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03 デート???

 逃げ込んだ路地裏。
 男は身をかがめてわたしの顔を覗き込む。
 なんか顔が赤くなる。
 こんなに男の人と接近するのって最近なかったから。
「名前は?」
 何、こいつ、新手のナンパっ?
「人に名前聞くときはまず自分からでしょ?」
「ああ、わりい。俺、大和」
「うん、わたしは美月だよっ」
「じゃあな。礼はいらないからな」
 大和は立ち去ろうとする。
 でも、わたしはそのジャンバーの袖を掴んで離さない。
「なんだよ。礼はいらないって・・・」
「はぐれちゃったじゃん」
「えっ・・・」
「一緒に探してよ・・・」
「俺忙しいから・・・」
「わたしまで逃げる必要はなかったんだからねっ。責任とってもらうよ」
 大和を睨む。
 困った顔の大和。
「じゃあ、どこまで送ればいい?」
「うん、ここまで・・・」
 バックの中からガイドブックを出す。
 クレープのおいしいお店。
 たぶん、胡桃はここにいると思う。
「あぁっ、ここかぁ。知ってるぜ」
 彼はゆっくりと歩き出す。
 わたしは彼の袖をつかんだままその後についていった。

「おいひぃ」
 わたしはチョコバナナクレープに噛り付く。
 やっぱ、有名なだけある。
 生地はしっとり薄くて、チョコとバナナのコンビネーションも最高。
 思わず大和に微笑んでしまう。
「じゃあ、俺はここで」
 席を立とうとする大和の袖を掴む。
「ここにはいなかったみたい。ごめんね。次はここだよ」
 またガイドブックを指差す。
 行ってみたかったお店を指差す。
「ほんとうに。ここにいるんだな」
「うんうん」
 顔を縦に振るわたし。
 次こそ絶対。
 胡桃と約束したんだもん。

 ブティック2件・・・
 雑貨屋3件・・・・
 甘味処・・・・

 大和といっしょにいろいろなお店を回る。
 荷物は大和が持ってくれるし・・・
 決して押し付けたんじゃなくて・・・
 まあ、自発的にってやつ・・・
 なんか顔はひきつってるけど・・・・

 あとはあそこしかない!!
 ケーキバイキングっ!!

「ねえ、大和っ。なんでコーヒーしか飲まないの」
 4つ目のケーキと格闘するわたし。
「甘いの苦手なんだよ」
 わたしから目を反らす。
「でも、郷に入っては郷に従えっていうじゃん。わたしの計算では3個たべないと元をとれないの」
「だから、おまえが食ってるのみるだけで胸焼けするって感じなんだよ」
「フーン。わかんない。こんなにおいしいのに。ケーキおかわりっ」
 
 その後、わたしをじっとみる大和。
 クリームでもついてるのかな?
 ちょっと口の周りをぬぐってみる。
 大丈夫そう・・・・
 もしかして、わたしがかわいいから????
 ちょっと顔が赤くなってしまう。
 こんなにじっと見られたことないから。
 まるでデートしてるみたい。
 なんかドキドキしてしまう。

「何みてんのよ」
 大和が微笑む。
「あぁ、あいつに似てるなって思ってさ」
「あいつって」
「おまえみたいに、自分勝手で、おっかなくてさ。
 それでいてかわいいところもちょっとだけあるって感じでさ」
「元カノ」
「そんなのじゃない・・・・
 親友って言った方がいいのかなぁ」
 遠くを見るような目の大和。
 
 こんなことしゃべりながらも、わたしのケーキの皿は空になる。
「次はレアチーズケーキ」
「まだ、食うのかよ」
 あきれたような顔をする。
「うん、この列のケーキ全部食べるの」
 メニューを指差す。
「仕方ねえな。コーヒーおかわり」
 大和が微笑む。
 なんか、かわいい。
 わたしは幸せな気分にひたりながら、ケーキを食べ続けた。


04 魔女狩りのはじまり

「LOVE WITCHESの人ですよね」
「そうだよっ」
 イベントが終わったあとの睦美たちを呼び止める男。
 振り向く睦美。
 そこにはホームレスとも思えるひげだらけのむさくるしい男。
「サインとかじゃ・・・なさそうだね」
「ええ・・・玄武さんに頼まれまして・・・」
 睦美は飛び跳ねて男から離れる。
 スタッフにも気づかれず気配を消して近づいた男・・・
 只者ではない。

 周りが騒がしくなる。
 両手に鉄の爪をつけたスキンヘッドの男が回りのスタッフをなぎたおしながら近づいてくる。
「はやく片付けようぜ。まったく、この程度に俺らを使うなんてよぉ」
 両手の爪についた血を舐める男。

「あなたたちですか?わたしのかわいい舎弟を殺ってくれたのは」
 白衣に白髪の男。
 傍らには巨大な獣を連れている。
 大きさは象くらい。
 異様なのはその頭。
 狼とライオンの顔。
 双頭の魔獣。
 それと尻尾は蛇。
 
「栞、希美、いくよっ」
 身構える睦美。
 希美は大剣を構える。
 栞は後ろで手を組んで微笑む。

 吼える魔獣。
 スキンヘッドも低く構える。
 ホームレスはコートのポケットに手をつっこんだまま。

 いきなり希美が走る。
 剣を横に構えて、魔獣の足元へ・・・・
 そのまま、剣をなぎ払う。
 そう、希美の剣は、古来の対騎馬のための剣・・・・
 騎馬武者の馬の脚を狙う。
 希美の鍛え上げられた技が魔獣の脚を払う・・・
 
 剣がぶつかる大きな音・・・・
 そう、魔獣の態勢は崩れない・・・・
 はじかれたのは希美・・・
 すごい力はあるが、体重のないのは致命的だ。
 地面にバウンドして転がる希美。
 しかし、すぐに態勢を立て直す。
 
 すぐにUターンして、今度は飛び上がる・・・
 狼のほうの首に剣を叩き込む・・・・
 しかし、それもはじかれ希美は地面を転がる・・・・

「フフ、この魔獣にそんなものは効かない。なにしろアルマジロの皮膚だからな。すべての魔獣の良いところだけを集めてつくってあるんです。まさにパーフェクト魔獣です」
 うっとりとして魔獣の脚をさする白衣の男。

 希美はブツブツ言いながら、栞のところに戻ってきて栞にタッチをする。
 わけのわからない行動は今に始まったものではなかった。

 次に栞が魔獣に対峙する。
「ドッペルゲンガー」
 両腕を交差させて空に上げる。
 魔獣の前に煙が集まり、像を作っていく。
 しかし、それが実体化したのは小さなゼリー状の物体。
 のろのろと動くだけだ。
 栞もわけがわからないというように首をかしげて、足の先でそのゼリーをつつく。
 ゼリーは霞のように消えていく。

 また、魔獣に向き直る栞。
 今度は腰に手を当てて。
 空に浮かび上がる。
 そのまま、手足を伸ばす。
「巨大化っ」
 栞がだんだん大きくなる。
 大きさには大きさを・・・・
 栞が考えた結論だった。

 魔獣と組み合う栞・・・・
 力の勝負となる。
 むしろ魔獣の方が押されている。
 だんだん、後退する魔獣。
 尻尾のへびが栞に絡み付こうとする。
「きゃぁぁぁぁぁぁ、へびっ」
 栞の悲鳴・・・・
 そして、いきなり栞は元の大きさに戻る・・・・
 そのまま、睦美の方へ全速力でかけてきてタッチ・・・・
 睦美の後ろに隠れて目に涙を浮かべている。

 仕方ないねというように睦美が前に出る。
「イン・ワンダーランド!!」
 睦美が甲高い声で叫ぶ。
 その瞬間、周りは闇につつまれた。


05 イン・ワンダーランド

 そう、睦美の能力は空間を作り出すものだった。
 
 空を走る機関車。
 トランプの兵隊。
 天井でのさかさまのお茶会。
 無限に続く螺旋階段。
 不思議な世界が全員をつつむ。
 
 ウサギと戯れる栞。
 なにかわかんないゼリー状の生き物を剣でつつく希美。
 
 漆黒の闇に無数の睦美が浮かぶ。
 スキンヘッドの男は狂ったように、攻撃をする。
 しかしどれも幻。
 爪が当たれば、それは2体に増えるだけ。

「ハハハ、無駄だよっ。この世界ではわたしがクィーンだよっ」
 空間に睦美の笑い声が木霊する。
「さあ、どうしようかなぁ。おまえの足元は沼」
 スキンヘッドを指差す。
 足元からだんだん沈んでいく男。
「な・・・なんなんだこれ・・・」
 もがいても抜け出せない。
 膝のあたりまで沈んでしまう。
「こっちは子猫になあれ」
 魔獣は子猫に変わる。
 あっけにとられる白衣。
「それからっ。」
 もうひとりの男を捜す。

 しかし、前には見当たらない。
 睦美の後ろから声。
「楽しいショーだったよ」
 ゾクッとするような低い声。
 振り返る睦美。
「こっちもみせてあげよう」
 男の後ろにマントをつけた骸骨が浮かび上がる。
 手には大きな鎌。
 絵で見た死神そのもの。
「ソウルイーター」
 骨だけの腕が伸びて睦美の額に・・・
 そして、白い糸のようなものを引っ張る・・・・
 そのまま白い糸を器用に巻き取る骸骨の手・・・・
 その糸が終わったとき・・・
 睦美の身体はその場に崩れた。
 いきなり元の世界に戻る。
 魔獣も元の巨大魔獣に、スキンヘッドの男も普通の地面に立っていた。

「やべえな。相変わらず。死神の技は」
「さてと、あと2人ですね」
 白衣の男が魔獣をゆっくりと全身させる。

 その前に一人の女が出る・・・・
 希美と栞の新人マネージャー。
 魔獣と2人の間に立ちふさがる。
「非常事態よ。リミッターを解除して逃げて!」
 振り返って2人に向かって叫ぶ。
 2人は顔を見合わせてうなづく。
 そして手首の鎖をはずす。
「逃げるの。そして睦美さんがやられたこと卑弥香さんに伝えて。ここはわたしが食い止めるから」
 魔獣のライオンの顔がマネージャーを襲う。
「鉄壁っ」
 マネージャーは手をかざす。
 前に大きな鉄の壁ができる。
 跳ね返される魔獣の顔。
 前足で引っかく、でも壁に阻まれてマネージャーまで届かない。
「ユニット4の影。鉄壁の綾をなめんなっ。死神一匹通さないよっ」

 でも、2人は逃げようとしない。
 希美は何か考えている。
 なにか思いついたらしく顔を上げる。
 また、剣を取って走り出す。
 魔獣の方へ・・・・

 しっかりと前を見据えて、
 鉄壁を潜り抜ける・・・
 中からは簡単にすり抜けられるようだ。

 さっきより速いスピード。
 大剣を横に払う。
 右の後ろ足を狙って・・・
 今度は跳ね返されない。
 剣の描く弧は魔獣の足を斬る。
 吼える魔獣。
 希美は剣の切れを確かめると、全速力でこちらに戻ってくる。
 マネージャーは一瞬鉄壁を解除し、希美を迎える。
 希美はマネージャーをすり抜け、栞の方へ・・・
 栞の手をとって駆け出す。
 リミッターで戦ったことが納得いかなかった。
 本来の自分の力を証明することが必要だった。
 普通の人にはわからないが、希美の論理だった。

 舞は2人が逃げるのを見届けると仕上げにかかる。
 どれだけできるかわからないが、
 なるたけ時間を稼ぎたい。
 それと、全員は無理かもしれないが、一人くらいは道連れに。
 
「ファイアーウォール!」
 舞の前の鉄壁が燃え出す。
 この壁をやつらに押し出す。
 鉄壁は守るだけの技じゃない。
 魔獣と鉄の爪。
 二人とも壁の動きにあわせて逃げるだけ。
 やっぱり、こんなに広い屋外では舞の技は威力半減だ。

 しかし、広いところなら囲んでしまえばよい。
 炎の壁が彼らを囲むように伸びていく。
 そして、逃げ道を塞いでしまう。
 綾のもくろみどおり。
 あとは炎の壁を狭めていくだけ。

「かわった技ですね」
 綾の後ろから低い声。
 まさか・・・・
 振り向けば、死神。
「どうして抜けられたの?」
「さっきの娘が通ったときですよ」
 あの一瞬・・・
「おもしろい技だが・・・壁の向こうが見えないのが難点ですね」
 死神が綾の額に触れる・・・
「あぁっ・・・」
 そこから出る糸を一瞬で引き抜く。
 その瞬間、綾はその場に崩れるように倒れこんだ。


06 暗殺者(アサシン)たち

 シャッターの音とフラッシュの光。
 その中で水着姿3人がいろいろなポーズをとる。
 広いスタジオの一角にポップな部屋のセット。
 自然に部屋で戯れる女の子たちってイメージみたいだけど、
 優菜には、こんな目の回りそうなカラフルな部屋・・・
 それになぜ水着なのかっていうのが
 理解できなかった。

「優菜、表情固いよ。肩の力抜いて」
 専属カメラマンの百合が声をかける。
「すみませんっ」
 表情を和らげる。
「うん、いいよ」
 シャッターがきられる。
 優菜のブルーの水着に白い身体がフラッシュで光る。

 美作百合・・・
 WITCHESの専属カメラマン。
 でも、その腕は広く世間に知れ渡っていた。
 数々の賞を手にして、他からも撮影の依頼はひっきりなし。
 現にいろいろな引き抜きをうけても、
 本人は全然他に行く気はないらしい。

 彼女達の写真は毎号少年週刊誌の表紙を飾る。
 他のメンバーの時もあるが、基本的にグラビア組の登場回数がダントツである。

「じゃあ、次、真奈美、撮るよ」
 日向真奈美・・・
 優菜の1期先輩に当たる。
 ボーイッシュなショートに小麦色の肌・・・
 オレンジの水着がその肌に似合っている。
 健康的な美少女だ。
 優菜と違って自然にポーズを撮る。
 百合が指示しなくても、思ったとおりにポーズ。
 息がぴったりって感じだ。

「じゃあ、麻衣さん、お願いっ」
「はい・・・」
 ウェーブのかかったロングヘヤー。
 白の水着。
 男の人の人気ナンバーワンの座をずっとキープするNICE BODY。
 口もとのほくろまで艶めかしさを演出している。
 きちっと悩殺ポーズを決める。
 カメラの後ろで優菜も同じポーズをとってみるが、遠くおよばない。

「みんなでいくよっ」
 麻衣さんを中央に優菜と真奈美がその周りを彩る。
 まるで踊るような感じでモニターを確認して何ポーズかシャッターをきる。
 百合が大事にしているのは被写体の表情。
 しゃべったり歌ったりして最高の表情を引き出す。
 それで、満足気にうなづく。
「撮影、終了~~」
 百合が叫ぶと、みんな素に戻る。
 いちおう、撮影中はおすましモードだから。

「おつかれさま」
 でも、麻衣だけは変わらない。
 あくまで、大人っぽい微笑みを浮かべるだけ。
 麻衣にとってはこれが素だから。

「でもさぁ。優菜、こけるんだもん。笑いこらえるのに必死だったよ」
「ポーズに無理があるだけです」
「あっ、あれ。右足と左足まちがえるんだもん。両足上げたらこけるに決まってんじゃん」
 優菜、真奈美、百合はかしましくおしゃべりを始める。
 
 一緒に笑っていた麻衣の笑みが消える。
「だれっ」
 木刀を手に取り、優菜の傍らの壁に突きつける。
 麻衣は剣の達人だ。
 ウィッチーズも歴代、何人かの剣士がいた。
 その中でも最強と言われる腕を持っている。

「あ~あ、もうちょっとだったのになぁ」
 その先に眼鏡をかけた小柄な男が現れる。
「撮影中は立ち入り禁止だよ」
 真奈美が殴りつける。
 難なく避ける男。
 そのまま、消えてしまう。

「何っ、あれ」
 優菜が通風口を指差す。
 そこから、赤いゲル状のものがしたたり落ち、
  白い床に積もっていく。
 だんだん、それは人の形に変わっていく。

 カメレオン男が知らない間に鍵を開けたのだろう。
 ドアが開き
 白い仮面の男が入ってくる。
 タキシードに白い手袋。
 まるでマジシャンのようないでたち。
 鼻までを覆うような白い仮面。
 目じりに笑っているような皺がある。

06 暗殺者(アサシン)たち(2)

「亀田さん、
 いやはや、アサシンが見つかるようでは・・・」
 大げさに手を広げあきれたというポーズをする。
「しかし・・・石動・・・」
 いいわけをしようとするカメレオン男。
 それを制する。
「まあ、どっちにしても同じことです。
 ここでみんな死ぬんですから、
 われわれの正体がばれることもありません。
 朱雀さまの任務を遂行するだけです」
「ああ、わかったよ。
 すこし舐めすぎたみたいだよ。
 まさか、見破られるとは思わなかったんでな」
 また、一瞬で姿を消す男。
 今度は完全に気配を消しているのか、
 麻衣の目にも戸惑いが浮かぶ。

 ゲル状の人間がまた人間の姿をやめる。
 床に一瞬で広がる。
 彼女たちの足元に・・・
 ゲルの水溜りから蝕手が伸びて、彼女たちの足を掴む。

「なに、これ、キモすぎっ」
 真奈美が足を振りほどこうとするが離れない。
 逆にこけそうになってしまうが、
 それはこらえる。

 時々、カメレオン男が姿を現すが、あらわしたとたん麻衣が木刀でけん制する。

「優菜、凍らせてっ」
 真奈美が優菜に指示をする。
 優菜は頷いて、自分の足元のゲルに手をかざす。
「フローズン・ワールド!」
 優菜の手の部分から白い冷気が発せられる・・・
 ドライアイスのような煙につつまれるジェルのかたまり・・・・
 
「おもしろい技です。
 水沼のゲルは-100度くらいでは凍りませんよ。
 さてお手並み拝見といきましょうか?」
 タキシードの男が笑う。

 全然凍らないゲルの水溜り
 その中から触手が伸び・・・
 優菜の手首を掴む・・・
 そのまま、取り込まれていく優菜。
 他の二人は動けずに見ているだけしかできない・・・

「優菜ぁ!」
「優菜っ」
 2人の声を聞きながら、
 ジェルに飲み込まれていく優菜・・・
 脚・・・
 腰・・・
 腹部・・・
 胸・・・
 肩・・・・
 2人の悲痛な叫びもむなしく・・・
 優菜の頭部がゲルの沼に包まれた。

「優菜を返せっ」
 むちゃくちゃに暴れる真奈美・・・・
 でも、足が掴まれているので動けない。

「フフ・・・あと2人ですね。
 いえ、われわれの姿を見られたからには、
 カメラマンも・・・ですか・・・
 最後におもしろいものを見せてあげましょう」

 仮面の男が手を開くと
 そこから伸びる糸・・・
 それが、麻衣の四肢に絡みつく・・・・

 瞬間、百合がカメラを構える。
 プロ用の大きなレンズのついたカメラだ。
 仮面の男を中心として・・・
 フラッシュがたかれる・・・
 シャッターをきる音・・・

「ユニット3の影、
 マジックフォトグラファー、美作百合」
 男達の動きが固まる。
「これで、1分間動けないよ」
 百合のカメラに写されると、1分間動けなくなる。
 単純だが、強力な技だった。
「麻衣さん、真奈美っ、逃げてっ」
 真奈美が足に絡みつくスライムの手を振り解く。
 かたまったゼリーはすぐに解ける。

「麻衣さんっ」
 麻衣は動かない。
「どうしたの。早く。一分たっちゃうよ」
 百合が麻衣の手をひっぱる。
 でも、反応がない。
「やばいっ。あと20秒」
 心の中でカウントする。
「だめっ。真奈美だけでも逃げて!
 卑弥香さんに伝えて・・・」
「うん、わかった」
 真奈美が背中を向けて走り出す。
 
「ゼロ。」
 仮面の男の声。
「こちらも、なかなか面白い技ですね。
 わたしも見せましょう。
 死のマジックをね。
 マリオネットダンスっ」

 仮面の男が白い手袋の手を身体の前で動かす。
 その指から伸びる糸は麻衣の手足に絡み付いている。
 麻衣が木刀を上段に構える。
 オレンジ色に光る木刀。
 麻衣の目には光がない。
「ビームソード!飛炎」
 木刀を振り下ろす。
 その木刀から一直線にオレンジ色の光が走る。
 真奈美に向かって。
「あぶないっ」
 百合の声に振り返る真奈美。
 でも、もうよけられない。
 光をまともに受け、ふっとぶ真奈美。
 壁にぶつかり、その場に倒れこむ。
「真奈美~~っ」
 叫ぶ百合の足首をゼリーの手が掴む。
 今度は動きを止めるためではない。
 引きずりこむための動き。
 足を撮られ倒れる百合。
 その身体を無数のゼリーの手が掴む。
 みるみるうちにゼリーの山に沈み込んでいく百合。
 その身体はすべてジェルに包まれる・・・
 優菜と同じように・・・
 床に転がった一眼レフを残して・・・

「とりあえず、任務完了ですね。
 いきましょうか?」
 仮面の男がドアに向かう。
 麻衣も魂が抜けたように男のあとに続く。
「じゃあ、俺はとどめを刺してくる。
 念のためにな」
 亀田はそう言って倒れている真奈美のところへ。
 かがみこみナイフを出す。
 それを真奈美の胸に突き刺す。
「わるくおもうなよ」
 そのとたん、亀田の目に驚愕の色。
 ナイフは真奈美の胸を突き抜け、
 床に突き立つ。
 まるで、幻にナイフを突き立てたみたいに。
 亀田の首に真奈美の手。
「わたしも・・・アサシンだよ。
 ミスティボディ、日向真奈美。
 覚えておきなっ」
 その瞬間、真奈美の手の暗器が亀田の喉笛をかき切った。
 
(暗器=手に隠れるくらいの小さな武器です)


07 朱雀と玄武

「玄武も動いたらしいね」
「はい、壊し屋を使って、一人倒したということです」
 白い仮面の男と妖艶なドレスの女性。

「たったの一人だけ?やっぱ、詰めが甘いね。ハハハ」
「ええ・・・・朱雀さま」
「こっちも2人・・・」
 考え込む朱雀と呼ばれた女性・・・
「でも、ここからは難しくなるわね」

 おもむろに携帯を取り出す。
「玄武?・・・わたし・・・朱雀」
「なんだ」
 不機嫌な声。
「なんか、一人倒したらしいね」
「ああ・・・」
「私のとこは2人だけどね」
「何を言いたいんだっ!」
「これからガードが固くなるわ」
「ああ・・・わかっている」
「このまま、わたしの勝ちかもね。
 白虎も動いてないみたいだし。
 じゃあね」
 一方的に電話を切る。

「石動、玄武を見張って」
「はい・・・」
「あいつバカだから、すぐに何か行動を起こすと思うの。
 それと亀田の代わりは見つけたの?」
「ええ、闇のアルバイト情報を使いました。
 腕は確かなのですが、なにぶん・・・」
「まあいいわ。どうせ捨て駒だし」

「なあ、バイト代安すぎねえか。
 いきなり魔獣とかけしかけやがって」
 茶髪の男、ジーパンに革ジャン。
 顔を半分覆う黒い覆面をしている。
「こいつが?代わり?」
 あきれたように朱雀は男を見る。
 アサシンとはかけ離れた男。
「なぁ、仮面のにいちゃん。
 ちっと考えてくれよ」
 石動は朱雀に耳打ちする。
「傭兵が他に4人集まったのですが、
 力を試したところ、
 めんどくさいから4人一度に相手すると言いまして・・・
 それを一瞬で・・・
 たぶんそんなことができるのは、
 わたしと水沼くらいですか・・・
 腕は保証します」
「ウィザード?」
「いえ、拳法使いです」

「そっちのねえちゃんが雇い主だろ。
 いろいろ入用があるんだよ」
 なれなれしく近づいてきて、朱雀の肩に手を回す。
 覆面男の頬に朱雀の平手が飛ぶ。
 その手首を一瞬で掴む。
 あっけにとられる朱雀。
 そう、女の手といえ、こんな至近距離からの平手・・・
 その手首を簡単に掴む。
 それだけで、男が並の使い手でないことがわかる。
 朱雀は男の目を見て微笑む。
「わかったわ。
 2倍だすわ。
 そのかわり、それだけの働きはしてもらうからね」
「ああ、やっぱトップは物分りがいいよな。
 こっちの下っ端と違って」
 石動はあきれたように両手を開く。
 あくまで仮面の表情は笑ったまま。
「石動、それでいいよね。」
 仮面の男に確認する。
「ええ、仰せの通りに」
 大げさに礼をする石動と言う男。
 その仮面の目が一瞬光ったような気がした。

********************

「なんだ、あの女は」
 荒れる玄武という大男。
「それもこれもお前たちがたよりないからだろ!
 2人も逃がしやがって」
「すみません。思ったより手ごわい娘たちで・・・
 しかし奴らは仲間一人を失ったって話ですよ」
「言い訳はいい。次の手は」
「あの本部ビルに殴りこむのは難しいですね。
 おびき寄せるしかないでしょう。
 こいつらを使ってね」
 萬屋の前に2人の女。
 睦美と綾だ。
 でも、その目には生気はなく、
 魂の抜け殻のように立っている。
「すぐに手を打て!」
「はい・・・」
「それと、こいつは何だ!」
 萬屋の後ろにはマントの肌の浅黒いマントの男。
「ええ、壊し屋に入りたいと言って」
 かぶったフードの中から鋭い眼光。
「足手まといにならないだろうな」
「たぶん・・・」
「そうか・・・」
 いきなり玄武はマントの男に殴りかかる。
 乱暴者玄武の挨拶だった。
 少し手加減はしているが、並の使い手なら吹っ飛ぶことは必死だった。
 その拳を簡単に手のひらで受け止めて握る。
 玄武が手を引こうとする。
 でも、握られた拳は相手の手から抜けない。
 それだけでなく玄武の拳は信じられない握力で押しつぶされる。
「わ・・わかった。萬屋よ。面倒みてやれ」
 そういうと、マントの男はその手を開く。
 いきなり離されて玄武はよろけた。

「では、残りの娘を全員、呼び出します。」
 睦美と綾の肩に手を置く、萬屋。
「いいだろう。
 まとめてぶっ壊すというわけだな。
 今度は俺も出る。
 あの朱雀に目にものを見せてやるぜ!」
 舌なめずりする大男。
 大男はもうこの街の支配者になったかのように
 高笑いをした。



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