゼリーの身体を持つ男
 それとカメレオンのように周りに同化する男は
 真奈美が倒したって・・・」

「はい。わかりました。続けて下さい」

「今回はLOVE☆WITCHESを狙って仕掛けてきた節があるの。
 それと今日届いた脅迫状・・・」
 画面に脅迫状が映し出される。
 睦美さんとマネージャーの綾さんを人質にしていること。
 それと、返してほしかったら丸重ビルの20階に
 残り全員で現金1億円を持ってくることが書いてある。

「いい度胸してるじゃん。
 私たちを脅迫するなんてね」
 腕を組んだ愛莉さんが、イライラしながら言う。
 今にも飛び出して行きそうな勢い。

「でも、全員でっていうの引っかかるな。
 身代金は一人で来いが普通でしょ」
 美那子さんが疑問点を口にする。
 やっぱ美那子さんはすごい。
 こんな時でも冷静だ。
「そうね。
 まるで・・・・
 WITCHESを呼び出したいみたいね」
 うんうん・・・
 わたしもそれを考えてた。
 わたしたちを呼び出して、
 そして・・・・
 何するんだろう????
 あっ、ちょっと熱っぽいかも。
 あんま、考えると・・・・
 
「いずれにせよ。
 行かなきゃなんないよね。
 睦美を助けに」
 愛莉さんは考えるまでもないよって態度。

「そうだね。
 罠かもしれないけど、
 わたしたちの力見せてやろうよ!」
 美那子さんが激を飛ばす。
 さすがリーダー。

「わかったわ。
 じゃあ、こっちはわたしたちが守るわ。
 だから、救援はなしよ」
 安城さんがみんなに言う。
 これで、決定。
 わたしたちで睦美さんを助けに行くの。
 でも、WITCHESが9人も集まるの初めてじゃないの?
 かなり強力だと思う。
 絶対、無敵って感じで。

「それと、今回念のためリミッターは解除して」
 卑弥香さんが立ち上がる。
 すごい存在感・・・・。

「ねえ、みんな。
 9人で来い、だってさ・・・
 わたしたち舐められてるんだよ。
 わたしたちを舐めたらどうなるか思い知らせてやろうよ」
 沙耶香さんが言う。
 やっぱ、この人影のリーダーかも。
 
「じゃあ、みんな用意して集合だよっ」
 美那子さんの命令で、会議は解散になる。
 愛莉さんがわたしの肩をポンって叩く。
 期待してるよっ☆みたいに。
 わたしは愛莉さんについて、会議室を出て準備室に向かった。
  


09 魔獣ビルディング

 丸重センタービル
 渋谷駅前の40階建てのビル。
 かつてはファッションビルとして、有名だったらしいが、
 今は廃ビルのような薄汚れた風貌を晒している。
 でも、ここには誰もいないのじゃなくて・・・
 たくさんの不法占拠者がいるらしい。
 一度中に入ったら二度と出られないビル。
 そのような噂さえ立っていた。
 でも、普通の人ならまず入ってみようとも思わない。
 それどころか、駅前なのにその一帯だけ
 線を引いたように、人通りが途絶えている。
 人はそのビルの名前を文字って
 魔獣ビルと呼んでいる。

 その20階が今回の取引場所。
 睦美さんがとらわれている場所だ。
 あわただしく走り回るスタッフの人。
 今回の取引は、美那子さんのチームが受け持つ。
 私たち、沙耶香さんのチームはフォローに回る作戦になっている。

 たぶん、愛莉さんや沙耶香さん、希美は何するかわかんないってとこあるから・・・
 もしかして、わたしも同類なの???
 
 9人でビルに入る。
 遠巻きにこちらを見るアンダーグラウンドな人たち。
 でも、なにも仕掛けてこない。
 今回、真剣なわたしたち。
 チンピラを寄せ付けないようなオーラを放っている。
 
 エレベーターホールを抜ける。
 壊れて開いたままのエレベーター。
 マジ、20階まで階段なの???
 がっかり顔のわたしを胡桃が肘でつつく。
 
 愛莉さんが一人の男を捕まえて、
 階段の場所を聞く。
 怯えたように、その方向を指差す男。

 その指の先にいる人たちは、道を空ける。
 薄暗い階段が見える。
「ありがと・・・」
 愛莉さんは軽々とその男を放り投げる。
 普段の愛莉さんと全然違う。
 ピリピリした空気の中。
 私たちは前に進む。

 私たちを待ち伏せるんだから、
 罠とかあるかもしれない。
 でも、このメンバーには関係ない。
 もう、無敵って言っても、言い過ぎじゃない。

 5階まできたところで、廊下を塞いでいる巨大な物体。
 その横に男がいる。
「待てよ。ここからは通さないぜ」
 熊のような、ゴリラのような
 毛むくじゃらの物体。
 美那子さんは歩みを止めない。
「玄武さんに言われてるんだ。
 おまえらをやっつけたら、
 幹部にとりたててもらえるってな」
 美那子さんは返事をしない。
 ただ上っていくだけ。
 牙をむき出して吼える魔獣。
「なんとか言えよ。
 仕方ないやってしまえ!」
 男の声が上ずる。
 美那子さんは魔獣のすぐ前、
 手が届くくらいまで近づいている。

「じゃまだよ!」
 美那子さんはバスケットボール光弾を出し、
 軽くパスするように魔獣に放る。
 鋭いパス。
 光弾は魔獣に跳ね返って、美那子さんの手に戻る。
 それだけで、魔獣は消えてしまう

 まさに瞬殺。
 私たちでなければ、何が起こったのかわかんないくらい。

 カメラを意識した私たちとは違う。
 とりあえず、仲間を助け出すこと、
 これが、私たちの最大の使命だった。

 私たちは、何にじゃまされることもなく、
 階段を上がっていった。


10 氷室優菜

 20階まで、あと5階
 薄暗い階段の踊り場にある数字は
 15階を示している。
 もちろん、電気なんて壊れている。
 
 15階に何か人影。
 そろそろ、何か仕掛けてくるころだと思っていた。

 たぶん、下にいた雑魚とは違う。
 気を引き締めるわたしたち。
 それと、20階に向けて先輩たちの力を温存しなくては・・・・

 胡桃とわたしが美那子さんの前に出る。
 とりあえず、私たちが確認しないと・・・・
 新メンバーだからねっ。
 美那子さんに全部戦わすわけにはいかない。
 どんな敵かわかってから、先輩たちにふればいい。

 階段から見下ろすブルーの水着の女。
 暗くて顔はわかんないけど・・・・
 輪郭で誰かわかる・・・

 えっ。

 優菜・・・・

 そう、優菜がわたしたちを見下ろしている。

 よかった、助かったんだ。

 わたしと胡桃が駆け寄る。

 でも・・・・
 無表情な優菜・・・
 こっちに手をかざしてくる。

 まさか・・・

「胡桃っ、気をつけて!」
 
「フローズン、ナイフ!」
 優菜の手から白いつららが放たれる。
 そして胡桃を襲う。

 胡桃はパンチでその鋭いつららを払う。
 足元に落ちたつららはガラス細工のように砕ける。

「優菜・・・どうしちゃったの・・・わたしだよ。美月だよ」
 優菜に問いかける。
 優菜はゆっくりとこっちを向く。

 うん、わかってくれたんだね。

 でも、そうじゃない。
 優菜はわたしの方に手をかざす。
「フローズン、ナイフ」
 わたしの方にツララが飛んでくる。
「レインボーシュート!」
 青い玉でツララをはじく。

 だめだ。
 これじゃ。
 いいかげん気がついてよ。
 でも、優菜の瞳は輝きを失っている。
 表情も変わらない・・・・
 まるで、ロボットみたい。

 同期の中で胡桃とわたしと希美と栞はよくケンカしてた。
 でも、優菜はいつも笑って、
 その仲裁役をしていた。
 誰も・・・あの希美でさえも・・・
 優菜には逆らわなかった。
 それは優菜が最強ってわかってたから。

 その優菜が相手。
 それもできるだけ無傷でやっつけないと。

 たぶん、操られてるだけだから・・・・

「当身で気絶させるよ」
 胡桃がわたしの方を見る。
「うん・・・」
 光の玉で優菜の注意をこっちに向ける。
 その隙に胡桃が・・・・
 一瞬で胡桃の考えを理解する。
 胡桃とはコンビネーションの練習とかしてたから、
 わりと簡単に目で会話できる。
 フローズンワールドがあるからちょっとでも触られたらだめ。
 
「レインボーシュート」
 黒以外の玉を優菜に放つ。
 たぶん、避けられるはず。
 ちょっと手加減気味のスピードで。

 優菜の注意はこっちに向けられる。
「フローズン、シールド」
 優菜の手に氷のシールド・・・
 それが七色の玉をはじき返す。

 今だっ。

 胡桃が猛スピードで横から回り込む。
「優菜、ごめんっ」
 胡桃が優菜のボディにパンチを放つ。
 でも、優菜はその手首を掴む。
 しまった。

「フローズンワールド!」
 胡桃の手が凍る。
 でも、優菜の触れ方も甘い。
 やっぱり、体術は胡桃のほうが上、
 一瞬で離れる胡桃。
 右腕が氷に包まれている。
 一瞬であんなになってしまうなんて、
 あらためて優菜のすごさを感じる。
 味方の時はそんなに思わなかったけど、
 敵にしたらヤバすぎってこと・・・
 
「やばっ」
 胡桃は戻ってくる。
 もう右の拳は使い物にならない。

「おまえら、甘いよ」
 愛莉さんが胡桃の肩を掴む。
「さがってなっ」
 愛莉さんと真奈美さんが前に出る。
 愛莉さんは金槌を振り回す。

 だめっ、優菜だよ。
 操られてるだけだよ。

「まぁ、見てなって」
 わたしの心の声が通じたかのように、
 愛莉さんが振り返る。

「いくよっ。真奈美」
 愛莉さんと真奈美さんが飛び出す。
 いくら先輩でも、フローズンワールドを破ることなんてできないと思う。
 でも、先輩たちが出ると、なんか安心感を与えてくれる。

 愛莉さんは金槌を振る。
 それは氷の楯に受け止められる。
 真奈美さんは別の方向から長い足で蹴りを放つ。
 別の手で払いのける優菜。
 でも、真奈美さんの足をつかむこともできない。
 愛莉さんは何度も楯に金槌を叩き込む。
 だんだんボロボロになっていく楯。
 そう、愛莉さんの槌は進化する。
 だんだん攻撃力とスピードが増していくんだ。
 しなる槌の柄・・・・
 遅れたようにヘッドが飛んでくる。
 この変則的な動きも愛莉さんの武器の特徴。
 
 だんだん耐え切れなくなる優菜。
 その隙に真奈美さんが懐にもぐりこむ。
 真奈美さんを掴もうとする優菜。
 そう、掴まれたらフローズンワールドの餌食。
 でも、優菜の右手は宙を切る。
「わたしを掴むことなんて、できないよ。
 ごめん、優菜」
 真奈美さんは優菜のボディに手を当てる。
「気孔術、衝!」
 気合とともに、優菜の身体がはじかれる。
 手を相手にあてたまま、衝撃波を送る気孔術。
 優菜はそのまま気絶する。
 
「大丈夫、ちょっと衝撃はあったかもしれないけど」
 真奈美さんはわたしたちを安心させるように言う。

 すごい、
 胡桃とわたしのコンビネーションなんかと違う。
 簡単にあの優菜を倒してしまうなんて・・・

 後ろから沙織さん。
 銀色のストレートヘヤーに白いマント。
 光の巫女と呼ばれているメンバー。
 美那子さんのチームだ。

 倒れてる優菜の横にしゃがみこみ、
 真奈美さんが衝撃波を当てたあたりに手をかざす。
 白く光る手・・・・
 ヒーリングだ。
 メンバーでヒーリングを使えるのは沙織さんだけだ。

「うーん」
 優菜の顔に生気が戻る。
 うすく目を開けて周りをみる。
「優菜っ!」
 声をかけると、わたしの方を見て微笑む。
「美月・・・わたし・・・・」
 状況がつかめないようだ。
 仕方ないよ。
 何かにあやつられてたんだから。

「これで大丈夫だよ」
 沙織さんが優菜に微笑むと、
 優菜はゆっくりと立ち上がる。

「大丈夫?」
 胡桃が優菜を支える。
「うん、大丈夫。
 ちょっと油断しちゃったみたい」 
 照れ笑いする優菜。
 でも、無事でよかった。
「じゃあ、リベインジしなくちゃね。
 倍返しでねっ」
 微笑みながら言う優菜。
 でも、これは優菜の怒っているときの目。
 垂れ目がちだから、一般の人にはわかんないけど、
 ずっと一緒のわたしたちにはわかる。
 優菜が無茶苦茶おこってるの・・・・
 そして・・・・
 そういう時の優菜の怖さも知ってる。
「じゃあ、行くよっ」
 優菜が先輩のあとに続く。
 わたしと胡桃は顔を見合わせてその後に続いた。


11 ジェル男

 16階の踊り場。
 そこを塞ぐような巨体。
 縦よりも横幅が大きいような風船みたいな体型。
 丸い眼鏡から細く陰湿な目がのぞく。

「そこを空けな!
 ぐずぐずしてると痛い目にあうよ」
 美那子さんが男に向かう。
「あ~~ 」
 男はよける気配がない。
 それどころか両手を挙げてわたしたちを威嚇する。
「10秒だけまってやるよ」
 美那子さんがカウントを始める。
 でも、男はわけのわからないうなりを上げるだけ。
「5、4、3、2、1、ゼロ」
 美那子さんはカウントを終えて、
 光弾を出す。
 思いっきり風船男めがけて投げつける。
 命中!
 そのとたん
 男ははじける。
 えっ。

「やばいよっ、みんな」
 声をかけるのは真奈美さん。
 みんな、その飛んでくるゼリーを避ける。
 第一こんな気持ち悪いものにあたりたくない。
 足元に落ちたゼリーの破片は階段の上を目指して動く。
 なに、これ・・・・
 集まったゼリーは階段上で山となる。

「このゼリーにつかまったら駄目だよ。
 取り込まれちゃうよ」
 真奈美さんはこれと闘ったことがある。
 だからみんなに指示を送る。
 だんだん階段を下りてくるゼリーの山。
 思ったより速い動き。
 時々、触手のように身体を伸ばしてわたしたちを捕まえようとする。
 やすやすと避けるわたしたち。
 でも、このままじゃ先に進めない・・・・

 これに対抗できるのは
 わたしと美那子さん、沙耶香さんくらいかな。
 直接攻撃は、たぶんダメ。

 沙耶香さんが前に出ようとする。
 そう、ブラックホールに吸い込むしかない。

 でも、その前に優菜が立ちふさがる。
「わたしに任せてください。」
 さっき回復したばかりなのに・・・・
「優菜、フローズンワールドは効かなかったじゃん」
 心配そうに真奈美さんが近寄る。
「大丈夫です」
 自信満々の優菜。
 優菜は元々控えめな方で、無理をする方じゃない。
 なんか、勝算はあるはず・・・・

「任せたよ」
 沙耶香さんは後ろに下がる。

「はいっ。
 ちょっと下がってて下さいっ」
 優菜は手をかざす。
 フローズンワールドのポーズ。

 優菜は静かに目を閉じる。
 その手に絡み付こうとするジェルの触手。
「だめっ、また取り込まれちゃう」
 真奈美さんの叫び。
 でも、それを沙耶香さんが制する。

「氷結地獄!絶対零度っ!」
 優菜が叫ぶ。
 優菜の手から白い煙が広がる。
 
 絶対零度・・・・
 物体の中の電子の動きさえなくなる温度だ。
 現実世界のすべてのものは存在しえない。

 凍るというより、細胞が破壊されていくという方が適切だ。
 見る見るうちにジェルの池は黒くなっていく。
 恐ろしい技。
 これで、ますます優菜に逆らおうって気がなくなる。

 ジェルがほとんど黒くなったところで、
 優菜がよろける・・・・・
 たぶん無茶苦茶エネルギーを使っているはず、
 その優菜を胡桃が支える。
 よくやったよっていうように沙耶香さんが微笑む。
 この人、ずっと優菜のこと信じてたんだ。
 ますます尊敬かもっ。

 あとは、飛び散ったジェルの破片がうごめいているいるだけ、
「急ぐよっ」
 美那子さんが階段を上り始める。

 わたしと胡桃は優菜をささえながら、
 先輩たちの後に続いた。


12 大和・・・

 次の踊り場には、
 プロレスっぽい仮面をかぶった男。
 服は、破れたジーパンに、
 白のTシャツ・・・
 首には太い金のネックレス・・・
 ってどこかでみたことあるような。

「まあ、おまえらに恨みはないけどな。
 一宿一飯の義理ってやつでな・・・」
 わたしたちの前に立ちふさがる。
 あいつだぁ・・・

 だめだって
 それくらいの力でわたしたちの前に立っちゃあ。
 先輩たち、気がたってるんだから・・・・
 わたしは前に出て大和に声をかけようとする。

 でも、それより美那子さんの反応が早い。
「退けっ!」
 オレンジの光弾を出して、
 ドリブルをするように床と手の間を往復させる。
「10秒だよ。10、9、8」
 いらいらするように言う。

 でも、男は引かない。
 仕方ないなって感じで見下ろすだけ。

「3、2、1、0」
 そのとたん美那子さんがダッシュする。
 階段なのにもかかわらず、
 ドリブルしたまま、猛スピードで上っていく。
 姿勢を低くしたトリッキーな動き。
 相手は普通翻弄される。
 そして、投げるというより、
 光弾をぶつけるという感じ・・・
 それが、美那子さんの戦い方だった。
 わたしは光弾を自分の思いどおりに操れるけど、
 美那子さんの場合は自分の手でコントロールする。
 もちろん、美那子さんの手は光弾に焼かれない。
 
「やべぇ」
 大和は上半身だけでその攻撃をかわす。
 美那子さんの攻撃をかわすなんて、只者じゃないかも。

「だから、あぶねぇって・・・」
 大和は逃げながら、
 突っ込んできた美那子さんの足を引っ掛ける。
 
 勢いよく、こける美那子さん・・・
 大和は全然フォースを使っていない。

 でも、美那子さんが舐めてただけだよ。
 すぐに起き上がる美那子先輩・・・・

 そのまま、猛スピードで突っ込んで来る。
 さっきまでと違う。
 美那子さんの本気の動きだ。

「アルティメット・ダンクっ!」
 大きく飛び上がって、大和に向かって光弾をぶつけようとする。
 あっ、そこまでしなくても・・・・
 死んじゃうよ。
 いくらなんでも。

 大和は初めて拳を出す。
 オレンジ色の光弾に向かって・・・・
 青白い光をまとう拳・・・・
 美那子さんのアルティメットダンクとぶつかる・・・・
 火花が散るくらいにぶつかる・・・・
 二人ともはじかれるように吹き飛ぶ。

 美那子さんは愛莉さんが受け止める。

 大和は壁に激突。

 ・・・・・
 ・・・・・
 ・・・・・


「いってぇ・・・・
 あぶねえな・・・・
 死んだらどうするんだよ・・・・」
 
 先に立ち上がったのは大和。

 わたしは思わず前に飛び出す・・・・
 
 7色の玉を出しながら。

「ばかっ。
 なんで、わたしたちのじゃまをするんだよ!」
 わたしはむちゃくちゃに玉を大和に打ち込む。
 ケーキバイキングおごってやったじゃん。
 クレープと甘味処は払わせたけど・・・・

「えっ?
 さっきの・・・・」
 玉を全部かわす大和。

「なんで、悪者の味方するんだよ。
 ばか大和!」
 いい人だと思ったのに・・・
 取り消しだよ。

 わたしはレインボーイリュージョンを決めようとする。
 それを後ろから引く手・・・・
 誰?

 わたしを後ろに押しやって、
 沙耶香さんが前に出る。

 そして・・・・・
 大和の前に歩いていく・・・・

 大和の前に立つ沙耶香さん・・・

 大きく目を見開く大和・・・
「朱雀・・・・」

 その時、
 パン・・・・
 沙耶香さんの平手が大和の頬を思いっきり弾いた。 
 
 



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