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パニック発作およびパニック障害

 精神科的治療とカウンセリングを組み合わせるとより良い治療効果が期待できそうな疾患にパニック障害がある。

 

疾患概念:以前は神経症に含まれると考えられていた。しかし、ある種の薬物を静脈注射するとパニック発作がひきおこされること、遺伝性が認められることから、今では生物学的な基盤を持った疾患と考えられている。

 動悸、呼吸困難感といった身体症状に加え「このまま死ぬのではないか」と表現される圧倒的な不安感が発作的に患者を襲う。ベースに不安状態がある場合が多い。特定の状況で発作が繰り返されると、その状況と発作が結びつき(あやまった学習)患者はその状況を避けるようになる(広場恐怖)。おおざっぱにいえば、この学習が形成された病態がパニック障害といってよい。パニック発作自体は、統合失調症・うつ病患者でもおこる(不安にさらされたような場合)。

 パニック発作の本態は本来人間に備わっている「驚愕反応」ではないかと考えられている。太古の昔、人間が見知らぬ土地で危険にさらされた場合(突然、森の中で肉食恐竜に襲われた場合など)、驚愕反応がおこると二度とその土地には近づかないはずである。このように驚愕反応自体は人間が生存していく上で有利な点があったと考えられる。現代において「死ぬほど」危険な土地というものはほとんどないが、ベースに不安な状態があり、特定の状況におかれると(ラッシュアワーの満員電車で圧迫された場合など)、この驚愕反応が発現する。これをパニック発作、またパニック発作が特定の状況と結びついたものをパニック障害と考えると理解しやすい。

治療戦略:発作がおこった患者は身体的な救急機関を受診することが多い。日本の患者は不幸なことにこの疾患に関する満足な説明を内科系の医師からは受けていない。メンタルクリニックを訪れる頃でも、発作がおこったこと自体に困惑していることが多い。したがって、真っ先にやらなければいけないことは疾患教育である。また、発作自体を防止するために抗不安薬を投与する。たまたま発作がおこったような場合にはこれだけで軽快する場合が多い。

 未治療のままパニック障害になっている場合には、発作を抑制すると同時に完成された学習の消去をおこなう。認知行動療法的な枠組みを提示した上で段階的暴露療法をおこなっていく。不安状態の解消方法の提案、不安階層表の作成、暴露状況の設定など、このプロセスはカウンセリングの良い適応である(と思われるが実践している医療機関は意外に少ない)。頑迷なパニック障害であっても適切な治療がなされれば半年程度で日常生活に支障がない程度には回復する。

 


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